■幸運なゴールで均衡が一変
コロナ禍に世界が襲われてからおよそ1年3か月。我々は満員のスタジアムを見なくなってからことに1年以上の月日が経った。だがこの日、本拠地のプスカシュ・アレナにはハンガリーを応援する観客がスタジアムを埋め尽くすことになる。文字通り圧巻の光景だ。
そんな観客の声援を後押しとするかのように、ハンガリーは積極的なスタンスでポルトガルと対峙する。ハンガリーの5-3-2はWBの手前をどう閉じるかが構造的な問題となる。ここまでのいくつかのチームがそうしてきたように、大外を捨ててエリアに引きこもる選択もあり得たはず。だが、ハンガリーはIHが高い位置までチェックに出ていくことにより、ポルトガルの前進を寸断。中央をケアしつつサイドでボールを食い止めるやり方でミドルゾーンで踏ん張る。
ポルトガルはこれにだいぶ手を焼いた。ボールこそ問題なく握れるものの、ビルドアップはU字型になってしまい、なかなか前進できない。個人個人のオフザボールの質は十分なのだが、どうも組み合わさらない。ベルナルドの縦横無尽の動きもラファエル・ゲレーロの斜めのランも他の選手とつながらない。
裏抜け頼みの単調な攻撃に終始するポルトガル。もう1つ可能性を感じたのは左右のクロス。特にCHの片方(ダニーロはそういえばRSBもできるよね)がサポートに出張する右サイドからのクロスはチャンスがあった。エリア内のジョッタとロナウドのコンビはクロスに合わせる能力が抜群。ジョッタはやや硬さが目立つ初戦だったが、入り込むところまでできていた。したがって、クロスまで行ければポルトガルにチャンスができる形にはなった。決まらなかったけど。
ハンガリーの攻撃はポストが主体。特に9番のアダム・サライにボールを集める。カウンターの際に多少遠回りになってもまず彼を探す場面が目立っていたので、恐らく相当頼られているのではないかなと思う。確かにフィジカルは強靭だった。
後半はディアスやセメドが前半以上に前がかりになるポルトガルの裏を取り、ハンガリーがカウンターから主導権を握る場面すらあったほど。対人守備で強みのあるポルトガルをファウルせざる形に追い込んだり、オフサイドとはいえ途中交代のシェーンがネットを揺らし、あわやという場面を作っていた。
だが、勝利の女神がこの日微笑んだのはポルトガル。クロスもシュートも相手に当たって方向が変わるという非常にラッキー要素が強い得点で均衡を破る。そうなるとここからはロナウド劇場。隙ができてきたハンガリーの守備陣に途中交代のサンチェス⇒アンドレ・シウバのラインでPKを奪取。これをロナウドが決めると、後半追加タイムにはおかわり。
80分までの均衡に似つかわしくない3点差という結果で決着。ハンガリーのサポーターたちは悔しさを噛み締めつつ、善戦した代表選手たちをバイキングクラップでたたえていた。
試合結果
ハンガリー 0-3 ポルトガル
プスカシュ・アレナ
【得点者】
POR:84′ ゲレーロ, 87′(PK) 90+2′ ロナウド
主審:ジュネイト・チャキル