■コケとぺドリには実直さを感じたが…
4時に起きて、テレビをつけるとそこに広がっていたのは頭で想像した通りのスペイン×スウェーデンの展開が広がっていた。ボールを握り倒すスペイン、それに4-4-2ブロックで対抗するスウェーデン。90分間この綱引きが延々行われたというのがこの試合のざっくりとした総括である。
スペインはサイドにWG、IH、SBの3枚を固めて崩しに挑む。それに対してスウェーデンは徹底的に中盤を引いて受ける選択肢を取る。特にスペインのIHにはCHがとりついて逃がさない。スペインとしては崩しきれない左右の三角形からエリアに迫るルートをなかなか見つけ出すことが出来なかった。
撤退+後方重心での余らせマンマークが主体のスウェーデン。これを打ち破るにはピンポイントでスペースにあわせるクロスを入れるか、対応できないタイミングでエリアに選手が入ってくるかのどちらかしかない。この部分で輝いたのはコケ。前半20分付近にはダニ・オルモへのピンポイントパスであわや得点の機会を演出。その後には自らがエリア内に飛び込むことでスウェーデンの守備陣の虚を突いた。出し手としても受け手としても高水準のコケの部分はズレをつくるきっかけとなっていた。
撤退したスウェーデンの攻撃の希望になっていたのはイサク。推進力のあるドリブルと複数人に囲まれても体を入れ込みながら網を打ち破ってしまう馬力は唯一無二。イブラヒモビッチとは異なるやり方ではあるが、彼は彼なりのやり方を示し、それが多くの人に認められているのは間違いない。
後半はWGを絞り気味にすることでマンマーク気味のスウェーデンに対して4バックだけで横幅を守ることができなくなるように揺さぶりをかける。それでもまだ得点が決まらないスペインは交代でチアゴを投入。実際彼起点のサイドチェンジで薄いサイドを作ることには成功。投入が効果的だったことは間違いない。ただ、アンカーの替えというのはたまげた。割とネガトラの場面で頑張れて、高さのあるロドリを下げたのはバランスを考慮しても結構意外だった。
とはいえスウェーデンの采配はそれの上を行く難解さ。チアゴの投入を失敗に追い込むためのトランジッションの切り札がイサクだった。だからこそそのイサクを交代で下げてしまうというのは非常に意外だった。イサクが下がったので、チアゴをアンカーに据えました!ならわかる。でも、逆だとどっちの采配もちんぷんかんぷんに思えるから不思議である。
後半に目についたのはペドリとアルバの左サイド。特にパスを引き出すためのポジションを取り続けてチアゴのサイドチェンジの受け取り手になったペドリは秀逸。10代と思えないほど90分のプレーに起伏が少なく、ひたすら汗をかきながらパスワークのリズムが快適になるように努めていた。最終盤のスペインの強みはここ。後は決めるだけの場面もなかったわけではないがモラタやモレノにはこれを活かすことが出来なかった。
列強が勝利でEUROを開幕させる中、沈黙してしまったスペイン。スウェーデンが仕掛けた塹壕戦を制することが出来ず、ドローでのスタートとなってしまった。
試合結果
スペイン 0-0 スウェーデン
エスタディオ・ラ・カルトゥーハ
主審:スラフコ・ビンチッチ