■よもやのドローとジョルジーニョの凄み
ワトフォードに敗れてついに監督交代に踏み切ったマンチェスター・ユナイテッド。後任には暫定監督としてラングニックの就任が発表されたが、この試合の時点では正式発表されておらず『みんな知っているけどまだ』という状態だった。
そんなわちゃわちゃしている形で迎えるチェルシー戦。立ち上がりから攻められる場面ばかり。開始早々にデヘアがいなければジエンドだった!というチャンスを作られてしまう。
ただ、ユナイテッドは全く無策でこの試合に臨んだわけではない。この試合で指揮を執ったキャリックのアイデアなのか、あるいはすでにラングニックの手が入っているのかはわからないが非常にプレッシングが特徴的だった。
フォーメーション表的には4-3-1-2という形になるだろうが、左右の守備の陣形は非対称。2トップの一角のサンチョは右サイドに大きく張り出しWBをケア。逆サイドのトップのラッシュフォードは中央に留まり、サイドに出ていくのはIHのフレッジという分担だった。したがって、基本フォーメーションはひし形なのに時折4-4-2フラットに見えるという不思議な感覚。特に噛み合わせているわけではないし。
チェルシーは左サイドから時間を得たリュディガーから前進。裏のハドソン=オドイへのパスでリンデロフに揺さぶりをかけていく。ユナイテッドとしては苦しい戦いだったが好材料は2つ。
1つはチェルシーのこの日のメンバーが普段と比べて周りを気にかけながらボールの前進が出来るタイプが少なく、自分のできることに注力するタイプが多かったこと。例えばヴェルナーの裏抜けもそれに合わせる動きがなくやや単発だったし、マルコス・アロンソも前がプレーの幅が広いマウントの方が尖っているハドソン=オドイよりもやりやすかったように思う。
もう1つはエリア内の守備に体を投げ出す根性はユナイテッドの守備陣に戻ってきたこと。その気力すら見られず、軽率なミスを繰り返していたワトフォード戦に比べれば状態は上向いているといえそう。
なかなか点が取れそうで取れないチェルシーに対して、先制したのはまさかのユナイテッド。やたら前がかりになるセットプレーを裏返してジョルジーニョのコントロールミスを誘い、カウンターから独走。サンチョがメンディとの1対1を制し、貴重な得点を挙げることに。
まだ時間は残されているが、チェルシーはやたらあわててテンポが速くなるように。こうなるとミスからロングカウンターの機会が得られる分、少しは展開がユナイテッドに向くようになる。それでも前進の術をもっていないのが今のユナイテッド。ミスがない限りはチェルシーからボールを奪うチャンスを得ることが出来ない。
慌てて覚束なくても押し込むことができる以上は事故が起きる可能性はある。ワン=ビサカが与えたPKは押し込まれた故にユナイテッドが払うことになった税金である。ワン=ビサカは気の毒だが、コンタクトがあってひとたび笛が吹かれてしまっては、OFRからのPK取り消しは難しいだろう。
にしてもPK後に即ボールを握りしめたジョルジーニョには覚悟を感じた。この試合のミスもそうだけど、イタリア代表でも決定的なPK失敗を犯している彼がこの局面で進んでPKスポットに立つのはなんというかすごいなという感想に尽きる。そんで決めちゃうんだもんね。
ジョルジーニョのPK成功でさらに強気にゴールを目指すチェルシー。最後の仕上げは右のWBのプリシッチ。内を固めるユナイテッドを大外から壊すための一手だろう。だが、これでも最後はPA内のユナイテッドの守備陣にシュートは阻まれる。ユナイテッドもメンディのミスから終盤に勝ち越しのチャンスは得たが、これはふわっとフレッジがGKに返すようなシュートでフイにしてしまう。
試合は1-1のまま終了。ホームチーム圧倒的優位と思われた一戦はスリリングでドラマチックな引き分けで終わることとなった。
試合結果
2021.11.28
プレミアリーグ 第13節
チェルシー 1-1 マンチェスター・ユナイテッド
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:69′(PK) ジョルジーニョ
Man Utd:50′ サンチョ
主審:アンソニー・テイラー