耐えるというよりのびのびとしたアップセット
リーグ戦ではテーブルの一番下。降格の危機に瀕しているサウサンプトン。だが、カップ戦は絶好調。FA杯は難所のセルハースト・パークを攻略し、カラバオカップも勝ち上がっている。そんなことをしている場合かどうか?は置いておくとして順調に2つのコンペティションを勝ち上がっている。
そんな彼らと準々決勝で対峙するのはマンチェスター・シティ。順調なカップ戦においてホームで強豪と対戦する羽目になった。
サウサンプトンのプランはリーグ戦とそこまで大きな違いはないように思えた。システムというよりも前がかりだけどハメきらないスタンスが同じ。トップ下のウォード=プラウズがアンカーのフィリップスを消し続けて中央のゲートを封鎖。その分、1トップのマーラがシティのバックラインを追いかけまわす。この2人の守備の際の受け渡しはなく、マーラが走り、ウォード=プラウズはフィリップスをマークという関係性は維持されていた。
対するシティの保持はやや違和感があった。基本、シティはプレッシャーがかかっていないバックラインからはボールを運ぶ。そして、次にパスを出すためのズレを作り、そのズレを前に送っていくというのがシティのお決まりである。
しかし、この日はバックラインに同数でプレスに来ないサウサンプトンが相手だというのに、あっさりと前に蹴りだしていた。その分、シティの前線はあまりズレを享受できず中盤の厳しいプレッシャーを受けることが多かった。
IHのフォーデンが降りる動きを見せるのもいつもであればマーカーで自陣側の選手が詰まるのが先のはず。この日のようにスペースを作りだす前に動き出すのはあまりシティらしくはない。
その上で即時奪回は据え置き。今季のシティの良いところをまるっと削ってしまい、正確性と相手を動かす保持が取り除かれたかのような出来だったといえるだろう。パスワークは抑揚がなく一定のリズムで淡々と動かすため、スイッチを入れて襲い掛かるような怖さがなく、正確さもないとなればそこまで脅威にならないのは当然だろう。
サウサンプトンの先制点はそんなシティのミスをひっくり返す形から。左サイドのゴメスのミスを咎めたリャンコが右サイドからそのままオーバーラップを行い、これをマーラが沈めて先制。切り替えの早さが出てこないシティへの当てつけのように早い攻撃から先制点を奪う。
さらに自陣からの素早い攻撃でサウサンプトンが追加点をゲット。ミドルゾーンからジェネポが技ありの高い軌道のゴールを決めて見せた。シュートは見事だが、あっさりと縦に通される形はシティがまずかった。失点シーンに限らずシティの左サイドは保持で詰まり続けていたし、得点シーンに限らずサウサンプトンの縦パスは攻撃のスイッチになっていた。
時間の経過とともに「やれるやん!」という自信がパフォーマンスににじんできたサウサンプトン。後半は4-4-2フラット、そしてSHの位置を下げる形でブロックをきっちり組む方に舵を切る。
シティは3枚替えでこれに対抗。縦に早いカウンターからアルバレスが決定機を迎えるなど、いきなり交代の効果は見られたといっていいだろう。さらにハーランドで直線性を強化、ロドリでボールの起点を作りに行ったシティは70分を待たずに交代枠を使い切る。
だが、シティが交代のたびに強くなったか?というと疑問は残る。サウサンプトンがジェネポの負傷で5-3-2に舵を切ったあたりからシティの直線的な攻撃の威力は弱まった印象。かといって相手を動かし続ける勤勉さは相変わらずこの日のシティにはない。その上でプレスのスイッチも入らないままという状況になると、押し込む状況は作り続けられない。
サウサンプトンは右サイドのウォーカー=ピータースを基軸に押し返すこともできていた。グラウンダー性のクロスからあわやゴールというシーンすらあった。そういう意味ではシティの攻撃一辺倒の後半というわけでもなかった。
込み入ったPA内になかなか踏みこめなかったシティ。ゴールどころか枠内シュートも打てないまま無得点でカラバオカップを去ることとなった。
ひとこと
見事なアップセットを決めたサウサンプトン。苦しみながらしのいだというよりも持ち味を出してのびのびとプレーしての勝利というのがポイントが高かった。リーグ戦にもこのいい流れを持ち込めればいいのだが。
試合結果
2023.1.11
カラバオカップ 準々決勝
サウサンプトン 2-0 マンチェスター・シティ
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU;23′ マーラ, 28′ ジェネポ
主審:ピーター・バンクス