IHをスイッチ役とするプレスと後方迎撃で試合を支配
戦力的には苦しい戦いになりながらもJ1に定着している両チーム。新進気鋭の監督同士の一戦は開幕戦でいきなり激突することとなった。
立ち上がり、両チームはプレッシングから落ち着かない展開が続く。ピンボールのように行ったり来たり、両チームのカウンターの応酬から3分に大橋がゴールを決めて湘南が先制する。
先制点が流れを呼び寄せたのか、それとも元々そうだったのかはわからないが、アップテンポな試合の中で徐々に湘南がプレー精度の面で優勢に立っていく。なんと言っても効いていたのはプレッシング。2トップの脇から小野瀬もしくは平岡のIHがスイッチを入れる形で一気に加速するプレスに鳥栖はかなり戸惑っていた。
鳥栖は福田や岩崎のような推進力のある選手にスペースがある状態でボールが渡れば湘南のプレスを裏返すことができていたが、なかなかそこまで持っていくことができない。湘南は昨年から機を見たプレスのスイッチで緩急をつけることが増えていたが、今年はそのプレスのスイッチを入れる頻度を高めることで主導権を握っていた。前進を許さない湘南は中盤でボールを奪取しカウンターを行う頻度が増えていく。
鳥栖もプレスでペースを握り返したいが、躊躇なくロングボールを蹴る湘南はロスト後にハイプレスをスタート。鳥栖にペースを渡さない。それでも鳥栖は根性でセットプレーからネットを揺らす。河原のFKを長沼が押し込んだかと思われたが、岩崎がボールに関与しないオフサイドを取られてしまいノーゴールになってしまう。
20分には試合は落ち着き、鳥栖が湘南のブロックをどのように打開するかを模索する展開になっていた。30分には左サイドから長沼のクロスが入るなど、徐々に鳥栖らしいWBを生かした形も見られるように。
しかし、追加点は湘南に。きっかけとなったのはボール奪取からのカウンター。石原のボール奪取からサイドに流れる町野が裏をとると最後は大橋が再びゴールをゲット。鳥栖はパスミスをした中野が無理にプレスに行った結果、入れ替わられるなど散々な結果になってしまった。
鳥栖は前半のうちにFKからネットを揺らすもまたしてもこれはOFRで取り消し。その上、2点目と似たような形で湘南の右サイドの舘のボール奪取から平岡にカウンターを仕留められるなど散々な前半となった。
鳥栖の希望となったのは3失点目の直後に生まれた小野のゴール。勝ち点奪取の可能性を残した状態で後半を迎える。しかし、湘南は前半の勢いをそのままに試合を掌握。ポゼッションからIHが前を向き前進するなど、前半とは異なる形でペースを握っていく。鳥栖はダイレクトにボールを前につけながら大外レーンに展開してのクロス勝負を挑むが、インサイドに高さがなくズレができないかぎりは簡単に跳ね返されてしまう。
そして、後半もスコアを動かしたのはまたしても湘南後方のボール奪取である。今度の主役は杉岡。かわるがわるボール奪取で目立つ湘南のバックラインとは対照的に、前線の主役は大橋一択。60分に3点目を決めて開幕戦でのハットトリックを達成した。
セットプレーからの小野瀬のゴールは彼らしいダイレクトシュートから。すでに新チームで重要な役割を担っていることを感じさせるデビュー戦でこれ以上ないご褒美をもらう。
試合は大量5得点で湘南の完勝。鳥栖のホームで最高のシーズンスタートを切ることができた。
ひとこと
プレスの入れ替わられる頻度と引っ掛ける頻度を天秤に掛ければ、この試合の湘南は明らかに収支がプラス。このスタイルで走り切られたらどのチームにとっても厄介な存在になることは間違いない。鳥栖のビルドアップが通用しなかったのは彼らの問題なのか、湘南が優れているだけなのかはこれからの試合で判断されることになる。
試合結果
2023.2.18
J1 第1節
サガン鳥栖 1-5 湘南ベルマーレ
駅前不動産スタジアム
【得点者】
鳥栖:45+9′ 小野裕二
湘南:3′ 36′ 60′ 大橋祐紀, 45+5′ 平岡太陽, 64′ 小野瀬康介
主審:上田益也