■しょっぱくて盤石な逃げ切りとここでも苦労人のモドリッチ
ここまでのEUROは比較的強度的には大人しい試合が続いていた。そんな中、3日目の初戦に登場したイングランドの立ち上がりはなかなかに勢いがあるものだった。高い位置からのプレッシングとシュートまで畳みかけるような攻撃で立ち上がりにクロアチアを圧倒する。
特に効果的だったのは5分に見かけたスローインからの一連の流れ。ケインとスターリングが入れ替わるように横移動を見せて、縦への進路を確保。スターリングとフォーデンのスピードを活かした縦への早いプレーが見えたシーン。スローインからの緻密な設計も垣間見えた場面であった。
だが、立ち上がりこそ攻め込んでいたものの、徐々にちぐはぐなところも目立ってくるイングランド。遅攻の際は左サイドのスターリングとマウントを軸に切り崩しを狙う。だが、本職が右のトリッピアーが左に起用されているせいで3人目としての機能を果たすことができない。そのため、左サイドで奥行きを取ることができず。ショーやサカのようなレフティを起用しても良かったような気がするのだが。
加えて、もう1つ気になるのは最終ラインの連携。それぞれのビルドアップ思考がバラバラ。無駄にリスクを取った体勢からフィードを狙うミングス、つなぎたがるストーンズ、とにかくけっ飛ばしたいピックフォードとしっちゃかめっちゃか。アンカーでゲームメイカー役だったライスを消されてからは、攻守に連携で怪しい場面が目立つ最終ラインだった。
一方のクロアチアも順風満帆とはいいがたい。モドリッチが前にサイドに守備で奔走する姿はまさしくレアル・マドリーでの彼の姿と瓜二つ。このキャリア、この年齢でもこの役割を果たさなくてはいけないとなるとなかなかな苦労が絶えない。
クロアチアは立ち上がりはイングランドのプレスに苦戦。だが、イングランドの前線と中盤が間延びするようになると、徐々に豪華なクロアチアの中盤が火を噴き始める。モドリッチ、コバチッチを中心に支配し、敵陣に進撃する場面が目につくように。ただ、サイド攻撃は左サイドのペリシッチとグバルディオルの縦関係に依存。右はヴルサリコに丸投げしており、こちらは機能しているとは言えず。また、左も一本鎗としてはやや威力不足。ゴールエリアに迫る動きは少なかった。前半はスターリングとフォーデンの裏抜けという明確な武器があったイングランドが優勢と見ていいだろう。
試合を分けたのは前半に機能しなかった中盤の仕事。本職ではないIH気味に起用されたフィリップスの1列前でのボールの引き出し+ラストパスでスターリングの先制点をお膳立て。もっぱら出し手としてリーズの中軸を担っているフィリップスが異なる才能を開花。膠着を打開した。
その後の試合はイングランドペース。しょっぱい試合とはいえ前線が守備をサボらないメンツなのは大きい。前半よりも撤退した守備網をクロアチアは打開できず。前半は周囲と動きが合わなかったケインも徐々にテンポを掴み始める。終盤は堅くクローズに走ったイングランド。『結局はつまらない』と揶揄されつつも、一瞬の閃きで生まれた得点を守ったイングランドが第1戦を勝利で飾った。
試合結果
イングランド 1-0 クロアチア
ウェンブリー・スタジアム
【得点者】
ENG:57′ スターリング
主審:ダニエレ・オルサト