横への揺さぶりに方針転換
スーペルコパ開催で延期になった17節は今節開催。マドリーはこの後にクラブW杯を控えており、CLに先立って過密日程に突入している。
一方のバレンシアは年明けから不振がさらに深刻化。降格圏のバジャドリーに負けたところでガットゥーゾは監督を解任。後任にはバレンシアの監督のリリーフとして何度も登板しているボロ・ゴンザレスが就任した。
マドリーのベースになったのは4-3-3の形。まず目立っていたのは縦方向の動きである。特に顕著だったのは右サイド。2トップの脇に落ちるモドリッチのところから攻撃を開始する。右のワイドにはナチョが開き、ハーフスペースのやや内側のあたりからアセンシオが飛び出す。マドリーが最初に迎えた決定機はこのアセンシオの飛び出しからのものだった。
左サイドではベンゼマの流れる形からズレを作り出していく。ワイドに張るのはヴィニシウスかカマヴィンカのどちらかで、セバージョスはエリアの中への意識が比較的強かった。
マドリーのポゼッションは不定形で誰がどこを使うかの基準がわかりにくい。基本は少なくとも何人かはどこにいるかが規定されていることが多いのだが、特に中盤から前の自由度は非常に高く、それでいてバランスは崩れないので守る方は非常に守りづらそうである。
人数構成としてはどちらかというとビルドアップに人を置く形が多く、後方に5~6人は常時滞在している。前線は全てのレーンを埋めず、空いているゾーンもかなりあるが、ボールサイドのいくつかのレーンとPAを抑えることで攻略に挑む。
バレンシアはバックラインのサイドへのスライドを迷いなく徹底していたので、マドリーの出してきた基準に対してはきっちりとリアクションを提示できたといっていいだろう。前半に決定的なピンチは少なく、先に挙げたアセンシオの抜け出しと、足を滑らせて対応が遅れたヴィニシウスの決定機くらいのものだ。
そういう意味ではバレンシアの振る舞いも決して悪いものではなかった。バックラインからの繋ぎもそれなりにできていたし、カバーニを基準にするポジションチェンジもレアル・マドリーほど変幻自在ではなかったが、それなりに魅せることが出来ていた。ミリトンにカードを出させたようにカウンターではムサも効いていた。
互いに守備が堅くなかなか決定機を迎えることができないジリジリとした前半。マドリーは前半終了間際にミリトンが負傷交代してしまうなどやや不穏な感じもちらついている。そうした中でマドリーはポゼッションにより、バレンシアにボールを奪わせず、安全第一でボールを動かすことが出来ていた。
迎えた後半、マドリーはクロースが最終ラインに落ちる形を作りながら3バック化。前半は片側のSBだけを上げる形で幅を取っていたのだが、後半はカマヴィンガもカルバハル(ミリトンと交代でイン)も高い位置を取りながらボールを動かしていた。
前半のマドリーはバレンシアを縦に揺さぶるイメージだったけど、後半は横に広げるイメージ。これによりバレンシアのバックラインのスライドに迷いを生じさせる。
先制点のきっかけとなったのは右サイドに流れながら深さを作ったベンゼマの動き。入れ替わるようにインサイドに入っていったアセンシオがおなじみの角度から無回転気味のミドルを叩き込んで先制する。
マドリーは畳みかけるように追加点を奪う。カウンターで独走したヴィニシウスが落ち着き払ったフィニッシュで流し込み、先制点の2分後に突き放すゴールを決めて見せた。前節は決定力に泣かされただけに今回の一発回答は名誉挽回といえるだろう。
追いかけるバレンシアは2ゴールで一気に苦境に。そのうえ、ガブリエウ・パウリスタの退場で数的不利になると、そもそも感じられなかった得点の気配がさらに息をひそめることになってしまった。
マドリーはチュアメニの試運転を行うなど、残りの時間は悠々と過ごした印象。ただ、ミリトンに続き、ベンゼマに負傷交代の疑いがあるのか気がかりである。
それでも新監督初陣となったバレンシアに力の差を見せての完勝は見事。完封勝利で勝ち点3を積み上げた。
ひとこと
後半の幅を使う方向への調整は見事だが、やはり負傷者は気がかり。使える選手から使ってもそれなりに強そうなのは救いだけど。
試合結果
2023.2.2
ラ・リーガ 第17節
レアル・マドリー 2-0 バレンシア
エスタディオ・サンチャゴ・ベルナベウ
【得点者】
RMA:52‘ アセンシオ, 54’ ヴィニシウス
主審:アルベロラ・ロハス