Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第19節
2023.7.1
名古屋グランパス(3位/10勝5分3敗/勝ち点35/得点25/失点16)
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川崎フロンターレ(10位/7勝4分6敗/勝ち点25/得点21/失点19)
@豊田スタジアム
戦績
近年の対戦成績
直近5年間の対戦で名古屋は3勝、川崎は5勝、引き分けが3つ。
名古屋ホームでの戦績
直近10戦で名古屋の2勝、川崎の5勝、引き分けが3つ。
Head-to-head
- 名古屋は川崎とのリーグ戦4連敗を食い止め、直近2試合で無敗(W1,D1)
- 名古屋が勝利すれば2011年以来12年ぶりのシーズンダブル。
- しかし、直近5試合で川崎が名古屋ホームで負けたのは1回だけ(W1,D3)
- 名古屋ホームでのこのカードのうち、決着がついた直近6試合はいずれも勝ったチームがクリーンシートを達成している。
スカッド情報
- 酒井宣福は左ハムストリングの肉離れで負傷離脱中。
- 丸山祐市は左膝内側即副靭帯損傷により離脱。
- 野上結貴は前節の東京戦で負傷交代。
- 米本拓司は累積警告による出場停止。
- ジェジエウは左膝外側半月板損傷により長期離脱中。試合形式のトレーニングには復帰。
- 田邉秀斗は左膝側副靭帯損傷で長期離脱。
- マルシーニョは左太もも裏の肉離れにより3ヶ月の離脱。ランニングを開始。
- 小林悠は右ハムストリングの肉離れにより6週間の離脱。
- レアンドロ・ダミアンは前節の浦和戦に不在。
- 小塚和季は浦和戦の退場により出場停止。
予想スタメン
Match facts
- 前節の敗戦でリーグ戦の連勝が4でストップ。
- リーグ戦で連敗になれば2022年5-6月の広島戦、浦和戦以来。
- 今季敗れた3つのリーグ戦はすべてアウェイゲームで無得点。
- 横浜FMと並び今季ホームで負けていない2つのチームのうちの1つ。
- 今季先制した公式戦は13試合負けなし(W11,D2)。
- 川崎とのホームゲームで長谷川健太監督のチームが勝利したのは2014年が最後。以降の8試合は未勝利(D3,L5)
- 町野修斗と並び、キャスパー・ユンカーは今季最も枠内シュート(27)を放っている選手。
- マテウス・カストロは川崎相手に3得点を決めているが、まだホームゲームで得点を決めたことがない。
- リーグ戦では3試合無敗でこの間の失点は1。
- しかし、アウェイでのリーグ戦は3試合勝ちがない。
- 現在のテーブルのトップ5相手にはここまで5試合で未勝利(D3,L2)
- 直近4試合のリーグ戦の勝利はいずれもクリーンシート。
- ここまでリーグ戦で5人の退場者を出しておりリーグ最多。
- 川崎の2019-2022年の4年間に出した退場者の数と同じ。
- 直近4試合の名古屋戦での勝利はいずれもブラジル人選手が得点を決めている。
- ジェジエウ(3得点)、レアンドロ・ダミアン(2得点)、マルシーニョ(1得点)。いずれも前節ベンチ外。
予習
第16節 C大阪戦
第17節 福岡戦
第18節 FC東京戦
展望
3バックを軸に考えるのならば
横浜FM、神戸との首位争いという構図は中盤戦になっても継続。固定メンバーで組むことが多い名古屋にとってはこの夏を乗り越えられるかが正念場になるだろう。ここで失速をしなければ久しぶりに終盤までタイトル争いに食い込めるシーズンも見えてくる。
今季の名古屋の基本システムは3バック。この試合では丸山の離脱や野上の負傷交代などCBの人員に怪しさがあるのは確かだが、SBというよりはWBというキャラクターが多いことを踏まえて、ひとまずは3バックでロジックを組んでいくこととしたい。
3バックという前提を崩さないのであれば、陣形の変化があるのは3トップのところ。非保持において3トップをフラットに並べる形と2トップ+トップ下のマテウスという形の2種類がある。川崎を相手にするチームはまずはシミッチをどうするかから守備を組むことが多いので、2CBとアンカーを両方抑えやすい2トップ+トップ下を採用する可能性が高いと読む。
ボール保持においてはそこまでこの布陣は関係がない。手早く進むことができればまずはそのルートを優先。カウンターでの前進から一気に3トップ+森下で手数をかけずにゴールに向かう。
ただし、相手の帰陣が間に合ったときはこの限りではない。サイドからのボール循環で手数をかけて崩しに行く。無理に中央に刺しに行かないあたりはボールの失い方は気にかけているのだろう。ユンカーへのロングボールを除けば中央を使った崩しはそこまで優先されていない。
サイドでの前進は3CBが相手の2トップの脇からキャリーし、大外でのWBのオーバーラップから1on1を作る形が基本。ハーフスペースの裏抜けも積極的に狙っており、この辺りは浦和や広島と同じである。
だが、名古屋が一味違うのはこのサイドの裏抜けをフリに使えること。浦和や広島はこの裏抜けが本丸だったが、むしろ名古屋はこの動きを釣りにすることが多い。サイドに抜けた選手で中央のスペースを開けると、そこからポストが得意なユンカーやミドルシュートや逆サイドへの展開ができるマテウスが待ち構えており、ここから薄いサイドを狙っていくアクションができる。
エリア内での密集打開はあまり得意ではないが、薄い場所を作ってそこを活用するボールの動かし方はできる。加えて、セットプレーでの得点力も高いので、直近の相手に比べると押し込まれた時に守り切る難易度はむしろ高いといっていいだろう。
名古屋の非保持は基本的には相手に持たせる意識が強いが、どこまで相手についていくかは個人の裁量に任されている感がある。そのため、CFがサイドの守備に出ていくこともあれば、CHが敵陣まで出張ってプレスをかけることもある。無理ならステイをする。
特にCHはその部分の判断を米本と稲垣という経験豊富なコンビにゆだねている感じがする。彼らへの信頼の高さもまた、前線が自由にプレスをかけていい理由の1つになるだろう。
ただし、先行することができたらこうしたリスクは基本的には排除。ブロックを組みながらの防衛戦がベースになる。ボックスの守備は彼らの十八番。ランゲラクを中心とした牙城を崩すのは非常に骨の折れる作業になる。
ハイプレスの取り扱いに注目
どんな試合でも先制点は大事だが、こと名古屋戦は特にその要素が強い。先制を許せば強固なブロックを相手に得点を取る手段を思案する必要がある。
今の川崎が強引に点を取る手段は2トップ化+後方のオーバーラップ強化という人員増がベースになる。マテウス、ユンカー、永井のうち2人いればカウンターが完結できる名古屋に対しては非常に相性の悪い手段。「強引に点を取りに行く」という展開はJ1で最も避けたい相手といっても過言ではない。
ただし、局面を見れば川崎にも十分通用する要素はある。まずはボール保持。C大阪戦での名古屋の2点目までの流れのように枚数を合わせたハイプレスもレパートリーにないわけではないが、前線の層が厚くないことを踏まえると、常時このプランを採用することはないだろう。
基本的にはボールを持たせる中で枚数を合わせきらないながらもCHがスイッチを入れたプレスをかけてくる流れになると読む。よって、川崎からすると浦和戦と似たロジックは成立する。後方で横幅広くボールを回し、空いた中央でCHがフリーになる動きである。
名古屋は浦和よりはプレスでCHが出ていく意識は強いが、川崎が保持で浦和のCFの横幅を広げておけば、捕まるリスクも出てこないでギャップができるリスクも高まる。米本に代わってCHとしてプレーする長澤は資質的には十分この役割はこなせると思うが、試合勘の鈍りがダイレクトに効くところなので、判断にギャップが出る可能性はある。
川崎のキーマンは大島だろう。C大阪が名古屋相手に決めた1点目の香川のように縦パスで攻撃のスイッチを入れるアクションを期待したい。大島はそれができて初めて復調の兆しが見えたということができるレベルの選手だ。
できればボールを受ける前線も家長以外に収まる選手が欲しい。中谷という難しいマッチアップなのでダミアンが間に合ってほしいが、宮代にも踏ん張ってほしい部分だ。
ブロック守備で川崎が守る流れは先に述べたように浦和と広島相手よりも難易度は高い。中央の選択肢はマテウスを消すことでかなり削れるので、まずはそこをきっちり意識することだろう。ボールサイドじゃないCHのスライドできっちりと同サイドに追い込む形を作りたい。
難しいのはハイプレスで押し込むチャレンジをどこまでするか。川崎の理想は自陣からの保持での前進+FC東京のようにハイプレスで前線の起点をつぶし続けてのずっと俺のターン!の流れ。だが、マルシーニョがおらず陣地回復がおてがるではない川崎にとってはハイプレスは押し込む流れには必須。
しかしながら、直近の試合はローブロックを軸に粘りながら勝ち点を拾っていく展開だった。名古屋は浦和に比べるとバックラインのプレス耐性は怪しいのでハイプレスをやる価値は十分にあるだろう。成功すれば浦和戦で感じた後ろに重い陣形ゆえのスケールの小ささ問題には光が見えることになる。
スケールの小ささ問題に取り組むか、それともこれまでの文脈重視でブロック守備+カウンターをベースとするか。名古屋戦は選ぶ方向性にも注目が集まる一戦となるだろう。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)