押し付け合いをセットプレーで制する
横浜FMと神戸と三つ巴の上位争いを繰り広げている真っ最中の名古屋。今節の相手は5月3日のFC東京戦以来、リーグ戦では一か月以上勝利から遠ざかっている福岡である。
名古屋は3バックがフラットに広がる形でスタート。2トップ脇からCBがキャリーする形で前進を狙っていく。福岡はSHが縦にスライドすることによって、時折ふさぎに行く動きもあったが、基本的にはボールを持たせてOKの構え。
よって、名古屋はボールを持つ時間が増える流れとなった。起点となるのは大外。そこからハーフスペースの裏抜けからの攻略に挑む形で名古屋はエリア内に向かっていく。
ただし、これは福岡が先読みで阻止。だが、名古屋はバイタルで逆サイドに展開できるマテウスやポストで密集打開の手助けができるユンカーがいる。ハーフスペースの裏抜けをフリに、この2人を使うことができれば、十分に怖さは見せられる仕様となっていた。
そうした陣形のズレはなるべく作りたくない福岡。そのためには名古屋のバックラインに3人目のSHがつり出されないことが重要。この辺りは縦のスライドも含めて福岡は十分に対応ができていた。
対する福岡はボールを奪ったら早々にトップに当てていく形。右サイドからは山岸が抜け出すアクションを行うなど、前線の動き出しを軸とした戦い方を見せていく。手数をかけた攻撃はあまり効かない印象だったので、名古屋を手前に引き出してカウンターから少ないステップで攻略できるかどうかがキーとなる展開だった。
先制点を決めたのは名古屋。押し込む機会の多さを利用してハンドを誘発。これをマテウスが決めて先行。押し込んで攻め込むチームのアドバンテージを生かした形でリードを奪う。
ビハインドとなった福岡は後半ボールを持ってのスタート。今度は名古屋のブロックを打開できるかどうかのチャレンジを福岡が行うという流れの展開になった。
サイドを効率よく封鎖する名古屋に対して苦戦しながらも福岡も見事にこの課題をクリア。右サイドで粘った佐藤が奪取したPKを自ら決めて同点に追いつくことに成功する。
押し込んではPKという流れで得点を手にした両チーム。勝負を分けたのはセットプレーだった。CKからファーに待ち構えていたユンカーがネットを揺らして再び名古屋が前に出る。
またしても押し込んでの攻略を押し付けられた福岡。右サイドの紺野を軸に打開を挑むがなかなかエリア内の壁が動かずに苦戦する。
ウェリントンや三國といった選手をルキアンと山岸に加えて前線に置き、最後はパワープレーに出た福岡。名古屋はカウンターから3点目を奪うチャンスを何度も迎えたが、仕留めることはできず。
それでも逃げ切りに成功した名古屋。連勝で上位陣を追走する構えをこの試合でも維持することができた。
ひとこと
ボール保持での崩しの押し付け合いという様相だった試合。セットプレーで優位に立った名古屋がよりきっちり押し付けた印象の試合だった。
試合結果
2023.6.11
J1 第17節
名古屋グランパス 2-1 アビスパ福岡
豊田スタジアム
【得点者】
名古屋:45′(PK) マテウス・カストロ, 69′ キャスパー・ユンカー
福岡:65′(PK) 佐藤凌我
主審:川俣秀