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「Catch up Premier League」~Match week 28~ 2023.3.17-3.19

目次

ノッティンガム・フォレスト【14位】×ニューカッスル【5位】

内容にスコアが追いつく結末

 28節はフライデーナイトから開幕。やや尻すぼみの状態になりつつあるノッティンガム・フォレストはホームにニューカッスルを迎えての一戦となる。

 立ち上がりから10分はほぼ一方的な展開だった。ニューカッスルがフォレストを攻め倒す流れだった。中盤でフリーになったギマランイスからサイドの裏にボールを送り込むと、そこからほぼほぼ攻めだるまの状態に。ニューカッスルはフォレストのSBを引き出して背後を狙っていく。

 セットプレーも含めてニューカッスルはいつゴールが生まれてもおかしくない状況。フォレストはボールをろくに持つことができず、自陣からのロングカウンターも狙えない展開が続いていく。10分を過ぎたところでようやくフェリペが縦パスを通せる状態を作ることができたくらいであった。

 それだけに先制点がフォレストに入ったのは意外だった。ロングカウンターの失敗からアイェウが深追いを行い、ボットマンのミスを誘発。先制点を決めたのは今シーズンなかなか活躍のきっかけを掴むことができていないデニスだった。

 ただし、先制点は良くも悪くも流れを変えることはなかった。フォレストはリードを奪っても試合のペースを引き戻せることは一切なかったし、ニューカッスルはやることを変えずにひたすら攻撃を続けていた。

 前半終了間際にニューカッスルは優位をスコアに結びつけることに成功。右サイドの裏を取りながらフェリペを引き剥がし、サイドを破壊して最後はイサク。アクロバティックな同点ゴールで前半のうちに試合を振り出しに戻すことに成功した。

 ニューカッスルは後半頭から左サイドにアンダーソンを投入。サン=マクシマンの交代の要因はイマイチよくわからないが、アンダーソンが左サイドできちんと機能するかは後半もニューカッスルが相手を押し込めるかどうかの指標になる。

 アンダーソンは見事にその期待に答えたと言っていいだろう。サイドからきっちりと押し下げる動きを繰り返しながら押し込んでいく。右サイドの抜け出しから粘るイサクからアンダーソンという流れでネットを揺らす活躍もこれはオフサイド。チャンスを活かすことができない。

 押し込みながらチャンスを作るも、なかなか優位を得点に結びつけることができないニューカッスル。終盤はフォレストがそこそこに持ち直すことができたことも膠着を促進する。

 しかし、終盤にフォレストには決定的なミスが。ニアカテが不用意に上げてしまった手にボールがあたり、ハンドの判定。「やってしまった」と俯くニアカテの姿はどんな言葉よりも雄弁だった。このPKをイサクが決めて試合はニューカッスルが土壇場で勝ち越しに成功。内容に結果が追いつき、ニューカッスルが連勝を飾ることに成功した。

ひとこと

 ジョエリントンの不在を連勝で乗り切ったのは大きい。CL出場権争いに向けて一歩も引かない構えで終盤戦に臨む。

試合結果

2023.3.17
プレミアリーグ 第28節
ノッティンガム・フォレスト 1-2 ニューカッスル
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:26′ デニス
NEW:45+2′ 90+3′(PK) イサク
主審:ポール・ティアニー

ブレントフォード【8位】×レスター【16位】

難所で健闘の勝ち点1

 ここまでの勢いで言えば対照的な両チーム。無敗記録は止まったとはいえ、一桁順位を守り続けることができているブレントフォードと残留争いに巻き込まれている真っ最中のレスターとの対戦である。

 立ち上がりはブレントフォードのセットプレーからスタート。押し込みながらレスターのゴールを脅かすスタートで試合は幕を開ける。どちらのチームもボールを持つ際はまったりとした立ち上がりとなった。ブレントフォードは下がるイェンセンが自由になり、ショートパスを繋ぎながら攻略方法を探していく。

 レスターは左サイドのカスターニュが絞りながらゲームメイクを行っていく。これまでゲームメイカーの色が濃いわけではなかったカスターニュが起点作りに励む姿はなかなかに興味深かった。

 低い位置にブロックを組む、そしてインサイドへの縦パスには厳しく咎めにいくという姿勢は両チームに共通。よって、コンパクトなスペースに縦パスを刺す以外のアクションをボール保持側は見つける必要があった。レスターのスタンスはボールを外に回しながら1枚ずつ丁寧に剥がしていくこと。特に左サイドに人数をかけて右に展開することで、テテのアイソレーションからエリア内に迫っていく形は積極的に使っていた。

 ブレントフォードの武器は先に挙げた通りセットプレー。押し込むことで自動的に機会が与えられる部分が武器なのはデカい。サイドのスローインがイェンセンのロングスローによってセットプレーに早変わりする。

 外からシンプルにクロスを入れ込むブレントフォードは先制ゴールをゲット。セットプレーからのイェンセンのゴールで前に出ることに成功する。

 リードしたブレントフォードは後半も似たスタンスでスタート。ジリジリとセットプレーから相手のブロックを削っていくような振る舞いを行う。レスターはプレッシングを強化して後半の入りとなった。

 レスターの同点ゴールはあまり前触れがない形だった。デューズバリー=ホールによる左サイドの破壊から、引くマディソンがボールを受けて、抜け出すバーンズへのラストパスで中央を破壊。同点ゴールを後半頭に手にする。

 この同点ゴールは試合における分水嶺となる。自陣側に引き込むビルドアップも自信満々にこなすようになったし、深い位置でのポイント作りも順調。ダカの安定したポストワークから広いサイドで勝負を仕掛ける流れはここ数ヶ月のレスターではなかなか作れなかったスムーズな攻略であった。

 ブレントフォードも再度押し込んでセットプレーで叩く試みをしていたが、レスターのカウンターへの対応の苦慮も目につく。結果的に彼らが払った代償はバプティストの退場であった。

 終盤はレスターがだいぶ引き戻した試合だったが、最後まで勝ち越しゴールを奪うことができず。難所で意外な健闘を見せたレスターが勝ち点1を手にすることに成功した。

ひとこと

 難所での勝ち点1は大きいが、レスターは終盤の内容を考えれば勝ちも見えていたことを考えれば悔やまれる部分もある。

試合結果

2023.3.18
プレミアリーグ 第28節
ブレントフォード 1-1 レスター
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:32′ イェンセン
LEI:52′ バーンズ
主審:ダレン・ボンド

サウサンプトン【20位】×トッテナム【4位】

フリーズで2点のリードを溶かす

 この試合はいきなり負傷者からスタートというなかなか両チームにとって苦い立ち上がりとなった。ウォーミングアップから気になっていたというリシャルリソンが5分と経たないうちにピッチを去ると、直後のプレーでベラ=コチャップが腕を負傷する。

 サウサンプトンの保持の文脈はここ数試合のものを引き継いだものだった。小気味いいパスワークで縦パスとリターンパスを繰り返しており、オールド・トラフォードで見せた揺さぶり方と同じスタンスを活用している印象だった。ラビアの配球力を生かせるいいやり方のようにも思う。

 サウサンプトンが作り出すアップテンポな試合のリズムはスパーズにとっても悪くないものだった。右サイドから裏抜けするソンを活用してのチャンスメイクが目立っていた。

 右サイドはリシャルリソンに代わって入ったクルゼフスキのフィーリングが良さそうな感じ。エンドライン側を抉るようなドリブルは久しぶりに見られた印象で、キレの良さが光っていた。その外側を回るポロもクルゼフスキを警戒する恩恵を受けており、プローの外からシュートチャンスを迎えていた。

 30分台に再び両チームに負傷者が発生。無理なく代わりの選手をポジションに当てはめることができたトッテナムに比べれば、メイトランド=ナイルズをCBに入れざるを得なくなったサウサンプトンの方が苦しい状態に追い込まれた印象だ。

 前半終盤には右の大外を回るポロがようやく先制点をゲット。それ以降の時間帯はやたらバタバタして自陣に釘付けになったスパーズだが、なんとか前半をリードで折り返すことに成功する。

 後半頭に早々にサウサンプトンは追いつくことに成功。右サイドのラビアからウォルコットが裏抜け。アダムスが折り返しをポールにぶつかりながら流し込む。このゴールを皮切りにサウサンプトンが攻勢に打って出る。ウォード=プラウズのFKなどトッテナムのゴールが脅かされる場面が続くように。トッテナムはプレスを受けると根を張ってしまったようにフリーズ。前半の動きが嘘のように保持ができなくなってしまう。

 しかし、この時間をなんとか凌いだトッテナム。正気を取り戻しボール保持に邁進し、右サイドのクルゼフスキからのクロスをケインが決めて勝ち越す。続く74分にはペリシッチがこぼれ球をミドルで沈めて追加点。一気にトッテナムがリードを広げる。

 だが、セインツは3枚替えでプレスに打って出ると再びトッテナムはフリーズ。ウォルコットの反撃ゴールで勢いに乗ると、交代で入ったマーラやスレマナがトッテナムの守備陣を切り裂いたエリア内に入り込む。

 なんとか弾き返す時間帯が続くトッテナムだが最後までは粘りきれず。後半追加タイムにサールがPK判定を取られてしまい、これをウォード=プラウズが沈めてサウサンプトンが同点に追いつく。

 終盤に2点差を溶かしてしまったトッテナム。CL出場権確保に向けて手痛いドローを喫した。

ひとこと

 攻撃陣は調子が出てきたように思うが、プレスを受けると突然フリーズする悪癖はなんとかしたいところ。

試合結果

2023.3.18
プレミアリーグ 第28節
サウサンプトン 3-3 トッテナム
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:46′ アダムス, 77′ ウォルコット, 90+3′(PK) ウォード=プラウズ
TOT:45;1′ ポロ, 65′ ケイン, 74′ ペリシッチ
主審:サイモン・フーパー

アストンビラ【11位】×ボーンマス【18位】

埋めて以降は勝ち筋なし

 アストンビラがボールを持つ形でスタートした立ち上がり。バックラインは自由にボールを持つことを許され、ボーンマスはライン間をコンパクトにしてタイトなブロックを形成という流れである。

 よって、ボール保持側に回ったビラは配置である程度工夫を行う必要があった。例えば、序盤に見られたブエンディアとベイリーで内外レーンを入れ替えることは相手の配置を動かすためのアクションだったと言えるだろう。

 保持で見せたアクションは早々に実ることになる。きっかけになったのは低い位置まで降りてくるドウグラス・ルイス。対面のロズウェルを引きつけて剥がすとそのままドリブルをスタート。前にボールを進めるズレを作ると、そこから右サイドに振り、最後は再びルイスがゴールをゲット。ミドルゾーンに構えるボーンマスのブロックに7分で穴を開けることになる。

 ボーンマスはこれを受けて高い位置からのプレッシングを解禁。マンツー色を強くしながら相手を追いかけ回すフェーズに移行する。

 ボーンマスに必要だったのはボールを持つ機会であった。逆に言えば、ボールを持つ機会さえ保証されればボーンマスは自陣からでも十分に攻撃の機会を得ることができていた。保持時は3-2-5に変形するボーンマス。4-4-2のアストンビラに対してズレを作り、大外から裏をとる形でビラのバックラインを一気に押し下げる。

 ビラは対応に苦戦していた。彼らの攻撃機会もあったため、ボーンマスペースと間では言わないが、試合はどちらに転んでもおかしくない時間帯が続いたと言えるだろう。

 後半、動いたのはアストンビラだった。ラムジーを最終ラインに落とす形で5バックを形成。ボーンマスの形成する5レーンを封鎖する。ボーンマスの大外のレーンはズレを作ることで生きており、質的優位を作り出せていたわけではない。よって、レーンの封鎖はダイレクトに効いたと言えるだろう。

 ボーンマスは左サイドをアンソニーからセメンヨに代えるなどの工夫を見せてはいたが、なかなか優位を取り戻せず。試合はビラが再びペースを握る。

 そして、試合を決めたのはラムジー。左サイドのドリブルからエリア内に侵入すると自らゴールをゲット。後半のボーンマス封じのキーマンとなったラムジーが攻撃面でも見事に違いを作り出して、ビラに決定的な2点目をもたらすことに成功する。

 これ以降はほぼビラのワンサイドゲーム。相手陣内にボーンマスを釘付けにしたアストンビラは終盤にラッシュで攻め立てると、決定的な3点目をゲット。1点差の時間帯が長かったが、最後はビラが突き放しての完勝となった。

ひとこと

 力の差は明確だった試合だったと言えるだろう。とりわけビラが5レーンをきっちり埋めた時間帯以降はボーンマスには勝ち筋がなかったように見える。

試合結果

2023.3.18
プレミアリーグ 第28節
アストンビラ 3-0 ボーンマス
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:7′ ルイス, 80′ ラムジー, 89′ ブエンディア
主審:ロベルト・ジョーンズ

ウォルバーハンプトン【13位】×リーズ【19位】

荒天での乱戦を制して貴重な勝ち点3

 この週末は悪天候の試合が多かったが、モリニューの荒天ぶりは他の会場と比べてもワンランク上のものだったと言えるだろう。この天候が試合を象徴するようにやや乱戦模様の内容だった。

 リーズの非保持のスタンスはいつもと大きくは変わらない。ウルブスはボールを持ちながら無理なくゲームメイクをすることができていた。ハイライトレビューではプレスに出ていけないリーズの振る舞いはこれまであまり好意的に捉えることができなかった。

 しかしながら、この試合では保持でいい意味での兆しを見ることができた。押し込まれても少ない手数で敵陣に押し返すことができるのである。バンフォードへのロングボールもそうだし、中盤が動きでフリーになった流れからの左右への展開も同じ。プレスがかからずに押し込まれてしまった部分を巻き返すかのような保持を行っていく。

 先制点を得たのはリーズ。サイドから相手と対峙し、1on1で相手を押し下げることに成功したニョントがマイナスの折り返しからハリソンがミドルで先制点をゲットする。

 先制点を手にしたリーズはより一層撤退色を強めてウルブスの攻撃を受けるように。ポデンスが左サイドから迎えた決定機はニョントが先制ゴールを導いた一発と似た角度。ポデンスは自らのシュートまで持って行ったが、ゴールまで持っていけなかったことはリーズとの違いになってしまった。

 しかしながら、撤退して引きこもるリーズに対して大外から壊していきたいというプランを着々と実行していくウルブス。サイドに展開する形まではウルブスは楽々と持っていけたため、ポデンスとネトがどれだけ切り裂くことができるかが大きなポイントとなっている印象を受けた。

 中盤中央では隙あらばネベスのミドルも。サイドに拘らず中央からも崩しにトライすることで少しずつリーズの守備網の破壊にトライする。

 リーズは後半頭にセットプレーから追加点。展開に逆らうようにエイリングのゴールからリードをさらに突き放す。

 2点のビハインドを背負ったロペテギはトラオレをSBにおくウルトラCを発動。リーズはクリステンセンをSHに置きウルブスの保持に噛み合わせるような形で対抗する。

 そのクリステンセンが3点目に絡むのだから試合は面白い。左サイドからの攻撃を引き取る形でゴールを生み出し、守りに入る一手がさらなるリードを広げることになった。

 それでも終盤にウルブスは粘りを見せる。裏のケアに飛び出したメリエの姿をみたジョニーがロングシュートから反撃の狼煙をあげると、ここから試合は裏を狙い放題となるオープンな展開に。スピーディに押し込まれる機会が増えたリーズは徐々にピンチが増えていくことになる。クーニャの得点はやや強引だったが、これだけゴールに迫れれば十分に引き起こせる類のものだった。

 これ以降はウルブスが押し込んで、リーズがカウンターで跳ね返す展開に。アップテンポな展開の中でジョニーのタックルが深く入ってしまう事故が発生。これにより、ウルブスは10人での戦いを余儀なくされる。

 10人のウルブスを見て、リーズは再びプレスをスタート。敵陣でのボール奪取からロドリゴが仕上げの4点目を手にする。

 主導権が入れ替わる乱戦を制したのはリーズ。下位チームがなかなか勝ち点を手にできない今節の中で貴重な勝ち点3を手にすることに成功した。

ひとこと

 リーズはバンフォードを軸とした少ない手数での前進が刺さったのは好材料。欲を言えば11人相手でも刺さるようなハイプレスを仕掛けていきたい。

試合結果

2023.3.18
プレミアリーグ 第28節
ウォルバーハンプトン 2-4 リーズ
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:65′ ジョニー, 73′ クーニャ
LEE:6′ ハリソン, 49′ エイリング, 62′ クリステンセン, 90+7′ ロドリゴ
主審:マイケル・サリスベリー

チェルシー【10位】×エバートン【15位】

保持での平定は難しい

 未勝利沼から脱出後、連勝を飾ったチェルシー。ドルトムントも下し、徐々に自信を取り戻しつつある。

 この日も復調のトレードマークの3-4-2-1を採用。気になったのはエバートン側の対応である。彼らはベースとして4-5-1で組まれることが多い。だが、この試合においてはドゥクレがトップにスライドし、2列目が4枚で組まれるケースが非常に多かった。

 前から積極的なプレスで行こう!という意識を持っているのはわかる。だが、エバートンのそのプレッシングの意識がうまく働いているようにも思えない。3-4-3に対して4-5-1→4-4-2へのシフトは逆効果だろう。ドゥクレが前に出て行ってもチェルシーのバックラインに対して枚数を合わせることはできない。

 その上、エバートンはチェルシーの前進を助けているWBに蓋をするのも遅れてしまう。よって4-4-2への変形によってあまりエバートンにとっていいことが起こらない格好になっている。

 エバートンは徐々にプレッシングを自重するようになってくるが、そうなると今度はチェルシーの前線がエバートンのサイドの裏を狙い撃ちにする。フェリックスは左右を動き回りながらエバートンの陣形を押し下げるように。エバートンはとにかく帰陣を早めることでエリア内を固めることで対応する。

 序盤は裏抜けのギャップからチャンスを作れていたチェルシーだったが、徐々にエバートンが下がった形がデフォルトになり膠着。かといってエバートンが特にチャンスを作れるわけでもなかったため試合は小康状態に。スコアレスのままハーフタイムを迎える。

 後半の立ち上がりは打って変わって撃ち合いの様相。エバートンにも十分にチャンスはある展開になったが、その分チェルシーにもスペースがある状態でボールが前に運べるようになる。

 この展開の恩恵をまず受けたのは動きが欲しかった方である。WBのラインブレイクに徐々に無理な対応が続いていたエバートンのバックライン。エンソの裏へのロブパスでラインを下げてしまうエバートンのDFに対して空いたバイタルに入り込んだフェリックスが技ありのゴールでようやく先手を奪う。

 エバートンはそれでもタイトにチェックをしながらボールを追いかけ回す展開を選択。チェルシーは引き続き後方にスペースがある状態で攻撃をできることになるが、エバートンの猛烈な勢いを保持で落ち着けることもできなかった。

 その結果、セットプレーから同点ゴールを奪ったエバートン。もはや、エバートンのセットプレーのトレードマークになりつつある「ファーのターコウスキ」からの折り返しをドゥクレが決めて追いつく。

 振り出しに戻った試合だったが直後にチェルシーはジェームズがPKを獲得。ハフェルツがピックフォードの動きを見つつ、冷静に流しこみまたしてもリードを奪う。

 エバートンは終盤はやや焦り気味だった。強引に裏へのパスを狙ってはゴールキックになり、相手のボールからリスタートを許すという悪循環に。このままのスコアで終わるかと思われた90分手前に試合は動く。得点を決めたのは途中交代のシムズ。裏抜けからクリバリを剥がし切り、貴重な同点ゴールを奪う。

 終盤に追いつかれて逃げ切りに失敗したチェルシー。公式戦の連勝で積み重ねた勢いは一旦落ち着いてインターナショナルブレイクを迎えることになる。

ひとこと

 前進するのはスムーズになったチェルシーだったが、展開を落ち着かせるのは難しかったチェルシー。泥に引き摺り込むのがうまいエバートンに終盤に絡め取られてしまった。

試合結果

2023.3.18
プレミアリーグ 第28節
チェルシー 2-2 エバートン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:52′ フェリックス, 76′(PK) ハフェルツ
EVE:69′ ドゥクレ, 89′ シムズ
主審:ダレン・イングランド

アーセナル【1位】×クリスタル・パレス【12位】

中2日で水準突破

 レビューはこちら。

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 PK戦でELの舞台から去ることになったアーセナル。中2日の試合はホームで監督解任初陣を迎えるクリスタル・パレスとの一戦。バタバタ感でいえばアーセナル以上の相手である。

 パレスは時間がない中できっちりとアーセナル対策を敷いていた感がある。立ち上がりは中盤をマンツーで捕まえながらホールディングにプレッシャーをかけていく。アーセナルはこれを回避して敵陣までボールを運ぶとパレスは素早くリトリートにシフトする。

 トライして無理だったら撤退するというスタンスの方がとりあえず撤退!というプランよりは個人的には優れていると思うし、撤退する勇気をきちんと持ち合わせているのにも好感が持てる。もちろん、序盤の振る舞いでパレスにプレスを諦めさせたアーセナルの振る舞いも褒められてしかるべきである。

 パレスは自陣深くでもきっちりとブロックを形成。CHを最終ラインに落とす5-3-2のような形でアーセナルのハーフレーンを埋める。ハーフスペースに走り込む選手をCHが潰すのがこのシステムのミソで、それに合わせて前線の選手たちは1列ずつ下がりながら守備の重いタスクを背負ってのプレーとなる。

 アーセナルはマークが空きやすかったトーマスを軸に左右に薄いサイドを作りながら、パレスのCHのスライドが間に合わないように揺さぶりをかける。これにより敵陣深くまで進撃する機会が増えたアーセナル。即時奪回の波状攻撃から右サイドを決壊に追い込み、逆サイドで1on1を制したマルティネッリが先制ゴールを決める。

 2点目はさらにえぐい崩し。両サイドでハーフスペースの裏を攻め込み、エリア内にスペースを作ると、最後はサカがフィニッシュ。序盤はチャンスの兆しがあったパレスのロングカウンターもこれだけ押し込み続けられてしまえば、発動するのは無理である。

 後半もほぼペースはアーセナル。トロサールが生み出した縦方向のギャップを生かしたジャカが3点を奪った時点で試合の大勢は決まる。パレスはセットプレーからシュラップが得点を決めた時間帯には反撃のチャンスがあったが、交代出場のティアニーのアシストからサカがゴールを決めると、そうした勢いも鎮火する。

 見事なリバウンドメンタリティを見せたアーセナルが監督ブーストを狙ったパレスを完全粉砕。優勝に向けての再始動に成功した。

ひとこと

 パレスの守備ブロックはダメな日のアーセナルだが十分に封じることができる水準のものだったと思うが、中2日でのトーナメント敗戦後でもこの日のアーセナルは見事に跳ね返してみせた。

試合結果

2023.3.19
プレミアリーグ 第28節
アーセナル 4-1 クリスタル・パレス
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:28′ マルティネッリ, 43′ 74′ サカ, 55′ ジャカ
CRY:63′ シュラップ
主審:スチュアート・アットウェル

今節のベストイレブン

リバプール【5位】×フラム【10位】

わずかなミスから逃げ切り成功し、また4位に忍び寄る

 奇跡のCL出場権確保に向けて連戦連勝を続けるリバプール。今節はトップハーフ確保が濃厚なフラムをホームに迎えての一戦である。

 試合はリバプールのボール保持が中心となるスタート。もはやおなじみとなった形でアレクサンダー=アーノルドがインサイドに絞る3-2-5にトライしていく。この動きに対してはフラムはやや迷いが見られた。中盤をケアを優先する形にするためにルキッチがケアニーと並列なポジションまでプレスに出て行くかどうか思案していた。

 ルキッチは結局は自重が優先ということに落ち着いた様子。フラムのプレスはトップが中盤をケアする無理のない形で決着する。

 リバプールのボール保持は左右で勝負をかけて深さを作りながらバイタルを生かしていく形。このスペースに後方から飛び出してくるのがアレクサンダー=アーノルド。中央に入ったアレクサンダー=アーノルドにスコアリングの機会を与える形で両サイドから決定機を供給する。

 押し込むことができればアタッカーは非常に自由なレーン取りを行う。フラムは神出鬼没なリバプールのアタッカーを捕まえにくそうにしていた。もちろん、持ち味であるトランジッションも健在。特に今節はCFがガクポではなくヌニェスなので、こうした縦に動くアクションは非常に多かった。

 対するフラムの後方のビルドアップに対してはリバプールは外切りのプレスから高い位置でプレッシャーをかけていく。しかしながらこの日はアダラバイオから対角のパスと縦パスがバシバシ供給されており、リバプールの高い位置からのプレスはほぼ無効化。ミドルパスでルキッチに落としたり、ウィルソンの抜け出しに合わせたり中距離も遠距離も駆使したパスワークからどんどんチャンスを作っていった。

 両チームともチャンスを作っている状況で試合を分けたのはミスだった。ディオプの軽いプレーからリバプールはPKを獲得。これをサラーが決めて先制点を手にする。この先制点以降は迷っていたルキッチが高い位置から行く方に切り替えたのが印象的だった。。

 後半もリバプールがボール保持でスタート。ライン間でパスを引き出すディアスと自陣でのゲームメイクに奮闘するジョーンズからより落ち着いたポゼッションでのゲームメイクが意識された立ち上がりだった。

 対するフラムもウィリアンとケアニーでポイントを作っては反撃に打って出る。保持に出て行くことに対するカウンター対応ではフラムのバックラインが体を張った対応で防いでいたのは印象的だった。

 チャンスの数は多くはないフラムだが、インサイドのウィリアンは攻撃の起点として機能しそうな予感がしなくもない。よって、リバプールはミルナーを投入し、中央の封鎖に向けて動き出す。

 この交代できっちりとゲームクローズに向かうことが出来たリバプール。ボールを持てるけど動かせない状況が続くフラムを完封し、また4位に忍び寄ることに成功した。

ひとこと

 アダラバイオ、そんなんできたんか!

試合結果

2023.5.3
プレミアリーグ 第28節
リバプール 1-0 フラム
アンフィールド
【得点者】
LIV:39′(PK) サラー
主審:スチュアート・アットウェル

マンチェスター・シティ【2位】×ウェストハム【15位】

先制点のノッチさえ入れば

 優勝に向けて連戦連勝でアーセナルを追い詰めていくマンチェスター・シティ。過密日程ながらもその勢いは衰えを知らず、連勝街道を邁進している、今節の相手はすでに残留の地位を固めつつあるウェストハムである。

 当然シティがボールを持ってウェストハムが撤退守備ブロックを組むものと思われたのだが、実際のピッチ上の光景はやや想像と異なる部分もあった。それはウェストハムが高い位置からのプレスに対して色気を出していたこと。狭いサイドに閉じ込め、縦パスのコースが見えてきたら一気にプレスをかけてとらえていく形を狙っていく。

 そして、相手が下がったらラインを回復するために深追いをするプレスにもシティは積極的に対応。ストーンズが1列前に出て行く形の3-2型に対して思ったよりも動きのある対応でプレッシャーをかけていく。

 シティはバックラインで2列目を引き付けながら、その穴を利用していく形で前進する形でウェストハムのプレッシングを無効化していく。左サイドから押し上げる形で中央のミドルを積極的にはなっていくシティ。だが、ウェストハムもプレスと撤退守備の使い分けが十分でシティにスペースを与えないことに専念する。

 ただし、その分ウェストハムの伝家の宝刀のロングカウンターもシティに見切られている感がある。自陣でクリーンにボールを奪い取り、あっという間に自らの攻撃のターンに移行して押し上げるアクションまでたどり着くことができるのはシティならではという感じである。

 試合は後半早々にセットプレーで動く。先制点を奪ったのはシティ。アケのゴールでついに均衡を破る。

 こうなるとウェストハムは難しい。よりボールを奪い取るアクションを増やさなければ勝ち点を獲れる可能性はなくなってしまうからである。ボールを奪い取りに行くアクションを見せるが当然シティからボールを取り上げることはできない。

 得意のセットプレーから勝ち越しを狙うウェストハムだが、これもまた不発。ボールを奪うこと、つなぐことと苦手なことをずらりと並べられてしまうようになった。

 逆に先制点以降からシティはだいぶ楽になった。ウェストハムは得意な状況ではない部分に追い込まれているし、シティ単体を見てもこうしたオープンな打ち合いは歓迎だろう。のびのびとプレーできるようになったシティはカウンターからのハーランドでさらに追加点を奪う。

 仕上げはフォーデンがダメ押しゴールを決めたシティ。後半は堰を切ったようにどーっと人が流れとなり、ウェストハムを撃破。優勝争いにおいてまた一歩ゴールに近づく1勝となった。

ひとこと

 ウェストハムも流れは悪くなかったが、やはり先制点を奪い取られたとことからだろう。苦手なことを強いられた結果の失速は残念だが、納得感はある。

試合結果

2023.5.3
プレミアリーグ 第28節
マンチェスター・シティ 3–0 ウェストハム
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:49′ アケ, 70′ ハーランド, 85′ フォーデン
主審:ジョン・ブルックス

ブライトン【8位】×マンチェスター・ユナイテッド【4位】

決めれば勝ちのPKを呼んだ終盤の猛攻

 リーグ戦で多くの未消化の試合を抱えているため、5月に過密日程を迎えるブライトン。特にミッドウィークは強豪対決が目白押し。その先陣を切るのがマンチェスター・ユナイテッドとの一戦だ。

 どちらのチームも中盤を積極的に捕まえていく守備でスタート。その上で、敵陣での前線のプレッシングでは両チームの間のスタンスに少し違いがあったように思える。

 マンチェスター・ユナイテッドは中盤できっちりと構えるようなスタート。前からのプレスに制限をかけていくというよりは、受け手を捕まえるような優先度である。

 流れの中で高い位置からボールを捕まえにいくトライも見られたが、捕まえづらく苦戦。ミドルゾーンで構えてボールを奪い、アントニーやラッシュフォードのカウンターからチャンスを作っていく。

 一方のブライトンはより高い位置からのプレッシングからボールを奪い取っていく。ユナイテッドのプレッシングよりは相手のバックラインの時間を奪い取ることができている手応えのあるものだったと言えるだろう。攻撃では三笘が奮闘。FA杯で苦戦したワン=ビサカの相手に健闘し、攻撃の主役を担っていたと言えるだろう。

 時間の経過とともに徐々に両チームはボールを動かす方で工夫が出てくるように。ユナイテッドは前プレの意識が強いブライトンに対して、前線が縦関係を形成することで前進を狙う。レイオフを繰り返してフリーの選手を作ることで徐々に前進のきっかけを作っていく。前からのプレスよりも自陣からの前進の方が効いている感じだった。

 ブライトンはだんだんと対角のパスを駆使するように。マーチがいない右サイドの攻撃は正直連携面でも物足りない部分はあるが、幅を広げながらボールを動かすことができるようになったのはポジティブなポイントだ。

 後半もペースはブライトン。左右にサイドアタックから崩しにかかる。ただ、サイドの崩しは2人組感があったため、押し込んでどうこうよりは少ない手数で一気に仕留める形の方が効果的。ダンク→三笘のパスなどはその一例になる。

 インサイドではウェルベックがポストで暗躍。外に注意が向いたら中央に縦パスという選択肢を突きつけられるのはブライトンらしい。警告を受けてなお潰しに奔走するカゼミーロとのバトルは見応えがあった。

 カウンターからは出て行きたいユナイテッド。低い位置からのロングカウンターはブルーノがダンクに潰されたシーンなどはかなり紙一重の感じがしたが、ブライトンがなんとか踏みとどまっている感じはした。

 押し込む攻撃になった際にはクロスとエリア内の動きが繋がっておらず。ブライトンはインサイドは攻撃の跳ね返しが容易な状況だった。

 より攻撃に手応えがあったブライトンはSBに起用したカイセドを中央に戻して、マーチを右に置いて徐々にいつもの形に戻していく。これにより左右のユニットの再構成に成功したブライトンは攻勢をさらに強めるように。しかし、立ちはだかるのはデ・ヘア。安定したセービングでブライトンのチャンスを阻み続ける。

 セットプレーでの後半追加タイムの猛攻でこの試合で最もゴールに近づくブライトン。ユナイテッドはギリギリのところで凌いだように思えたが、ショウがハンドを犯してしまいブライトンに土壇場でPKが与えられる。

 決めれば勝利というPKキッカーに名乗り出たのはもちろんマック=アリスター。ウイニングショットを見事に沈めることに成功し、勝ち点3を奪い取ることに成功した。

ひとこと

 手に汗を握る終盤のブライトンの猛攻とデ・ヘアとカゼミーロのプライドはとてもよかった。

試合結果

2023.5.4
プレミアリーグ 第28節
ブライトン 1-0 マンチェスター・ユナイテッド
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:90+9′(PK) マック=アリスター
主審:アンドレ・マリナー

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