ショウを起点とした中盤の躍動で逃げ切りに成功
EURO2020のファイナルのカードがEURO2024の予選の初戦で激突。イタリアにとってはワールドカップを逃して雪辱を果たすためのEURO連覇を目標とし旅路のスタートとなる。
どちらのチームもフォーメーションは4バックで中盤を3枚にする形。逆三角形気味に構えるスタンスも両チームの共通項である。
序盤の落ち着かない展開の中で前進をすることが出来たのはイタリア。SBとWGの縦方向へのレーンチェンジで、高い位置までボールを運び、セットプレーを奪い取る。地味ではあるが、ここで先制出来たらイタリアとしては当然大きい。敵陣にボールを運んで先にセットプレーの機会を作れたのはイタリアの方だった。
しかしながら、以降はイングランドがペースを握ることになる。保持においても非保持においてもイタリアの中盤はバレッタが前に出て行く形で2トップ風に変形することが多かった。イングランドはこの習性を生かしてバックラインがプレッシングを引き寄せて、ボールを前に進めることが出来ていた。
前進のキーになっていたのはルーク・ショウ。ベラルディの背後でボールを受けることで自由を享受し、ライン間へのボールの供給役となっていた。ライン間でボールを受けることができればベリンガムが加速装置になれるし、サカやグリーリッシュもインサイドでボールを受けることを狙っていた。
こうして時間の経過とともにイングランドがペースを握る。先制点はセットプレーから。CKからファーサイドでフリーになったケインのシュートの跳ね返りをライスが押し込み先制。早い時間に先手を奪うことに成功する。
劣勢の流れのビハインドを背負うことになったイタリアにとっては苦しい展開。反撃に出たいところだが、ボールの取りどころがちっとも見つからずに苦戦する。バックラインは粘り強くイタリアのプレッシングを開始することに注力していたし、中盤の強度でイタリアのドリブルをカット。カウンターからのチャンスメイクもお手のもの。相手を押し込むという観点からも、相手の前進を許さないという観点からも先制点以降も主導権は明らかにイングランドにあった。
そして、前半終了間際には追加点はイングランドに。再びセットプレーから、再びファーのケインを狙った形で今度はイングランドがハンドを誘発。これをケインが自ら決めてリードを奪った状態でハーフタイムを迎える。
後半はイタリアがじりじりと前に出て行くスタート。イングランドの網に引っかかりながらも懸命な前進で少しずつ泥くさく敵陣に迫っていく。すると、後半早々に追撃弾をゲット。バレッラのポストからヴェラッティ、ペッレグリーニと繋ぎ、最後は代表デビュー戦となったレテギがゴール。本人にとっても大きなゴールでイタリアは反撃を開始する。
後半のイタリアは後方の保持を3枚にすることで相手のプレッシャーを回避。スピナッツォーラを片上げすることで前線に人数を送ったことと、バックラインの枚数を変えたことでイングランドのプレスが空転するようになった。
イングランドの保持においては逆に段々とイタリアのプレッシングが牙をむくように。相手につかまりだす場面が増えて、ボールロストも増えていく。こういう時でもきっちりとファウルを取って帰ってくるケインはさすがである。
苦しみつつもイングランドはスコアを動かさずに試合時間を削っていく。しかし、ここでルーク・ショウが退場。イングランド側に傷んだ選手がいたため、10人でのプレーを切ろうとしたのかもしれないが、警告を受けている選手が行うプレーとしてはリスクがあるものだったのは確かであった。
10人になったイングランドはバックラインを次々投入して急場をしのぐ戦法に。イタリアはニョントやポリターノなど左右のアタッカーを軸にしたクロスからスカマッカを投入して2トップに移行したインサイドを狙うが、イングランドの塹壕戦はさすがである。そして、10人でもきっちりファウルで時間を作るケインもさすがであった。
最後はバタバタしたがイングランドが逃げ切りに成功。EUROファイナルのリベンジを果たしての好発進に成功した。
ひとこと
前半の落ち着いたプレス回避と好調な中盤と両WGの存在は心強い。中軸選手たちがこの水準を維持できるのであれば、今の段階で彼らを倒せるチームはあまり多くはないように思えるが。
試合結果
2023.3.23
EURO 2024 予選 グループC 第1節
イタリア 1-2 イングランド
スタディオ・サン・パオロ
【得点者】
ITA;56′ レテギ
ENG:13′ ライス, 44′(PK) ケイン
主審:スルジャン・ヨバノビッチ