メッシのパートナーはどこに
ムバッペとネイマールという2枚看板を欠くパリ。ベンチには一見さんには馴染みのないメンバーがずらり。スタメンのエキチケにとっても非常に大きなチャンスになると言えるだろう。この日も負傷の連鎖は止まらない。アンカーに入ったレナト・サンチェスは開始10分そこそこで負傷交代。パリの悪い流れは前半も継続することとなった。
トゥールーズの守備は4-5-1だが、SHの優先順位はSBの封鎖。そのため、SHはバックラインの守備で入る形で6バック気味の布陣を形成する。CFのオナイウの守備の基準はアンカーのレナト・サンチェスが基本だが、バックラインのCBであるダニーロやマルキーニョスが持ち上がるのをヘルプするプレス隊は特にいなかったため、基準点は乱れやすい状況だったと言えるだろう。
しかし、中央の守りは強固。加えて、この日はムバッペとネイマールがいない。執拗にライン間のメッシを狙ったとしても高い位置で彼とつながる選手がいないという問題が発生する。サイドからボールは運べるものの、決め手となるアタッキングサードへの侵入のルートが見当たらない状況である。
ガルティエにとって頭が痛かったのはムバッペとネイマールがいないなりの良さが出なかったことだろう。たとえば、メッシ以外の10人でプレスを頑張る!という選択肢もあっただろうが、そういう風情もない状況が続いていた。トゥールーズはもちろんカウンターも狙っていたが、ボール保持でも問題なく振る舞えるのはパリのプレスの強度が通常運転と変わりないからだろう。
パリの4-3-1-2のポジションに対して、トゥールーズはSBから安定してボールを運ぶことができる。相手にボールを持ち運ぶという選択肢まで与えてしまうと、パリの支配力が前面に出ている試合展開とは言い難い流れになってくる。
そうした中で先制点を奪ったのはトゥールーズ。ドンナルンマにプレッシャーをかけたところからビチャブのファウルで得たFKをファン・デン・ブーメンが直接沈めて先制する。パリは直後のプレーでビチャブがパスミスを犯すなど、展開的にも精神的にも大きなダメージを負ったように見える失点後の振る舞いだった。
メッシのパートナーが見つからない問題はこの試合におけるパリの大きな課題として立ちはだかる。得点後は中央を固めるトゥールーズに対してはより一層苦戦。流れの中にも関わらずマルキーニョスがエリア内に突撃していくあたりはかなりの試行錯誤を感じる部分であった。
そんな中で救世主として名乗りを挙げたのはハキミ。右サイドからのカットインからのミドルでトゥールーズのゴールを撃ち抜いて見せる。中央を固める方針は継続していたトゥールーズだったが、ハキミがカットインした先のコースにいたメッシがハキミから離れる動きを見せた分、シュートコースが開くこととなった。
後半、メッシのパートナーはそのハキミになる風情がほんのりとあった。右サイドのフリーランからのラインブレイクなどは前半にはあまり見られなかった2人の関係性で相手を動かすシーンと言えるだろう。
トゥールーズは保持で時間を作る選択肢を持っていたため、それほど支配的な展開にならなかったのは前半と同じである。試合が膠着しかけている中で魔法の杖を振ったのはメッシ。セットプレーの流れからの守備になったため、やや空洞化したバイタルエリアに侵入し、ミドルを放って勝ち越し。トゥールーズにとってはわずかな隙だったが、メッシならばそれを見逃さないのも理解はできる。
トゥールーズはパリに支配的に振る舞うことを許してはいなかったが、それは守備のコミットとポゼッションでの陣地回復によるところが大きい。逆に言えば相手のゴールに迫るシーンが多い状況を作れているわけではないので、こうしたリードされる状況を打開する手段はあまりなかった。
終盤は押し込む流れからデスラーとルーオーが決定機を迎えるが、これはミートせずにドンナルンマの手の中に。最後のチャンスもパリがクローズし、苦しい流れも逃げ切りに成功した。
ひとこと
飛車角落ちという苦しい状況で勝ち点3を奪ったというのがこの試合のパリの全てだろう。内容に言及できるほど、年明けからのパリを取り巻く状況は良いものではない。やらかしてしまったスタッド・ランス戦に続き、終盤に投入されたエメリはきっちり逃げ切りができるかどうか見ているこっちにも緊張感が走る采配だった。
試合結果
2023.2.4
リーグアン 第20節
パリ・サンジェルマン 2-1 トゥールーズ
パルク・デ・フランス
【得点者】
PSG:38′ ハキミ, 58′ メッシ
TOU:20′ ファン・デン・ブーメン
主審:バスティアン・ディチェビー