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「負荷のかかる歯車」~2023.3.1 プレミアリーグ 第7節 アーセナル×エバートン プレビュー

目次

Fixture

プレミアリーグ 第7節
2023.3.1
アーセナル(1位/18勝3分3敗/勝ち点57/得点52 失点23)
×
エバートン(18位/5勝6分13敗/勝ち点21/得点17 失点32)
@エミレーツ・スタジアム

戦績

過去の対戦成績

 過去10回の対戦でアーセナルの4勝、エバートンの5勝、引き分けが1つ。

アーセナルホームでの成績

過去10回の対戦でアーセナルの8勝、エバートンの1勝、引き分けが1つ。

Head-to-head from BBC sport

Head-to-head
  • エバートンは2021年4月23日エミレーツでの1-0の勝利が直近26試合のリーグ戦でのアウェイのアーセナル戦での勝利(D4,L21)
  • アーセナルは昨シーズンのホームで5-1でエバートンに勝利しており、5回目の5得点以上の勝利。エバートン相手に5回以上5得点を挙げたチームは他にいない。

スカッド情報

Arsenal
  • トーマス・パーティは引き続きコンディションを注視している。
  • ガブリエル・ジェズス、モハメド・エルネニーは引き続き膝の怪我で欠場。
Everton
  • ドミニク・キャルバート=ルーウィンは腿の負傷で欠場。
  • ジェームズ・ガーナー、ナタン・パターソンが復帰にはまだ早く、膝の負傷で長期離脱中のアンドロス・タウンゼントは引き続き欠場。

Match facts from BBC sport

Arsenal
  • 直近4試合のホームでのリーグ戦で1勝(D2,L1)。それ以前の10試合は全勝だった。
  • 直近16試合のリーグでのエミレーツでの試合でクリーンシートは2つだけ。
  • 勝てば25試合で勝ち点60となり、03-04,07-08と並ぶクラブレコード。
  • ミケル・アルテタは監督としてプレミアのエバートン戦で4敗。これ以上に負けているのはマンチェスター・シティ戦(6敗)だけ。
  • ガブリエル・マルティネッリは同一シーズン内で初めての3試合連続のプレミアリーグでのゴールを狙う。
  • マルティネッリはプレミア10得点まであと1つ。17−18のガブリエル・ジェズス、18-19のリシャルリソンに続き、21歳以下でプレミアで10得点を挙げた3人目のブラジル人となる。
Everton
  • プレミアリーグの歴史においてその日の初めに順位表のトップにいるチームとのアウェイゲームに勝ったことがない(D5,L19)
  • リーグ戦でアウェイでの首位チームとの試合に勝ったのは1986年のウィンブルドン戦の2-1での勝利が最後。
  • 直近13試合のプレミアでのアウェイのうち、勝利したのはサウサンプトン戦の2-1での勝利のみ(D5,L7)
  • セント・メリーズでのサウサンプトン戦以降、7試合のプレミアでのアウェイゲームで1得点のみ。12/31のマンチェスター・シティ戦のデミライ・グレイのゴール。
  • ショーン・ダイチはプレミアにおけるアーセナル戦で初め9試合は全敗。しかし、直近6試合では1敗しかしていない(W2,D3)
  • ダイチのチームはアーセナルとの15回の試合において複数得点を挙げたことがない。15回の対戦で決めたゴールは7つ。

予想スタメン

展望

歯車の詰まりがハイパフォーマンスに蓋をする

 今季1回目のリーグでの対戦はグディソン・パーク。ショーン・ダイチの初陣を迎えたエバートンはターコウスキのセットプレーでの一撃から劇的なゴールで逃げ切りを果たした。ダイチにとっては首位撃破というこれ以上ないファンに対するご挨拶になったはずだ。

 そんな時期から1ヶ月も経たず、両チームは再戦を行う。わざわざ振り返らなければ思い出せないほど昔でもないし、そもそもアーセナルファンにとっては忘れたくとも忘れられない苦い思い出である。アーセナルにとっては今季唯一のボトムハーフのチームに対する敗戦へのリベンジの機会となる。

 逆にエバートンにとってはアーセナル戦での勝利は劇的にチームの状態を上向かせる転換点になる可能性をはらんでいた。しかしながら、実際は未だに降格圏内の18位。苦しい状況からは脱することが出来ていない。

 理由を考える前にまず前回のアーセナル戦でのエバートンのパフォーマンスを振り返る。この試合の出来は出色だった。目についたのはミドルゾーンにおけるプレッシングである。2列目のオナナやドゥクレがプレスのスイッチ役を担当。やたらめったらプレスをかけていたランパード政権に比べると、スイッチを入れるタイミングは制御されている印象。無理なプレスを行わないために、マイナス方向のパスを中心にIHが追いかけることに狙いを絞っていた。これがバックラインでやり直しを行うアーセナルに刺さった感があった。

 アーセナルはエバートンのミドルプレスをかいくぐることが出来ても、エバートンは素早く自陣にリトリート。アーセナルのWGのマッチアップのヘルプにいくIHの背後を横移動でカバーする。撤退守備において勤勉さが際立ったのはゲイェ。横移動で大きく動くIHが作る穴をことごとくカバーして見せた。

 アーセナルからすると、崩し切らなくても押し込む意味はある。なぜならば、即時奪回から波状攻撃のスイッチを入れることができるからである。しかしながら、エバートンには波状攻撃を寸断する選手がいた。キャルバート=ルーウィンである。サリバ、ガブリエウの2人に対してほとんどボールを跳ね返すを許さずに完勝。ひたすらボールを収め続けるキャルバート=ルーウィンはアーセナルにとって悪夢のような存在だった。

 以上、前回のアーセナル戦のエバートンを簡単にまとめると、非常に攻守の歯車がかみ合い、今季のアーセナルのリズムを産むポイントをことごとく封じることが出来たという感じである。だが、裏を返せば一つ噛み合わない部分があれば、機能性が大きく低下する可能性をはらんでいるともいえる。

 エバートンが直面した機能性の低下はキャルバート=ルーウィンの負傷離脱だ。ロングボールを収める手段を失ったエバートンは続くマージ―サイドダービーで完敗する。

 その後のリーズ戦を見る限り、ダイチのキャルバート=ルーウィンの不在時の解決方法はプレスの頻度を増やしてとにかく動き回り続けるというものだった。止まったら終わりというスタンスで走りまわるチームは60分すぎに機能低下が見られた矢先の先制点でなんとか撤退+逃げ切りというプランにエスケープをすることが出来た。

 続く、アストンビラ戦はテンポを落としてプレーしたが、やはり自陣の深い位置に押し込まれた時の陣地回復は苦しいものがあった。フィニッシュにつながるプレーとして、大外からのハイクロスを好むというダイチのチームの方針においてもキャルバート=ルーウィンの不在は重くのしかかる。自陣からのハイボールやクロスのターゲットにならないモペイには少々荷が重いように見受けられる。

 ハイテンポによる負荷はこうした観点からの不可避である。高い位置からボールを奪い、人もボールも前に送りこみ、ハイクロスに頼らないフィニッシュをするという縛りが今のエバートンにはある。ならばもう、ショートカウンターにこだわるしかないのだ。このように1つの歯車がかみ合ったことでサイクルが回らなくなったことが、エバートンがアーセナル戦ほどのハイパフォーマンスを継続できなかった要因といえるだろう。

ミドルプレス回避に集約するのもアリ

 アーセナルにとってミドルプレスを外せるかどうかは前回の対戦以上に重要になる。キャルバート=ルーウィンはこの試合でも不在の可能性は高く、エバートンにとっては引き続きハイプレスからのショートカウンターが生命線になる公算が強いからである。

 無論、エバートンのプレッシングには生命線というだけの迫力は十分にある。中盤の布陣はそういった戦い方において無理が効く3人だし、上で指摘したエバートンの機能不全はオナナとドゥクレよりも前で引っ掛けることができれば、ほとんど解消する。敗れはしたものの、アストンビラ戦は中盤のボール回収から主導権を握ることが出来ていた。

ということはエバートンの守備陣に問題を引き起こすには是が非でもこの領域に問題を引き起こす必要があるということである。ここを通過できればバックラインの迎撃はやや弱まる傾向にある。唯一強気でチェイシングが出来ているのがRSBのコールマンだが、特にCBはラインを上げきれずに間延びする流れになっている。キャルバート=ルーウィンの不在という観点を考えれば、押し込むことによる波状攻撃の成立の可能性は前回対戦よりも高まっているといえるだろう。

 それを踏まえれアーセナルはある程度ハイプレス回避に全振りする布陣を組むのもアリかもしれない。すなわち、トーマスとジョルジーニョの併用である。剛柔両面違うカラーの2人の司令塔を並べることでエバートンのIHのラインを越える可能性は高まる。SBにジンチェンコがいればポイントはかなり多く用意できる。

 間延びした最終ラインをスムーズに攻略するのであれば、前に送る人数は多少少なくなっても問題はないかもしれない。アタッキングサードにおいてもトロサールとマルティネッリの併用などでエバートンの最終ラインのポジションを乱す余地はある。

 歯車が噛み合わないことにより、負荷のかかる箇所を徹底的に攻める。ホームでのリベンジに求められるのはエバートンのミドルプレス撃退である。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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