Fixture
プレミアリーグ 第30節
2023.4.9
リバプール(8位/12勝7分9敗/勝ち点43/得点48 失点33)
×
アーセナル(1位/23勝3分3敗/勝ち点72/得点70 失点27)
@アンフィールド
戦績
過去の対戦成績
過去10回の対戦でリバプールの5勝、アーセナルの2勝、引き分けが3つ。
リバプールホームでの対戦成績
過去10戦でリバプールの6勝、引き分けが4つ。
Head-to-head from BBC sport
- リバプールは直近6試合のアーセナルとのホームでのリーグ戦に勝利している。
- アーセナルは直近9試合のアウェイでのリバプールとのプレミアのゲームで価値なし。最後のアンフィールドでの勝利は2012年でミケル・アルテタがピッチにいた試合。
- アーセナルが首位としてリバプールと対峙するのはプレミアにおいて9回目(W3,D3,L2)。それ以前の8回では33得点が生まれている。
スカッド情報
- チェルシー戦を欠場したフィルジル・ファン・ダイクは病気から回復。
- チアゴ・アルカンタラには復帰の可能性があるが、ルイス・ディアスの復帰はリーズ戦になる見込み
- ブカヨ・サカも病気から全快。
- ウィリアム・サリバとエディ・エンケティアはどちらも背中に問題を抱えているが、状況を注視している。
Match facts from BBC sport
- 直近3試合のリーグ戦で勝ちがなく、うち2試合で無得点。
- 直近6試合のホームでのリーグ戦では無敗でそのうち5試合で勝利。直近3試合のトータルスコアは11-0。
- しかしながら、アーセナル戦で勝てなければ公式戦5試合連続未勝利となり、クロップ政権下では最長の未勝利記録となる。
- 12月にレスターのキアナン・デューズバリー=ホールが得点を決めて以来、アンフィールドでのリーグ戦では7時間26分の連続無失点を継続中。
- ユルゲン・クロップは1921-28年にシェフィールド・ユナイテッドを率いたジョン・ニコルソン以来初めてのアーセナル相手にホームで7連勝した指揮官になる可能性がある。
- モハメド・サラーはアンフィールドでのアーセナル戦直近5試合で7得点に関与(5G,2A)
- アリソンは今季85のセーブを記録しており、リバプールに所属して以降、最も多くのセーブ数となっている。
- リーグ戦7連勝で今季のトップリーグでの最長記録。
- 2015年以来のリーグ戦8連勝の可能性。
- アウェイでのリーグ戦4連勝を狙う。
- アウェイでの14勝は今季のプレミアでは最多。
- 今季の12のクリーンシートのうち、9つはアウェイゲームのもの。
- アーロン・ラムズデールはペドル・チェフ、エデルソンに続き、プレミアでのアウェイゲームで1シーズン10のクリーンシートを記録した3人目のGKになる可能性がある。
予習
第27節 ボーンマス戦
第29節 マンチェスター・シティ戦
第8節 チェルシー戦
予想スタメン
展望
プレッシングという生命線の成功例と失敗例
W杯の中断期間中、プレミアリーグの再開に向けて自分はふわふわしていた。首位にいるという立場に慣れておらず、この状況がどこまで続くのだろう?と思っては日程表を見るなど落ち着かない日々を過ごしていた。
日程表を見返すたびに毎回目に止まるのが30節のアンフィールドだった。何年も勝利を掴めていないこの地をどんな順位で迎えるのだろうか。ジェズスの離脱を乗り越えて、アーセナルはまだ優勝争いにいるだろうか。昨年末にはそんな思いを馳せていたことを思い出す。
そして、その第30節は今週末だ。アーセナルはマンチェスター・シティとの優勝争いの一騎打ちの真っ最中。そして、両チームの間には現在8ポイントの勝ち点差が存在している。上にいるのはアーセナルだ。W杯中の自分に聞かせたら飛び跳ねて喜ぶことだろう。
冬から春にかけてリバプールを取り巻く状況は少し変わっている。大きかったのは長期離脱していた主力たちのカムバックだ。前線はフィルミーノ、ジョッタという頼りになる柱が復帰。さらには冬に新加入したガクポも即時フィットし、だいぶ厚みが増したと言えるだろう。残るはディアスの帰還を待つばかりだ。バックラインはファン・ダイクの復帰が朗報。コナテとのコンビを作ることができれば安定感は際立つ。
中盤はこの2つのセクションに比べると不安が残る。チアゴの穴を埋めるべく獅子奮迅の活躍をしていたバイチェティッチは疲労骨折で残りのシーズンの全休が決定。チアゴの復帰は徐々に迫っているものの、現段階ではファビーニョとヘンダーソンにかかる負荷は大きい。
リバプールが年明け以降、もっとも強さを見せたのはやはり7-0というユナイテッド戦の快勝だろう。大差となったスコアは決定機を次々と決めた後半のリバプールによって作り上げられた出来過ぎなもののようには映る。だが、あの日のリバプールのパフォーマンスは紛うことなき本物の凄みがあった。
その原動力となっていたのはプレッシングである。前3枚に中盤が連動する形でユナイテッドのビルドアップ隊を仕留め続け、問題を引き起こし続けたことがこの試合の大差の引き金になった。大量得点がさらにプレスの原動力となり、それがさらなる得点を生むというユナイテッドからすれば地獄の輪廻が成立していた。
では反対にそのユナイテッド戦以降であまり出来がよくなかった試合を考えてみたい。真っ先に挙がるのはマドリーとのCLの2ndレグ、そして先日のシティ戦だろう。この2つのアウェイゲームが最近のアウェイゲームの失敗例だ。
この2試合の共通点はどちらもリバプールがプレッシングで相手に歯が立たなかったことである。マドリーとの試合は1stレグで抱えた大きなビハインドを覆そうとアタッカーを多く起用したことが仇となった感があった。結果的にプレスは機能不全に。マドリーにボールを持ち続けられて乾杯となった。リバプールのプレスは前線に追従する中盤で成立している節が大きいことが再認識される試合となった。
そして、シティはシンプルにうまかった。広く幅をとったバックラインによって、リバプールのプレスは1枚ずつずらされてしまい、無効化されてしまった。
現状のリバプールに物足りない部分はまさにここ。迫力十分のプレッシングが繰り出せない、あるいは通用しない時の二の矢が乏しいことである。
もちろん、サラー、ガクポ、ヌニェスを軸としたロングカウンターは十分クオリティは高い。だが、彼らのカウンターに頼る攻撃はいささか直線的すぎる。現状、チアゴやバイチェティッチといったメンツが不在となればある程度MFを飛ばすような攻撃になってしまうのは仕方がないとは思う。だが、もう少しボール保持で自分たちの時間は欲しいところ。前線の3トップのうち、最も外のラインでの仕事が期待できるサラーがいなかったチェルシー戦の前半はこの傾向がさらに顕著だった。
なぜボールを持ちたいかというと、ロングカウンターを軸にするには撤退守備の心許なさも気になるから。シティ戦の振る舞いを見ると、やはり自陣に押し込まれた時、とりわけ5レーン型の大外とハーフスペースの両方を攻め込まれると後手に回りやすい。
最近はファン・ダイクの出来も少し気がかり。ボーンマス戦のワッタラへの対応は彼の不調期特有の勝負の局面を遅らせる選択肢をした結果、ゴールが決まってしまうパターンだった。いい時は迷いなく潰せている場面だったはず。終盤戦でもう一段ギアを上げたいところだ。
優位に進めれば道は開ける
アーセナルからすると、とにかく一番大事なのはリバプールの一の矢であるハイプレスをへし折れるかどうかである。アンフィールドの後押しを受けて、前からプレスにくる形をとってくるのは間違いないだろう。アーセナルはこのプレッシャーに飲まれないかどうかが第一関門になる。
重要なのはホールディングだろう。ここまではサリバの代役として十分のパフォーマンスを見せているが、それは味方と相手のパフォーマンスに助けられている部分もある。リーズ戦、クリスタル・パレス戦は攻撃の時間が長かったため、そもそも危うい形で晒される機会が少なかったし、プレッシングの圧力を受ける機会も少なかった。アンフィールドではそうもいかないだろう。サリバに復帰の目処が立たない中で奮起が求められることになる。
アーセナルのボール保持の成否は中盤をスムーズに越えることができるかどうか。シティ戦は立ち上がりのプレッシングは機能していたが、この時間帯はヘンダーソンとファビーニョのところでシティを食い止めて、リトリートの陣形を整える時間を作り出すことができていた。
逆に言えば、リバプールが一段押し込まれてしまうのは、この中盤をスムーズに通過されてから。アーセナルからするとこの形にスムーズに持っていきたい。リバプールは前線のプレスに中盤が追従できるかどうか。前線のプレスのエンジンがかかるかと連動するかの2つのポイントがリバプール視点からすると、ハイプレスの成否を分ける重要な部分になる。
アタッキングサードでの攻略ではシティのアルバレスのゴールが応用できそう。右サイドから左サイドに大きく横断し、グリーリッシュが左サイドで大外を攻略する。サイドからサイドに素早く受け渡すことで逆サイドの大外のケアが甘くなり、アレクサンダー=アーノルドのサイドで勝負をかける。今のリバプールのブロック攻略のバイブルのようなゴールだった。
リバプールのブロック守備はアレクサンダー=アーノルドが抜かれる前提を組むことが多い。よって、コナテの周辺のスペース活用は積極的に行っていきたい。ジャカやジェズス、トロサールには左大外にボールがある時にコナテの背後を取るようなフリーランを行っていきたいところだ。
押し込もうがリバプールのカウンターが怖いのは事実である。だが、優位に進めていけばその先に結果が出るというのは今季のアーセナルを見ていけばわかる。リバプールはこれまでのチームにはない強力な一の矢がある。繰り返しになるが、リバプールの一の矢が刺さるかどうかは試合を大きく左右する特大なポイント。アーセナルはこの矢をきっちりへし折る必要がある。
非保持において動きが怖いのは前線の動きの特徴だ。降りるガクポの動きと左から斜めにDFの背後からエリア内に入ってくるヌニェスの両睨みは非常に難しい。ホールディング、ホワイト、ガブリエウ、ラムズデールと連携しながら縦への移動を牽制したい。
リバプールの右はストロング。ジンチェンコだけでなく、マルティネッリのプレスバックも重要なファクターになるのは当然の流れ。ジャカとも連携して同サイドからボールを出さずに閉じ込めたいところだ。
W杯中に夢見た「アンフィールドまで優勝を争えているか?」というものは明らかに現実のものになっている。そして、9試合を残し優勝は今や夢ではなく現実的な目標だ。夢のような現実はアンフィールドでも続くのか。クロップの率いるリバプールがぶっかけてくる冷や水を避けて、夢のような現実の時間をまだまだ続行して欲しいところだ。