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「Catch up FIFA World Cup Qatar 2022 Asia qualifiers」~カタールW杯 アジア最終予選 オマーン代表編

 オマーン代表、カタールW杯アジア最終予選の歩み。

目次

2021/9 招集メンバー

GK
イブラヒム・サレハ・アルムハイニ(アル・ナスルSC/UAE)
ファイズ・アルルシェイディ(ドファール・クラブ)
アハメド・ファラジ・アルラワヒ(アル・シーブ・クラブ)

DF
ジュマ・マルフーン・アルハブシ(アル・シーブ・クラブ)
ハリド・ナセル・アルブライキ(アル・シーブ・クラブ)
アリ・スライマン・アルブサイディ(アル・シーブ・クラブ)
ファミ・サイド・バイト・ドゥルビン(アル・ナスルSC/UAE)
アブドゥルアジズ・アルゲイラニ(アル・シーブ・クラブ)
モハンメド・アルムサラミ(ドファール・クラブ)

MF
アブドゥラ・ファワズ(ドファール・クラブ)
アムジャド・アルハルティ(アル・シーブ・クラブ)
ヤジド・サリム・アルマーシャニ(ドファール・クラブ)
オメル・タリブ・アルファザリ(アル・ラスタク)
ザヒル・スライマン・アルアグバリ(アル・シーブ・クラブ)
モフシン・アルハルディ(オマーンクラブ)
サラー・サイド・アルヤヒアエイ(アル・シーブ・クラブ)
ハリブ・ジャミル・アルサーディ(ドファール・クラブ)
アハメド・アルカービ(アル・ナーダ/サウジアラビア)
アハメド・アルハミシ(ドファール・クラブ)

FW
アブドゥル・アルマクバリ(アル・シーブ・クラブ)
ジャミール・アルヤマディ(アルマルキヤスポーツクラブ/カタール)
ハリド・ハリファ・アルハジリ(ドファール・クラブ)
アルマンダル・アルアラウィ(ドファール・クラブ)
ムフセン・サレハ・アルガッサニ(アル・シーブ・クラブ)
イサム・アブダラ・アルサビ(アル・ラスタク)
モハンメド・ムバラク・アルガフリ(アル・ラスタク)
アルシャド・サイド・アルアラウィ(アル・シャバブ・リヤド)

第1節 日本戦(A)

画像1

■優位性の担保が外れたことが招いた敗北

 中央とサイドにバランスよく人を置いた日本の4-2-3-1に対して、オマーンが採用したのは中盤ひし形の4-4-2。中央に極端に人を置いたやり方だった。

 展開としては、中央に密集するオマーンの守備陣を日本がサイドチェンジを交えながら分解できるかどうか?というものになっていくのだろうなと予測できた。そういう展開に実際になった時に気になったのは柴崎の存在。柴崎の持ち味はトランジッション局面における状況把握の早さとそれを活かした縦パスで一気に局面を進めるカウンターを発動できることである。

しかし、この試合においては中央に人が多い陣形になっているオマーンに対して、一撃必殺スルーパスは相性があまり良くない。柴崎自体のコンディションは悪くはなさそうだったが、持ち味と展開がミスマッチになりそうなプレイヤーだなと思った。

 もう1つ、柴崎は守備においてニアのハーフスペースを埋める意識が希薄で、左のペナ角付近で相手に前を向かせる頻度が多かった。この試合においてはオマーンのアタッカー陣が中央から外まで自在に流れながら攻撃を繰り返していたので、対応しにくかったかもしれないが、3分のシーンのように割と埋めるのが簡単そうな場面でもオマーンの選手にノープレッシャーで前を向かせているのは気になった。

 オマーンの守備の目的は明らかに同サイドでの封鎖。ボールサイドのFWは自陣の低い位置まで下がっていたし、トップ下やアンカーなど盤面上はピッチのセンターラインにいる選手もボールサイドに流れることで密な状態を作っていた。

 それでも、日本は吉田を主体として対角にパスを送ることで徐々にペースをつかんでいく。広いスペースがある方のサイドに振るパスはもちろん、特に効果的だったのは右のWGの伊東の裏抜けに合わせたフィード。オマーンの最終ラインを縦に突っつくこのやり方は試合を通して最も効果的だったといえるだろう。

 逆に、大外のサイドでボールを持った時は手詰まり感があった。DF-MFのライン間の内側で原口のサポートをする先週や、ハーフスペースの裏に走り抜けることで、原口にカットインのスペースを作る動きがなかったことが停滞の要因。そうなると、原口がドリブルで相手をちぎって投げ続けなければ活路は見いだせない。

 オマーンの攻撃はその日本が出来なかったサポートが非常に上手だった。大外でボールを持つ選手を内外から追い越すように同サイドの裏抜けを挟むことでSBをピン止めしつつ、CHやSHをどかしてしまうフリーランは効いていた。後方からのビルドアップもアンカーが浮いたり、インサイドハーフがサポートのために降りてきたりなど日本のプレスにつかまらない工夫を披露。高い位置においてはサイドチェンジを減らす代わりに、エリア内に飛び込む人数をかけてクロスに威力を持たせるやり方に専念していた。

    そういう時にこれまで何とかしていたのは日本のバックス。大外で持たれた場面でいえば酒井と長友にボールホルダーが食い止められてしまえば何もできはしない。しかし、この試合ではアジアで敵なしだった両者の絶対性は見られず。酒井に関しては試合後離脱したようにコンディションの部分がおかしかったし、長友も本来であれば置いていかれないところで置いていかれてしまう場面が目についた。吉田も離脱こそしていないが、コンディション的にはぎりぎりだろう。

 アジアで優位性を保つために不可欠だったバックスがツケを払えないとなると、いよいよゴールを脅かされることになる日本。抜け出しから大外に柴崎を引っ張り出すと、クロスするランで手前に入ってきた動きで植田を翻弄したアル・サブヒがフィニッシュ。試合終盤に先制点をゲットした。

 後半の日本は今、最も旬なタレントである古橋に左サイドを託すが、原口の焼き直しの役割では難しいだろう。もっとスピードに乗った状態でボールを渡したいプレイヤーだ。個人的にはこういうことをやらせたいなら三笘が一番向いている気がする。ちなみに前線の裏抜けも裏へのフィードもなかったことを踏まえると、チームとして奥行きを使う考え方はあまりなかったはず。そうなると仮に古橋を中央で起用していたとしても厳しかったように思う。

 アドリブで何とかしたい!という前提に基づくのならば、交代で入った久保と堂安を併用するアプローチが最もシンプルで効果的だと思う。けども、そのやり方がオマーン相手に通用しなかった以上は、前提を考え直さなければいけないのではないだろうか。バックラインの優位という安定性がなくなったこの試合は、日本の厳しい現状が見えてくる90分となった。

試合結果
2021.9.2
カタールW杯アジア最終予選 第1節
日本 0-1 オマーン
市立吹田サッカースタジアム
【得点者】
OMA:88′ アル・サブヒ
主審:モハメド・アブドゥラ・ハッサン

第2節 サウジアラビア戦(H)

画像2

■日本とサウジの違いとは?

 初戦、アウェイである日本の地で貴重な勝ち点3を獲得したオマーン。日本と同じくW杯出場権争いの有力候補であるサウジアラビア相手に勝ち点を取れば、本大会出場という偉業が見えてくる。

 対するサウジアラビアはベトナム相手に格の違いを見せつける逆転劇を演じた。続くオマーンも現状ではアウトサイダー。2戦目も貫禄を見せることができるだろうか。

 オマーンのアプローチは日本相手のものと大きく違いはなかった。中央を固めてサウジアラビアに要所を使わせない。サウジアラビアは中盤の3枚のカンノ、アル・マルキ、アル=ファラジュなどマンマークでオマーンに捕まってしまっている。

 サウジアラビアはこれに対して左サイドから対抗。アッ=ドッサリーやアッ=シャハラーニーの縦関係がレーンを入れ替えながら攻撃を繰り出す。サイドの選手の位置関係が膠着しがちだった日本に比べれば、サウジアラビアの攻撃は動きがあるものではあった。

 だが、それでもオマーンの守備ブロックは強固。サイドを多少動かされたとしても、中央はそもそも数的優位。日本と同じくサウジアラビアも非常にこのブロックを崩すのには手を焼くことになった。

 しかし、サウジアラビアは脈絡なく、このブロックを破壊。フィードから19番のアル=ムワッラドが抜け出すと、ヒールで落としたスペースに走り込んだのはストライカーのアル・シェフリ。ワンタッチでの芸術的なパスでオマーンにズレたスペースを埋める時間を与えなかった。

 日本も阿吽の呼吸が合えばこういったプレーは可能だろう。だが、この日のサウジアラビアは明らかに日本よりも優れていた部分があった。それは守備。日本が苦しんだオマーンのサイドに流れるFWへのパスは厳しくCB2人がチェイスしていたし、ライン間の楔はSBのアル=ガナムがチェックした。

 オマーンが日本に善戦したのはSB裏のFWへのランとライン間のズレを利用した縦パスで前進を通すことができたから。サウジアラビアはこのオマーンの攻撃のスイッチとなる武器をバックラインが高い位置から咎めたことで、オマーンに反撃の隙を与えなかった。

 後半、サウジアラビアの守備の圧力も弱まっており、オマーンにもチャンスが巡ってくる。20番のサラーを軸に右サイドから打開を狙うオマーンだったが、ゴール前の精度が足りず。終盤の猛攻もサウジアラビアに交わされてしまったオマーン。格上に対する連勝スタートは叶わなかった。

試合結果
2021.9.7
カタールW杯アジア最終予選 第2節
オマーン 0-1 サウジアラビア
スルタン・カーフード・スタジアム
【得点者】
SAU:42′ アル=シェフリ
主審:ハッタブ・ハンナ

2021/10 招集メンバー

GK
イブラヒム・サレハ・アルムハイニ(アル・ナスルSC/UAE)
ファイズ・アル・ラシーディ(ドファール・クラブ)
アハメド・アル・ラワヒ(アル・シーブ・クラブ)

DF
ジュマ・マルフーン・アルハブシ(アル・シーブ・クラブ)
ハリド・ナセル・アルブライキ(アル・シーブ・クラブ)
アリ・スライマン・アルブサイディ(アル・シーブ・クラブ)
ファミ・サイド・バイト・ドゥルビン(アル・ナスルSC/UAE)
アブドゥルアジズ・アルゲイラニ(アル・シーブ・クラブ)
モハンメド・アルムサラミ(ドファール・クラブ)

MF
アブドゥラ・ファワズ(ドファール・クラブ)
アムジャド・アルハルティ(アル・シーブ・クラブ)
ヤジド・サリム・アルマーシャニ(ドファール・クラブ)
オメル・タリブ・アルファザリ(アル・ラスタク)
ザヒル・スライマン・アルアグバリ(アル・シーブ・クラブ)
モフシン・アルハルディ(オマーンクラブ)
サラー・サイド・アルヤヒアエイ(アル・シーブ・クラブ)
ハリブ・ジャミル・アルサーディ(ドファール・クラブ)
アハメド・アルカービ(アル・ナーダ/サウジアラビア)
アハメド・アルハミシ(ドファール・クラブ)
アルシャド・アル・アラウィ(アル・シーブ・クラブ)

FW
アブドゥル・アルマクバリ(アル・シーブ・クラブ)
ジャミール・アルヤマディ(アルマルキヤスポーツクラブ/カタール)
ハリド・ハリファ・アルハジリ(ドファール・クラブ)
アルマンダル・アルアラウィ(ドファール・クラブ)
ムフセン・サレハ・アルガッサニ(アル・シーブ・クラブ)
イサム・アブダラ・アルサビ(アル・ラスタク)
モハンメド・ムバラク・アルガフリ(アル・ラスタク)
アルシャド・サイド・アルアラウィ(アル・シャバブ・リヤド)

第3節 オーストラリア戦(A)

画像4

■サイドに圧をかけてねじ伏せる

 9月シリーズを2連勝。見事なスタートダッシュを決めたオーストラリア。オマーンを叩いて勝ち点を落とした日本にプレッシャーをかけていきたいところ。

 おなじみになってきたオマーンの中央封鎖の4-3-1-2に対して、オーストラリアはCHが低い位置まで降りることで仕掛けていく。CHが降りる動きを見せることで、オマーンのIHはオーストラリアのSBについていくのか、あるいはCHについていくのかの判断をする必要が出てくる。

 オマーンのIHが降りていくオーストラリアのCHについていった場合、オマーンの守備の陣形はIHとSBの距離が開くことに。従って、オーストラリアのCHにオマーンのIHが食いついた時がオーストラリアの攻める絶好機。SBとWGがオマーンのSBに襲いかかる形でクロスを上げられるとオーストラリアにはチャンスが出るようになる。

 ただ、オマーンにも十分にチャンスはあった。オーストラリアの4-4-2ブロックは全体の陣形がコンパクトに維持できておらず。機動力が優れているとはいえないオーストラリアの中盤が広いエリアを任されることによって、オマーンに振り回されることがしばしば見られた。

 オマーンは守備面でも途中からIHがプレスを自重することで修正。オーストラリアに対してコンパクトな守備を敷くことができるようになってきた。メイビルによって奪われた先制点も28分にアル・アラウィの得点で取り返してオマーンが流れを引き戻す。

 しかし、並びで考えると4-3-1-2のオマーンはスライドが間に合わなくなった際にサイドの守備がどうしても孤立してしまいやすい。オーストラリアはその隙をついて得点を重ねていく。サイドでのロストからのクロスで後半早々に勝ち越し点を得ると、試合終了間際にもホルダーを追い越す形でのオーバーラップでクロスを上げてミッチェル・デュークが追加点。

 隙を見せながらも最後はオマーンを仕留めたオーストラリア。グループBのライバルたちにプレッシャーをかける勝ち点3を獲得し、日本とのアウェイゲームに乗り込む。

試合結果
2021.10.7
カタールW杯アジア最終予選 第3節
オーストラリア 3-1 オマーン
ハリーファ国際スタジアム
【得点者】
AUS:9′ メイビル, 49′ ボイル, 89′ デューク
OMA:28′ アル・アラウィ
主審:ナワフ・シュクララ

第4節 ベトナム戦(H)

画像3

■見せ場はあるも拙い試合運び

 オマーンはトレードマークである4-4-2ダイヤモンドを封印。4-4-2フラットという新しい形でこの試合に臨んだ。おそらくこれはベトナムの布陣に対応するためだろう。ベトナムは5バックで中央を固めて後ろ重心ということで、SBにフリーで時間を得させるためにということではないだろうか。結果的にベトナムはこの日、普段の5-4-1ではなく5-3-2だったため、いつもよりサイドに人をおいたオマーンの形はさらにハマるようになっている。

 サイドから安全にボールを進めることができているオマーン。ただ、ここから先に何か工夫があるか?と言われると特にそういうわけでもない。だけども、押し込んでおけば事故るのが今のベトナムの守備陣のレベル。ラインコントロールは怪しいし、跳ね返しにも強くない。

 そして案の定、事故ってしまうベトナム。PK判定は少し意外な形で背後の相手に振った腕が当たったことが起因になっていた。しかしながら、これはアルハルディがミス。オマーンは先制点を得るチャンスを逃す。

 ベトナムはライン間のグエン・コン・フォンやグエン・クアン・ハイに楔を入れて前を向いてもらうことでチャンスメイク。ただし、ターンまで自力でやってね!という感じ。結構な難題だけど、これができていたときは前進できていた。

 しかし、先制点はややジリ貧気味のベトナムから。しかもほぼ奇襲と言っていいハイプレスから。ホー・タン・タイのボール奪取からショートカウンターが発動し、グエン・ティン・リンのゴールで先手をとる。

 だが、オマーンもすぐに追いつく。終始優勢だったセットプレーからのアクロバティックなゴール。CKからのこぼれ球をアル・サブヒが叩き込み前半のうちに同点に追いつく。

 オマーンは後半にもセットプレーからの追加点。ゴリゴリの力技で前に出る。試合の決定づけるオマーンの3点目は再びPKから。しかも、またしても同じく振った腕を顔に当てるファウルから。ベトナム、オフザボールにおける2回の顔面叩きで2つのPK献上ということになる。背中側にいる選手に対してなので、未必の故意って感じだけどとりあえず背負う時に腕振るのが癖になってるんだろうか。この試合の主審はオフザボールの競り合いにナーバスだったから1つ目のPKでアジャストしないとダメである。

 健闘するもオマーンのパワーに屈し、試合運びにも拙さを見せたベトナム。最終予選の経験の浅さを痛感させられる敗戦となった。

試合結果
2021.10.12
カタールW杯アジア最終予選 第4節
オマーン 3-1 ベトナム
スルタン・カーブース・スポーツコンプレックス
【得点者】
OMA:45+1′ アル・サブヒ, 49′ アルハルディ, 63′(PK) アルヤハヤエイ
VIE:39′ グエン・ティン・リン
主審:アドハム・マハドメ

2021/11 招集メンバー

GK
イブラヒム・サレハ・アルムハイニ(アル・オルーバ・スール)
ファイズ・アル・ラシーディ(メス・ラフサンジャーン/イラン)
アハマド・アル・ラワーヒ(アル・ナスルSCSC)

DF
アーメド・アル・カービ(アル・ナフダ)
ファハミ・サイード・ラジャブ・ドービエン(アル・ナスルSCSC)
ジュマ・マルフーン・アルハブシ(アル・シーブ・クラブ)
アハメド・アル・ハミシ(ドファールSCSC)
ハリド・アルブライキ(アル・ナスルSCSC)
アムジャド・アル・ハルティ(アル シーブ・クラブ)

MF
ザヒル・スライマン・アルアグバリ(アル・シーブ・クラブ)
モフシン・アル=ハルディ(オマーンクラブ)
アブドゥッラー・ファワズ(ドファールSCSC)
ジャミール・アルヤハマディ(アル・マルヒアSC)
オメル・タリブ・アフメド・ファザーリ(アル・ルスターク・クラブ)
サラー・サイド・サリム・アルヤハヤエイ(アル・シーブ・クラブ)
ムハンマド・ガフリ(アル・ルスターク・クラブ)
ハリブ・アルサーディ(ドファール・クラブ)

FW
アルシャド・アル・アラウィ(アル・シーブ・クラブ)
ハリド・ハリファ・アルハジリ(ドファールSCSC)
アブドゥラジズ・アル・ムクバリ(アル・シーブ・クラブ)
イッサム・アル・サブヒ(アル・ルスターク・クラブ)

第5節 中国戦(A)

画像5

■遠さがる3強の背中。緻密さを欠き痛恨のドロー

 立ち上がりにペースを握ったのはオマーン。4-4-2で構えた中国に対して、アンカーの落ちる動きを軸にズレを作りボールを保持する。中国は中国でこの状況を受け入れる構えだった。

 オマーンの方針は相変わらずで、サイドはSB+流れてくる1人の選手くらいで、残りの選手はPA内に集中。エリア内の人数確保を実施し、クロスに飛びこむ選手を複数人準備するという方針で攻撃を行う。

 オマーンの攻撃にはいくつか気になる部分があった。例えば、サイドからクロスをあげるのがやや強引だったところ。以前はもう少しサイドに流れるのが積極的だったり、サイドでの崩しがもう一手、二手多く行われてからクロスを上げるパターンが多かったように思えた。

 この試合ではオマーンが比較的早い段階でのハイクロスを選ぶことが多かった。そうなると、エリア内のフィジカル面で優位を取れるわけではないオマーンはフィニッシュの局面で難を抱えることになる。そういう意味では今までのオマーンと比べて緻密さに欠けているように思う。

 オマーンは狭いスペースを打開する技術の高さや相手を吹き飛ばせるフィジカルの強さを持ち合わせているわけではないので、アバウトさが増してくると帰化選手たちを多く並べた中国に流れが傾く。狭いスペースに無理に通そうとすると、中国のカウンターの餌食になるオマーン。

 先制点を取ったのも中国。セットプレーには特段工夫があったわけではないが、オマーンはデュエルに対して後手を踏み、最後はウー・レイの動き出しに屈した。

 ビハインドに陥ったオマーンはサリーの頻度を増やし、SBが高い位置を取る頻度を増やすことでさらに攻勢を強める。前半は保持のオマーン、非保持の中国で均衡だった感じだけど、後半はややオマーンに流れたイメージ。しかしながら体力が続くうちにおいつくことが出来ず、選手交代で盛り返す中国に攻め返される。

 試合を分けたのはまたしてもセットプレー。点をとったのはオマーンの方。中国はGKが出ていったにも関わらず、触れなかったのが痛恨。ミスに分類してもいいセットプレーだろう。オマーンの猛攻フェーズを乗り切っただけにもったいなかった。

 そこから先はグロッキー気味に戦うことになった両チーム。カウンターの応酬で間延びした陣形で撃ち合いを行うも、最後まで点が入ることはなかった。3強についていきたかったオマーンとしては手痛い引き分け。内容的にも若干割引感が否めず、悲願のW杯はやや遠ざかった感がある。

試合結果
2021.11.11
カタールW杯アジア最終予選 第5節
中国 1-1 オマーン
シャールジャ・スタジアム
【得点者】
CHI:21′ ウー・レイ
OMA:75′ アル・ハルティ
主審:シバコーン・プウドム

第6節 日本戦(H)

■後半のペースアップに貢献した左サイドコンビ

 日本の保持の狙いはベトナム戦と大きく変わらなかったように思う。中央を固めてくる相手に対して、サイドの関係性を作りながら壊していく形がメイン。左のIHは低い位置を取りながら長友を押し上げたり、内に入ってくる南野の邪魔をしないバランサー的な役割をこなす一方で、右のIHが前線やサイドの高い位置でボールに絡みながらよりゴールに近い位置でプレーするという左右非対称な役目も同じである。

    異なっていたのは人選である。守田の出場停止の煽りを受けて左のIHには田中碧、右のIHには柴崎が入った。この4-3-3の中で最も難しいかじ取りになるのは左のIHではないかなと思う。得意なプレーや使いたいエリアが決まっている長友や南野を基準に動き方を考えないといけないし、かといって2人でいってこい!ができるほどサイドアタックが強力なわけではない。

 オマーンのシステムだけを見れば、日本のWG,SB,IHでオマーンのIH,SBに対して数的優位を取れるのだけども、オマーンはアンカーのアルサーディがボールサイドにスライドするため数は均衡。オマーンはアンカーの遠藤にトップ下のアルヤハヤエイがついているため、日本は素早いサイドチェンジが出来ない。なので、アンカーは常にボールサイドで計算に入れてOK!というオマーンの守備である。 

 したがって日本が取り組まなくてはいけないのは3対3のユニットでサイドを壊すことだった。低い位置に降りる田中碧にはどこから進むかという舵取りまで任されている。

    左サイドは前節のベトナム戦に比べれば長友が大外で仕事が出来たこともあり、惜しいクロスもあったのだが、中盤にいわゆる川崎成分を注入した効果をチーム全体に広げるまではいっていない印象である。ここはベトナム戦と同じ。田中碧が頑張っていた分、やや上乗せかな?くらいのものである。

 右サイドは伊東純也への1つ飛ばしのパスでまずズレを作る。DAZNの冨安と田中碧が話していたベン・ホワイトのようにCBの吉田は山根を飛ばして一つ奥に付けられると可能性は広がる。後方の山根は後ろから押しかける形で走りこんでフォローもできるし、柴崎は高い位置に留まることで普段よりはずいぶんとタスクワーカー寄りの仕事をこなしていた印象である。

 止まってタメが作れるタイプがいないのが難点だが、そこは大迫が時たま流れていくことでカバー。ズレを作ってサイドを壊すというテーマでいえば、この右サイドの方がうまくいっていた。とはいえ、シュートまで行ける場面は稀。最終ラインにきついプレッシャーがなかった分、サイドを迂回しながら押し込めはしたが、チャンスメイクまでは物足りない!というのが日本の動きだった。

 オマーンの保持に対する日本のプレスはあまりハマっていなかった。4-3-3での守備だとアンカーへのプレスがかからない上に、サイドにおいてもSBをつり出してIHやFWを裏に抜けさせて日本のサイドの裏からの侵入を成功させることもしばしば。

 オマーンはなんでこういうことを中国戦でもやらなかったのか不思議で仕方がない。アバウトで雑なクロスを繰り返しては跳ね返されるというおおよそ日本戦の彼ららしくないプレーを数日前には見せていたので、日本戦だけつなぎでやたららしさを見せたがるのかがちょっとわからない。身体能力に長けてはいるけど、規律の部分で怪しさのある中国の守備にも十分通用する保持だったはず。

 ましてや日本と異なり、中国には絶対的な最終ラインの要がいない。PA内で吉田や冨安相手に後手を踏んでばかりだったこの日とは異なる結果になってもおかしくはなかったはずである。

 日本の最終ラインはベトナム戦よりも安定していた。状態を不安視していた長友、吉田も及第点の出来、速い攻撃は比較的スマートに止めることが出来ていた。そのため、オマーンの攻撃もまたなかなか前に進むことが出来ず。

    アンカーシステムに対して日本のプレスがハマらないのはもはやおなじみだが、前回対戦時よりもオマーンはアタッキングサードにおけるオフザボールの質と量は少し割引かなという印象。日本と同じようにオマーンもまた攻め手がなく苦しんでいた。

 後半、日本は三笘を投入し、4-3-3から4-2-3-1にシステム変更。システム変更のほかにも個々のポジションを微調整したのが特徴で、例えば前半高い位置を取った長友は大外を三笘に譲り、攻め上がりを自重。三笘との関係性がより深い田中碧をサイドに流しながらサポート役として付けることで、ドリブラーだがソリスト専門ではない三笘の手助けをしていた。

   もともと左に流れながらのプレーが多かった南野も含めて、左サイドには人数をかけるようになった日本。三笘投入の効果は絶大。1人ないしは2人をかわすという前半の日本にはなかったプレーで、オマーンの右サイドを切り裂く。その分、右サイドはかける人数が少なく、伊東の裏抜け頼みの側面が強くなっていた。

 田中がサイドに流れる分、負荷がかかったのは中央でのネガトラの局面。前半よりも中盤が高い位置を取ることが多かったので、日本は被カウンター対応を何とかしなければいけなかった。ここで光ったのが中央でバランスを取った遠藤と長友に代わって入った中山。オマーンのアタッカー陣に前を向かせる前に摘み取ることで、日本は波状攻撃に移行することが可能に。

 三笘が伊東にアシストを決めた貴重な先制点も中山の高い位置でのインターセプトから。三笘のボールの引き取り方もさることながら、中山のお膳立ても見事。後半に入った2つの武器がエースの伊東の元にシュートチャンスをつなぎ先制点をゲットした。

 オマーンはボールを運べはするものの、PA内に迫るための武器が見いだせずに悪戦苦闘。プレスは剥がせるけどチャンスは作れないという状況を試合最後まで解決することが出来なかった。

 試合は日本が逃げ切りに成功。交代で入った新しい武器とエースの融合で2位浮上。ようやく予選突破に向けて明るい兆しが見えてきた。

試合結果
2021.11.16
カタールW杯アジア最終予選 第6節
オマーン 0-1 日本
スルタン・カブース・スポーツ・コンプレックス
【得点者】
JAP:81′ 伊東純也
主審:コ・ヒョンジン

2022/1 招集メンバー

第7節 サウジアラビア戦(A)

■オマーンの4-4-2フラット採用の意図は

 中盤をダイヤモンドにする4-4-2が今予選のトレードマークとなっているオマーン。しかしながら、最終予選でホーム全勝という今大会最高難易度と言っていいサウジアラビアとのアウェイゲームで、中盤をフラットに変更する決断を下す。

 2トップに早いボールを当てるオマーンの攻撃を見ると保持面であまり効いている感じはしなかったので、やはりこのシフトチェンジはサウジアラビアの攻撃に対抗するためのものと考えるのが自然だろう。

 サウジアラビアのビルドアップはCBとCHの4枚にGKを加えたもの。やや右サイド側のカンノが上下することでズレを作ろうとしていた。これに対して、オマーンはカンノにマークをつけつつ、内側を固めることでサウジアラビアの内側をまずは封鎖する。出し手には厳しくチェックには行かないけど、受け手には厳しくチェックをするというメリハリをつけながらオマーンはサウジアラビアを封じる。

 それならばということでサウジアラビアは大外を使う。攻め上がりとなればサウジアラビアは左サイドのアッ=シャハラーニーが登場。サウジアラビアはビルドアップで相手をなるべく引き込みながら大きな展開で一気に縦に進めるという緩急の付け方でオマーンを揺さぶる。

 しかし、オマーンはこれに対しても準備をしてきた。5レーンを意識した大外を活用した攻撃に対しては、2列目のSHが位置を下げながら最終ラインを5枚にして対応するように。SHは最終ラインに落ち過ぎても重心が下がってアウトだし、もちろん間に合わなくなってもアウト。シビアな状況判断が求められる役割だった。

 おそらく、オマーンが4-4-2フラットを採用したのはこの最終ラインの人数調整が容易だからだろう。よって、サウジアラビアの5レーンアタックを意識したフォーメーション変更というのがこの試合のオマーンの意図と見る。

 サウジアラビアの先制点はオマーンが最終ラインの人数を揃えることができなかったところから。厳密にはオマーンの戻りは間に合っていたのだが、遅れてしまった分あっさりかわされてしまい、アシストとなるクロスを許してしまう。ある意味、アル=ブライカーンの決めた先制点はオマーンのこの試合の対策の有効性を示したものと言ってもいいだろう。

 オマーンは後半になると4-4-2ダイヤモンド採用時のような同サイド偏重な攻撃を見せたり、中央ワイドのプレーエリアを問わずに2トップをサポートできるアルアグバリを投入することで攻撃に厚みを持たせたりなど、サウジアラビアのゴールに迫るクオリティは十分に見せていた。

 ラストワンプレーのCKも惜しくも枠外。最後の最後まで得点のチャンスを作っていたオマーンだったが、サウジアラビアの牙城を崩すことはできず。冷や汗をかいたサウジアラビアだったが、なんとか逃げ切りW杯本戦出場に王手を賭ける一勝を挙げた。

試合結果
2022.1.27
カタールW杯アジア最終予選 第7節
サウジアラビア 1-0 オマーン
キング・アブドゥッラー・スポーツシティ
【得点者】
KSA:48′ アル=ブライカーン
主審:ナワフ・シュクララ

第8節 オーストラリア戦(H)

■優位に立つも2回の誤算でフイに

 オマーンは4-4-2のフラットのフォーメーションを採用。前節と同じ陣形ででグループ内における3強の一角崩しに挑んでいく。だが、この形は個人的には前節と比べて機能しなかったように思う。

 まず、オーストラリアの4-2-3-1からムーイをアンカーに下ろしての逆三角形のビルドアップにうまく対応できていなかった。おそらく、オマーンは2トップが2CB+アンカーの3枚を監視する形を実現したかったのだと思うのだけど、ここが機能しなかった。枚数が合わない分、ホルダーを捕まえられないことに加えて、オーストラリアはオマーンの最終ラインに対してスピード面で優位。高く設定されたオマーンの最終ラインの裏に積極的に蹴り飛ばすことによってチャンスメイクに成功していた。

 オーストラリアはこの優位を生かし15分にボイルが裏に一発で抜け出した形からPKをゲット。これをマクラーレンが沈めて先制。上位2チームを追いかけるための順調な滑り出しを見せる。

 オマーンの4-4-2フラットは保持の面でも難あり。予選序盤で存在感を見せることができたのは段差の多い中盤が菱形の4-4-2で多くの斜めのサポートを作ることができていたから。4-4-2フラットでは構造上、斜めのパスコースはあまり多く存在しない。

 オマーンはパスコースを創出しようと動き出しても、オーストラリアの中盤は同サイドにグーッと圧縮をかけることで密集をそのまま押しつぶす。オーストラリアは積極的にボールを取り上げることはしなかったので、保持率こそ両チームで差がない展開だったが、主導権はオーストラリアのものだった。

 順調に時計の針を進めていたオーストラリアだったが、後半の途中でまさかの誤算。トランジッションから攻め上がったSBのカラチッチの裏を使われてしまう。カバーに入ったCHを嘲笑うかのように、オマーンはCHが空けたバイタルからミドルを放ちワンチャンスをものにする。オーストラリアにとっては高くつくミスとなってしまった。

 後半のオーストラリアはサリーでバックラインの数的優位を確保し、外循環でボールを前に届けて、クロスを上げることで敵陣に迫る機会が多かった。このクロスがファーに届けば、4枚で迎え撃つオマーンのバックスは対応が難しくなる。そのため、クロスがファーに正確に届くかどうか?がオーストラリアの攻撃がうまくいく分かれ目となっていた。

 79分に勝ち越し点を生んだのもファーへのクロスで競り合うことができたから。こぼれたボールをデュークが落とし、攻め上がっていたムーイが叩き込んで再びリードを奪う。

 これで決着かと思われた試合だったが、終了間際にオーストラリアはまさかのPK献上。人数をかけて囲っていた気になっていたボールホルダーに裏へのパスを出させたことがまずは問題な気がするが、1点目と同じくカラチッチの裏を取られてしまっての失点は切ない。

 2回追いつかれてしまい勝ち点3を積む機会を逃してしまったオーストラリア。3月シリーズの日本とサウジアラビアとの連戦を厳しい状況で迎えることになってしまった。

試合結果
2022.2.1
カタールW杯アジア最終予選 第8節
オマーン 2-2 オーストラリア
スルタン・カーブース・スポーツコンプレックス
【得点者】
OMA:54′ 89′(PK) ファワズ
AUS:15′(PK) マクラーレン, 79′ ムーイ
主審:モハメド・ハッサン

2022/3 招集メンバー

第9節 ベトナム戦(A)

■物足りなさが残る中で4位を確定させる

 おそらく、現地映像のトラブルのせいで立ち上がりの7分ちょっとくらいは見れないというなかなかパンチの効いた試合になったベトナム×オマーン。というわけで立ち上がりの展開はよくわからん!というのが正直なところではあるが、基本的には力関係が上のオマーンの方がポゼッションを高めながら試合を進めていた。

 フォーメーションの噛み合わせ的にはオマーンのポゼッションにおいてはSBが空く。ベトナムの5-3-2のフォーメーションに対して、オマーンはすでに最終予選のおなじみになった同サイドのオーバーロード気味の攻撃でベトナムのゴールに迫っていく。

 仕上げとなるのは裏抜け。右サイドの大外のアル・ハルティの抜け出しを終点としてベトナムのバックラインを押し下げていく。逆にいえば、この裏抜けが仕上げにならないとオマーンの攻撃は完結しない。いつもに比べればこのオフザボールの動きの量は少ない感じで、その分相手ゴールに迫る迫力は割引されている感じはした。

 一方のベトナムもなかなかいつも通りには行かない感じ。19番、エースのグエンの存在感はこの日は希薄。落ち着きながらのボール保持はできているので、オマーンに一方的に攻められ続けしまう!という展開は避けることができてはいたのは確か。しかし、ここまでの予選において攻撃の仕上げのほとんどに絡んできたグエンの存在感が低くなると物足りなさが出てくるのは当然だろう。オマーンと同じく、裏抜けで一気にシュートまで持って行きたいが、なかなかいい形を生み出すことができない。

 迎えた後半はベトナムが押し込みながらのスタート。敵陣でのプレーを増やしながらセットプレーを獲得し、あわやハンドからのPKを得るところまではオマーンを追い込むことができていた。

 しかしながら、セットプレーから結果を出したのはベトナムではなくオマーン。65分にコーナーキックの流れからアル・ハシリが先手をとって均衡を破る。

 ベトナムはここから中盤からの飛び出しの量を増やしながら、前線の厚みを増そうと試みるが、がっちり守るオマーンに対してなかなかこじ開けることができない。むしろ、跳ね返されての手早い攻撃への以降で逆にオマーンに脅かされることもあった。

 どちらも攻撃で迫力を出せない中でセットプレーでの1点を守ったオマーン。これで勝ち点を2桁に乗せることに成功。グループBにおける4位を確定させて最終節を迎えることとなった。

試合結果
2022.3.24
カタールW杯アジア最終予選 第9節
ベトナム 0-1 オマーン
ミー・ディン・スタジアム
【得点者】
OMA:65′ アル・ハシリ
主審:ハンナ・ハットタブ

第10節 中国戦(H)

■良化の兆しはあるが結果は出ず

 共にプレーオフ進出の目もなくなってしまい、第10節は完全な消化試合になってしまった両チームの対戦。互いに高い位置からのプレッシングを行っており、試合のテンポはあまり落ち着かない中での試合となった。

 意外だったのはどちらかといえば保持の時間が長かったのは中国の方だということ。これまでは5バックは割と専制守備の要素が大きかったが、この試合においては3枚のバックラインを軸にオマーンの2トップをプレスで振り回していた。

数的優位を活用しつつ、ワイドのCBから持ち上がり、相手を同サイドに寄せたところで逆サイドのWBにボールを届けるという中国の保持の流れは非常にスムーズ。中央に人が多いことを活用しながら、同サイドに圧縮をかけるやり方を得意とするオマーンのプレッシングを空振りさせるポゼッションで敵陣に迫っていた。

 これにより、オマーンの前線3枚は綺麗に置いてけぼりになる形に。4-3ブロックを押し下げてファイナルサードに迫るところまでは中国は出来ていた。

 一方のオマーンは中国へのプレスに苦しんでいた。中国のプレスは前線のチャンのプレスに両WGのどちらかが追従したところでスイッチが入る。オマーンは余裕がなくなりマイナスのパスを出したところを中国のプレス隊が追いかけることでボールロストを誘発させられていた。中国はプレスが決まった後、ショートパスを挟むせいでなかなかカウンターに行けていなかったのだけど、ボールのロストの仕方自体は結構危険だった。

そのため、オマーンの前進の手段は前線へのロングボール一発。そこからタメを作りながら攻め上がりを待って、一気に相手を押し下げる形である。

戦い方としてスマートなのは中国の方なのだけど、点が入るのはオマーンなのだからおもしろい。アルハジリとのパス交換で前に出たアラウィが先制点を挙げる。その後も、中国の保持に押し込まれつつサイドの裏に流れる前線のタメを活用する形で効率的に反撃するオマーンだった。

 後半もこの構図は変わらない。中国は押し込むことまでは出来てはいたし、オマーンは一発のカウンターで反撃を狙う。中国で物足りなかったところはWGの突破力だろうか。オマーンのサイドのフォローが早かったこともあるが、ドリブルでここが一枚抜けるのならば戦い方は全然違ったように思う。が、それができないからこそ、中国はどこか決め手に欠ける攻撃になってしまっていた。

 そんな中国を尻目にオマーンは追加点。中国が強引に中央をこじ開けようとする縦パスを入れたところをオマーンがカットし、そのまま2点目をゲットした。

 その後も決め手に欠ける状況は変わらない中国。ポゼッション良化の兆しは見えたが、最後までゴールに迫る術を見つけることができず、最終戦を黒星で終えることになった。

試合結果
2022.3.29
カタールW杯アジア最終予選 第10節
オマーン 2-0 中国
スルタン・カーブース・スポーツコンプレックス
【得点者】
OMA:12′ アラウィ, 74′ ファワズ
主審:コ・ヒョンジン

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