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「Catch up FIFA World Cup Qatar 2022 Asia qualifiers」~カタールW杯 アジア最終予選 中国代表編

 中国代表、カタールW杯アジア最終予選の歩み。

目次

2021/9 招集メンバー

GK
イェン・ジュンリン(上海海港)
リウ・ダンゾ(広州FC)
ワン・ダイライ(山東泰山)

DF
リー・アン(上海海港)
ワン・シンチャオ(上海海港)
コ・ジュンイ(広州FC)
チャン・リンペン(広州FC)
ティアス・ブラウニング( 広州FC)
ワン・ガン(北京国安)
ユ・ダバオ(北京国安)

MF
ハオ・ジュンミン(武漢)
チャン・シージャー(北京国安)
ジン・ジンダオ(山東泰山)
ウー・シー(上海申花) 
チ・チョグオ (北京国安)
イン・ホンボ(河北)

FW
ウー・レイ(エスパニョール/スペイン)
エウケソン(広州FC)
アラン(広州FC)
ウェイ・シーハオ(広州FC)
ウー・シンハン(山東泰山)
チャン・ユーニン(北京国安)
アロイージオ(広州FC)

第1節 オーストラリア戦(A)

画像1

■本命たる所以を発揮

 日本と同じく2次予選を全勝で突破したオーストラリア。グループBは突破の本命として戦うことになる。帰化戦略で戦力を増強した中国とカタールの地で迎える最終予選の初戦である。

 ゆったりとした保持で試合に入ったのはオーストラリア。自陣の浅い位置まで使った深さをもたらすビルドアップで、中国をおびき寄せる。それに対してどこまで出ていくか?という部分を問われた中国。若干その対応は曖昧になっていたように見えた。特に左サイドハーフの17番のウー・シンハンが出ていったあと、ややポジションに戻らないことで、大外を空けてしまうことが気になった。

 オーストラリアはSBを左側だけ上げる意識を高める3バック的な変形。左はSBのベヒッチが高い位置を取り、WGのメイビルがやや絞り目の位置。やや5レーン意識は高いチームのように思えたが、右の大外は埋まらないこともあった。CHは縦関係でアーヴァインがDFラインからボールを引き出す役割をこなす一方で、フルスティッチは前目に位置する。

 オーストラリアの前線が大事にしていたのは奥行き。特に両WGの2人が縦に抜ける意識が高め。2点のゴールはどちらもWGの裏抜けが効いたところから。中国のミドルゾーンに構えるバックラインをあっさり壊してしまった。

 中国のビルドアップは2人のCBに対してうまくサポートを作れなかったように思う。SBは早い段階で上がってしまい、CHは背中でオーストラリアのトップに消されており、前線に蹴るしかやりようがない。だが、エウケソンは独力でキープ力を生み出せるほどの凄みはなし。偶発的に右のウー・レイのドリブルがスピードに乗った時しかチャンスにならなかった。

中国は押し込んだ際もサイドの攻撃の糸口はなし。手詰まり感がオマーン戦の日本の振る舞いと似ている感じがしたのは寂しかった。特にエウケソンのポストを使ってサイドを変えた後の停滞感とかはそっくり。結局個人技頼みが否めなかった。オーストラリアが流麗なサイドチェンジからダメ押しの3点目を決めたのとはあまりにも対照的だった。

 試合はオーストラリアの完勝。内容をみても保持での落ち着き、カウンターの威力、横断での崩しなどあらゆる局面でオーストラリアが中国を上回り、グループBの本命としての存在感を示した。

試合結果
2021.9.2
カタールW杯アジア最終予選 第1節
オーストラリア 3-0 中国
ハリーファ国際スタジアム
【得点者】
AUS:24′ メイビル,26′ ボイル, 70′ デューク
主審:コ・ヒュンジン

第2節 日本戦(H)

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■苦しみの程度が違う

 共に初戦の敗戦で厳しい最終予選のスタートとなった中国と日本。中国はオーストラリア戦の4-2-3-1から5-3-2にシステム変更。脆さを見せたバックラインを固めるために形を変えてこの試合に臨んできた。一方の日本はフォーメーションは維持。離脱組や合流組の顔ぶれの変化も相まって久保、古橋、冨安、室屋の4人をスタメンに新たに起用してきた。

 日本のオマーン戦の課題は中央に固まる相手を攻略できなかったこと。中国が5-3-2を採用しているのは、オマーンに形だけでも近づけて日本を初戦と同じような手詰まりに追い込もうとしたのかもしれない。

 同じ形で臨んだ日本だったが紐解いてみるとやや変化があった。1つは左サイドに起用された古橋がPA付近の前線に張るケースが増えたこと。動き出してもらいやすいインサイド寄りの立ち位置の方が、前回のような大外に貼る使われ方よりもやりやすそう。

オマーン戦に比べれば大迫が中央でボールを収められたのも大きい。前線はエリア内のスペースにおける動き出しで勝負できており、前回よりは持ち味を発揮できていたように思う。欲を言えば、外を使う長友と古橋の関係性を構築できなかったのは痛かった。内から外への斜めのランを使えれば久保や柴崎が飛び込めるスペースはもう少しできたように思う。

 右サイドにおいては久保が崩しに加わったことが大きかった。オマーン戦では酒井と伊東という2枚の関係でヨーイドンの裏抜け一発勝負だったが、このサイドに久保が加わることでボールも人も動きが出るように。伊東や室屋がボールを引き出すためのフリーランで中国のDFラインを下げることができていたし、久保自身も中国の中盤の隙間に入り込むカットインを織り交ぜながら内外を使い分けることができていた。中の守備がスカスカだった相手の力量の問題もあるが、レパートリーとしてはオマーン戦よりも増えたように見える。

 しかし、当然まだ問題もある。1番気になったのは攻撃時に左サイドで長友が孤立しまうこと。オーバーラップするのは大事だとは思うが、彼が1人で持ち上がったところでできることは限られている。インスイングでクロスを上げるのが一杯で、高さの面では分がある中国の最終ラインに対しては効果的ではなかった。

 もっともこれは長友のせいだけではない。彼がそういうプレイヤーだというのは今に始まった事ではないし、サポートがいない中でも輝けるSBはそもそもなかなか日本にはいない。

 むしろ気になるのは中盤のポジションバランスの方。特に柴崎はどうバランスを取ったらいいのか悩んでいるように見えた。行動範囲広くフリーダムにボールを持ち運ぶ嫌いがある選手なのだが、右サイドでは久保が下がってボールを運ぶところからトライアングルの崩しまでは担当できる。そういう中で柴崎は持ち味の棲み分けには困っていた印象。

むしろ彼には孤立する左サイドの手助けをして欲しかったところ。右サイドですでに人数がいるところで浮遊していてはネガトラの際の対応にも効かないし。オマーン戦では中央を固める相手とのミスマッチさを指摘したけど、中国戦では味方との相性の部分が気になった。コンディション以上にミスマッチ感がどうしても気になってしまうのが今の柴崎である。

 30分を過ぎたあたりから日本は徐々にボールは足元から足元につながる形が増える。こうなると停滞感が出てくる。それでもある程度崩せてしまうほど、中国の中央密集の守備は脆かったけど。それでも受けてから考える感の強い崩しは気になる。

このメンバーでの崩しならば、伊東と古橋をまずどう抜けさせてスピードに乗った状態で敵陣に迫るか?から逆算してもいいのではないか。ラインが低くても初速で逆を取れるランができる彼らならば、動き出しで違いは作れるはず。

 なので、日本はこの2人にボールを届けるレパートリーを見せて欲しかった。徐々に足元に収束していくのは少し残念だったし、得点シーンのように独力で伊東がスピードに乗りながら加速できることを許す相手が本大会に多く存在するとは思えない。大迫のキープ力が弱まる中で、彼らの動き出しをどう活用するかは最終予選を通しての日本の課題になりそうだ。

 一方の中国はより厳しい状況だった。エウケソンは吉田、冨安はもちろん、室屋を相手にしてもロングボールのターゲットとしては機能せず。陣地回復の方法を見つけることができず、ローラインからの脱出方法がなかった。

 後半の4-4-2の変形でのマンマークチャレンジはやけっぱち感が否めない。確かにアタッカー陣は攻撃の機会を得れば強力かもしれないが、ボールを取り返すのに特化した面々ではないし、日本代表は局面での対人勝負に限ればアジアではそもそも非常に優位な立ち位置にいる。日本の得意なフィールドで、かつボール奪回の機会を増やせない設計となれば、びっくり箱以上の効果はないのは当然だと思う。

案の定、彼らのプレスが脅威になったのはせいぜい10分程度。なんか、 ONE PIECEのルフィに負ける前のモリアみたいだなと思った。監督は解任危機も叫ばれていたし、仕方ないのかもしれないが。

 試合はそのまま終了。互いに苦しみが見える一戦だったが、下馬評通り日本が勝利。局面での質の差が勝敗を分けたと言っていい試合だろう。

試合結果
2021.9.7
カタールW杯アジア最終予選 第2節
中国 0-1 日本
ハリーファ国際スタジアム
【得点者】
JAP:40′ 大迫勇也
主審:ナワフ・シュクララ

2021/10 招集メンバー

GK
イェン・ジュンリン(上海海港
リウ・ダンゾ(広州FC)
ワン・ダイライ(山東泰山)
ドン・チュンユー(武漢卓彌)

DF
リー・アン(上海海港)
ワン・シンチャオ(上海海港)
コ・ジュンイ(広州FC)
チャン・リンペン(広州FC)
ティアス・ブラウニング( 広州FC)
ワン・ガン(北京国安)
ユ・ダバオ(北京国安)
ワン・シャンユェン(河南建業)

MF
ハオ・ジュンミン(武漢)
チャン・シージャー(北京国安)
ジン・ジンダオ(山東泰山)
ウー・シー(上海申花) 
チ・チョグオ (北京国安)
イン・ホンボ(河北)
リュー・ビンビン(山東泰山)

FW
ウー・レイ(エスパニョール/スペイン)
エウケソン(広州FC)
アラン(広州FC)
ウェイ・シーハオ(広州FC)
ウー・シンハン(山東泰山)
チャン・ユーニン(北京国安)
アロイージオ(広州FC)
グオ・タンユー(山東泰山)

第3節 ベトナム戦(H)

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■ラインの駆け引きを制したウー・レイが勝利の立役者

 予想通り、9月は苦しんだグループBにおいては格下の両チーム。上位勢に少しでも近づけるようにまずはきっちりここで勝利を掴んでおきたいところである。

 主導権を握ったのは中国。攻撃時は3-2-5に変形。18番のチャンを中心にエウケソンとウー・レイがシャドーで待ち受ける形を作る。ベトナムの守備は5-4-1で後ろに重く構える形で迎え撃っていたのだが、ライン間のスペースの管理がややルーズ。ラインのスペースが空いてしまったり、後ろから捕まえにいってファウルを犯したりなど中国に対して中央を封鎖することができていなかった。

 中国の武器はもう一つ。左サイドの縦関係。17番のリュー・ビンビンと3番のワン・シンチャオのコンビでクロスを上げるところまで持っていき、PAに迫っていく。ただし、中国は精度がイマイチ。長いボールやクロスの精度が欠けており、最後のところでベトナムのゴールを脅かすことができていなかった。

 一方のベトナムも攻撃においては苦戦。グエン・フォンが高い位置を取ることで5バックから攻撃的な形にシフトし、高い位置からの攻撃を狙ってはみたもののやや硬直気味。9月に見せたような細かいパスを素早く繋ぐ小気味いい攻撃は完全に形を潜めてしまう。単純なアスリート的な身体能力は中国の方が上だけに、攻撃が一度止まってしまうとベトナムは一気に苦しくなる。この日のベトナムはテクニックの部分でもやや難があり。トラップが流れてしまう場面が目立ってしまっていた。

 中国有利で進んだ展開は後半にスコアが動く。ベトナムが高い位置からプレスに行ったところを中国がロングボールで一気にひっくり返す。最終ラインの駆け引きでも中国は優位に立っていたのだが、ようやくロングボールからウーレイの抜け出しで先制。日本相手には起点になれなかったFW陣がロングボールを収めることでようやく中国は得点を手にする。

 2得点目もラインの駆け引きから。ベトナムの守備陣は中国のアタッカー陣の上下動に対応することができていなかった。こうなると中国は一気に優位に。とりあえず撤退し、ベトナムの攻撃のミスを待ち続けるだけでいい。自陣に引く中国に対してベトナムは苦しむ。

 だが、80分にベトナムは反撃ののろし。ミスが多く、PAまで迫るところまでいけなかった試合だったが、そこまでいければ得点ができることを証明して見せた。さらに終了間際にベトナムは追いつく。攻撃の核であるグエン・クアン・ハイの技ありのアシストで90分に同点弾を決める。

 しかし、試合の流れは最終盤に再度中国の元に。チームを救ったのは再びウー・レイ。ベトナムの守備陣との駆け引きを制し終了間際に勝ち越し。中国に劇的な予選初勝利をもたらした。

試合結果
2021.10.7
カタールW杯アジア最終予選 第3節
中国 3-2 ベトナム
シャルージャ・スタジアム
【得点者】
CHI:53′ チャン・ユニン, 75′ 90+5′ ウー・レイ
VIE:80′ ホー・タン・タイ, 90′ グエン・ティエン・リン
主審:モハメド・アブドゥラ

第4節 サウジアラビア戦(A)

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■安全第一でも崩し切れる

 日本を倒しての3連勝。グループ突破のライバルに早くも勝ち点差6をつけ、上々の序盤戦を過ごしているサウジアラビア。今節の対戦相手は前節辛くもベトナムをふりきることが出来た中国だ。

 試合は予想通りサウジアラビアの保持の時間中心で始まった。普段だったら3-2-5の変形から中央にパスを入れて、そこから左右に展開。クロスを上げるというのがサウジアラビアの攻撃の一連の流れなのだが、この日はサイドにボールを流す機会が多かった。

 その理由は中国の5-3-2の布陣にあるように思う。中央偏重のこの形に対して、サウジアラビアの面々は中央を避けたボール回しを行っていた。ナチュラルに配置をすれば、サウジアラビアの4-2-3-1は中央に2CH、トップ下がいるはずなのだが、この日は多くの状況でトップ下のアル=ファラジュのみが中央にいることが多かった。CHの2人はサイドに流れてブロックの外で受ける形である。

 そうなると、サウジアラビアは前に人がいないんじゃない?という状況になる。確かにこれまでのサウジに比べると攻撃の迫力は薄れている感もあった。だけども、その分サイドにおいて丁寧にラインを下げさせてしまえば十分にペースは握れる。

    中国の攻撃は明らかに2トップに渡してからのスピード勝負の様相だったので、進んでその機会を与えるようなショートカウンターをどうしてもサウジアラビアは避けたかったのだろう。ブロックにひっかけないように、外を回しながら押し下げるサウジアラビアだった。

 先制点はサウジアラビア。押し込んだ流れからのセットプレー。外循環がクリティカルに崩しに効いた感じはしなかったが、サイドからきっちり押し込んだゆえの結果だったとは言えるだろう。

 2点目は中国の手薄な大外を突っついたところから。中央を割れなくても問題なく外から叩き割って見せた。失点を重ねる中国は徐々に中盤より前の中央封鎖の意識が低くなってきたため、サウジアラビアはだんだんと外循環にこだわらなくても十分に崩せる展開になっていった。

 後半、中国は帰化組を一気に投入。すると、効果はすぐに。ゴンサアウヴェスのスーパーゴールであっという間に1点差に追いつく。しかし、日本戦でも述べたように中国の帰化組一挙投入は諸刃の剣。攻撃力が上がる一方で、展開をソリッドに維持するのは不可能で無秩序状態になる。

 中国の後半の動きが輝いたのはその一瞬だけ。それ以外の局面では前半よりもさらにのびのびとプレーするサウジアラビアの選手たちを前になす術がなかった。

試合結果
2021.10.12
カタールW杯アジア最終予選 第4節
サウジアラビア 3-2 中国
キング・アブドゥッラー・スポーツシティ
【得点者】
KSA:15′ 38′ アルナージー, 72′ アルブライカーン
CHI:46′ ゴンサウヴェス, 87′ ウー・シー
主審:タンタシェフ・イルギス

2021/11 招集メンバー

第5節 オマーン戦(H)

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■遠さがる3強の背中。緻密さを欠き痛恨のドロー

 立ち上がりにペースを握ったのはオマーン。4-4-2で構えた中国に対して、アンカーの落ちる動きを軸にズレを作りボールを保持する。中国は中国でこの状況を受け入れる構えだった。

 オマーンの方針は相変わらずで、サイドはSB+流れてくる1人の選手くらいで、残りの選手はPA内に集中。エリア内の人数確保を実施し、クロスに飛びこむ選手を複数人準備するという方針で攻撃を行う。

 オマーンの攻撃にはいくつか気になる部分があった。例えば、サイドからクロスをあげるのがやや強引だったところ。以前はもう少しサイドに流れるのが積極的だったり、サイドでの崩しがもう一手、二手多く行われてからクロスを上げるパターンが多かったように思えた。

 この試合ではオマーンが比較的早い段階でのハイクロスを選ぶことが多かった。そうなると、エリア内のフィジカル面で優位を取れるわけではないオマーンはフィニッシュの局面で難を抱えることになる。そういう意味では今までのオマーンと比べて緻密さに欠けているように思う。

 オマーンは狭いスペースを打開する技術の高さや相手を吹き飛ばせるフィジカルの強さを持ち合わせているわけではないので、アバウトさが増してくると帰化選手たちを多く並べた中国に流れが傾く。狭いスペースに無理に通そうとすると、中国のカウンターの餌食になるオマーン。

 先制点を取ったのも中国。セットプレーには特段工夫があったわけではないが、オマーンはデュエルに対して後手を踏み、最後はウー・レイの動き出しに屈した。

 ビハインドに陥ったオマーンはサリーの頻度を増やし、SBが高い位置を取る頻度を増やすことでさらに攻勢を強める。前半は保持のオマーン、非保持の中国で均衡だった感じだけど、後半はややオマーンに流れたイメージ。しかしながら体力が続くうちにおいつくことが出来ず、選手交代で盛り返す中国に攻め返される。

 試合を分けたのはまたしてもセットプレー。点をとったのはオマーンの方。中国はGKが出ていったにも関わらず、触れなかったのが痛恨。ミスに分類してもいいセットプレーだろう。オマーンの猛攻フェーズを乗り切っただけにもったいなかった。

 そこから先はグロッキー気味に戦うことになった両チーム。カウンターの応酬で間延びした陣形で撃ち合いを行うも、最後まで点が入ることはなかった。3強についていきたかったオマーンとしては手痛い引き分け。内容的にも若干割引感が否めず、悲願のW杯はやや遠ざかった感がある。

試合結果
2021.11.11
カタールW杯アジア最終予選 第5節
中国 1-1 オマーン
シャールジャ・スタジアム
【得点者】
CHI:21′ ウー・レイ
OMA:75′ アル・ハルティ
主審:シバコーン・プウドム

第6節 オーストラリア戦(H)

■高さオンリーの解決策で納得のドロー

 割と保持に対する意識が強かった今予選これまでのオーストラリア。しかし、この試合はデュークを狙いとしたロングボールを増やしており、比較的ダイレクトな展開を織り交ぜての前進となった。

 それでも保持の時間が多いのはオーストラリアの方。2CBをサポートするように、動き回るフルスティッチとジェッコの2人を軸としたビルドアップで組み立てを行う。しかしながら、前進した後の武器が乏しかったのがこの日のオーストラリア。中国はSHが撤退してラインを下げることをサボらなかったので、オーストラリアが積極的にSBをオーバーラップさせたとしても、同数で攻める形は変わらず。左のSBのベビッチが攻め上がる機会は多かったが、抜き切ってのクロスは比較的少なかった。

 オーストラリアはなかなかこの状況を動かすことができない。対面にマークがいてもあげられるハイクロスを中心にPAに迫るが、中国はCBが跳ね返し続ける。特にブラウニングの存在が大きく、中国はオーストラリアのクロスを粘り強く凌ぎ続けていた。そのため、デュークがサイドに流れながらのミスマッチ狙いなど工夫を施す。

 中国は跳ね返し続けていたが、38分に決壊。スローインからのリスタートへの対応がやや甘くなり、中央での対応の難易度が上がってしまった。クロスをデュークが叩き込んで先制する。

 頼みのブラウニングが負傷し、ビハインドも背負ってしまった中国は後半は保持に打って出る。中国のポゼッションはそこまで特徴的なものではなかったけども、オーストラリアは前節のサウジアラビア戦に引き続き、ボールをプレスで奪い返すことができない。高い位置まで進むことができた中国はそこからロストをしたとしてもプレスを発動してボールを奪取。自分達のターンを引き寄せる。

 しかし、中国は時間が経つにつれて徐々に中盤の横スライドが甘くなることでオーストラリアの中盤に時間を与えるようになる。だが、ここを活かせないのがこの試合のオーストラリア。日本戦ではキックの多彩さを見せたフルスティッチのサイドチェンジがオーストラリアがギャップを作るための手段の一つだったが、この日はキックが不発。違いを作り出すことができない。

 すると70分。試合が動く。何気ないFKの競り合いからジェッコがハンドを犯し中国にPK。これをウー・レイが沈めて同点に追いつく。めっちゃ点取るな。

 ともに勝利が欲しい両チームだが、攻守の入れ替わりが激しくなる終盤でトランジッションで優位に立ったのは中国の方。ゴールこそ許さなかったオーストラリアだが、高さしか手段がなかったこの試合のオーストラリアの攻め手は乏しいもの。結果だけでなく、内容を見てもドローでも致し方なしといった様子だった。

試合結果
2021.11.16
カタールW杯アジア最終予選 第6節
中国 1-1 オーストラリア
シャールシャ・スタジアム
【得点者】
CHI:70′(PK) ウー・レイ
AUS:38′ デューク
主審:アドハム・マハドメ

2022/1 招集メンバー

GK
ワン・ダーレイ(山東魯能)
リウ・ダンゾ(広州FC)
イェン・ジュンリン(上海海港)

DF
ヂゥー・チェンヂィエ(上海申花)
チャン・リンペン(広州FC)
ワン・シャンチャオ(上海上港)
ジェン・ジェン(山東魯能)
ユ・ダバオ(北京国安)
ジー・シャン(山東泰山)
ドン・ハンウェン(広州FC)
リー・アン(山東泰山)
ティアス・ブラウニング(広州FC)

MF
ハオ・ジュンミン(武漢)
ウー・シー(上海申花)
シュ・シン(山東泰山)
ジン・ジンダオ(山東泰山)
チ・ジョングォ(北京国安)
ダイ・ウェイジュン(深センFC)
チャン・シージャー(北京国安)

FW
チャン・ユーニン(北京国安)
タン・ロン(長春亜泰)
ウェイ・シーハオ(広州FC)
リュー・ビンビン(山東泰山)
アロイージオ(広州FC※)
ウー・レイ(エスパニョール/スペイン)
アラン(広州FC※)
フェルナンジーニョ(広州FC※)

第7節 日本戦(A)

■結果が欲しかった南野

 立ち上がりからホームの日本がボールを握って試合を支配する展開となった。日本は左サイドの低い位置からゲームを作り、右サイドに大きく流す形でチャンスメイクを行う。

 日本が目をつけたのは右の大外の伊東純也のところ。サイド攻略を主体に置くチームはトライアングルなどの多角形を軸に壊すトライが普通。だけども、この試合においては右サイドは酒井と伊東の2人で十分。なぜならば伊東のスピードが中国のSBを大幅を上回っていたからである。同数でも、どこにボールを運ぶかがバレていても、純粋にスピードで上回ることができるのならば問題なく攻略が可能。この日の伊東はそんな感じだった。

 右サイドにボールをとりあえず運んではぶち抜く。この繰り返しで日本はチャンスクリエイト。そして、前半中程の段階で中国のハンドを奪取し、PKを獲得。中国に無理な対応をさせ続けた伊東のスピードが招いたPKと言って良いだろう。

 ただ、PK以降においては流石に中国も伊東を警戒。SHが素早くサポートに入り、2対1を作ることでなんとか対応する。さすがの伊東でも対面のSBが縦に抜けることを塞ぐことに集中されると難しい。

 その時に日本が目をつけたのが右のハーフスペース。大外の伊東に意識がいっていることを利用し、大迫や田中、南野がこのスペースに入り込む。カバーも含めて外の伊東に集中していたので、この走り込みは効いていたように思う。

 この試合において評価が難しかったのは南野。ストライカータスクがメインで中央に絞ることはおろか、逆サイドに流れることも頻繁にあった。ワイドに張るタイプのプレイヤーではないので、本人の資質を考えればもちろんそれで良い。

 だけども、左サイドでの仕事はほぼハーフスペースの裏抜けに特化し、リンクマン的な役割はほぼ果たしていなかった。左サイドの攻撃を活性化させる判断より右の優位を利用する判断はわからなくなかったので、できればそれを正当化するためのゴールに絡む結果は欲しかったところ。どこからでも攻められるというやり方よりも、崩しは右サイドに依存してフィニッシャーに特化するのならば、そのリターンを数字でもたらしたかったところである。

 中盤や2列目の選手は比較的相手陣側で受ける姿勢が多かったこの試合。50:50状態でもバックラインは躊躇なくボールを入れたので、中国は谷口を中心に狙いを定め、徐々に縦パスをカットしてカウンターに転じる場面が目につくように。

 後半に入った前田は一瞬の抜け出しでCBからのパスから決定機まで結びつける役割を託されたように思う。個人的には相手の意識をライン間の縦パスから逸らす役には立っていたと思うけど、トランジッションが多いわけではなかった展開的には不向きだった。むしろ、サウジ戦に向けた試運転の意味合いが強そうに思う。

 同じ交代選手の中で結果を出したのは中山。スローインから怠慢だった中国の右サイドの守備からフリーになり、ファーの伊東へとクロスを送る。地味に柏出身のホットライン。中山は大外でもクロスからチャンスメイクができるとは恐ろしい男である。

 個人レベルで言うと田中碧はもう少しできても良かったように思う。非保持の守備の強度は十分だったけど、ボール関与の部分はもっとできたかなと。縦にパスを刺す速度や精度とか、攻め上がりの頻度とかはもう少し気にしていきたいところである。

 伊東のゴールとPKの2点で安全圏に入った日本。難なく逃げ切りに成功し、3ポイントをゲットし、大一番であるサウジアラビア戦に勢いをつけて臨むことになった。

試合結果
2022.1.27
カタールW杯アジア最終予選 第7節
日本 2-0 中国
埼玉スタジアム2002
【得点者】
JAP:13′(PK) 大迫勇也, 61′ 伊東純也
主審:アブドゥラフマン・アルジャシム

第8節 ベトナム戦(A)

依存脱却で繋がる最下位脱出の望み

 グループBの上位対決となった日本×サウジアラビアの試合の直後に行われたのは、グループのボトム2によるベトナム×中国の一戦だった。

 中国は日本戦を踏襲する4-4-2を採用。アランやアロイージオなど、日本戦ではベンチやメンバー外だった帰化組をスタートから起用するという変化を付けてきた。

 一方のベトナムは5-3-2。5-4-1との2択感があるが、キーマンであるグエン・クアン・ハイの位置が低くなるこちらのフォーメーションで中国と向き合うこととなった。

 ベトナムの3センターは左右に動きながら中国の攻撃を片側に寄せる試みを行う。これに対して中国はその密集をかち割るようなアプローチ。パス交換から3センターの間を通すような縦パスを狙っていく。

 縦パスの受け手として存在感があったのは18番のアロイージオ。フィジカルを活かしてベトナムのDFを背負い、裏を取り走る選手にラストパスを送っていた。中国は2トップ+SH2人がポジションレスに動き回る構造になっていたし、ベトナムの5バックは裏抜けに対する耐性が結構脆いので、このやり方は仕上げとしては悪くはなかったと思う。

 ただ、そもそもの前提となるベトナムの3センターをかいくぐってアロイージオへの縦パスを通すというところの精度はイマイチ。中国はポゼッションでの仕掛けはそこまでできるチームではないので、その点で苦戦していた。

 対するベトナムは早々に先制する。左サイドからズレを作り、最後はファーサイドのホー・タン・タイが決めて先手を取る。ベトナムはこれまではグエン・クアン・ハイの一撃必殺ラストパス頼みだったのだが、この試合ではかなりその依存度が下がったように思う。

 例えば、先制点の場面では左の大外から2トップの一角のファン・トゥアン・ハイが同サイド裏に流れたことで、中国のDFラインが乱れて大外の選手ががら空きになってしまっていた。2トップの動き出しがこの試合では崩しのスイッチになることが多かった。中国がその余裕を与えた側面はあったが、ホルダーにプレスをかけられないとこれだけ多彩な崩しは出来てしまうチームということなのだろう。

 セットプレーからの同サイド崩しで追加点を得たベトナムは試合を終始支配。ボールこそ、中国に渡す場面が多かったが中国が効果的に攻められている場面は少なかった。

 後半、中国はアロイージオ、アランを下げて狭いところを打開にこだわるよりも、広いスペースにボールを逃がすメソッドも併用で採用した感じ。前線で背負えるアロイージオ役は9番のチャン・ユーニンに代わり引き続きインサイドの解決策も探っていく。

 だけども、これも攻め手として確立できないまま時計の針は進んでいく。ビルドアップ隊がこうしたバリエーションを操るほどのスキルがないのが中国の現状である。

 試合は後半に互いに1点ずつを追加して終了。エース依存からの脱却の兆しを見せたベトナムが中国を下し、最下位脱出に望みをつなぐこととなった。

試合結果
2022.2.1
カタールW杯アジア最終予選 第8節
ベトナム 3-1 中国
ミー・ディン・スタジアム
【得点者】
VIE:9′ ホー・タン・タイ, 16′ グエン・ティエン・リン, 76′ ファン・バン・ドゥク
CHI:90+7′ 徐新
主審:ナワフ・シュクララ

2022/3 招集メンバー

第9節 サウジアラビア戦(H)

■イチゴなきお祝い

 第9節の最初の対戦カードであるオーストラリア×日本の結果を受けて、試合前にW杯進出が決まったサウジアラビア。プレッシャーが少ない状況で中国との一戦を迎える形になった。

 試合は序盤からサウジアラビアがボールを握る時間が続く。中国の1トップのチャンの脇にCHのモハメド・カンノ、アル=シェフリの2枚が降りてくることで安定してボールを持つことができるようになっていた。

 だが、ここから先にもう一歩踏み込むフェーズにおいてサウジアラビアは苦戦。ライン間への縦パスは中国のバックラインによる積極的なチェックによって潰されてしまうし、大きく幅を使った展開は中国の5バックとシャドーで挟みながらスマートに対応。サウジアラビアは裏への動き出しもそこまで多くなかったため、後方での安定したボール保持とは裏腹に、ここから先にスムーズに進むことが出来ていなかった。

 逆に中国はカウンターから好機を得る。サウジアラビアのSBの積極的なオーバーラップの機会を逆手に取り、サイドからのカウンターでチャンスを見出すように。序盤でやれて自信がついたのか、30分くらいからプレスに出ていく機会も増えて、サウジアラビアに圧力をかけるケースは徐々に出てくるようになった。

 それでもさすがにサウジアラビアから格上の貫禄は徐々に出てくる。外を循環させながら、サイドからの押し下げの機会を増やすようになったサウジはバイタルからのミドルで中国の守備を強襲するように。左サイドからはアッ=ドーサリーのカットインも見られるようになり、押し込む時間帯が増えてくる。

 すると、前半終了間際。先制したのはサウジアラビア。CKからニアでフリックをしたアル・シェフリのゴールでハーフタイムまでに前に出ることに成功する。

 後半もサウジアラビアが押し込むペースは変わらない。序盤に大ポカからの大ピンチを迎えるが、逆に言えばミスらなければ中国には決定的なチャンスを与えない。大きく幅を使いながらアブドゥルハミドのオーバーラップで奥行きを狙っていく形。前半よりも決定機の数は増える。

カウンターの初動を遅らせることができれば、中国はパスをつないでいるうちにいつの間にかミスる。交代で入った17番のワイツンは脅威にはなっていたが、マークが3枚も4枚もついている状況では何とかするのは難しい。

 だが、ミスって決定機を与えてしまったのがこの日の後半のサウジアラビア。エリア内での軽率なPKから中国に同点のチャンスを与えてしまうことに。

 サウジアラビアは序盤から相手を攻め立ててはいたが、追いつかれてしまうと『なんとしてでも!!』感が薄れてしまうのは仕方ないだろう。W杯出場をお祝いしたかったところだが、勝利というケーキのイチゴを載せるのには失敗してしまったサウジアラビアだった。

試合結果
2022.3.24
カタールW杯アジア最終予選 第9節
中国 1-1 サウジアラビア
シャールジャ・スタジアム
【得点者】
CHI:82′(PK) 朱辰杰
KSA:45+1′ アル・シェフリ
主審:モハメド・ハッサン

第10節 オマーン戦(A)

■良化の兆しはあるが結果は出ず

 共にプレーオフ進出の目もなくなってしまい、第10節は完全な消化試合になってしまった両チームの対戦。互いに高い位置からのプレッシングを行っており、試合のテンポはあまり落ち着かない中での試合となった。

 意外だったのはどちらかといえば保持の時間が長かったのは中国の方だということ。これまでは5バックは割と専制守備の要素が大きかったが、この試合においては3枚のバックラインを軸にオマーンの2トップをプレスで振り回していた。

数的優位を活用しつつ、ワイドのCBから持ち上がり、相手を同サイドに寄せたところで逆サイドのWBにボールを届けるという中国の保持の流れは非常にスムーズ。中央に人が多いことを活用しながら、同サイドに圧縮をかけるやり方を得意とするオマーンのプレッシングを空振りさせるポゼッションで敵陣に迫っていた。

 これにより、オマーンの前線3枚は綺麗に置いてけぼりになる形に。4-3ブロックを押し下げてファイナルサードに迫るところまでは中国は出来ていた。

 一方のオマーンは中国へのプレスに苦しんでいた。中国のプレスは前線のチャンのプレスに両WGのどちらかが追従したところでスイッチが入る。オマーンは余裕がなくなりマイナスのパスを出したところを中国のプレス隊が追いかけることでボールロストを誘発させられていた。中国はプレスが決まった後、ショートパスを挟むせいでなかなかカウンターに行けていなかったのだけど、ボールのロストの仕方自体は結構危険だった。

そのため、オマーンの前進の手段は前線へのロングボール一発。そこからタメを作りながら攻め上がりを待って、一気に相手を押し下げる形である。

戦い方としてスマートなのは中国の方なのだけど、点が入るのはオマーンなのだからおもしろい。アルハジリとのパス交換で前に出たアラウィが先制点を挙げる。その後も、中国の保持に押し込まれつつサイドの裏に流れる前線のタメを活用する形で効率的に反撃するオマーンだった。

 後半もこの構図は変わらない。中国は押し込むことまでは出来てはいたし、オマーンは一発のカウンターで反撃を狙う。中国で物足りなかったところはWGの突破力だろうか。オマーンのサイドのフォローが早かったこともあるが、ドリブルでここが一枚抜けるのならば戦い方は全然違ったように思う。が、それができないからこそ、中国はどこか決め手に欠ける攻撃になってしまっていた。

 そんな中国を尻目にオマーンは追加点。中国が強引に中央をこじ開けようとする縦パスを入れたところをオマーンがカットし、そのまま2点目をゲットした。

 その後も決め手に欠ける状況は変わらない中国。ポゼッション良化の兆しは見えたが、最後までゴールに迫る術を見つけることができず、最終戦を黒星で終えることになった。

試合結果
2022.3.29
カタールW杯アジア最終予選 第10節
オマーン 2-0 中国
スルタン・カーブース・スポーツコンプレックス
【得点者】
OMA:12′ アラウィ, 74′ ファワズ
主審:コ・ヒョンジン

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