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「Catch up FIFA World Cup Qatar 2022 Asia qualifiers」~カタールW杯 アジア最終予選 サウジアラビア代表編

 サウジアラビア代表、カタールW杯アジア最終予選の歩み。

目次

2021/9 招集メンバー

GK
モハメド・アル・オワイス(アル・アハリ)
モハメド・アル・ルバイエ(アル・アハリ)
ザイド・アル・バワルディ(アル・シャバブ)
ファワズ・アル・カルニ(アル・シャバブ)

DF
サウド・アブドゥルハミド(アル・イティハド)
アブドゥレラー・アル・アムリ(アル・ナスル)
スルタン・アル・ガナム(アル・ナスル)
アブドゥラー・マドゥ(アル・ナスル)
モハメド・アル・ハブラニ(アル・アハリ)
アリ・アル・ブライヒ(アル・ヒラル)
ヤセル・アル・シャハラニ(アル・ヒラル)
モハメド・アル・ブレイク(アル・ヒラル)

MF
アブドゥレラー・アル・マルキ(アル・イティハド)
ファハド・アル・ムワラド(アル・イティハド)
アリ・アル・アスマリ(アル・アハリ)
アブドゥルラフマン・ガレーブ(アル・アハリ)
アイマン・ヤヒヤ(アル・ナスル)
アリ・アル・ハッサン(アル・ナスル)
サミ・アル・ナジェイ(アル・ナスル)
サルマン・アル・ファラジュ(アル・ヒラル)
アブドゥラー・オタイフ(アル・ヒラル)
サレム・アル・ダウサリ(アル・ヒラル)
モハメド・カンノ(アル・ヒラル)

FW
サレー・アル・シェフリ(アル・ヒラル)
アブドゥラー・アル・ハムダン(アル・ヒラル)

第1節 ベトナム戦(H)

画像1

■常連国の貫禄でじっくりと料理

 アジア最終予選初の参加を決めることに成功したベトナム。記念すべき初戦はこのステージにおける常連のサウジアラビアである。

 ベトナムは常連国の胸を借りるつもりだったのか、アウェイで思い切りのいい立ち上がりを見せた。フォーメーションこそ5-4-1と後ろ重心ではあったものの、隙があればラインをあげながらのプレッシングを試みる。特に積極的なプレスを行っていたのはCHの2人。サウジアラビアのCHに対して前に出て保持の阻害を試みる。

 その勢いのままにベトナムは一気に先制。サウジアラビアのクリアが甘くなったところで、22歳の新鋭である19番のグエン・クアン・ハイのシュートが炸裂。若きWGがベトナムの最終予選史上初のスコアラーとなった。

 先制点の後はサウジアラビアの保持一色に。ベトナムのローラインの5-4-1に対して、まずはボール回しで様子を見ながら攻略法を探す。糸口として見つけたのはベトナムのCHの積極的なプレスを逆手に取ること。彼らを誘き出した上で背後のスペースに選手を多く送り込み、そこに楔を入れることで起点を作る。CFのアル・シェフリのポストプレーに合わせた抜け出しも見られるようになると、徐々に積極的だったベトナムの守備陣は脆さが見られるようになっていく。

 サウジアラビアのブロックの溶かし方は堅実だった。内側に狙いを定めるだけでなく、きちんと大外も噛ませることで、ベトナムの守備に的を絞らせない。外を使ったと思いきや、今度はWGから斜めの楔で中を使うなどやり方はさまざま。サウジアラビアのアプローチは派手さはないものの、確実にベトナムにダメージを与えていた。

 そのダメージが決定的になったのは後半開始直後。大外から裏をとったサウジアラビアに対して、右のCBであるド・ドゥイ・マンがハンド。そしてこれが2枚目の警告となり、PK+退場のダブルパンチを喰らうことになった。

 こうなると一気にペースは同点弾を決めたサウジアラビアに。5-3-1だと中央の楔をケアするために閉じることや、逆サイドの手薄さをカバーするのがどうしても難しくなるベトナム。一方的なサウジアラビアペースの中、勝ち越しゴールとして積極的なオーバーラップを見せていたアッ=シャラハーニーがヘディング(アフロってなんでこんなに空中戦強いんだろう)でネットを揺らす。勝ち点をなんとか確保しようと積極的に攻めたベトナムを、今度はカウンターアタックから裏返すとまたしてもPK。決定的な3点目を獲得する。

 結局試合はそのまま終了。開始直後こそ面食らったサウジアラビアだったが、ベトナムをじっくり料理し、常連国としての貫禄を見せつけた。

試合結果
2021.9.2
カタールW杯アジア最終予選 第1節
サウジアラビア 3-1 ベトナム
キング・サウド・ユニバーシティ・スタジアム
【得点者】
KSA:55′(PK) アッ=ドーサリー, 67′ アッ=シャハラーニー, 80′(PK) アル・シェフリ
VIE:3′ クアン・ハイ
主審:タンタシェフ・イルギス

第2節 オマーン戦(A)

画像2

■日本とサウジの違いとは?

 初戦、アウェイである日本の地で貴重な勝ち点3を獲得したオマーン。日本と同じくW杯出場権争いの有力候補であるサウジアラビア相手に勝ち点を取れば、本大会出場という偉業が見えてくる。

 対するサウジアラビアはベトナム相手に格の違いを見せつける逆転劇を演じた。続くオマーンも現状ではアウトサイダー。2戦目も貫禄を見せることができるだろうか。

 オマーンのアプローチは日本相手のものと大きく違いはなかった。中央を固めてサウジアラビアに要所を使わせない。サウジアラビアは中盤の3枚のカンノ、アル・マルキ、アル=ファラジュなどマンマークでオマーンに捕まってしまっている。

 サウジアラビアはこれに対して左サイドから対抗。アッ=ドッサリーやアッ=シャハラーニーの縦関係がレーンを入れ替えながら攻撃を繰り出す。サイドの選手の位置関係が膠着しがちだった日本に比べれば、サウジアラビアの攻撃は動きがあるものではあった。

 だが、それでもオマーンの守備ブロックは強固。サイドを多少動かされたとしても、中央はそもそも数的優位。日本と同じくサウジアラビアも非常にこのブロックを崩すのには手を焼くことになった。

 しかし、サウジアラビアは脈絡なく、このブロックを破壊。フィードから19番のアル=ムワッラドが抜け出すと、ヒールで落としたスペースに走り込んだのはストライカーのアル・シェフリ。ワンタッチでの芸術的なパスでオマーンにズレたスペースを埋める時間を与えなかった。

 日本も阿吽の呼吸が合えばこういったプレーは可能だろう。だが、この日のサウジアラビアは明らかに日本よりも優れていた部分があった。それは守備。日本が苦しんだオマーンのサイドに流れるFWへのパスは厳しくCB2人がチェイスしていたし、ライン間の楔はSBのアル=ガナムがチェックした。

 オマーンが日本に善戦したのはSB裏のFWへのランとライン間のズレを利用した縦パスで前進を通すことができたから。サウジアラビアはこのオマーンの攻撃のスイッチとなる武器をバックラインが高い位置から咎めたことで、オマーンに反撃の隙を与えなかった。

 後半、サウジアラビアの守備の圧力も弱まっており、オマーンにもチャンスが巡ってくる。20番のサラーを軸に右サイドから打開を狙うオマーンだったが、ゴール前の精度が足りず。終盤の猛攻もサウジアラビアに交わされてしまったオマーン。格上に対する連勝スタートは叶わなかった。

試合結果
2021.9.7
カタールW杯アジア最終予選 第2節
オマーン 0-1 サウジアラビア
スルタン・カーフード・スタジアム
【得点者】
SAU:42′ アル=シェフリ
主審:ハッタブ・ハンナ

2021/10 招集メンバー

GK
モハメド・アル・オワイス(アル・アハリ)
モハメド・アル・ヤミ(アル・アハリ)
ザイド・アル・バワルディ(アル・シャバブ)
ファワズ・アル・カルニ(アル・シャバブ)

DF
フセイン・カシム(アル・ファイサリー)
サウド・アブドゥルハミド(アル・イティハド)
アブドゥレラー・アル・アムリ(アル・ナスル)
スルタン・アル・ガナム(アル・ナスル)
アブドゥラー・マドゥ(アル・ナスル)
モハメド・アル・ハブラニ(アル・アハリ)
アリ・アル・ブライヒ(アル・ヒラル)
ヤセル・アル・シャハラニ(アル・ヒラル)

MF
アブドゥルラフマン・アロブド(アル・イティハド)
アブドゥレラー・アル・マルキ(アル・イティハド)
モハメド・アル・クウィクビ(アル・イティハド)
ファハド・アル・ムワラド(アル・イティハド)
アブドゥルラフマン・ガレーブ(アル・アハリ) 
アイマン・ヤヒヤ(アル・ナスル)
アリ・アル・ハッサン(アル・ナスル)
サミ・アル・ナジェイ(アル・ナスル)
サルマン・アル・ファラジュ(アル・ヒラル)
ナセル・アル・ダウサリ(アル・ヒラル) 
モハメド・カンノ(アル・ヒラル)

FW
サレー・アル・シェフリ(アル・ヒラル)
ファラス・アル・ブライカン(アル・ファトフ)

第3節 日本戦(H)

画像3

■均衡から動く戦況への対応が勝敗を分ける

 アウェイのサウジアラビアという今大会の最大の難所を迎える日本。本来ならばグループ突破の最大のライバルとのアウェイなので、引き分けOKくらいの気楽な気持ちで臨みたいところ。だが、ホームでのオマーン戦の敗戦がその気楽な気持ちを許してくれていないという状況。むしろ引き分けが悪くない結果なのはアウェイでオマーンをきっちり叩いているサウジアラビアの方だったかもしれない。

 試合の流れとしてはいつも通り感が強かったのはサウジアラビア、サウジへの対策色が濃かったのが日本という構図だった。日本で目を引いたのは中盤のマンマークである。サウジアラビアも日本もトップ下を置く正三角形型が基本フォーメーションだったが、柴崎がそれを崩して前から人を捕まえに行ったのが印象的だった。

 恐らく、中盤で引っ掛けてからのショートカウンターが狙いだったのだろう。ボールを取り切るというところの役割でいえば柴崎は物足りないかもしれないが、奪った後に刺すパスを入れるという部分では守田よりも実績がある。隣に奪い取る部分では信頼を置ける遠藤がいるというのも大きかったかもしれない。

 おそらく田中碧は信頼のところが足りていない。森保ジャパンにおいては信頼感は大事にしているファクター。埼スタUAEでの大島のようなことをサウジの地で主人公を田中碧に変えた形で繰り返すわけにはいかないということだろう。ビルドアップにおいても柴崎のサリーを主に据えた形を採用していたので自陣からの攻撃+ショートカウンターで最も任せられるのは柴崎という判断をしたんだろうと思う。

 日本のサウジ対策はそれなりに機能していたと思う。日本は前線から中盤までの立ち上がりの守備はサウジアラビアの時間を奪っていたし、サウジアラビアはプレスをかけられたときのボールコントロールには怪しさがあった。これだけトランジッションの機会があれば、ポジトラにおけるカウンターパスを刺す機会を柴崎は十分に得られる。

 その上に、日本が深い位置からボールを持つときにサウジはなぜか日本の中盤にプレスに行くことに興味がなさそうだったので、深い位置からでもプレッシャーが少ない状態でボールを持つことが出来た。

 その上で誤算だったのは2つ。1つはトランジッション時の縦方向のパスが刺さり切らなかったこと。伊東の出場停止、かつ堂安と久保の欠場という中での浅野の先発はこのトランジッション重視スタイルの採用で正当化されている感があったのだが、有効打となるパスは多くなかった。

 収まらなかった大迫も同様。この試合に限った話ではないけど、今までだったら収まるものが収まらなくなっている。鎌田のパスから抜け出した場面は一番の決定機だったが決めきることはできなかった。といってもこの場面はDFにコントロールのタイミングと方向を制限された状況であり、見た目よりもシュートをきめる難易度は高かったシーンだと思うけど。

 前線の中で起用方法が一番ぼやけていたのは南野。攻撃の核ではないという状況の中で守備のカバーに走り回るでもなく、攻撃でとりあえず走りまくるでもない状況で何を託したのかはわかりにくかった。チームとしての狙いであるボール奪取→素早い縦パスまでは機会を得ることはできていたが、前線のコンディションと役割が微妙でそこから先には進めなかったのが前半の日本の攻撃だ。

 もう1つはサウジのサイド攻撃に対してやや後手に回っていたこと。特に2-3-5型に変形した時に左の大外のSBであるアッ=シャハラーニーは余りやすく、クロス飛込に備えて中央に枚数を揃えるサウジに対して日本は大外が手薄になっていた。浅野を前に残したいのかわからないけど、アッ=シャハラーニーについてきっちり戻るように命じられている感は薄く、彼がフリーで大外でボールを待ち受ける機会は多かった。

 そんなこんなでやばいクロスを放り込まれる機会が増える日本。しかし、ここは吉田と富安を中心にブロック。さすがにここの質はアジアでは別格。前節までの相手と比べてのCB陣の質にサウジも苦しむ。オマーン戦のサウジは中央の即興パス交換で崩している感が強かったが、この試合ではフレアに頼った崩しは吉田と富安にひっかけられ続ける。特に富安は広い守備範囲で中盤の水漏れまでカバーしていた。

 押し込めるもセットプレーからしかチャンスが作れなかったサウジ、多角的なサイド攻撃から中盤でのパスミスを誘発はできるがその先がついてこなかった日本と共に仕上げがうまくいかない状態で前半を終える。

 迎えた後半、狙いが見えてきたのはサウジの方。中盤でのプレスを強化し、徐々に日本との中盤のデュエルを増やすように。特に柴崎は狙われていた感が強い。やはり失点シーンのパスミスの話になってしまうが、この場面以前に前を向いてのプレーをいくつかとがめられたのがバックパスミスの背景としてあったはず。ミスが続くなら、後ろに・・・という消極的な選択をサウジは逃さなかった。

 日本としては前半はうまくいっていたので難しいかじ取りになったかもしれない。失点の手前の時点でミスが増えた時点でプラスにもマイナスにも振れが大きい柴崎はあきらめておけば!というのは理解できるので、交代の準備自体はわかる。けど、ビハインドの中で攻撃の舵取り役を託した人間を懲罰交代のような形でぶっこ抜くのは正直びっくりした。次のスタメン、どうするんだろう。

 日本は柴崎を下げた後にも攻撃のメカニズムは特によくなることもなく、前線にとりあえず当てて古橋やオナイウが縦に抜けて頑張る!という感じ。攻撃の指揮者がぶっこ抜かれたのだから当たり前っちゃ当たり前。その結果、むしろ交代した選手のパフォーマンスに負荷がかかる形に。それだけにオナイウがボールがやたら足についてないのは目についてしまった。

 ビルドアップのサウジアラビアを強襲し、ショートカウンターという日本の狙いは悪くなかったが、保持で落ち着かせて未知数なサウジの非保持を脅したり、中盤のプレスがきつくなってからのプラン移行はもう少し視野に入れてもよかったはず。

 500さんが『自分たちで考えるサッカー』とこの代表を称していたけども、中盤のボールの取りどころを徐々に定めてきたサウジに対して、考えた結果戦況に対応しきれなかった日本の差が出た試合だろう。ミス1つといえばそれまでだが、日本が命運を託したキーマンを翻弄しての決勝点。均衡したプランからの移行のところがこの日の両チームの結果を分けた。

試合結果
2021.10.7
カタールW杯アジア最終予選 第3節
サウジアラビア 1-0 日本
キング・アブドゥッラー・スポーツシティ
【得点者】
KSA:71′ アル=ブライカーン
主審:アドハム・マハドメ

第4節 中国戦(H)

画像4

■安全第一でも崩し切れる

 日本を倒しての3連勝。グループ突破のライバルに早くも勝ち点差6をつけ、上々の序盤戦を過ごしているサウジアラビア。今節の対戦相手は前節辛くもベトナムをふりきることが出来た中国だ。

 試合は予想通りサウジアラビアの保持の時間中心で始まった。普段だったら3-2-5の変形から中央にパスを入れて、そこから左右に展開。クロスを上げるというのがサウジアラビアの攻撃の一連の流れなのだが、この日はサイドにボールを流す機会が多かった。

 その理由は中国の5-3-2の布陣にあるように思う。中央偏重のこの形に対して、サウジアラビアの面々は中央を避けたボール回しを行っていた。ナチュラルに配置をすれば、サウジアラビアの4-2-3-1は中央に2CH、トップ下がいるはずなのだが、この日は多くの状況でトップ下のアル=ファラジュのみが中央にいることが多かった。CHの2人はサイドに流れてブロックの外で受ける形である。

 そうなると、サウジアラビアは前に人がいないんじゃない?という状況になる。確かにこれまでのサウジに比べると攻撃の迫力は薄れている感もあった。だけども、その分サイドにおいて丁寧にラインを下げさせてしまえば十分にペースは握れる。

    中国の攻撃は明らかに2トップに渡してからのスピード勝負の様相だったので、進んでその機会を与えるようなショートカウンターをどうしてもサウジアラビアは避けたかったのだろう。ブロックにひっかけないように、外を回しながら押し下げるサウジアラビアだった。

 先制点はサウジアラビア。押し込んだ流れからのセットプレー。外循環がクリティカルに崩しに効いた感じはしなかったが、サイドからきっちり押し込んだゆえの結果だったとは言えるだろう。

 2点目は中国の手薄な大外を突っついたところから。中央を割れなくても問題なく外から叩き割って見せた。失点を重ねる中国は徐々に中盤より前の中央封鎖の意識が低くなってきたため、サウジアラビアはだんだんと外循環にこだわらなくても十分に崩せる展開になっていった。

 後半、中国は帰化組を一気に投入。すると、効果はすぐに。ゴンサアウヴェスのスーパーゴールであっという間に1点差に追いつく。しかし、日本戦でも述べたように中国の帰化組一挙投入は諸刃の剣。攻撃力が上がる一方で、展開をソリッドに維持するのは不可能で無秩序状態になる。

 中国の後半の動きが輝いたのはその一瞬だけ。それ以外の局面では前半よりもさらにのびのびとプレーするサウジアラビアの選手たちを前になす術がなかった。

試合結果
2021.10.12
カタールW杯アジア最終予選 第4節
サウジアラビア 3-2 中国
キング・アブドゥッラー・スポーツシティ
【得点者】
KSA:15′ 38′ アルナージー, 72′ アルブライカーン
CHI:46′ ゴンサウヴェス, 87′ ウー・シー
主審:タンタシェフ・イルギス

2021/11 招集メンバー

GK
ナワフ・アル・アキディ(アル・ナスル)
モハメド・アル・ヤミ(アル・アハリ)
ザイド・アル・バワルディ(アル・シャバブ)
ファワズ・アル・カルニ(アル・シャバブ)

DF
モテブ・アル・ハルビ(アル・シャバブ)
ジヤド・アル・サハフィ(アル・イティハド)
サウド・アブドゥルハミド(アル・イティハド)
アブドゥレラー・アル・アムリ(アル・ナスル)
スルタン・アル・ガナム(アル・ナスル)
アブドゥラー・マドゥ(アル・ナスル)
モハメド・アル・ブレイク(アル・ヒラル)
アリ・アル・ブライヒ(アル・ヒラル)
ヤセル・アル・シャハラニ(アル・ヒラル)

MF
アブドゥルラフマン・アロブド(アル・イティハド)
アブドゥレラー・アル・マルキ(アル・イティハド)
モハメド・アル・クウィクビ(アル・イティハド)
ファハド・アル・ムワラド(アル・イティハド)
アブドゥルラフマン・ガレーブ(アル・アハリ) 
アリ・アル・アスマリ(アル・アハリ) 
アイマン・ヤヒヤ(アル・ナスル)
アリ・アル・ハッサン(アル・ナスル)
サミ・アル・ナジェイ(アル・ナスル)
サルマン・アル・ファラジュ(アル・ヒラル)
ナセル・アル・ダウサリ(アル・ヒラル) 
サレム・アル・ダウサリ(アル・ヒラル) 
モハメド・カンノ(アル・ヒラル)

FW
サレー・アル・シェフリ(アル・ヒラル)
ファラス・アル・ブライカン(アル・ファトフ)

第5節 オーストラリア戦(A)

画像5

■3位を意識した手打ち

 日本がぼやぼやしている間に首位争いの主導権は取りこぼさないオーストラリアとサウジアラビアの2チームにゆだねられた感がある。日本を置いていくためにも負けられない両チームの一戦となる。

 試合は立ち上がりから緊張感のある内容だった。共に守備陣は高いラインを敷くが、むやみに高い位置からプレスをかけ続けるのではなく、相手を追い込みながら選択肢を狭めていくような前線のプレスを行っていた。

 このプレスの効き目がよりあったのはオーストラリアの保持の局面。オーストラリアのPA脇まで横幅を取って広がるCB2人とGKの3人のフラットなラインでのビルドアップやその先の選手たちがサウジアラビアの4-4ブロックにつかまっており、なかなか前進のしどころを見つけられない。加えて、オーストラリアは右サイドのセインズベリーを使ったボール循環はあまり行わないことで、大きく横幅を使う形も行われないため、前進のルートも限定的だった。

 その分、ビルドアップの人数調整に幅を持たせていたのはサウジアラビアの方。噛み合っている4-4-2の中でサリーでズレを作り、サイドから押し上げる3-2-5系の変形を実施。アフロでおなじみのアッシャラハーニーが不在でも左サイドからSB主体の攻撃を実施。SBのアッドーサリーを軸に、左サイドから押し上げる形で前進する。

 しかし、攻撃の面でうまくいっていたのはむしろオーストラリアの方。フルスティッチの大きな展開からメイビルの縦への展開や逆サイドのボイルまでのサイドチェンジなどプレスを脱出し、攻め切る形はいい感じ。ロジカルに前進が出来ていたのはサウジアラビアの方だけど、前進が出来てからゴール前に届かせるところまではオーストラリアの方。

 どちらかといえば展開にあったのはオーストラリアの方。早い展開が刺さり、敵陣のゴール前まで運べるシーンが徐々に増えるように。サウジアラビアはゴール前まで運ぶ馬力に欠けていた印象だった。ただ、オーストラリアはクリティカルな前進を連発できるわけではないので、サウジアラビアは前半の終盤はあえてオーストラリアにボールを譲ることで攻撃の威力を抑えていたように思う。スピードがなければ怖さはやや割引である。

 後半はさらにオーストラリアに流れが傾く。クリティカルな前進が無理ならよりダイレクトに!ということで、ワイドに張ったWGの裏へのパスを増やし、速い展開から前進するように。押し込んでからはタワー型のFWにクロスを放り込んで折り返しを狙うという流れでゴールにかなり近いところまで迫る。

 サウジアラビアは苦しみながらも痛がり祭りでオーストラリアを激怒させつつ、試合の流れをぶつ切りにするなどでこの展開を耐え忍ぶ。

 オーストラリアが仕留められないまま時間が過ぎると、70分を過ぎたところで試合はようやくサウジペースに流れる。ボールを取り返しにいくオーストラリアのプレスが効かない時間帯に突入し、サウジアラビアのショートパスな前進が目立つようになった。間延びをして受けるとバックラインの機動力に難があるので、プレスが空転しながら受ける形はオーストラリアにとって恐怖。

 しかし、サウジアラビアも強引に仕留めるまでは行けず。まぁ、彼らにとっては引き分けも悪くないのだろう。勝ちを目指していなかったわけではもちろんないのだけど、終盤に意地でも相手を置いていく!というよりはここらで手打ちするか!という感じも正直あった。もちろん、その手打ちの原因は彼らより低い勝ち点で迷える日本の存在があるからこそである。

試合結果
2021.11.11
カタールW杯アジア最終予選 第5節
オーストラリア 0-0 サウジアラビア
ウェスタン・シドニー・スタジアム
主審:コ・ヒョンジン

第6節 ベトナム戦(A)

■5-3ブロックを成り立たせる前提

 最終予選、ここまで全敗のベトナム。今節は無敗で首位をひた走るサウジアラビアとのハードなチャレンジとなる。

 立ち上がりからベトナムにとっては厳しい戦いになることを予感させられる戦いだった。サウジアラビアの2CHと2CBの3-1と2-2の配置を駆使するビルドアップに対して、うまく前からプレスがかからずに苦戦する。

 ベトナムの非保持における弱点は3センターの守備の練度である。3センターは通常、IHがホルダーとマッチアップする際に、アンカーが斜め後方にカバーに入りながら守るのが普通。

 しかしながら、ベトナムはこのカバーリングがフラットになることが多い。そうなるとボール保持側は簡単にボールを縦に入れることができる。5-3ブロックは本来、中央にボールを入れさせない代わりにボールを外に追いやりながら、大外を壊すチャレンジを保持側に強いることができるというメリットがあるのだが、このベトナムのように中央を閉じる!という大前提が成立していない場合は話が別である。

 前節の対戦相手である日本はこの弱点をろくにつくことができず、ライン間にパスを入れることをしなかったが、サウジアラビアは積極的にこの縦パスを入れてくる。ライン間で簡単に前を向かれてしまっては非保持側は裏を取られるリスクが出てきてしまう。そうなると5枚という最終ラインの枚数はラインが乱れるだけの因子が多いだけ!ということになってしまう。

 というわけでこのライン間には最終ラインが慌てて飛び出す格好になるベトナム。サウジアラビアがその飛び出してきた最終ラインの選手をかわして先制点に結びつける。ベトナムとしては中盤の守備で穴が空いてしまい、その穴を埋めようと飛び出してくる最終ラインの守備にさらに穴を開けてしまうという連鎖。サウジアラビアはこのベトナムの穴の連鎖をしたたかにつくことができたということである。

 前半は専制守備からのカウンターでチャンスを伺っていたベトナム。この形でも十分にチャンスは作ることができる。だが、後半になるとベトナムは徐々に保持から押し込むように。3バックからWBにボールを繋ぎ、サイドから抉るような形でサウジアラビアを攻め立てる。

 サウジアラビアはこれに対して強気なやり方に。前半以上に保持における前方へのオフザボールの量を増やして、積極的に2点目を狙いにいく。得点のチャンスは増えるが、失点のピンチも増えるこの方策。ベトナムは前半から引き続きカウンターからも十分にサウジアラビアの脅威になった。

 だが、ゴール前になると精度、強度が共に足りず枠内シュートにいけないベトナム。サウジアラビアは日本と同じように後半のベトナムに慌てる場面もあったが、逃げ切りに成功。前半は日本と異なる保持のクオリティを見せつけ、後半は日本と同じように苦しんだサウジアラビアが無敗をキープして首位を堅持。終盤戦に向けたアドバンテージを得て11月シリーズを終えた。

試合結果
2021.11.16
カタールW杯アジア最終予選 第6節
ベトナム 0-1 サウジアラビア
ミー・ディン・スタジアム
【得点者】
KSA:31′ アル・シェフリ
主審:ハンナ・ハッタブ

2022/1 招集メンバー

GK
モハメド・アル・オワイス(アル・アハリ)
モハメド・アル・ヤミ(アル・アハリ)
ザイド・アル・バワルディ(アル・シャバブ)
ファワズ・アル・カルニ(アル・シャバブ)

DF
アーメド・シャラヒリ(アル・シャバブ)
ジヤド・アル・サハフィ(アル・イティハド)
サウド・アブドゥルハミド(アル・イティハド)
アブドゥレラー・アル・アムリ(アル・ナスル)
スルタン・アル・ガナム(アル・ナスル)
モハメド・アル・ブレイク(アル・ヒラル)
アリ・アル・ブライヒ(アル・ヒラル)
ヤセル・アル・シャハラニ(アル・ヒラル)

MF
モテブ・アル・ハルビ(アル・シャバブ)
ハッタン・バヘブリ(アル・シャバブ)
アブドゥルラフマン・アロブド(アル・イティハド)
アブドゥレラー・アル・マルキ(アル・イティハド)
ファハド・アル・ムワラド(アル・イティハド)
アブドゥルラフマン・ガレーブ(アル・アハリ) 
アリ・アル・ハッサン(アル・ナスル)
サミ・アル・ナジェイ(アル・ナスル)
サルマン・アル・ファラジュ(アル・ヒラル)
サレム・アル・ダウサリ(アル・ヒラル) 
モハメド・カンノ(アル・ヒラル)

FW
サレー・アル・シェフリ(アル・ヒラル)
ファラス・アル・ブライカン(アル・ファトフ)
ハリド・アル・ガナム(アル・ナスル)

第7節 オマーン戦(H)

■オマーンの4-4-2フラット採用の意図は

 中盤をダイヤモンドにする4-4-2が今予選のトレードマークとなっているオマーン。しかしながら、最終予選でホーム全勝という今大会最高難易度と言っていいサウジアラビアとのアウェイゲームで、中盤をフラットに変更する決断を下す。

 2トップに早いボールを当てるオマーンの攻撃を見ると保持面であまり効いている感じはしなかったので、やはりこのシフトチェンジはサウジアラビアの攻撃に対抗するためのものと考えるのが自然だろう。

 サウジアラビアのビルドアップはCBとCHの4枚にGKを加えたもの。やや右サイド側のカンノが上下することでズレを作ろうとしていた。これに対して、オマーンはカンノにマークをつけつつ、内側を固めることでサウジアラビアの内側をまずは封鎖する。出し手には厳しくチェックには行かないけど、受け手には厳しくチェックをするというメリハリをつけながらオマーンはサウジアラビアを封じる。

 それならばということでサウジアラビアは大外を使う。攻め上がりとなればサウジアラビアは左サイドのアッ=シャハラーニーが登場。サウジアラビアはビルドアップで相手をなるべく引き込みながら大きな展開で一気に縦に進めるという緩急の付け方でオマーンを揺さぶる。

 しかし、オマーンはこれに対しても準備をしてきた。5レーンを意識した大外を活用した攻撃に対しては、2列目のSHが位置を下げながら最終ラインを5枚にして対応するように。SHは最終ラインに落ち過ぎても重心が下がってアウトだし、もちろん間に合わなくなってもアウト。シビアな状況判断が求められる役割だった。

 おそらく、オマーンが4-4-2フラットを採用したのはこの最終ラインの人数調整が容易だからだろう。よって、サウジアラビアの5レーンアタックを意識したフォーメーション変更というのがこの試合のオマーンの意図と見る。

 サウジアラビアの先制点はオマーンが最終ラインの人数を揃えることができなかったところから。厳密にはオマーンの戻りは間に合っていたのだが、遅れてしまった分あっさりかわされてしまい、アシストとなるクロスを許してしまう。ある意味、アル=ブライカーンの決めた先制点はオマーンのこの試合の対策の有効性を示したものと言ってもいいだろう。

 オマーンは後半になると4-4-2ダイヤモンド採用時のような同サイド偏重な攻撃を見せたり、中央ワイドのプレーエリアを問わずに2トップをサポートできるアルアグバリを投入することで攻撃に厚みを持たせたりなど、サウジアラビアのゴールに迫るクオリティは十分に見せていた。

 ラストワンプレーのCKも惜しくも枠外。最後の最後まで得点のチャンスを作っていたオマーンだったが、サウジアラビアの牙城を崩すことはできず。冷や汗をかいたサウジアラビアだったが、なんとか逃げ切りW杯本戦出場に王手を賭ける一勝を挙げた。

試合結果
2022.1.27
カタールW杯アジア最終予選 第7節
サウジアラビア 1-0 オマーン
キング・アブドゥッラー・スポーツシティ
【得点者】
KSA:48′ アル=ブライカーン
主審:ナワフ・シュクララ

第8節 日本戦(A)

■狙い通りと奇襲、2つの顔で首位撃破

 レビューはこちら。

 直接の勝ち点差が4なので首位攻防戦という色はやや薄めだが、それでも予選突破に向けた大事な一戦には変わりない。サウジには突破決定がかかっているし、日本はこの試合の結果で次節の必要要件が変わってきそうな予感である。

 試合は共にやや慎重な立ち上がりを見せた。比較的高い位置から追っていくケースは日本の方が多かったが、大迫+外切りプレスのWGの2枚でスイッチを入れるプレスに対して、サウジはそこまで無理をしなかった。

 サウジの前進の黄金パターンは外切りの日本のWG裏にいるSBにボールを渡し、日本の中盤を引っ張り出しつつ、中央への細かいパス交換でサイドチェンジを狙う形。

この場合、最も楽なのはGKから直接浮いているSBに届ける形なのだが、サウジのGKはどうやらそのボールは蹴れないようなので、CBがポゼッションの駆け引きで勝利しSBにボールを届けなければこのパターンが見えてこなかった。

 サイドチェンジを受けた左のSBのアッ=シャハラーニーがオーバーラップからファーに正確なクロスを届けられれば、長友の外側からチャンスを作ることが出来たのだが、中盤での前進からのSBのオーバーラップを生み出す頻度とそこからのクロスの精度にはやや難があったため、サウジはチャンスを量産することが出来なかった。

 決まった攻め手で結果を出したのはむしろ日本の方。伊東純也が任意の相棒(IHor大迫or酒井)を引き連れて、大外+HSで右サイドを崩し切る形はこの日も機能。特に1on1じゃ止めるのが難しい伊東がもう1人を引き付けることが出来たために、相棒が動き回れるスペースはかなり確保できていたように思う。

 1点目のシーンは日本の攻撃の理想といってもいいだろう。右の伊東のスピード勝負で優位を取り、大迫と南野の連携でフィニッシュ。左右非対称のWGのタスクの正当性が結実した得点となった。

 後半の頭、日本はプレスを強化。外切りプレスをやめて、サイドは迎撃する場所に設定。日本のWGが縦を切るようにホルダーにチェックをかけるタイミングでIHと大迫が中央を圧縮し、ボールを奪取。ここからショートカウンターでチャンスを作る。

 プレスで主導権を握った日本は先制点ではアシスト役に回った伊東純也が今度はスーパーミドルで4戦連発のゴールをゲット。サウジをさらに突き放す。

 終盤は交代選手がやや精彩を欠いたことで主導権をサウジに渡す場面もあったが、CB+3センターの非保持の冷静な対応で自陣深くの守備でもサウジの攻撃陣をシャットアウトする。

 両チームとも限られた手段での前進が多く見られた試合だったが、前半にその形で点を奪い、後半にモデルチェンジで奇襲をかけた日本がサウジを上回った試合となった。

試合結果
2021.2.1
カタールW杯アジア最終予選 第8節
日本 2-0 サウジアラビア
埼玉スタジアム2002
【得点者】
JAP:32′ 南野拓実, 50′ 伊東純也
主審:コ・ヒョンジン

2022/3 招集メンバー

第9節 中国戦(A)

■イチゴなきお祝い

 第9節の最初の対戦カードであるオーストラリア×日本の結果を受けて、試合前にW杯進出が決まったサウジアラビア。プレッシャーが少ない状況で中国との一戦を迎える形になった。

 試合は序盤からサウジアラビアがボールを握る時間が続く。中国の1トップのチャンの脇にCHのモハメド・カンノ、アル=シェフリの2枚が降りてくることで安定してボールを持つことができるようになっていた。

 だが、ここから先にもう一歩踏み込むフェーズにおいてサウジアラビアは苦戦。ライン間への縦パスは中国のバックラインによる積極的なチェックによって潰されてしまうし、大きく幅を使った展開は中国の5バックとシャドーで挟みながらスマートに対応。サウジアラビアは裏への動き出しもそこまで多くなかったため、後方での安定したボール保持とは裏腹に、ここから先にスムーズに進むことが出来ていなかった。

 逆に中国はカウンターから好機を得る。サウジアラビアのSBの積極的なオーバーラップの機会を逆手に取り、サイドからのカウンターでチャンスを見出すように。序盤でやれて自信がついたのか、30分くらいからプレスに出ていく機会も増えて、サウジアラビアに圧力をかけるケースは徐々に出てくるようになった。

 それでもさすがにサウジアラビアから格上の貫禄は徐々に出てくる。外を循環させながら、サイドからの押し下げの機会を増やすようになったサウジはバイタルからのミドルで中国の守備を強襲するように。左サイドからはアッ=ドーサリーのカットインも見られるようになり、押し込む時間帯が増えてくる。

 すると、前半終了間際。先制したのはサウジアラビア。CKからニアでフリックをしたアル・シェフリのゴールでハーフタイムまでに前に出ることに成功する。

 後半もサウジアラビアが押し込むペースは変わらない。序盤に大ポカからの大ピンチを迎えるが、逆に言えばミスらなければ中国には決定的なチャンスを与えない。大きく幅を使いながらアブドゥルハミドのオーバーラップで奥行きを狙っていく形。前半よりも決定機の数は増える。

カウンターの初動を遅らせることができれば、中国はパスをつないでいるうちにいつの間にかミスる。交代で入った17番のワイツンは脅威にはなっていたが、マークが3枚も4枚もついている状況では何とかするのは難しい。

 だが、ミスって決定機を与えてしまったのがこの日の後半のサウジアラビア。エリア内での軽率なPKから中国に同点のチャンスを与えてしまうことに。

 サウジアラビアは序盤から相手を攻め立ててはいたが、追いつかれてしまうと『なんとしてでも!!』感が薄れてしまうのは仕方ないだろう。W杯出場をお祝いしたかったところだが、勝利というケーキのイチゴを載せるのには失敗してしまったサウジアラビアだった。

試合結果
2022.3.24
カタールW杯アジア最終予選 第9節
中国 1-1 サウジアラビア
シャールジャ・スタジアム
【得点者】
CHI:82′(PK) 朱辰杰
KSA:45+1′ アル・シェフリ
主審:モハメド・ハッサン

第10節 オーストラリア戦(H)

■プレス耐性と中盤の層の薄さに泣く

 日本のライバルとして、今予選を通じて戦った両チームが最終節に激突。突破の可能性を賭けた一戦ではないということは残念ではあるが、この予選においては屈指の好カードである。

 両チームとも保持を落ち着いてやりたいスタンスは見ることができた。中盤1枚(オーストラリアならばジェッコ、サウジアラビアならばアルナージー)が最終ラインに降りてCBに加わりゲームメイクに参加。保持側は3枚でのビルドアップを行おうとする。守備の陣形はどちらのチームも2トップが先導するプレススタイルなので、このやり方はとりあえず数的優位を確保するという視点では妥当ではある。

 しかしながら、その数的優位の確保が両チームにとってはビルドアップの安定につながることはなかった。互いに高い位置からアタックしてくる相手チームのプレスに慌ててしまい、ボールを落ち着いて回すことはできなかった。

 特にひどかったのはオーストラリア。サイドにボールが出たタイミングでシャドーがスイッチを入れるサウジアラビアに対して、自陣でのボール回しが安定せず、結局はクリアすることになってしまったり、ボールを奪われたり。CHにレギュラーポジションの選手がいないというエクスキューズがあるとはいえ、もう少しできて欲しいというのが本音である。

 サウジアラビアはそれに比べればマシではあった。プレッシングに慌てる場面もないわけではなかったが、CHの相棒のカンノも降りて対角のパスを使いながら圧力を回避していたので、オーストラリアに比べれば逃げる手段はあった。

 オーストラリアのチャンスはほとんどハイラインを敷くサウジアラビアのDFの裏を狙う動きから。これだけ直線的な動きでのチャンスメイクが成立するのだとしたら、もう少しビルドアップの時に裏に蹴って回避することを積極的に取り入れていいと思った。38分のボイルの抜け出しによってネットを揺らした場面(オフサイド判定)はオーストラリアの裏抜けが最もクリーンに決まったシーンだ。

 一方のサウジアラビアはサイドに振りながら薄い場所を作り、壊していく幅を使ったやり方。特に予選を通して効果的だったアッ=シャハラーニーのオーバーラップを使える左サイドを使った攻撃はこの試合でも効いていた。

 後半になるとプレスもトーンダウン。そうなるとオーストラリアも幅を使ったポゼッションをできるようにはなったが、運動量が落ちた影響で直線的なゴールの手段が薄くなったマイナスもそこそこ。薄いサイドを使った攻撃でPKを得たサウジアラビアに比べるとやや物足りなさがあった。

 結局は彼らのスタイルで言えばポゼッションが物足りないのだろう。プレス耐性と負傷者だらけの中盤で3月シリーズはボロボロだった印象のあるオーストラリア。プレーオフの開催される6月にはもう少し上手く戦えるチーム状況になっているといいのだが。

試合結果
2022.3.29
カタールW杯アジア最終予選 第10節
サウジアラビア 1-0 オーストラリア
キング・アブドゥラー・スポーツシティ
【得点者】
KSA:65′(PK) アッ=ドーサリー
主審:アドハム・マハドメ

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