ギリシャ代表、カタールW杯欧州予選の歩み。第4節から。
2021/9 招集メンバー
GK
オディッセアス・ヴラホディモス(ベンフィカ/ポルトガル)
ソクラティス・ディウディス(パナシナイコス)
アレクサンドロス・パスハラキス(PAOK)
DF
マノリス・サリアカス(PASヨアニナ)
ヨルギオス・ツァヴェラス(AEKアテネ)
タナシス・アンドルツォス(オリンピアコス)
キリアコス・パパドプーロス(アル・フェイハ/サウジアラビア)
パンテリス・ハツィディアコス(AZアルクマール/オランダ)
レオナルド・クートリス(デュッセルドルフ/ドイツ)
コスタス・マヴロパノス(シュツットガルト/ドイツ)
パナギオティス・レトソス(レバークーゼン/ドイツ)
ディミトリス・ギアンヌリス(ノリッジ・シティ/イングランド)
コスタス・ツィミカス(リバプール/イングランド)
MF
ソティリス・アレクサンドロプーロス(パナシナイコス)
ペトロス・マンタロス(AEKアテネ)
コスタス・ガラノプーロス(AEKアテネ)
アンドレアス・ブーハラキス(オリンピアコス)
ヤニス・パパニコラウ(ラクフ・チェンストホヴァ/ポーランド)
マノリス・シオピス(トラブゾンスポル/トルコ) 94.5.14
ゼカ(FCコペンハーゲン/デンマーク)
FW
クリストス・ツォリス(ノリッジ・シティ/イングランド)
ヴァンゲリス・パヴリディス(AZアルクマール/オランダ)
ディミトリス・リムニオス(トゥウェンテ/オランダ)
タソス・ドゥヴィカス(ユトレヒト/オランダ)
アナスタシオス・バカセタス(トラブゾンスポル/トルコ)
タクシアルヒス・フンタス(ラピド・ウィーン/オーストリア)
ヨルゴス・マスーラス(オリンピアコス)
マリオス・ヴルサイ(オリンピアコス)
タソス・ハツィヨヴァニス(パナシナイコス)
第5節 コソボ戦(A)
■ハイプレスに隠された事情
前節、ジョージアに競り勝ちW杯予選史上初の勝利を決めたコソボ。上位に食いついていくためには、ジョージア以外の相手からも勝ち点を奪い取れなければ厳しい。そういう意味ではこのギリシャ戦は試金石となる試合だろう。
一方のギリシャは開幕後2試合で未勝利。スペインはともかく、ジョージアに引き分けのは痛恨で出遅れをここから巻き返していかなければいけない立場となる。
局面としては互いに等しくボールを持つ時間を持てる展開となった。コソボの保持は前節と同じ。ハデルジョナイを片上げする、ややアシメな3バック化。ギリシャに対してサイドを押し上げる。ギリシャの守備はコソボの左サイドにボールがある時は若干厳しめでこちらのサイドからはボールを運ばせないという意思を感じた
コソボの左サイドはこれに対してIHのベリシャが外に流れるなどしてマークを乱しに。高い位置をとるハデルジョナイを生かすために動きをつけていく。逆に右のサイドからはズレを作れずに苦しんでいる感じ。ボールを進めるならば左から運びたいのだろうなと思った。
ギリシャは5-3-2の形をあまり変形させない形でのビルドアップ。これに対してコソボはワイドのCBに対してはWGがマーク、CFのムリキはアンカーを警戒する。ギリシャのWBへのチェック役はIHが出ていき、逆サイドのIHがアンカーのドレシェヴィッチとフラットに並びながら中央をカバー。前線と中央が連動しながらギリシャのバックラインに対してミドルブロックを組み、プレスをかけていく。
ギリシャはCBの中央であるツァベラスが最も時間に猶予を持ってプレーすることができていた。ここから幅を使ったフィードを飛ばせれば、コソボのIHが出てくる前に前進できるのだが、このフィードがどうも決まらない。
コソボは左サイドのズレ、ギリシャは数的優位のバックラインのところから前進のチャンスがありそうな状況だったが、なかなかミドルゾーンからゴール前まで進むことができない。
ズレを生かしてゴールに迫ることが互いにできず、拙攻が続く中でチャンスを得たのはギリシャ。ミドルプレスから引っ掛けたところで、この試合ではなかなか見られなかったカウンターを発動。最後はドゥヴィカスが仕留めて前半終了間際に先制点を獲得する。
後半頭から、リードを得たギリシャはよりタイトにコソボにプレッシャーをかけていく。これまでの時間帯においては最終ラインにあまりプレッシャーを受けない状況で進んでいったコソボだったが、プレスに晒され時間の余裕がないとミスが目につくように。プレス耐性にはやや課題を覗かせたコソボだった。
しかし、ギリシャにもギリシャでハイプレスに打って出る事情がある。撤退した際の守備の強度がどうも怪しい。EUROを優勝したイメージから堅守の印象が強いチームだが、このギリシャはエリア内の対応が結構怪しい。だからこそ、前から捕まえに行かないと守り切れないのだろう。
プレスが弱まったことで前進できたコソボはボールを左右に振りながらエリア内にハイクロスを放り込んでくる。その試みが実を結んだのは後半追加タイム。エリア内に飛び込んだハデルジョナイの折り返しからムリキが同点弾を決めて土壇場で勝ち点を確保した。
2節連続で勝ち点確保に成功したコソボ。次節はいよいよスペイン戦。ハリミが出場停止、ベリシャが負傷交代と厳しい台所事情ではあるが、チームは上昇気流で強豪に胸を借りることができそうだ。
Pick up player:アナスタシオス・バカセタス(GRE)
引き分けた試合はどちらから選手を選ぶか迷ったけど、本文がコソボの話が多めだったのでギリシャから選出。プレスに出た後半の立ち上がりはこの試合において最も力関係が片方に傾いていた時間帯だったし、IHは比較的長い時間ホルダーをチェイスしながらプレスを成り立たせようと奮闘していた。その中でも先制点のインターセプトに絡んだバカセタスをチョイス。
試合結果
2021.9.5
カタールW杯欧州予選 第5節
コソボ 1-1 ギリシャ
プリシュティナシティ・スタジアム
【得点者】
KOS:90+2′ ムリキ
GRE:45+1′ ドゥヴィカス
主審:フランシス・ルテクシエ
第6節 スウェーデン戦(H)
■スウェーデンの弱みを突いたギリシャ
立ち上がりから猛攻を仕掛けたのはスウェーデン。今予選の勢いをそのままに、開始直後から一気に攻め立てる。印象的だったのはスバンベリのミドル。前半にポストを叩くと、後半にも相手を脅かすミドルをエリア外から放つなど、この試合におけるミドル精度は抜群だった。
しかし、試合の主導権を握ったのはギリシャの方。スウェーデンの4-4-2に対して3-4-3のかみ合わない形を最大限に活用。特に、ツィミカスとアンドルツォスの両WBが浮いたことを活用して前進する。
ギリシャにとってはドゥヴィカスが中央でスウェーデンのCBを背負えたのが大きかった。左右ではボールの預けどころを作り、中央ではボールが収まり攻め手をここを起点に選びなおすことが出来る。スウェーデンはクロスを跳ね返せばOK!と思っていたのか、サイドへのチェックはあまり厳しくなかったこともあり、ギリシャは安定して敵陣にボールを運ぶことができた。
ギリシャがよかったのは、急ぐ際にはきっちりとスピードアップ出来たこと。スウェーデンはフォルスベリを軸にアウグスティンソンとイサクを走らせることで左サイドからチャンスを作っていたが、前がかりになった状況ではギリシャはボール奪取後に素早くロングカウンターを発動。機動力に難のあるスウェーデンのバックスはこのカウンター対応がかなり怪しかった。
速攻、遅攻ともに安定したギリシャは試合の流れの通りに先制点をゲット。この場面でCFのドゥヴィカスとつながったのはシャドーのバカリタス。ポストの落としを受けて先制点となるシュートを決めて見せた。
さらに速攻から追加点を得たギリシャは終盤に2点のリードをゲット。スウェーデンはクアイソンの得点で追いすがるが、終盤は旧来のギリシャのイメージらしいボックス内での堅守が炸裂。猛攻を仕掛けるスウェーデンの攻撃を最後まで凌ぎきった。
勝敗には直結しなかったが、後半追加タイムのオルセンのセービング対応は見事。スウェーデンに最後の一瞬まで勝ち点の可能性をつないだ意地も見ごたえがあった。
この試合の出来でいえばスウェーデンを上回ったギリシャ。スウェーデンにとってはスペインの足音が聞こえてきてしまう、手痛い一敗となった。
Pick up player:タリス・ドゥヴィカス(GRE)
ギリシャの攻撃が成り立ったのは、彼が相手を背負えて中央に起点を作れたのが大きい。先制点につながった実効性も含めて、ギリシャの攻撃への貢献度の高さを踏まえてのピックアップ。
試合結果
2021.9.8
カタールW杯欧州予選 第6節
ギリシャ 2-1 スウェーデン
アテネ・オリンピックスタジアム
【得点者】
GRE:62′ バカセタス, 74′ バヴリディス
SWE:80′ クアイソン
主審:セルゲイ・カラセフ
2021/10 招集メンバー
GK
オディッセアス・ヴラホディモス(ベンフィカ/ポルトガル)
ソクラティス・ディウディス(パナシナイコス)
アレクサンドロス・パスハラキス(PAOK)
DF
マノリス・サリアカス(PASヨアニナ)
ヨルギオス・ツァヴェラス(AEKアテネ)
キリアコス・パパドプーロス(アトロミトス)
パンテリス・ハツィディアコス(AZアルクマール/オランダ)
コスタス・スタフィリディス(ボーフム/ドイツ)
レオナルド・クートリス(フォルトゥナ・デュッセルドルフ/ドイツ)
コスタス・マヴロパノス(シュツットガルト/ドイツ)
ディミトリス・ギアンヌリス(ノリッジ・シティ/イングランド)
コスタス・ツィミカス(リバプール/イングランド)
MF
ソティリス・アレクサンドロプーロス(パナシナイコス)
ペトロス・マンタロス(AEKアテネ)
タナシス・アンドルツォス(オリンピアコス)
アンドレアス・ブーハラキス(オリンピアコス)
マノリス・シオピス(トラブゾンスポル/トルコ)
ディミトリス・ペルカス(フェネルバフチェ/トルコ)
ゼカ(FCコペンハーゲン/デンマーク)
FW
クリストス・ツォリス(ノリッジ・シティ/イングランド)
ヴァンゲリス・パヴリディス(AZアルクマール/オランダ)
ディミトリス・リムニオス(トゥウェンテ/オランダ)
タソス・ドゥヴィカス(ユトレヒト/オランダ)
アナスタシオス・バカセタス(トラブゾンスポル/トルコ)
ヨルゴス・マスーラス(オリンピアコス)
マリオス・ヴルサイ(オリンピアコス)
第7節 ジョージア戦(A)
■機会の差がもたらすご褒美
9月シリーズでスウェーデンを下し、W杯出場に一縷の望みを繋いだギリシャ。迎えるスウェーデンとのリマッチに向けて、ジョージアとの一戦は是が非でも落とすわけにはいかないという状況である。
試合は非常に慎重な立ち上がりになった。ギリシャは時折前からプレスに行くこともあったが、WBが極端に前に出ていくシーンは限定的。WBが前に出ていく際は最終ラインがきっちりスライドして4バックを形成。4-4-2っぽく変形して全体の陣形の秩序が整っている状況へのスライドがセットである。
ジョージアもギリシャに積極的にプレッシングを行わなかったため、試合は攻守の切り替えが少ない展開に。ジョージアは4-1-4-1気味のブロックで、1トップを明確に前に残しての守備をする。
そのため、ギリシャは1トップの脇でボールを受けるポイントを作り、ジョージアのIHを吊り出すような動きで陣形を縦に広げにかかる。縦に引き伸ばして作ったスペースにギリシャはライン間にボールを入れることで前進していく。
だが、ジョージアは守備における撤退が非常に早い。ギリシャが運ぶまでの時間ですでにMFも含めてPAを固める形で人海守備を完成させる。そのため、得点の機会として最も多かったのはセットプレー。FK、CKのシーンがジョージアのGKであるロリアを最も脅かした場面と言ってもいいだろう。
ギリシャもなかなかチャンスは作れなかったが、ジョージアの拙攻はそれ以上。ギリシャがバックスにプレスをかける機会が少なかった分、後方は安定して保持することはできていたけど、そこから先に進む手段を見つけられず。シュートまで持ち運べるシーンとしてはギリシャのパスを中盤で引っ掛けてのショートカウンター。だが、ミタウカゼ1人ではうまく中盤の守備を限定するのは難しく、なかなかこちらも多くの機会を得ることができない。
敵陣に運ぶ機会が多かったギリシャは後半には対角パスを駆使しながら陣形を横に広げる。前半と比べればさらに攻撃の機会と敵陣まで迫る頻度でジョージアに差をつけていった印象である。
PAに運ぶ機会が結局この試合の勝敗を分けた印象だ。試合を決めたのはPA内でのジョージアのハンド。後半追加タイムにかかるところでようやく先制点を決めたギリシャ。優位に進めながらもスコアレスドローというシナリオも現実的だっただけにギリシャの面々には安堵の表情が見られる。
ダメ押しの2点目を決めたのが途中交代のペルカス。ジョージアのミスを見逃さずに抜け出して、決定的な2点目を決める。粘るジョージアに冷や汗をかいたギリシャだったが、最後はPAに迫る頻度の差でご褒美をゲット。逆転での出場権獲得に望みをつなぐ勝利となった。
Pick up player:コスタス・ツィミカス
割とここまでは味方に怒られるシーンが多かったけど、この試合ではビルドアップの立ち位置で味方に指示を出しながら相手を引き出す工夫を行っていた印象。審判にはスローインの時に前に出てきすぎで怒られていたけど。
試合結果
2021.10.9
カタールW杯欧州予選 第7節
ジョージア 0-2 ギリシャ
アジャラベット・アレナ
【得点者】
GRE:90′(PK) バカセタス, 90+5′ ペルカス
主審:ドナタス・ラムサス
第8節 スウェーデン戦(A)
■あと一歩で呼び覚まされたDNA
グループBのここから先を大きく占う重要な一戦である。首位のスペインを1試合消化試合が少ない状況で追うスウェーデンは勝てば首位に返り咲き。10月終わりで首位に君臨すればスペイン戦は引き分けで首位通過がぐっと近づくことになる。
一方のギリシャはここで置いていかれるようだとプレーオフの出場権は大きく遠のく。9月はこのスウェーデン戦に勝利し突破の望みをつないだが、勝ち点の現状を見ると再び勝利の必要がある舞台となっている。
試合は意外にも序盤から一方的な展開だった。相手を圧倒していたのはアウェイのギリシャ。平常運転といえば平常運転なのだが、ギリシャの5バックはバッチリスウェーデンの保持における3-2-5可変にマッチ。スウェーデンは後方のズレを使っていくというよりはとりあえず前線に預けてもらってあとはなんとでも!という色が強いので、こうしてガッツリ人を捕まえられると苦しくなる。
攻撃においてもギリシャはスウェーデンの難点をよくわかっていた。まずは奥行きを使うスピードでカウンターから縦に早い勝負を挑む。仮に急げない状況だったら中央を経由するサイドチェンジを駆使しながら相手の4-4ブロックの外側にいるWBにボールを届ける。特に左のWBであるギアンヌリスがフリーになることが多く、ここをボールの落ちつけどころとしてうまく活用していた。
PAまでボールを運ぶだけでなく、PAから先のエリア内のデュエルでも優勢だったギリシャ。数回バーに阻まれるなど本当にゴールまであと少しのところだった。
しかし、あと一歩で手をこまねいているうちにスウェーデンは一気にカタを付ける。5バックで5トップへの変形をとがめるというのはあくまで個々人のマッチアップで守備側がある程度計算が立つ前提が必要。そこを破ったのがイサクだった。体の入れ替えだけで対面のマヴロバノスからPKを得ると、これをフォルスベリが決めて先制。
さらに、長いボールへの目測を誤ったギリシャの隙を突いたイサクが自身で決定的な追加点を決める。こうなるとスウェーデンは強い。『あとは守るだけ』という状況になったスウェーデンの強固さはまさしくDNAといった感じ。
あと一歩を踏み出せないでいるうちに、DFラインのミスからDNAを呼び起こしてしまったギリシャにとってはW杯出場が大きく遠のく一敗に。逆にスウェーデンは本戦ストレートインに向けて有利な立場で残り2節に臨むことが出来る。
Pick up player:アレクサンデル・イサク(SWE)
2試合連続で選んでいるのは知っている。それでも今日はこの人しかいない。違いをみせなければ4-4-2で守り切る展開もなかった。消える展開の中であきらめずに後半も好機を狙って結果につなげたしぶとさも好印象。
試合結果
2021.10.12
カタールW杯欧州予選 第8節
スウェーデン 2-0 ギリシャ
フレンズ・アレナ
【得点者】
SWE:59‘(PK) フォルスベリ, 69’ イサク
主審:トビアス・スチュイラー
2021/11 招集メンバー
GK
オディッセアス・ヴラホディモス(ベンフィカ/ポルトガル)
ヨルゴス・アタナシアディス(シェリフ・ティラスポリ/モルドバ)
アレクサンドロス・パスハラキス(PAOK)
DF
マノリス・サリアカス(PASヨアニナ)
イェラシモス・ミトグル(AEKアテネ)
ヨルギオス・ツァヴェラス(AEKアテネ)
タナシス・アンドルツォス(オリンピアコス)
ディミトリオス・グータス(シヴァススポル/トルコ)
パンテリス・ハツィディアコス(AZアルクマール/オランダ)
ヨルゴス・キリアコプーロス(サッスオーロ/イタリア)
ディミトリス・ギアンヌリス(ノリッジ・シティ/イングランド)
コスタス・ツィミカス(リバプール/イングランド)
MF
ソティリス・アレクサンドロプーロス(パナシナイコス)
ペトロス・マンタロス(AEKアテネ)
アンドレアス・ブーハラキス(オリンピアコス)
ヨルゴス・マスーラス(オリンピアコス)
マノリス・シオピス(トラブゾンスポル/トルコ)
アナスタシオス・バカセタス(トラブゾンスポル/トルコ)
ディミトリス・ペルカス(フェネルバフチェ/トルコ)
ディミトリス・リムニオス(トゥウェンテ/オランダ)
FW
クリストス・ツォリス(ノリッジ・シティ/イングランド)
ヴァンゲリス・パヴリディス(AZアルクマール/オランダ)
タソス・ドゥヴィカス(ユトレヒト/オランダ)
第9節 スペイン戦(H)
■許してしまったことが致命傷
やらかしてしまったスウェーデンのおかげで首位に立つチャンスを得たスペイン。ギリシャとの一戦で結果を出せば、最終節をかなり優位な条件で迎えることができる。
展開としては非常に静的な流れになったこの試合。トランジッションが非常に少なく、保持しているチームが長い時間ボールを回すシーンが目立った。スペインは端的に言えばそういう展開に慣れているし、得意なチームである。保持でやり直しは効くし、中盤の選手たちが相手に対しての枚数調整にも当然できる。
ギリシャがシャドーが絞る形で中央を固めながら網を張るような守備をしたことも相まって、スペインは外を回しながらやり直しを繰り返しながら、どの部分が破れそうかを検討する流れになっていた。
強力なWGがいない分、こういう流れで強引にこじ開けることが難しいのがスペインの悩みである。中を固める相手ならば、外を壊せる選手は本来ならば欲しいところである。それゆえ、セットプレーの流れからPKを獲得できたことはスペインにとって大きかった。
1点をとってしまえば、スペインの保持はゴールに向かわなくても許される部分が大きい。ギリシャは低い位置まで押し下げられてしまうと、カウンターで縦に進むことができなかった。この日は中盤から前に出ていく推進力をもたらすことができるバカセタスがいなかったのが大きかった。それを差し引いてもスペインの両CBの仕事は見事。ラポルトとマルティネスのコンビはギリシャの前線に前を向かせることなく完封して見せた。
保持で許されたスペインはボールを回しつつ、ネガトラでボールを取り返し、再び保持の循環に突っ込むことができる。新参者のデ・トーマスが当然のようにこの流れに入り込めるのはさすがだし、後半にブスケッツが登場すると、その落ち着いた流れに拍車がかかるのが匠である。
ギリシャは後半に左のWBに入ったリムニオスが終盤強引に打開を試みたものの、スペインのバックス相手には歯が立たないまま時計の針は進んでいく。1-0という最小得点差ながら、保持でも非保持でもギリシャに糸口を掴ませなかったスペイン。ゴールに向かわないことを許してしまったことでギリシャは勝ち筋を見失ってしまった印象だ。
Pick up player:エメリク・ラポルト(ESP)
こういう試合はCB。不慣れな右側でチャンスを潰し続けたラポルトをチョイス。フルタイム出ていればブスケッツだったかもしれない。
試合結果
2021.11.11
カタールW杯欧州予選 第9節
ギリシャ 0-1 スペイン
アテネ・オリンピックスタジアム
【得点者】
ESP:26’(PK) サラビア
主審:シモン・マルチニャク
第10節 コソボ戦(H)
■有終の美を許さず、意地を見せたコソボ
前節でW杯出場の目が潰えてしまったギリシャ。コソボとの試合が消化試合になったのは不本意だろうが、有終の美を飾るべく主導権を握ったのはホームのギリシャの方だった。
コソボの4-4-2のプレッシングに対して、ギリシャはWBを経由しながら大外を回しつつボール保持。ハーフスペースの裏抜けを噛ませることでギリシャはコソボの最終ラインに穴をあける。
相手に裏を意識させることができればこちらのもの。コソボのCHが最終ラインに意識を向けることを利用して、今度はマイナス方向のIHに前を向かせてボールをもつ形を作りボール保持を進めていく。
コソボの最終ラインは4枚、かつ同サイドにギリシャがきっちり寄せる形でポゼッションをするので、逆サイドは空くことが多い。ファーにクロスを上げることでミスマッチを作りゴールに迫るのがギリシャの狙いだった。特に印象的だったのはペルカス。保持よし、飛び出しよしでコソボの守備の切れ目に顔を出し続けた。
ラシツァのカウンターから活路を見出したいコソボ。動き出しでギリシャのDFラインを置いてけぼりにすることはできなくもないが、タメができていないのでそこから先に手詰まりになる。
そもそもコソボは予選のもっと手前の段階では保持でサイドを変えながら徐々に前進していく形はもっと上手いチームだと思ったので、そこが試合を追うごとに失われてしまったのは残念である。
ギリシャ優勢の中で、ホームチームに先制点が生まれたのは前半終了間際。コソボのリトリートが遅れたことで、4−4ブロックの形成が不安定に。ここも持ち上がったのはペルカス。彼のクロスからニアに潰れたマスラスのゴールでギリシャが先制する。
後半もペースは変わらずギリシャ。動き出しが早く大きいシャラのところを狙い目に、ギャップをついてパスワークで安定したポゼッションを見せる。このまま、ギリシャが試合を掌握して終わりそうになったところでセットプレーでやり返したコソボ。意地のラフマニのゴールでタイスコアに持ち込む。
そこから先は試合は一気にアップテンポに。コソボが裏への浮き球を軸にゴール前の崩しを見せると、ギリシャはマスラスへの長いボールから一気に前進を狙う。交代選手がエネルギッシュなプレーを見せたこともあり、ゴール前でのプレー自体は増えた終盤戦。しかし、試合はそのまま終了。最終節は痛み分けで予選の全日程を終えた両チームとなった。
Pick up player:アミル・ラフマニ(KOS)
試合全体で見ればペルカスも良かったけど、最終ラインを支え続けたラフマニの一発はエモかった。
試合結果
2021.11.14
カタールW杯欧州予選 第10節
ギリシャ 1-1 コソボ
アテネ・オリンピック・スタジアム
【得点者】
GRE:44′ マスラス
KOS:76′ ラフマニ
主審:アレクセイ・クルバコフ