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「Catch up Premier League」~Match week 30~ 2023.4.8-4.9

目次

マンチェスター・ユナイテッド【4位】×エバートン【16位】

不安が募る完勝のエピローグ

 立ち上がりからユナイテッドはいきなりチャンス。左サイドに引っ張ったスペースからザビッツァーがいきなり惜しい場面を迎える。

 押し込む機会を得ることができたユナイテッドは序盤からサイドでトライアングルを形成。この形を有効活用しながら、エバートンのサイドを切り拓き、エリアに迫っていく。

 押し込まれたエバートン。ただし、ボール保持のターンで全体を押し上げればいいのかは悩ましいところであった。というのは単純に押し上げてしまうとユナイテッドに裏を取られてしまう危険性があるから。出ていけば行くほど管理できない裏のスペースが増えており、実際にラッシュフォードはここから十分にチャンスを迎えていた。

 ただ、保持における手応えがなかったわけではないのが難しいところ。右サイドからのパスワークからぽっかりシムズが空くなど人数をかけた押し込みは十分にユナイテッドに効きそうな予感があった。ユナイテッドはバックラインの横の距離感が微妙。特にCBの間がいたずらに空くことがあり、こうしたスペースを2トップがつくことでゴールに迫ることは十分にできそうな情勢だった。

 リスクを考えればエバートンはカウンター対応の危険性が下がるロングカウンター主体に舵を切った方がいいだろう。だが、エバートンがスタンスをはっきりさせなかった結果、ユナイテッドは前半からどんどんシュートのチャンスを生み出していくことになる。

 エバートンに全乗っかりでカウンターからチャンスを生み出しまくるユナイテッド。ピックフォードは前半から大忙しで対応に追われることに。先制点をとったのも最終ラインを破る抜け出しから。飛び出したザビッツァーを囮に、マクトミネイが飛び込んで先制ゴールをゲット。飛び込むタイミングをズラすことで虚をついたユナイテッドがエバートン相手に先手を打つ。

 以降は落ち着いて試合を運んだユナイテッド。アンカー活用されているブルーノを軸に、試合を落ち着いて運んでいく。

 前半を終えても試合の流れは変わらない。ボールを握るユナイテッドがひたすら多くのチャンスを作りながら、エバートンを攻め立てていく。

 しかしながら、この流れにユナイテッドのアタッカー陣がいまいち乗っかることができず。特にラッシュフォードは度重なる追加点のチャンスを活かすことができずに苦戦する。交代で入ったマルシャルもなかなか波に乗り切れずに試合は1点差のままでエバートンが我慢できる時間が続くことになる。

 だが、エバートンは実に悔いの残る形で追加点を許してしまう。右サイド、コールマンのエラーから最後はマルシャルがチャンスを活かして逆転。ここまで悪くないパフォーマンスが続いていただけに重たい追加点を与えてしまったことになる。試合の興味を懸命に繋いでいたピックフォードもここまでである。

 快勝で幕を閉じれるかと思ったユナイテッドだが、終盤にラッシュフォードが負傷。残りのシーズンにやや影を落とす形で試合は幕を閉じることとなった。

ひとこと

 CL出場権争いでは優位に立った勝利だが、以前スカッドの不安は尽きない状況。最後の2ヶ月をこのスカッドで凌ぎ切ることができるかがかなり危険な領域に入りつつある。

試合結果

2023.4.8
プレミアリーグ 第30節
マンチェスター・ユナイテッド 2-0 エバートン
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:36’ マクトミネイ, 71‘ マルシャル
主審:マイケル・オリバー

アストンビラ【7位】×ノッティンガム・フォレスト【17位】

欧州カップ戦争いに本格参入

 きっちりと下がった位置からスタートするノッティンガム・フォレストのスタンスはすでにプレミアには十分に浸透。SBからボールが運べるという共通認識を活用したアストンビラはボール保持の時間を確保しつつ、敵陣に攻め込んでいく。

 バックラインからのキャリーで主導権を握ったアストンビラはサイドからきっちりと押し込みながら主導権を握り続ける。フォレストは5-3-2と5-2-3のハーフアンドハーフといった様相。ジョンソンが右から外を切るような形で押し込んでいくが、逆サイドのダニーロにはそうしたアクションに同じ仕事を与えていない。

 よって、アストンビラはボール保持においてはきっちり逃げ場を作れていた。ジョンソンの背後を狙うことができれば完全に安全地帯にボールを逃すことができるし、その難易度はそこまで難しくはなかった。

 フォレストは徐々にラインが下がっていたが、WBを押し上げる形で段々と高い位置から相手を止めていくようになった。しかしながら、ラインを上げれば上げるほどトランジッションからビラがWBの背後を取ることができるように。ベイリーのケガといったアクシデントも見られたが、アストンビラのペースは終始変わらない状況だった。

 後半早々にビラは優位をゴールに結びつける。サイドから裏を取った右サイドのトラオレから先制点をゲット。ハーフタイム明けに迅速にリードを手にする。

 右サイドで見つけたトラオレという質的優位はゴール以降も十分にビラへの優位をもたらすことができる部分である。先制した分、相手の選手を引き出すようなボール保持からフォレストの陣形をビラ側に引き寄せてから進んでいく。

 フォレストは4-2-3-1に移行して攻撃的な枚数増加での破壊力アップを狙っていくが、効果は限定的。むしろ、中盤でのスペースが空いた分、ビラの攻めることができる場所が広がるように。これにより、さらにペースはビラ側に流れることになる。

 終盤にはワトキンスがゴールを決めて追加点をゲットしたビラ。この勝ち点3で無風地帯から欧州カップ戦出場権争いに本格参入だ。

ひとこと

 確実に質の違いを見せつけての勝利となったビラ。右肩下がりのフォレストの出来は現状では不安にはなる。残り試合数はまだ残されている。余談を許さない状況はまだおわらない。

試合結果

2023.4.8
プレミアリーグ 第30節
アストンビラ 2-0 ノッティンガム・フォレスト
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:48’ トラオレ, 90+5‘ ワトキンス
主審:アンソニー・テイラー

ブレントフォード【9位】×ニューカッスル【3位】

強気の4-4-2採用で難所を逆転勝利で攻略

 試合はいきなりブレントフォードのセットプレーからのスタート。ブレントフォードの得意なパターンで試合は幕を上げる。

 オープンプレーにおいてもブレントフォードは優勢。バックラインからの長いボールをFWに当てて、セカンドボールを拾い、サイドに展開という非常に彼ららしいボール運びでニューカッスルの陣内に攻め込んでいく。ホームゲームで得意のパターンに持ち込むことができたブレントフォードにとっては素晴らしい立ち上がりだったと言えるだろう。

 押し込むことができれば再びセットプレー!という流れでペースはブレントフォードに。ニューカッスルは自陣からの脱出に苦戦。なかなか自分たちのサッカーができないまま時間が過ぎていくことになる。ブレントフォードはセットプレーの流れからゴールネットを揺らすもこれはオフサイドで取り消し。ニューカッスルにとっては救われた判定となった。

 それでもブレントフォードの勢いは止まらず。右サイドに流れるシャーデからPKを獲得。再び先制点のチャンスを迎える。しかしながら、これをトニーが失敗。またしても先制点を掠め取られる形となった。

 だが、前半終了間際にはセットプレーにおいてイサクがファウルを犯し、再びブレントフォードに先制のチャンスが巡ってくる。トニーが今度こそ決めてリベンジ達成。ハーフタイムまでにリードを奪うことに成功する。

 ニューカッスルは自陣からのキャリーが時間の経過とともにうまくいくようにはなったが、ブレントフォードのブロック守備の攻略に苦戦。サイドに流れるイサクもブレントフォードが封殺に成功しており、なかなか手を打つことができない。

 後半、巻き返したいニューカッスルはシンプルな4-4-2に変更。ウィルソンとイサクを並べ、CHに配置されたジョエリントンは高い位置に出ていくことで攻撃に厚みを加えていく。

 重心を高くする決断をしたニューカッスルにより、前半とは立場が入れ替わった形で後半は進むことに。一方的に相手を攻め立てるのはニューカッスルのターンになった。

 同点の決め手になったのはジョエリントン。右のハーフスペースに侵入しつつ、ベン・ミーを振り切ることに成功。ラヤのオウンゴールを誘発し、試合を振り出しに戻す。

 畳み掛けるようにニューカッスルは勝ち越しゴールをゲット。ウィルソンで深さを作り、横パスを受けたイサクがゴールを決める。前に出したジョエリントンやいかにも2トップという形で勝ち越しを決めるあたり、ハーフタイムのエディ・ハウの采配は的中だったと言えるだろう。

 ハンドで3点目こそ取り消されたニューカッスルだが、勢いは止まらない。前線を厚くしたニューカッスルに対して、カウンターから反撃を見せたいブレントフォードではあったが、サイドに流れるFWはニューカッスルのCBによって封殺される。

 負けじと次々とFWを投入し続け、最後は今季のブレントフォードの中でも有数の攻撃的なモデルにたどり着いたが、最後までスコアを引き戻すことはできず。先制されながらも難所攻略に成功したニューカッスル。CL出場権獲得に向けてここを超えたのは非常に大きい。

ひとこと

 ホームのこの勢いのブレントフォードを強気な采配でハーフタイムにひっくり返したエディ・ハウが勝利を引き寄せた。

試合結果

2023.4.8
プレミアリーグ 第30節
ブレントフォード 1-2 ニューカッスル
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:45+1’(PK) トニー
NEW:54‘ ラヤ(OG), 61’ イサク
主審:クリス・カバナフ

フラム【10位】×ウェストハム【15位】

泥臭くもぎ取った大きな勝ち点3

 立ち上がりは左サイドに流れることでポイントを作って攻め込んだウェストハム。だが、基本的にはフラムのボール保持が長く占める形で試合は進んでいく。

 CBが開き、GKを活用しつつグラウンダーのパスからボールを動かしていく。ウェストハムの2トップは中盤を受け渡しながら、変わる変わるフラムのバックラインにプレスをかける形。よって、実質フラムがボール保持を長くすることを許容する振る舞いだった。

 2トップの脇からボールを進めることができていたフラム。だが、その先のアクションにおいては物足りなさが残る。プレスには引っかからない。押し下げるフェーズも困らない。だが、ミドルゾーンより先に侵入していく手段がない。ウィリアンがボールを受けるスペースはないし、放り込んでも競り勝てる可能性があるミトロビッチはスタンドで虚ろな表情でピッチを眺めているだけである。

 よって、ウェストハムとしてはそこまで困るような流れではなかった。むしろ彼らが気にしなければいけないのは自らの前進である。サイドに流れるFWから泥臭くというのは前進という武器の強度してはフラムと似たような精度であり、得点のチャンスをなかなか生み出すことができない。

 苦しい最終局面での粘りから得点を捻り出すことに成功したのはウェストハム。コーファル、ボーウェンという右サイドの深い位置での突破からオウンゴールを誘発。ほぼノーチャンスの攻め手から抜け目なくゴールに辿り着く。

 フラムにとってはより厳しい展開に。ウェストハムは撤退の意識を高めた分、フラムはさらに深い位置に進むことが許されたが、インサイドの守りはさらに強固に。セドリックのクロスをヴィニシウスに届かせること頼みという得点パターンはゴールをこじ開けるにはあまりにも乏しい。

 後半もフラムがボールを持ちながらこじ開けるトライをする流れは継続。2枚の選手交代で右に移動したウィリアンを軸にトライアングルからチャンスを作る形を模索するが、なかなか解決策を見つけることができない。

 一方のウェストハムの狙いもそのウィリアン。降りていきながらボールを受けたがるウィリアンに対してちょっかいかけてカウンターを誘発する。

 フラムはこのカウンターを迎撃するのにファウルで相手を止める場面が多く、押し込まれたウェストハムも同じくドリブルからファウルを犯すケースが多かった。よって、後半のチャンスのほとんどはセットプレーによるものだった。

 この状況はリードしているウェストハムにとっては歓迎だろう。セットプレーからの怖さを感じるプレーも少なく、問題なく守れる時間が続く。終盤はラインが間延びするせいでフラムがライン間への縦パスを入れてからのチャンスが出てくるように。冷や汗をかく場面もあったが、最後はファビアンスキが凌いでリードを守り切る。またしても前半の先制点をキープしての逃げ切りでウェストハムは大きな連勝を決めた。

ひとこと

 ブロック守備を敷いての逃げ切り勝利。カウンターの精度は寂しさはあるが、徐々にウェストハムはらしさが出てきた。

試合結果

2023.4.8
プレミアリーグ 第30節
フラム 0-1 ウェストハム
クレイヴン・コテージ
【得点者】
WHU:23‘ ハリソン・リード(OG)
主審:ジャレッド・ジレット

ウォルバーハンプトン【14位】×チェルシー【11位】

下馬評通りの苦戦スタート

 ポッターに別れを告げたチェルシーがたどり着いた結論はレジェンドの期間限定再登板。今季末までチェルシーの指揮を取るのは、開幕の時点ではエバートンの監督であったフランク・ランパードである。

 ランパードは4-3-3を採用。バックラインからボールを持ちながら打開を探っていく。エンソは最終ラインの間に落ちてサリーしつつ、後方から一気にワイドや裏を狙っていくスタンスであった。配置としての決まり事はそれになりに整理がされている感がなかったわけではないが、何せ動きがなくボールが動くことによる変化がない。ということで、最終的にはアタッカーそれぞれが頑張ろう!という個人戦に持ち込まれそうな空気だった。

 連携が期待できそうなサイド攻撃はウルブスの同サイドの圧縮によって無効化されてしまった感じ。こちらもあまり有効打にはならなかった。

 一方のウルブスもバックラインからボールを繋いでいく形を重視。チェルシーはウルブスのバックラインには制限をかけることはしなかったので、ウルブスはゆったりとボールを持つように。どちらのチームもゆったりとボールを持つことができる攻守の切り替えが少ない展開になった。

 中盤はいつものように縦関係を形成するウルブス。中央では縦関係のポストプレーから打開を図っていく。サイドでも蓋をするのが遅れるチェルシーの守備のギャップをつくことができており、ゆったりとした攻めに関してはチェルシーよりも手応えがある試合の進め方ができていた。

 優勢に進めていたウルブスの先制ゴールはなかなかにパンチがあるものだった。左サイドから攻め立てた攻撃の跳ね返りを右サイドのヌネスがスーパーボレーで仕留めて見せた。逆サイドのネットに突き刺さった強烈なシュートでウルブスが先行する。

 後半はチェルシーがボールを持ちながら反撃に出るトライを行うように。ウルブスはロングカウンターから好機を狙っていく。すれ違ってしまったエンソによって大チャンスができるなど、十分にこの形でも手応えはあった。

 それでも徐々にボール保持の機会を増やしながらウルブス陣内に押し込む時間を増やしていくチェルシー。だが、ウルブスのナローな4バックがペナ幅に入り込みひたすら跳ね返し続ける。

 膠着した展開を打破することができないチェルシー。最後はウルブスに封じ込められて沈黙のまま終了。苦戦が予想された第二次ランパード政権は黒星スタートという苦しい船出となった。

ひとこと

 ヌネスの怪我が心配。

試合結果

2023.4.8
プレミアリーグ 第30節
ウォルバーハンプトン 1-0 チェルシー
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:31’ ヌネス
主審:ピーター・バンクス

トッテナム【5位】×ブライトン【6位】

ワンチャンスを活かしたスパーズが恵まれないブライトンを下す

 CL出場権を直接争う両チームのシックスポインター。ブライトンがトッテナムのホームに乗り込んでの一戦となった。

 低い位置からボールを繋ぎながらのチャレンジというと当然ブライトンの専売特許である。しかしながらこの試合はトッテナムも立ち上がりは同じお題にトライしていたと言えるだろう。

 ブライトンはトッテナムのバックラインにプレスをかけ切ることは諦めつつも、中盤にはマンツー気味にプレスをかけていく。というわけで中盤では簡単にフリーマンを作ることができなかったトッテナム。だが、ファウルをとって地道に前進していくと、セットプレーの流れからソンが先制ゴール。大事な試合で展開を動かすゴールを決められていないソン。今季ようやく大仕事ができたといったところだろう。大きなゴールでトッテナムが先行する。

 ブライトンの決定機はトッテナムのインサイドに刺していく意識を逆に利用する性質のものが多かった。ブライトンはトッテナムの中央の縦パスをカイセドがカットした流れで三笘がネットを揺らしてみせる。しかしながら、これはハンドでノーゴール。シビアな判定でゴールは取り消しになる。

 ここからブライトンは5-4-1のブロック攻略の様相を呈する。引いて受けるトッテナムに対して、押し込むながら崩すトライを続けるブライトン。狙いが報われたのは34分。セットプレーからダンクのゴールで同点に追いつく。

 ここからさらに勢いに乗ってブロック攻略を行うブライトン。食いつきが良くなったトッテナムに対して、中央を広げてはインサイドに差し込んでいくなどの工夫を見せるなど、さすがと言いたくなるようなこじ開け方をしていた。

 トッテナムもブライトンの撤退守備に挑む形で前半の残り時間を過ごすことに。大外のWB、シャドーを軸にサイドからラインを押し下げてクロスを狙っていく。

 タイスコアで迎えた後半、ブライトンは継続路線を選んだのに対して、トッテナムは手早いラインブレイクを軸とした攻撃にシフトチェンジ。両チーム異なる攻略法で相手のブロックを崩しにいく。

 どちらのチームもそれなりに答えにはたどり着いたと言えるだろう。ブライトンが生み出した決定機はいずれも十分に崩せたものだったが、この日は主審とVARが彼らに微笑むことはなし。ステッリーニにレッドカードというバランスの取り方で納得ができるブライトンファンはいないだろう。

 一方のトッテナムの勝ち越しゴールもきっちりとファストブレイクから結果を出した形。右サイドを抜け出したホイビュアがマイナスに折り返したところをケインが仕留めて貴重なリードを奪う。

 ワンチャンスであるが、このワンチャンスを仕留めたことで試合は決着。4位争いのライバルであるブライトンを下したトッテナムがニューカッスルとマンチェスター・ユナイテッドの追走に成功した。

ひとこと

 ステッリーニの訳無き退場、画になりすぎている。こういうタイプの画になる監督もいる。

試合結果

2023.4.8
プレミアリーグ 第30節
トッテナム 2-1 ブライトン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:10’ ソン, 79‘ ケイン
BHA:34‘ ダンク
主審:スチュアート・アットウェル

レスター【19位】×ボーンマス【18位】

仕上がらずに安い失点を献上した代償

 ブレンダン・ロジャーズを解任してなお悪い流れが止まらないレスター。アストンビラ戦では終盤に痛恨のミスで敗れてしまったが、同じく残留を争うライバルであるボーンマスには勝ち点を与えるわけにはいかない。

 アストンビラ戦ではなかなかインサイドにボールを入れることが出来ずに苦労したレスターだったが、この日は序盤からチャレンジが目立つ。立ち上がりに見せた左サイドからのバーンズへのパスはそのチャレンジの成果ともいえるだろう。ビラと同じくライン間圧縮色が強いボーンマスに対して、ビビらずにインサイドにボールを入れることが出来たのは好材料だ。

 その一方でアタッキングサードにおける攻めには物足りなさが残る。攻め切る部分がレスターには足りておらず、特にサイドにおける抜け出しがない分、PA内にギャップを作るのに苦労をしていた。

 一方のボーンマスはロングボールを積極的に使いながらの立ち上がり。ワッタラとソランケが左サイドに流れては長いボールのターゲット役をこなしていたのが印象的だった。

 序盤を無難に過ごしたボーンマスは徐々にショートパスの比重を増やすことでレスターから攻撃機会を奪いつつ、敵陣の深い位置まで攻め込むようになる。ボール保持のフォーメーションは3-2-5。片側のSBが上がる形で変形し、レスターに大外のケアを強いるように。

 時間の経過とともに押し返す頻度が増えたボーンマスは徐々にプレッシングの頻度も増えていく。バックラインへのプレッシャーをかけるボーンマスに対して、レスターはショートパスを差しに行ったが、マディソンのバックパスがプレゼントに。これをビリングが決めてボーンマスが先制する。

 後半も試合のペースはあまり変わることがなかった。レスターがボールを持ちつつ、ボーンマスはカウンターに専念するように。ソランケのポストからビリングが裏抜けする様子は、もはやボーンマスらしい攻撃の最たるものである。

 レスターも前半の汚名を返上すべく、右のハーフスペースからマディソンがごりっと入り込んで侵入。仕上げのクロスを上げるなどチャンスメイクで少しずつ存在感を増していった。

 それでもスコアはなかなか動かない。ボーンマスはそれでもいいのだが、ビハインドのレスターにとっては焦る時間が続くことになる。攻撃では押し込む機会を与えられてはいたが、そこからボールをエリアに入れる精度が上がってこない。終盤に敢行した選手交代も含めて交代のブーストが最後までかからなかったレスター。むしろ、カウンターからボーンマスのカウンターに襲い掛かられることもあった。

 試合はそのまま終了。見事な逃げ切りに成功したボーンマス。監督交代の先駆者がチームの完成度の差を新参者のレスターに教える。そんなレッスンのような試合だった。

ひとこと

 またしても安い失点で勝ち点を逃してしまったレスター。逆にボーンマスは目を見張るような奇抜なアイデアや驚異的な選手は他のチームと比べれば多くないが、徐々にチームが目指すべき点は根を張り始めているように見える。

試合結果

2023.4.8
プレミアリーグ 第30節
レスター 0-1 ボーンマス
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
BOU:40‘ ビリング
主審:デビッド・クーテ

サウサンプトン【20位】×マンチェスター・シティ【2位】

近づく首位、遠のくボーダー

 3つのコンペティションを並行して優勝を狙っているマンチェスター・シティ。なんとか降格圏の脱出に近づきたいサウサンプトン相手には強大な敵が立ちはだかることになる。

 シティはいつも通りの後方3-2型のビルドアップ。時折エデルソンが入るような後方の4バック形成でサウサプトンのプレス隊を誘き寄せる。サイドにボールをつけて、サウサンプトンのSHとSBを引きつける。縦への加速と横断の使い分けが絶妙で彼らの前がかりな姿勢の逆をとっている。

 保持での支配感はないが、どんな方法でも堅実に前に進むことができる手堅さはあるのが今のシティ。困ったら躊躇なく全線に放り込めるシティの姿は今季においては別に何も珍しいものではない。

 同じく、ショートパスからの組み立てを志向したこの日のサウサンプトン。しかしながら、ミドルゾーンでの加速は物足りないし、困った時のロングボールの的もない。ショートパスから繋いでいくという形を具現化するにはなかなかに足りないものばかり目につく状態だった。

 得点の形が見えるとしたら左サイド。エル・ユヌシとウォーカー=ピータースの2人のデュオにボールを繋ぐことができれば一安心である。ラヴィアという中央の司令塔からこのユニットにボールを渡すことができればそれなりに惜しい場面も。ただし、そういった場面を作るのに、そもそもサウサンプトンは非常に苦労していた。

 スレマナにはシティのショートコーナーを掻っ攫っての大チャンスがあったが、このチャンスを活かすことができず。ボールはシティの元にあっさりと戻っていってしまった。

 シティは前半のうちに先制点をゲット。グリーリッシュとポジション交換したデ・ブライネが左サイドに顔を出すとここからのクロスに合わせたのはハーランド。完全に優勢に進めていたこの試合に唯一足りなかった先制点をようやく手にする。

 後半は左サイドからのポイント作りに勤しむシティ。グリーリッシュを何度もギュンドアンが追い越していく姿が何回か見られることとなった。

 そして、そのまま試合はシティのゴールショーに突入。まずはハーランドのポストを起点とするゴールから。大きな展開を受けた左サイドでグリーリッシュが抜け出すと一度は阻まれたシュートをもう一度押し込んで追加点をゲット。

 さらには自陣の深い位置からの擬似カウンター的な加速でシティは3点目。ハーランドのアクロバティックながら安定したオーバーヘッドでさらに相手を突き放していく。

 サウサンプトンはジェネポの突破からマーラという交代選手のコンビで一矢報いる。しかし、直後にはウォーカー=ピータースのPK献上により、再び点差は3点差まで広がってしまう。

 45分の粘りも実ることなく、終盤はシティのゴールラッシュに苦しんだセインツ。首位に近づく3ポイントを挙げたシティとは対照的に残留ボーダーが遠のく一敗となってしまった。

ひとこと

 すごいなシティが95%、やっぱりハーランドがいると出力が上がりにくいところがある気がするなが5%。

試合結果

2023.4.8
プレミアリーグ 第30節
サウサンプトン 1-4 マンチェスター・シティ
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:72’ マーラ
Man City:45‘ 68’ ハーランド, 58‘ グリーリッシュ, 75’(PK) アルバレス
主審:ロベルト・ジョーンズ

リーズ【13位】×クリスタル・パレス【12位】

オリーズが牽引する嵐のパレスが後半を席巻

 前節、劇的な勝利でホジソン政権初勝利を飾ったクリスタル・パレス。勢いそのままにエランド・ロードに乗り込む。フォーメーションは4-3-3。前節のシステムを継続で採用していく。

 試合はとても慎重な立ち上がりになったと言えるだろう。どちらのチームもバックラインに強気のプレスはかけることなく、非保持の局面では相手にゆったりとボールを持たせることを許容していた。

 リーズは大きく横幅を使いながらパレスの4-5-1のブロック攻略に挑む。サイドからSB,IH,WGの3枚を活用しつつ、相手の守備ブロックの奥を狙っていく。攻撃の軸になったのは左サイドのシニステラ。ニョントが務めることが多い、左サイドの旗頭の役を元気いっぱいに務めていた。

 パレスのボール保持もカウンターではなくゆったりしたもの。こちらもバックラインから大きく横に揺さぶるアプローチをかけてみるが、なかなか相手のリアクションが早く苦戦。スライドと縦方向への早い寄せから比較的手前の段階でパレスのチャンスの目を摘んでみせた。

 ジリジリとした展開はセットプレーにチャンスが集約されることとなった。そのセットプレーからリーズは先制。バンフォードのゴールで前半の早めの時間に前に出る。

 一方のリーズの同点ゴールも前半終了間際のセットプレーだった。グエイのヘッドが追加タイムに決まり、後半に入る直前に試合をタイスコアに戻す。

 一進一退だった前半とは異なり、後半は一方的な展開となった。攻め立てるはアウェイのクリスタル・パレス。サイドから敵陣深くに押し込みながらひたすらリーズの守備ブロックを殴り続ける。

 面食らったリーズはプレッシングから反撃に出たいところだが、なかなかやり返すきっかけを見つけることができずに苦戦。セカンドボールもことごとく拾われてしまい、自分たちの時間を持つことができない。

 パレスの後半の猛攻を牽引したのは右のワイドのオリーズ。2点目では右の大外からクロスでアイェウの勝ち越しゴールをお膳立てすると、その2分後にはエゼと共にカウンターで敵陣までボールを運び、折り返しのエゼに再びアシストを決めた。

 そして、カウンターからエドゥアルドが4点目、そしてとどめのアイェウでさらにもう1点とパレスファンには嬉しいゴールラッシュで試合を完全に決着させる。

 リーズもニョント、バンフォードといった面々が局地的に反撃を行うが、後半のパレスの嵐のような迫力の前には反撃も湿りがちに。後半は一方的に屈する形でリーズがパレスに勝ち点3を献上した。

ひとこと

 5得点は出来過ぎではあるが、フラットなゲームを後半一気に引き寄せたのはなかなかに興味深い。ホジソンとしてはライバルたちの心を折りながらの終盤戦で早いところ残留を決定的なものにしたいところだろう。

試合結果

2023.4.9
プレミアリーグ 第30節
リーズ 1-5 クリスタル・パレス
エランド・ロード
【得点者】
LEE:21‘ バンフォード
CRY:45+1’ グエイ, 53‘ 77’ アイェウ, 55‘ エゼ, 69’ エドゥアール
主審:サイモン・フーパー

リバプール【8位】×アーセナル【1位】

鬼門越えはまたしてもお預け

 レビューはこちら。

https://footballista.jp/special/157555

 首位をひた走るアーセナルにとって終盤戦はじめの関門として立ちはだかるアンフィールド。6連敗中のこの地は優勝に向けた最終試験の1問目といったところだろうか。

 序盤はリバプールの奇襲から始まった。リバプールは3-2型のブロックからアレクサンダー=アーノルドを内側に絞る形で起用する。しかしながら、これに対してアーセナルは非常に素早く対応したと言えるだろう。中盤からジャカが重心を上げて早めにプレッシャーをかけることと、前線と中盤がコンパクトな状態でのプレスを両立。リバプールの狙いである低い位置からの組み立てを阻害する。

 アーセナルは手薄になった後方でも守備陣が奮闘。ジャカが前に出るため、後方を同数で受ける選択肢をしたアーセナルに対して、リバプールは積極的に放り込んでくるが、ホールディングやガブリエウといったバックラインは問題なく跳ね返して見せた。

 ボール保持でもアーセナルは好調。リバプールの中盤をバックラインのボール回しで引き寄せながら、陣形を前後で分断。アーセナルのWGとリバプールのバックラインが対峙した最初の場面であるサカにボールが入ったシーンを先制点に繋げて見せた。

 勢いに乗るアーセナルは前半のうちに追加点をゲット。左サイドにリバプールのバックラインのスライドを強要し、ファー側に飛び込んだジェズスに合わせて点差を2点に広げていく。

 しかし、リバプールもやられっぱなしではない。前半終了間際に左サイドの追い越す動きを重ねることで左サイドからアーセナルの守備ブロックを下げさせると、フリーになったヘンダーソンからファーのサラーにボールがつながり追撃弾を手にする。

 後半の頭はリバプールが一方的に攻め立てる立ち上がりとなった。左右のサイドからのクロスを中心にアーセナルを自陣に釘付けに。サラーが失敗してしまい、同点にはならなかったがホールディングが犯したPK判定となったファウルはリバプールの押し込んだご褒美と言えるだろう。

 一方的に押し込み続けるリバプールはチアゴを投入。狭いスペースをこじ開けるための方策としてのエクストラカードを入れる。しかし、この交代はどちらかというと試合を流動的な方向に持っていったと言えるだろう。中盤のデュエルで明らかに勝てるポイントを見つけたアーセナルは反撃の糸口を掴めるように。試合はオープンな形で終盤を迎える。

 試合を動かしたのはまたしても交代策だった。アタッカーを増員するリバプールの交代と、バックラインを増員するアーセナルの後半は求める最終盤のプランの利害が完全に一致していた。両者合意の上でリバプールが押し込む形で迎えた終盤戦は86分のフィルミーノのゴールによって、同点でフィニッシュ。アーセナルの鬼門越えはまたしてもお預けとなった。

ひとこと

 チャンスをたくさん作ったリバプールからしても、多くの時間をリードで過ごしたアーセナルからしても勝ち筋がある試合だった。

試合結果

2023.4.9
プレミアリーグ 第30節
リバプール 2-2 アーセナル
アンフィールド
【得点者】
LIV:42‘ サラー, 87’ フィルミーノ
ARS:8‘ マルティネッリ, 28’ ジェズス
主審:ポール・ティアニー

今節のベストイレブン

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