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「Catch up FIFA World Cup Qatar 2022 European qualifiers」~カタールW杯 欧州予選 スウェーデン代表編

  スウェーデン代表、カタールW杯欧州予選の歩み。第4節から。EUROの歩みはこちら。

目次

2021/9 招集メンバー

GK
ロビン・オルセン(ASローマ/イタリア)
ポントゥス・ダールベリ(ドンカスター・ローヴァーズ/イングランド)
クリストフェル・ノードフェルト(AIK)

DF
マルティン・オルソン(マルメ)
マルクス・ダニエルソン(大連プロフェッショナルFC/中国)
ダニエル・スンドグレン(アリス・テッサロニキ/ギリシャ)
マティアス・ヨハンソン(レギア・ワルシャワ/ポーランド)
ヨアキム・ニルソン(ビーレフェルト/ドイツ)
カール・スターフェルト(セルティック/スコットランド)
フィリプ・ヘランデル(レンジャーズ/スコットランド)
エミル・クラフト(ニューカッスル/イングランド)
ヴィクトル・リンデレフ(マンチェスター・ユナイテッド/イングランド)
ルドヴィグ・アウグスティンション(セビージャ/スペイン)

MF
イェンス・カユステ(FCミッティラン/デンマーク)
ヴィクトル・クラーソン(FCクラスノダール/ロシア)
クリストフェル・オルソン(アンデルレヒト/ベルギー)
イェスパー・カールソン(AZアルクマール/オランダ)
アルビン・エクダル(サンプドリア/イタリア)
マティアス・スヴァンベリ(ボローニャ/イタリア)
デヤン・クルセフスキ(ユベントス/イタリア)
ケン・セマ(ワトフォード/イングランド)
エミル・フォルスベリ(ライプツィヒ/ドイツ)

FW
アレクサンデル・イサク(レアル・ソシエダ/スペイン)
ヨルダン・ラーション(スパルタク・モスクワ/ロシア)
イサーク・キーセ・テリン(アンデルレヒト/ベルギー)
ロビン・クアイソン(アル・イテファク/サウジアラビア)

第4節 スペイン戦(H)

画像1

■アイデンティティをアイデンティティで封じる

 EUROのグループステージ以来の再戦となった当カード。ちなみに当時の記録も残してあったのでご参考に。

 ナショナルチームにアイデンティティを植え付けるのが難しい時代になって久しいが、この両チームはシステムも含めてそれぞれの国のアイデンティティを落とし込んでいるチームだと思う。

 保持に特化したスペインの4-3-3も、強固なブロック守備をベースとしたスウェーデンの4-4-2もどちらもその国らしさが詰まったもの。この試合の展開も試合を見ていない人にも十分想像できる個性のぶつかり合いであった。

 EUROでは強固な守備のスウェーデンに対して、スペインが攻めあぐねたという印象が強い。この試合もスペインの保持の局面が多くなった。スペインはCBとブスケッツを軸にサイドを入れ替えながら、サイドの突破からスウェーデン攻略に挑む。

 この試合の保持局面におけるスペインは非常にオフザボールの動きを重視していることが読み取れた。特にクロスに対してスペースに入り込む動きが非常に活発。IHがエリア内に入ることで枚数も確保されており、高さのあるスウェーデンに対しての押し込んでの攻撃がEUROよりも準備されているように見えた。

 とりわけ目についたのはフェラン・トーレス。シティでもそうなのだが、縦パスも含めてボールを引き出す動きだしが非常に上達しているように思う。早々に入った先制点も、クロスに対してトーレスの斜めの動き出しにアウグスティンソンが釣り出されたせいで、外側のソレールが空いた形。活発なフリーランで、スウェーデンのブロックに穴を開けてみせた。

 しかし、即座にスウェーデンは反撃。ショートカウンターからイサクの俊敏性とダイナミックさを生かしたミドルですぐさま同点に追いつく。スペインとしては得意の保持の局面で、しかも得点を決めたソレールが絡んでのミスということでがっくりくる失点となってしまった。

 イサクとクルセフスキの2トップはロングカウンターでも存在感。スピードもパワーも十分。スペインは広いスペースでDFが彼らと1対1で対峙してしまうと歯が立たない。ロングカウンターを成立させていたのは彼らのレベルの高さである。

 定点攻撃においてはフォルスベリの貢献度の高さが光る。彼の保持と周りの追い越す動きで、スウェーデンのサイド攻撃を成り立たせていた。イサクとクルセフスキのフィジカルの強固さはここでも効いていて、単純な動き出しのスピードやターンの際のパワーにスペインは手を焼いていた。

 スウェーデンの逆転弾はクルセフスキのターンがきっかけ。パスワークを軸に前を向く隙を伺うスペインに対して、パワーで引きちぎった感のあるスウェーデンのチャンスの作り方は非常に対照的だった。

 70分くらいには徐々に運動量が落ちてくるスペイン。基本的には疲労しにくいスタイルだと思うんだけど、オフザボールで飛ばしていた分、終盤の尻すぼみが目立った。加えて、整えてから壊しにかかるスペインのスタイルは特に追う局面が苦手。パワー面を加味してアダマ・トラオレを投入するのは理解できる。

 しかし、スウェーデンのブロックは最後まで崩せず。特に中盤のカバーリングは見事。CHがサイドに出ていった際によくあるのは、彼らが元いたバイタルが空いてミドルを撃ち込まれてしまうパターンなのだが、スウェーデンの場合は彼らが元いたスペースを使わせないのがとても上手。サイドに出ていったら折り返しをさせずに封じ込めた。

 アイデンティティをアイデンティティで封じ込めた一戦で勝利を挙げたのはホームのスウェーデン。これでスペインの自力首位突破は消滅。スウェーデンはスペイン戦以外の勝ち点を落とさなければ、首位突破を決められることになった。

Pick up player:デヤン・クルセフスキ(SWE)
 より直線的なイサクに対して、サイドに流れた際や局面が静的な場合でも力を発揮できる万能型。パワー、スピードだけでなくパスの精度も高く、緩急をつけながら味方の上がりを待つこともできる。スウェーデンの早い攻撃に異なる彩りを添えることが出来る選手。

試合結果
2021.9.2
カタールW杯欧州予選 第4節
スウェーデン 2-1 スペイン
フレンズ・アレナ
【得点者】
SWE:5′ イサク,57′ クラエソン
ESP:4′ ソレール
主審:アンソニー・テイラー

第6節 ギリシャ戦(A)

画像2

■スウェーデンの弱みを突いたギリシャ

 立ち上がりから猛攻を仕掛けたのはスウェーデン。今予選の勢いをそのままに、開始直後から一気に攻め立てる。印象的だったのはスバンベリのミドル。前半にポストを叩くと、後半にも相手を脅かすミドルをエリア外から放つなど、この試合におけるミドル精度は抜群だった。

 しかし、試合の主導権を握ったのはギリシャの方。スウェーデンの4-4-2に対して3-4-3のかみ合わない形を最大限に活用。特に、ツィミカスとアンドルツォスの両WBが浮いたことを活用して前進する。

ギリシャにとってはドゥヴィカスが中央でスウェーデンのCBを背負えたのが大きかった。左右ではボールの預けどころを作り、中央ではボールが収まり攻め手をここを起点に選びなおすことが出来る。スウェーデンはクロスを跳ね返せばOK!と思っていたのか、サイドへのチェックはあまり厳しくなかったこともあり、ギリシャは安定して敵陣にボールを運ぶことができた。

 ギリシャがよかったのは、急ぐ際にはきっちりとスピードアップ出来たこと。スウェーデンはフォルスベリを軸にアウグスティンソンとイサクを走らせることで左サイドからチャンスを作っていたが、前がかりになった状況ではギリシャはボール奪取後に素早くロングカウンターを発動。機動力に難のあるスウェーデンのバックスはこのカウンター対応がかなり怪しかった。

 速攻、遅攻ともに安定したギリシャは試合の流れの通りに先制点をゲット。この場面でCFのドゥヴィカスとつながったのはシャドーのバカリタス。ポストの落としを受けて先制点となるシュートを決めて見せた。

 さらに速攻から追加点を得たギリシャは終盤に2点のリードをゲット。スウェーデンはクアイソンの得点で追いすがるが、終盤は旧来のギリシャのイメージらしいボックス内での堅守が炸裂。猛攻を仕掛けるスウェーデンの攻撃を最後まで凌ぎきった。

 勝敗には直結しなかったが、後半追加タイムのオルセンのセービング対応は見事。スウェーデンに最後の一瞬まで勝ち点の可能性をつないだ意地も見ごたえがあった。

この試合の出来でいえばスウェーデンを上回ったギリシャ。スウェーデンにとってはスペインの足音が聞こえてきてしまう、手痛い一敗となった。

Pick up player:タリス・ドゥヴィカス(GRE)
 ギリシャの攻撃が成り立ったのは、彼が相手を背負えて中央に起点を作れたのが大きい。先制点につながった実効性も含めて、ギリシャの攻撃への貢献度の高さを踏まえてのピックアップ。

試合結果
2021.9.8
カタールW杯欧州予選 第6節
ギリシャ 2-1 スウェーデン
アテネ・オリンピックスタジアム
【得点者】
GRE:62′ バカセタス, 74′ バヴリディス
SWE:80′ クアイソン
主審:セルゲイ・カラセフ

2021/10 招集メンバー

GK
ポントゥス・ダールベリ(ドンカスター/イングランド)
クリストファー・ノルフェルト(AIKソルナ)
ロビン・オルセン(シェフィールド・U/イングランド)

DF
ルドヴィク・アウグスティンソン(セビージャ/スペイン)
マルクス・ダニエルソン(大連/中国)
マティサウ・ヨハンソン(レギア・ワルシャワ)
エミル・クラフト(ニューカッスル/イングランド)
ヨアキム・ニルソン(ビーレフェルト/ドイツ)
ヴィクトル・リンデロフ(マンチェスター・U/イングランド)
マルティン・オルソン(マルメ)
カール・スターフェルト(セルティック/スウェーデン)

MF
イェンス・カユステ(ミッティラン/デンマーク)
ヴィクトル・クラエソン(クラスノダール/ロシア)
アルビン・エクダル(サンプドリア/イタリア)
マグヌス・エリクソン(ユールゴーデン)
エミル・フォルスベリ(ライプツィヒ/ドイツ)
イェスパー・カールション(AZ/オランダ)
デヤン・クルゼフスキ(ユヴェントス/イタリア)
クリストファー・オルソン(アンデルレヒト/ベルギー)
ケン・セマ(ワトフォード/イングランド)
マティアス・スバンベリ(ボローニャ/イタリア)

FW
ズラタン・イブラヒモヴィッチ(ミラン/イタリア)
ロビン・クアイソン(アル・イテファク/サウジアラビア)
アレクサンデル・イサク(レアル・ソシエダ/スペイン)
イサーク・キーセ・テリン(バニーヤース/UAE)

第7節 コソボ戦(H)

■ダイナミックな選択はわからなくもないが…

 9月シリーズでは検討を見せたコソボだが、3連戦の後ろ2つはあえなく連敗。スウェーデンとのアウェイゲームは上位進出を賭けるラストチャンス。敗れてしまえば、2位争いからは数字上で弾き出されてしまうことになる。

 4-4-2に迎え撃つことが容易に想像できるスウェーデンに対して、コソボがどう立ち向かうのか?と言うのがこの試合の最も注目のポイントだった。コソボが選択したのは4-4-2。スウェーデンと噛み合わせる形だった。

 コソボの視点からいえば一見ロジカルに見えるこの選択。だが、個人的にはちょっと色々悪手だったかなと思った。まず、スウェーデンはここ最近の列強国と同じくとりあえず3-2-5への変形を行うチーム。4-4-2で迎え撃ってもコソボは単に目の前の相手を捕まえればいいわけではない。

 加えて、スウェーデンはEUROの段階で特にこの3-2-5の移行をスムーズに行っていたチームの1つ。ひとりひとりが決まったポジションを取るのではなく、それぞれが周りの動きに合わせて上下動し、バランスを維持することができる。

 スウェーデンの保持が誰がどこに入るか決まっておらず、移動が多いとなるとコソボにとっては判断の負荷がかかる感じ。それならば5バックにしてとりあえずレーンを埋めてしまうやり方もありだったかなと思ってしまった。

 スウェーデンはサイドから安全にボールを運搬。左サイドのフォルスベリを軸に、内外を使い分けながらコソボ陣内に迫っていく。先制点こそVARサポートによって導かれたPK判定など苦戦はしたが、主導権を握っていたのはスウェーデンだった。

 コソボは保持においても正直いえば残念だった。こちらも変形しながら相手の4-4-2の穴を開けるやり方が輝いているチーム。だが、今回の試合ではその持ち味がほぼ出ず。直線的なロングボールから進んでいこうとすることを優先していた。

 確かにスウェーデンのバックスは機動力が足りていないので、早めに攻め落としてしまえば!というのもわからなくはないのだが、如何せん前線の空中戦の勝利が悪すぎる。全体の押し上げもままならないままに、蹴るのでセカンドボールもスウェーデンに。

 56分のシーンなど、長いボールでサイドに展開できた時はチャンスになったものの、コソボはそこに至るまでの状況を作り出すことができなかった。一方、そんなコソボを尻目にスウェーデンは得点を積み重ねていく。後半に生まれたイサクとクアイソンの得点はいずれもダイナミックでスーパーな得点。この試合のコソボのFWにやって欲しかった働きをスウェーデン側のストライカーがやって見せた。

 3-0で完敗となったコソボ。突破の可能性は完全に消滅。どうせ散るならロングボール主体ではなく、保持での変幻自在さの部分でスウェーデンに通用するかを見てみたかったところ。どうみても不利なフィジカル勝負に突っ込んで行ったのは、この予選でコソボを見守っている身としては少し勿体無いように思えた。

Pick up player:アレクサンデル・イサク(SWE)
 FWの個でワンチャンスを狙っていたコソボをワンチャンスで仕留めることで返り討ち。チームの核となるFWであることを示した。

試合結果
2021.10.9
カタールW杯欧州予選 第7節
スウェーデン 3-0 コソボ
フレンズ・アレナ
【得点者】
SWE:29′(PK) フォルスベリ, 62′ イサク, 79′ クアイソン
主審:マルコ・ディ・ベッロ

第8節 ギリシャ戦(H)

■あと一歩で呼び覚まされたDNA

 グループBのここから先を大きく占う重要な一戦である。首位のスペインを1試合消化試合が少ない状況で追うスウェーデンは勝てば首位に返り咲き。10月終わりで首位に君臨すればスペイン戦は引き分けで首位通過がぐっと近づくことになる。

 一方のギリシャはここで置いていかれるようだとプレーオフの出場権は大きく遠のく。9月はこのスウェーデン戦に勝利し突破の望みをつないだが、勝ち点の現状を見ると再び勝利の必要がある舞台となっている。

 試合は意外にも序盤から一方的な展開だった。相手を圧倒していたのはアウェイのギリシャ。平常運転といえば平常運転なのだが、ギリシャの5バックはバッチリスウェーデンの保持における3-2-5可変にマッチ。スウェーデンは後方のズレを使っていくというよりはとりあえず前線に預けてもらってあとはなんとでも!という色が強いので、こうしてガッツリ人を捕まえられると苦しくなる。

 攻撃においてもギリシャはスウェーデンの難点をよくわかっていた。まずは奥行きを使うスピードでカウンターから縦に早い勝負を挑む。仮に急げない状況だったら中央を経由するサイドチェンジを駆使しながら相手の4-4ブロックの外側にいるWBにボールを届ける。特に左のWBであるギアンヌリスがフリーになることが多く、ここをボールの落ちつけどころとしてうまく活用していた。

 PAまでボールを運ぶだけでなく、PAから先のエリア内のデュエルでも優勢だったギリシャ。数回バーに阻まれるなど本当にゴールまであと少しのところだった。

 しかし、あと一歩で手をこまねいているうちにスウェーデンは一気にカタを付ける。5バックで5トップへの変形をとがめるというのはあくまで個々人のマッチアップで守備側がある程度計算が立つ前提が必要。そこを破ったのがイサクだった。体の入れ替えだけで対面のマヴロバノスからPKを得ると、これをフォルスベリが決めて先制。

 さらに、長いボールへの目測を誤ったギリシャの隙を突いたイサクが自身で決定的な追加点を決める。こうなるとスウェーデンは強い。『あとは守るだけ』という状況になったスウェーデンの強固さはまさしくDNAといった感じ。

 あと一歩を踏み出せないでいるうちに、DFラインのミスからDNAを呼び起こしてしまったギリシャにとってはW杯出場が大きく遠のく一敗に。逆にスウェーデンは本戦ストレートインに向けて有利な立場で残り2節に臨むことが出来る。

Pick up player:アレクサンデル・イサク(SWE)
 2試合連続で選んでいるのは知っている。それでも今日はこの人しかいない。違いをみせなければ4-4-2で守り切る展開もなかった。消える展開の中であきらめずに後半も好機を狙って結果につなげたしぶとさも好印象。

試合結果
2021.10.12
カタールW杯欧州予選 第8節
スウェーデン 2-0 ギリシャ
フレンズ・アレナ
【得点者】
SWE:59‘(PK) フォルスベリ, 69’ イサク
主審:トビアス・スチュイラー

2021/11 招集メンバー

GK
ロビン・オルセン(シェフィールド・ユナイテッド/イングランド)
ポントゥス・ダールベリ(ドンカスター・ローバーズ/イングランド)
クリストファー・ノードフェルト(AIKソルナ)

DF
アレクサンデル・ミロセビッチ(AIKソルナ)
マルティン・オルソン(マルメ)
ダニエル・スンドグレン(アリス・テッサロニキ/ギリシャ)
セバスティアン・ホルメン(チャイクル・リゼスポル/トルコ)
ヨアキム・ニルソン(アルミニア・ビーレフェルト/ドイツ)
エミル・クラフト(ニューカッスル/イングランド)
ビクトル・リンデロフ(マンチェスター・ユナイテッド/イングランド)
ルドヴィグ・アウグスティンション(セビージャ/スペイン)

MF
マグヌス・エリクソン(ユールゴーデン)
オスカル・レヴィツキ(マルメ)
イェンス・カユステ(ミッティラン/デンマーク)
ビクトル・クラーソン(クラスノダール/ロシア)
クリストフェル・オルソン(アンデルレヒト/ベルギー)
イェスパー・カールソン(AZ/オランダ)
アルビン・エクダル(サンプドリア/イタリア)
マティアス・スベンベリ(ボローニャ/イタリア)
デヤン・クルゼフスキ(ユベントス/イタリア)
ケン・セマ(ワトフォード/イングランド)
エミル・フォルスベリ(RBライプツィヒ/ドイツ)

FW
ズラタン・イブラヒモビッチ(ミラン/イタリア)
アレクサンダー・イサク(レアル・ソシエダ/スペイン)
ヴィクトル・ギョケレシュ(コベントリー・シティ/イングランド)
ロビン・クアイソン(アル・イテファク/サウジアラビア)

第9節 ジョージア戦(A)

■英雄と功労者が重石になったアップセット

 スウェーデンの運命を分ける残り2節のタイミングで代表に帰還したのは英雄・イブラヒモビッチ。残り2試合の時点でスペインより上に行くスウェーデンにとってはまたとない強力な助っ人の降臨。正直シナリオとしては出来すぎである。

 しかしながら、試合は思わぬ方向に転がっていく。試合を支配したのは3-4-3ベースでこの試合に臨んだジョージアの方。イブラヒモビッチ、イサクの2トップに対して3枚でボールを運び、SHをつり出した後に前進。4-3気味になったスウェーデンの陣形に対して、横断を決めてクロス!といった流れが定常化する。

    特にジョージアの右サイドはエリアに迫る終着点として機能していた。シャドーのツィタイシュヴィリとWBのロブジェニーゼのコンビからクロスが上がるようになるジョージア。スウェーデンはラインを下げながらの対応になる。

 この日のスウェーデンで一番気になったのは全体的な強度不足。前線にイブラヒモビッチが入ったことでプレスが効かなくなるのは仕方ないとして、中盤などあらゆる局面でジョージアの球際にやられていた。

 いつもだったら保持では4-4-2から3-2-5にスムーズに変形するスウェーデンだが、5レーンで5バックのジョージアにかみ合わせられることを嫌ったのか、中盤ダイヤモンド型の4-4-2に変形する。

   これで幅を取れなくなったスウェーデン。それでも2トップはイサクとイブラヒモビッチ。殴り続ければ道は拓けると思うのも無理はない。しかし、それがうまくいかなかったのがこの日のスウェーデン。動き出しはジョージアのラインコントロールにことごとくひっかかりオフサイド。抜け出したかと思いきや、今度はシュートがミートできない。

 トップ下気味に配置されたクラエソンだけでなく、フォルスベリも中央に入り込み、スウェーデンは中央合体の究極系のような形に。

 ふがいないFW陣に悩まされるスウェーデンを尻目に、デザインされたセットプレーで先制したのはジョージア。試合終盤にはトランジッションから一気に攻め落として追加点。トランジッション強度で上回ったジョージアの完勝。

 スウェーデンは救世主となるはずだったイブラヒモビッチと、今予選チームを牽引してきたイサクが共に不発という大誤算。最終節前にまさかのつまずきで首位交代。最終節の難易度を自ら引き上げてしまった。

Pick up player:クビチャ・クワラツヘリア(GEO)
 スウェーデンから2得点の偉業を達成したアタッカーはルビン・カザン所属の20歳であった。伸び代期待。

試合結果
2021.11.11
カタールW杯欧州予選 第9節
ジョージア 2-0 スウェーデン
アジャラベット・アレナ
【得点者】
GEO:61′ 77′ クワラツヘリア
主審:セルダル・ゴズブヤク

第10節 スペイン戦(A)

■適切な舵取りで本大会ストレートイン達成

 ついにグループBもクライマックス。スペイン×スウェーデンは文字通りの決勝戦。W杯の出場権をかけた直接対決である。前回のスウェーデンホームでの対戦と同じく、試合は『スペイン×スウェーデン』という看板通りの内容となった。スペインは保持、スウェーデンは非保持で立ち向かうという構図で流れる試合である。

 スペインのボール保持はIHがまず降りる動きを見せるところから。この試合で降りる役割を担ったのはガビ。ブスケッツとフラットな位置で並んで最終ラインからボールを引き出す。彼らのこの試合のボール保持の第一ステップはスウェーデンの4-4ブロックを乱すこと。より具体的に述べれば、SHを吊り出し4-4ブロックを4-3に変えてしまうことである。

 スペインが狙いを定めたのはクラエソンのサイド。ガビの降りる動きにクラエソンがついて来ると前方への進撃が始まる。狙い目となるのはCHの間。このスペースにデ・トーマスやダニ・オルモが入り、そこにトーレスやガビから楔を入れる。

 楔を受けた選手は自らが反転、もしくはポストでボールを落とすことで前を向く選手を作る。まとめるとブロック外で前を向く選手を作り出し、ライン間で前を向く選手を作るという2ステップ。4-4ブロックの手前、大外、ライン間、DFラインに張り付く選手の4人を同サイドで形成し、そこから崩す。先導役はガビ、ブスケッツ、そして最終ラインの2人である。

 スペインはそもそもこの試合は引き分けでOK。無理にゴールに向かわなくていい時のスペインは強い。かつこの試合はスペインのバックスの舵取りが非常に適切だったので、プレスに引っかかるのも数えるほど。致命傷にはならなかった。

 スウェーデンの戦い方は前節よりはだいぶ修正されたように思う。固く守る4-4-2から繰り出されるのはロングカウンター。2列目やクルゼフスキの特徴を踏まえると以前のスウェーデンと比べるとやや機動力を大事にするスタイルの方が今のチームには合っているのかもしれない。

 ロングカウンターからイサクやフォルスベリがチャンスを迎えるスウェーデンだが、ゴールはまだ遠い状況。スペインはロスト後のハイプレスによる即時奪回と撤退4-3-3を使い分け。ロングボール以外の組み立ての意識が薄いスウェーデンに対してあえて保持の時間を与えるという選択もした。

 後半になると得点が必要なスウェーデンはプレスの時間を増やしながら試合を活性化する。正直、スペイン相手にプレスに行く状態は不本意ではあっただろうが、点が必要なので仕方がない。

 トランジッション増加+イブラヒモビッチというコンボで得点を狙うスウェーデン。しかし、この2つは取り合わせが悪く、速いテンポの中でイブラヒモビッチが輝くのは難しい。ハイプレスに貢献するのは難しいし、裏抜けというよりは足元で受けたがるのがイブラヒモビッチ。それでも凄みがあればいいのだけど、前節と同じく決定的な働きはできなかった。

 そんな中で点を取ったのはモラタ。同じく途中交代のダニ・オルモのシュートを押し込んでスペインのW杯を決定づける先制点をゲット。凄みはないが、真面目なストライカーが優れたポジショニングでこぼれ球を押し込むという、モラタらしいゴールで試合は決着。ラスト2節で一気にスウェーデンをまくったスペインが本大会の出場権を確保した。

Pick up player:ガビ(ESP)
   
 素直に9月トップデビューの選手がW杯出場の命運を背負った試合に出ているというのが一つ。そういう試合で違和感なく普通に代表の一員としてプレーできているのがさらに上乗せ。

試合結果
2021.11.14
カタールW杯欧州予選 第10節
スペイン 1-0 スウェーデン
エスタディオ・オリンピコ・セビージャ
【得点者】
ESP:86′ モラタ
主審:フェリックス・ブリヒ

2022/3 招集メンバー

プレーオフ 準決勝 チェコ戦

■我慢比べを制したスウェーデン

 ナショナルチームは何か創造的なものを創出するというよりは、手元にあるリソースを活かしながら、どのようにボロが出ないかに注力するチームが増えた!というのが昨年のEUROを見た感想である。

 スウェーデン×チェコは特にそうしたナショナルチームの傾向が強く出た試合だったように思う。その中でも手堅さを見せたのはスウェーデン。WBを高く上げるチェコの3-4-3のスタイルに対して、2トップは中盤を封鎖。SHはワイドのCBとWBを両睨みしながら監視。チェコのバックラインに積極的にプレッシャーをかけることはしないが、ミドルゾーンから先に行かせない!という形で中盤に防波堤を築く。

 チェコはミドルゾーンでスウェーデンの壁にぶち当たり、むしろスウェーデンのショートカウンターからピンチを迎えてしまうという困難に。

というわけでチェコはロングボールを使いながらプレッシングを回避する選択をする。EUROを見る限り、シックがいない中で長いボールを収めるというのはチェコにとっては難題だった。それでも、スウェーデンに得をさせては意味がない。少なくともスウェーデンの中盤の包囲網が物理的に届かないロングボールならば、スウェーデンのショートカウンターのチャンスは摘み取ることができる。

 このチェコの振る舞いのように自分達がうまくできるかは別として、相手が得する状況を回避するというのはEUROで感じた代表チームらしいアプローチ。そして、試合展開に沿って色を変えることができていたチェコらしいアプローチであった。

 そして、スウェーデンは意外とこの対応に苦しんだ。セットプレーでの危機も含めて、PA内に押し込まれた状況においては意外とチェコには得点のチャンスはあったように思う。それ以外の形ではチャンスを見出せていなかったけども。

 スウェーデンの保持はEUROや今予選でおなじみだった3-2-5に変形する形。シャドーに入ったフォルスベリは元々フリーマンとして動くことが多く、自由に任せられていた感があったが、この試合ではより一層行動範囲が広がった感じ。バックラインまで下がってビルドアップに関与することも多かった。

 スウェーデンの狙い目はチェコのバックラインをフォルスベリで手前に引き寄せること。フォルスベリの引く動きに合わせて、他の前線が裏を狙う動きを組み合わせることで、左のハーフスペースの背後をつく形でチェコを追い込んでいく。チェコは5-4-1での撤退守備で裏へのラインを消すことでこれに対応する。

 前半に引き続き、後半も非常に手堅い展開が続く。より攻勢に出たのはチェコ。サイドから3人目の裏抜けの形を使いながら敵陣に迫っていく。チェコに比べれば、スウェーデンは極端にラインを下げてPA内に人数をかける形を採用しなかったので、チェコにはPA内にスペースがないこともなかった。

 だが、数回迎えたチェコの決定機はことごとく枠内にシュートが飛ばない。抜け出したクフタや、ファーサイドでクロスをフリーで待ち受けたハヴェルなど、ここで少なくとも枠には欲しい!というところでのガッカリシュートが目につく。

 スウェーデンはチェコの撤退守備の対策として、クルゼフスキをサイドに移す形で対応。チームで最も横に入り込む動きをうまく活用できるクルゼフスキのサイドからのカットインはチェコのブロックを脅かす数少ない手段。右のクルゼフスキからのチャンスメイクで、ファーに構えるイサクにクロスを当てる形を狙っていく。

 後半はどちらかといえばチェコペースだったが、延長に入るとスウェーデンがペースを取り返す。やはり、先導役となったのはクルゼフスキ。トッテナムでのプレータイムはかさんでも、使い減りがしないのも魅力。プレーの強度を落とさずにプレーを続けて、スウェーデンのチャンスを作る。

 流れを握ったスウェーデンは交代選手でさらに追い立てる。カールストロームの配球から、イサクに縦パスを入れてクアイソンとの連携でチェコの中央を一気にぶち破った。スバンベリの縦へのフリーランも含めて、スウェーデンの攻撃陣の画がうまく重なった得点となった。

 チェコはワイドのCBの攻め上がりを見せるなど、終盤まで粘りを見せたものの、延長戦での先制点にやり返す気力はなし。リードした展開で向き合いたくないチームとしては世界屈指のスウェーデンのブロックを越えることができず。試合はそのまま終了し、スウェーデンがポーランドの待つ決勝に駒を進めることに成功した。

試合結果
2022.3.24
カタールW杯欧州予選 プレーオフ 準決勝
スウェーデン 1-0 チェコ
フレンズ・アレナ
【得点者】
SWE:110′ クアイソン
主審:マイケル・オリバー

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