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「『いい経験』を真実にする」~2023.4.26 プレミアリーグ 第33節 マンチェスター・シティ×アーセナル プレビュー

目次

Fixture

プレミアリーグ 第33節
2023.4.26
マンチェスター・シティ(2位/22勝4分4敗/勝ち点70/得点78 失点28)
×
アーセナル(1位/23勝6分3敗/勝ち点75/得点77 失点34)
@エティハド・スタジアム

戦績

過去の対戦成績

 過去5年間の対戦でマンチェスター・シティの13勝、アーセナルの1勝。

シティホームでの対戦成績

 過去10戦でマンチェスター・シティの8勝、アーセナルの1勝、引き分けが1つ。

Head-to-head from BBC sport

Head-to-head
  • アーセナルは直近11試合のシティとのリーグ戦で負けており、クラブの歴史における特定の対戦相手との最大の連敗記録を更新している。
  • シティは直近6試合のホームでのアーセナルとのリーグ戦で全勝しており、トータルスコアは17-3。
  • 直近10回のシティとのリーグ戦でアーセナルは3得点しか奪えていない。
  • シティは今季すでに公式戦で2勝を挙げており、直近5年で3回目の年間3勝を狙う。

スカッド情報

Manchester City
  • ハムストリングの負傷でFA杯のシェフィールド・ユナイテッド戦を欠場したナタン・アケが唯一の懸念。
Arsenal
  • 背中に問題を抱えているウィリアム・サリバは欠場。これで負傷から5週間欠場が続いている。
  • 病気でサウサンプトン戦を欠場したグラニト・ジャカはフィットネステスト。

Match facts from BBC sport

Manchester City
  • 直近9試合のリーグ戦で無敗。8勝を挙げており、現状は6連勝中。
  • 16試合公式戦無敗で13勝3敗。
  • 2023年におけるホームの公式戦11戦で全勝しており、この間40得点を挙げている。
  • アーリング・ハーランドはアンドリュー・コールとアラン・シアラーが樹立した34得点というプレミアの年間得点記録まであと2得点に迫っている。
  • ハーランドは直近4試合のホームゲームで11得点を挙げている。
  • エデルソンはクリスマスからの20試合で6試合しかクリーンシートを記録していない。
Arsenal
  • 直近のリーグ戦では10試合無敗だが、ここ3試合はいずれも引き分け。
  • 16試合のアウェイゲームではここまで11勝、3つの引き分けと2つの敗戦を記録している。
  • 直近11試合のリーグ戦のうち6試合で2失点以上を記録している。
  • しかし、直近8試合のリーグ戦ではいずれも2得点以上を記録している。
  • この試合で複数得点と複数失点をどちらも記録すれば4試合連続になる。これは1960-61年以来初めての記録であり、この中にはマンチェスター・シティに対しての5-4の勝利も含まれる。
  • ミケル・アルテタは監督としてのシティ戦では6戦全敗であり、プレミアにおいて唯一勝てていない相手。
  • ガブリエル・マルティネッリは直近10試合のリーグ戦の出場で8得点3アシストと11ゴールに関与している。

予習

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予想スタメン

展望

DFラインの人選から見るシティの方向性

 3試合連続ドローと優勝争いにおいて大ブレーキをかましたアーセナル。しかしながら、まだアーセナルにはこの失敗をチャラにするチャンスが残されている。要塞であるエティハドにおける、天敵のマンチェスター・シティとの一戦である。

 マンチェスター・シティのシーズンはここにきて一層の充実期を迎えていると言っていい。例年のシティは保持に特化した形で試合を進めているが、今年のシティは相手や展開によってカラーを変えることができる変幻自在さを備えている。

 W杯以降は後方の陣形は4バックから3-2型に移行する形に固定された感がある。その主役となったのはリコ・ルイス。インサイドでのゲームメイクとエリア内での突撃を両方兼ね備えているSBは今季の中盤戦におけるシティのアクセントと言っていい存在だった。

 例年であれば、ルイスがそのままRSBのレギュラーとして定着していただろう。だが、現状ではこのポジションを務めるのが多いのはストーンズ。ルイスの出番はほとんどない状態だ。

 こういった選択はグアルディオラの軸足が保持の出力の最大化にないことが窺える。SBのキャストの方針が打ち出すのは非保持の安定である。

 かつてのシティといえば、被カウンター対応における脆弱さが真っ先に上がってくる。だが、むしろ現状のシティはこの部分においては欧州でも屈指の強度を誇っていると言っていいだろう。アケ、ストーンズといったSBができるCBを積極的に登用した結果、いつの間にか強固な守備網が完成してしまっている。もっとも外から見たらそう見えるだけで、グアルディオラにとっては確信犯なのかもしれないが。

 今のシティはルイスのようなスペシャリストで保持での破壊力を最大化するのではなく、インサイドに入るタスクをこなしつつゲームメイクができるストーンズやCBとSBの両面での働きができるアカンジやアケを積極活用することで多方向に良さを伸ばしている。よって、今季のシティの強さを支えているのはマルチ性能を発揮する彼らのようなDFである。

 前線にハーランドという逃げ場があることを踏まえれば、バックラインにはポイントを作り続けるポジショニングや積極的な攻め上がりは必要ないのかもしれない。大外で相手を背負ってからの反転ができるグリーリッシュもまたこのスタンスを後押しできる選手だ。

 ハーランド、デ・ブライネといったカウンターを2人で完結できる存在と、CBがズラリと並んだ4バックは撤退守備+ロングカウンターという仕組みさえ可能にすることをバイエルンとのCLでは証明している。かつてのシティを苦しめたスタイルを逆に相手に突きつける立場になっているのだ。

 シーズンの途中で懸念となったのはこうしたマルチ性の拡大により、本来のシティらしいハイプレス+ポゼッションの崩しの要素があまりにも薄まっていることだった。その部分を補っているのがベルナルド。アーセナルとの今季の対戦では途中交代から出場し、ボールを奪いにいくアクションからハイプレスのスイッチを入れて、ペースを完全にアーセナルに持ってきた。

 右WGとして相手と正対しながら時間を作る役割で周りの攻め上がりを促したり、3-2-5の空洞となる右の大外レーンの低い位置をデ・ブライネとシェアして活用し、ポゼッションの中継点になるなど本来のシティらしい要素をもたらしているのがベルナルド。彼の起用でシティは元のスタイルに立ち返る術を確保している。

 現状のシティはチームとしての完成度は相当高いように思う。スカッドを余すことなく使い、誰をどこで使うかにより、チームとしてのカラーを変化させることができる。ポゼッション特化型における突き抜けから、全方位型にシフトチェンジしたことでシティは新たなステージに足を踏み入れた感がある。

マルチ性に対して最大化で強みを作る

 アーセナルにとっては対戦相手のレベルからしても、置かれている状況からしても間違いなく今季で最も難しい試合になるだろう。現状におけるマンチェスター・シティとの差は変化する局面への対応力に一番見受けることができる。そして、この部分はアーセナルが2023年において足りないと痛感させられている要素である。

 あえて、シティの懸念点を挙げるとすれば、シティの強みは取捨選択しながら変化するものであり、並び立つものではないということである。ある部分を重視すれば、ある部分の優先度が下がる。現状では完璧ないいところどりをできていない場合もある。

 よって、アーセナルはキャストから比較的優先されていない部分を類推し、そこから攻略することが求められるだろう。最もわかりやすいのはハーランドである。彼を起用することでシティはロングカウンターにおける信じられない破壊力とボックス内の仕上げ役の両面で大きな上積みがある。その一方でハイプレスのスイッチという意味では物足りない部分もある。

 ただ、ハイプレスがかからないからといってグアルディオラが彼を先発起用しないということはないだろう。それであるならば、アーセナルは自陣からの繋ぎには序盤はこだわる必要がある。

 サリバ→ホールディングとなっている現状のスカッドの懸念はむしろ保持面でのパス供給の貢献度に現れているという話もある。彼なりに向上はしているが、保持で良さを発揮できているのは対戦相手が中途半端に余裕を与えている試合が多い。

 シティがそうした中途半端な対応を取るのは考えにくいだろう。ハーランドを起用してなおハイプレスで圧倒的に潰しにくる可能性か、逆にホールディングにボールを持たせる展開も想定することができる。そうしたときに何ができるかがポイントになる。

 攻撃の狙い目は中盤にきっちりスペースを作ることである。これまでの試合とは異なり、シティは単にアーセナルがWGにボールを入れるだけでは通用しない相手であるだろう。困ったときのサカというのは特にアケが間に合うと成り立たない公算が強い。

 それであるならば中盤の高めの位置、特にロドリの両脇にフリーでボールを持てる選手を作りたい。そのためにはシティの中盤やWGをアーセナルのバックラインが前に引き寄せることが重要であると考えられる。

 ちょうどこの部分はCLのバイエルン戦が参考になる。この試合ではバイエルンのバックラインがグリーリッシュやギュンドアンを引き寄せることで右のハーフスペースで縦パスを受けて前を向くことができていた。アーセナルも受け手にウーデゴールやジェズスをおけば十分にこなすことができる仕組みだ。問題は広報がこのタスクができるかどうかである。

 WGにボールを入れてチームを助けてもらうのではなく、中盤のスペースを作ることにこだわり、逆にWGを助ける状況を作る。そのためにはバックラインからの時間の繋ぎ合わせが重要になる。マルチ性の高いシティに対して、アーセナルが勝利するには尖らせた強みでシティの盾を貫く必要がある。アーセナルにとってはそれがWG周りを徹底サポートすることである。

 仮にこのプランがうまくいって序盤の試合の主導権を握れたとしよう。それであるならばなるべく早い段階のチャンスで先制ゴールを決めたい。シティ相手の優位は時間限定のものであり、もし優位を得ることができたとしても時間が経てば消失してしまう。この対応力では現状ではシティには勝てない。ならば、優位を得ている時間での成功率で勝負をしなければいけない。生まれた瞬間の優位を得点まで繋ぐことができるかどうか。ストライカーにはワンチャンスの成功を求められる。

 よって、構成に悩まされる最終ラインはCBホールディング、SBホワイトを推したい。現状における右サイドの最大化という観点に経てば、このユニットにホワイトがいないということはありえないだろう。リスクはあるが、無失点では切り抜けられないだろうエティハドで複数得点を得るには点を取ることから逆算したプランを組む必要がある。

 アーセナルが描く青写真は早い段階で複数得点のリードを奪いつつ、バックラインの構成を変えたり増やしたりしながら試合を軟着陸させながら逃げ切るプランだろう。ハイプレスを交わしつつ敵陣での時間を増やして得点し、重心を下げながらポゼッションでの攻略を強いて、攻守のバランスを前に傾けたところでロングカウンター。自分の考えた理想的な試合運びはこうである。

 まぁ、結局こんなことを考えたところで万事がうまくいくとは思えない。最後はピッチに立つ選手たちと指揮官が何を感じ、どう動くかでしかない。

 思い通りにならなかった試合の後の「いい経験になった」という言葉が嫌いだ。そこから反省するところまでがワンセットになるべきであり、失敗した直後に発される言葉ではないと思っているからだ。

 ただ、信じられないプレッシャーを抱えながら戦う試合でしか得ることができない経験はおそらくあるのだろうとも思う。「いい経験」の種は確かにそこにあると思う。今季のアーセナルはそこにようやく身を置くことができた。このシティ戦以前にも多くのプレッシャーと闘ってきた。それを育てられたかどうかを証明する舞台があれば「いい経験だった」という言葉も真実味を帯びてくる。

 だからこそ、このチームにふさわしいタイトルという称号が欲しい。『いい失敗だった』という言葉を真実のものにするとしたら、この舞台しかない。これまで彼らが積み上げたものの全てをエティハドに置いて、今季最大の大仕事を成し遂げたい。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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