アストンビラ【6位】×ニューカッスル【3位】
ワトキンスを頂点に信条を貫き連勝対決を制する。
4連勝で欧州カップ出場権争いに疾風の如く割り込んできたアストンビラ。ホームでこちらも連勝中のニューカッスルを撃破できれば、あるいは終盤戦に向けて奇跡が見られる可能性も出てくることになる。
ホームスタジアムの雰囲気に後押しされたのだろうか。立ち上がりはビラのチャンスからスタート。抜け出したワトキンスがゴールポストを叩くシュートから始まる。
以降もビラは低い位置からの攻撃がニューカッスルに刺さる展開に。幅を使い、相手のプレスを空転させるボール保持はメカニズムとして浸透している。サイドにボールをつけたら折り返しか、裏を狙うボールから前進。ライン間にはブエンディアが入り込み、裏にはワトキンスやラムジーが動き出すタイミングを探っている。
幅を使って、圧力を下げてインサイドを使って前進のタイミングで一気に前に。エメリ式のボール保持がニューカッスル相手にここまで機能するのは、仕組みが浸透している証拠だろう。先制点の壊し方も、彼らの保持のロジックが詰まったものだった。
序盤は早い展開の中でトップのイサクにボールを当てながらラインブレイクを行っていたニューカッスル。アストンビラは先制点を手にしたことでSHがラインを下げて対応することが増える。ニューカッスルはボール保持から攻める機会も増えたが、なかなかきっかけを掴むことはできない。
30分を過ぎるとギマランイスが解放されたことにより、ビラのサイドの守備の蓋が間に合わない場面が徐々に増えていくように。この勢いに乗り、プレッシングでもテンポを取り戻そうとするニューカッスル。だが、ここは信条通り幅を使ったポゼッションから相手の1stラインをブレイクするやり方と心中する。
ワイドに立つCBで対面のWGを引き寄せて、SBにボールをつける。ニューカッスルはWGの背後を取られたビラのSBへのチェックが間に合わなければ高い位置からのプレッシングは逃げられてしまう。前半の終盤にもう一度押し返すことができるのが今のアストンビラの強さなのだろうと思う。
後半も主導権はアストンビラ。保持からニューカッスルのプレッシングを空転させ、ミドルゾーンからの加速で攻め立てている。ニューカッスルは左サイドからラインの裏を狙うクロスで惜しい場面を作るが、ビラのロングカウンターの機会が増えるのと押し込む状況を作るのは表裏一体という感じ。
ビラの攻撃のスピードアップは後半も見事だった。ゴールには繋がらなかったが、モレノのカウンターでの持ち上がり+ワトキンスへのラストパスは素晴らしかった。
結果的に後半はワトキンスが2ゴールで大暴れとなるのだが、彼の出来もさることながら、サイドの上下動を使ったスペースメイク、ニアで囮となって潰れる飛び込みなどのサポートがあってこそだろう。ワトキンスを頂点にビラのチームとしての仕組みがよく回っていることがわかる完勝だった。
ひとこと
今のアストンビラはプレミアの中でも戦いたくないチームの上位に位置すると思う。ホームとはいえ、ニューカッスルの連勝をこんなにあっさりストップする未来はなかなか見えなかった。
試合結果
2023.4.15
プレミアリーグ 第31節
アストンビラ 3-0 ニューカッスル
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:11′ ラムジー, 64′ 83′ ワトキンス
主審:ジョン・ブルックス
サウサンプトン【20位】×クリスタル・パレス【12位】
後半のエゼが別格
立ち上がりからボールを持つのはクリスタル・パレス。いつもであれば片側のSBを上げて3-2-5型にすることが多い彼らのボール保持だが、この日は両SBを上げる2-3-5のような形がメインストリーム。より高い位置に多くの選手を送り込む意識を持っていた。
ズレを作る意識が強かったのは右のWGのオリーズやIHのエゼ。こちらのサイドは積極的にラインを下げてボールを受けることで最終ラインからパスの供給先を創出することが出来ていた。
サウサンプトンの対抗のプランは非常に明確。ロングカウンターから長い展開を狙っていく。一発を狙っていたのは右サイドを主戦場とするウォルコット。往年のスピードこそないものの、やや裏への意識が乏しい前線の中では貴重な無駄走りができる選手である。
ただ、サウサンプトンにはカウンターしか道がないわけではなかった。クリスタル・パレスはボールを持たない側に回った時に高い位置からプレッシングを積極的にやってくるチームではないので、サウサンプトンは機会が少ないながらもボールを握ることが出来ていた。
すると、時間の経過とともに保持の機会が増えていくサウサンプトン。とはいえ、サイドにおける関係性はSBとSHの2人だけというやや心もとないもの。3人目として中央の選手が絡んでこなければ、対応するほうにズレを突きつけるのは難しい。
その3人目の役割となったのはまたしてもウォルコット。逆サイドへの出張も含めて、アタッキングサードにおける潤滑油としてフリーランで汗をかいていたのが印象的だった。
押し下げられたクリスタル・パレスは自陣からの脱出に苦戦していた印象だ。前線は高い位置を取ると決めた相手にひっかけられてしまい、中盤では無駄なパスミスを連発。なかなか敵陣でのプレー時間を確保することができない前半となった。
だが、後半の頭からは再びクリスタル・パレスがボール保持をするように。2-3-5をベースとした保持から今度は自陣に釘付けになるのはサウサンプトンの方だった。
左右の幅を使った攻撃から攻勢を仕掛けるクリスタル・パレス。決め手になったのは左サイドの1on1。メイトランド=ナイルズとの1on1を制したアイェウが左サイドからクロスを上げると、GKのバズヌの処理をはじいたところにエゼが押し込んで先制。リードを奪う。
サウサンプトンは反撃に出たいところだが、カウンターで波に乗るクリスタル・パレスのアタッカーを食い止めるのに苦戦。後半は一転してペースを握れない時間が続くことになってしまう。
最後まで止まらなかったのはエゼ。ミドルゾーンからのターンで相手を剥がしてシュートの間合いを作ると、あっさりとスーパーゴールを沈めて見せる。後半のエゼはまさに別格。前節のオリーズに引けを取らないレベルで輝くことが出来ていた。
アタッカーの躍動で勢いに乗ったパレスがセインツを後半に圧倒。ワンサイド気味になった後半にパレスが力の差を示した一戦だった。
ひとこと
アタッカーに日替わりヒーローが出て来たのはパレスにとっては良い兆候。地獄の日程を抜けた先で落ち着いて残留争いに臨むことが出来ている。
試合結果
2023.4.15
プレミアリーグ 第31節
サウサンプトン 0-2 クリスタル・パレス
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
CRY:54′ 68′ エゼ
主審:マイケル・オリバー
エバートン【17位】×フラム【10位】
セカンドボール回収力が明暗を分ける
早く残留を決定的なものにしたいエバートン。キャルバート=ルーウィン不在という就任当初に抱える課題はなかなか収束の気配を見せず、ダイチの試行錯誤は続いている。今節はエバートンとは違う事情ながらもCFを失ってしまったフラムとの一戦である。
この日、ダイチが選択したのは4-4-2の陣形。2CBと2CHが軸となって組み立てを行う。フラムもベースの形は4-2-3-1なので同じ。無理にバックラインにプレッシャーをかけないあたりもやや似通っている。
両チームともプレスのアクセルを踏んだのはトップの守備が同サイドに誘導できたことを確認してからである。トップがサイドに追いやるような守り方を行い、そのサイドに閉じ込めることができれば一気にボールを狩り取りに行く。
ということは保持側に必要なのはそれを裏切るアプローチである。例えば、イウォビのカットインからの逆サイドへの展開はこのアプローチに当たるといえるだろう。
ただ、この試合の明暗を分けたのはセカンドボールの回収といったより偶発性が濃い部分。とりわけ、この部分ではエバートンが後手に回ることが多く、カウンターからピンチになる機会もしばしばだった。先制点の場面もぽっかり空いたハリソン・リードから右サイドに展開すると、ミドルの跳ね返りを押し込んだのは再びぽっかり空いたハリソン・リード。エアポケットに入り続けたハリソン・リードを捕まえられなかったエバートンは先行を許す。
セットプレーからのファーのターコウスキくらいしか有効打を打てなかったエバートンだったが、こちらもぽっかり空いた中盤を制して同点に。ゲイェとガーナーが連動したボール奪取からカウンターのスイッチを入れると、最後はマクニールが決めて試合を振り出しに戻す。
マクニールはこの局面以外にも躍動。ライン間に入るとモペイとのワンツーから決定機を演出したり、右サイドからのクロスを上げたりなど、攻撃陣を牽引。残留に直面するダイチのチームをマクニールが牽引するという姿を見たのは2年連続のことになる。
スタジアムの歓声にも後押しされるようにエバートンは圧をかけていく展開にしたいところ。しかしながら、自陣の深い位置まで押し込まれるとどうしても脱出をすることができなくなる。ホームの観客の声援や同点にしたスコアとは裏腹に試合をなかなか掌握することができない。
エバートンが苦しい展開に陥る中で次にゴールを決めたのはフラムだった。中盤でのボール奪取から右から左への展開を行い2点目のゴールをゲット。このゴールで完全に勢いを手にしたフラムはつづく3点目を自陣からのFKを起点に行う。抜け出したジェームズを起点として試合はフラムの2点リードとなる。
エバートンとしては3失点目は攻め手防ぎたかったところ。自陣からのFKという危険性的にはそうでもない場面において、キーンとターコウスキの対応はあまりにも軽かった。
終盤はシムズの投入などパワー系に舵を切った感のあるエバートン。しかし、終盤まで追いつくチャンスを見出すことが出来ず、試合はそのまま幕を閉じた。
ひとこと
インサイドにパワーがない分、クロスできっちりスペースを作るなどフラムは徐々にミトロビッチがいないことに慣れつつある。
試合結果
2023.4.15
プレミアリーグ 第31節
エバートン 1-3 フラム
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:35′ マクニール
FUL:22′ ハリソン・リード, 51′ ウィルソン, 68′ ジェームズ
主審:マイケル・オリバー
ウォルバーハンプトン【13位】×ブレントフォード【9位】
美しい制御による完勝でさらに遠ざかる降格圏
降格圏との差が徐々に開きつつあり、だんだんと安全地帯に逃げつつあるウルブス。難敵ブレントフォードを退けてこの地位を固めたいところである。対するブレントフォードはここに来て連敗と失速気味。アストンビラと入れ替わるように勢いを失っており、欧州カップ戦の出場権からトップハーフのキープが現実的な目標になりつつある。
立ち上がりからボールをキープする時間が長かったのはウルブスの方だった。一方的なボール保持で幅を使うポゼッションを駆使。ブレントフォードのプレッシャーの弱さも相まって、中央を経由してサイドに振るようなボール運びからチャンスを作っていく。
インサイドへの積極的な縦パスも効いており、ウルブスの保持は変幻自在。だいぶロペテギがやりたいことが浸透してきているように見える。
その勢いのまま先制点までこぎつけたウルブス。コスタのポストから左サイドを駆け上がったトティ・ゴメスがボールを引き留めると折り返しを再びコスタが決めてウルブスが先手を奪う。
ブレントフォードは序盤から泥臭い戦い方を強いられるように。ロングスローを含めたセットプレーを操りながら地道に自陣から進んでいく。そもそもボール保持に対してはウルブスのプレッシャーはそこまでなかったし、得点をウルブスが挙げたことでその傾向はさらに強まった。
だが、ボールを持つ時間が増えたとしてもこの日のブレントフォードの手ごたえはイマイチ。スムーズに前進ができないまま時間だけが過ぎていく。
後半の入りのブレントフォードは主導権を取り戻そうと意気揚々と入ったように見えた。しかしながら、後半も主導権はウルブス。ボール保持から両ワイドへの展開でブレントフォードを自陣側に押し込む。保持できっちりと相手を苦しめることで流れを相手に渡さない。
ブレントフォードはいつもよりも受ける局面での安定感が怪しかった。PA内では安定感抜群のバックラインだが、この日はやたらとバタバタとした対応が目につく。もっとも、ウルブス側のPAでもジョゼ・サがヒヤリとするキャッチミスをするなどお互い様ではあるのだけども。
主導権を握ったウルブスは追加点で試合を決める。右サイドを切り裂いたヌネスから最後はピンボール気味にヒチャンが押し込んで勝利を決定的なものにする。
終盤はアタッカーを増員して攻め込んだブレントフォードだったが、5バックで自陣を固めるウルブスになす術なし。90分を見事にコーディネートしたウルブスが連勝で降格圏からさらに離れることに成功した。
ひとこと
アストンビラほどではないにせよ、ウルブスもここに来てじわじわと監督交代の成果がでつつあると感じる内容だった。
試合結果
2023.4.15
プレミアリーグ 第31節
ウォルバーハンプトン 2-0 ブレントフォード
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:27′ コスタ, 69′ ヒチャン
主審:ポール・ティアニー
チェルシー【11位】×ブライトン【7位】
前進を一手に引き受けた三笘が逆転のキーマンに
4月の公式戦では未だにノーゴール。ランパード政権の船出は想像通り厳しいものになっている。欧州カップ出場権争い真っ最中のブライトンを相手に回してどこまでやれるかどうかという一戦となる。
正三角形の中盤を採用し、ギャラガーとスターリングでブライトンのバックラインに強気でプレスをかけている。ブライトンは三笘にボールをつけて反撃。外を追い越すエストゥピニャンからいきなりチャンスを作ってみせた。
速い攻撃に対する対応がうまくなかったチェルシーだが、保持に回ればそれなりにやれていた感がある。特に躍動していたのはムドリク。高い位置をとるチルウェルを相棒において、ムドリクが降りる動きを見せてボールを引き出すことで縦にボールを進める。
先制ゴールもこの形だった。エンソから縦にボールをつけるとムドリクは反転。横断しながらドリブルするムドリクにブライトンのバックラインは方向を制限することができず。ギャラガーのシュートは跳ね返る方向という運もあったが、ブライトンがムドリクのプレー方向を決めることができないことで逆を取られてしまった感があった。
ここからブライトンは猛チャージ。ボールを運ぶ役割を三笘に集約。左サイドからボールをキャリーして反撃に出る。先程のような追い越すエストゥピニャンを使うパターンや、自らが縦に抉って再加速する形、そして横ドリからの逆サイドへの展開など豊富な持ち手から都度方策を変えながら敵陣に進んでいく。
完全にこちらのサイドはチェルシーが後手に回っていた感。チャロバーはもちろん、フォファナやバディアシルもかなり三笘に振り回されることとなった。20分を過ぎるとチェルシーはだいぶ保持から時間を作れずに苦しくなっていく。試合はブライトンの一方的な攻めるタームに移っていく。
その成果が実ったのは前半終了間際。右サイドからのクロスをファーで2人にマークされたウェルベックが仕留めてゴール。試合を振り出しに戻す。
後半は前半以上にブライトンペース。三笘のサポートに左のハーフスペース付近までエンシソかウェルベックが流れながら同サイドの崩しに注力。ザカリアが同サイドの最終ラインにカバーに入る機会が徐々に多くなっていく。
左サイドからの崩しを軸にブライトンは一方的に攻め立てると、決め手になったのはエンシソ。同サイドにマーチが流れていた分、逆サイドへの展開という選択肢を捨てることができたのは彼にとって幸運だったはず。迷わず振り切ったミドルシュートでついにリードを手にする。
一方的に攻め立てられ、シュートにすら辿り着くことができなかったチェルシー。カウンターから何度かあった機会で敵陣に攻め込めなかったのはシンプルに相手との差を感じる部分である。
終盤はブライトンのバックラインが怪しいミスをしていたため、同点に追いつけるチャンスがないわけではなかった。しかしながら、最後までゴールを沈めることはできず。
三笘を軸として崩しにこだわったブライトンがチェルシー相手にダブルを達成。欧州カップ出場権争いにおいて大きな3ポイントを手にした。
ひとこと
ポッターが監督だったダービーでしたね。
試合結果
2023.4.15
プレミアリーグ 第30節
チェルシー 1-2 ブライトン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:13′ ギャラガー
BHA:42′ ウェルベック, 69′ エンシソ
主審:ロベルト・ジョーンズ
トッテナム【5位】×ボーンマス【15位】
またしても続くノースロンドン勢との劇的な決着
やたらとノースロンドン勢との対戦はドラマチックな幕切れとなるボーンマス。先日のネルソンのゴールもさることながら、このカードの裏の対戦もボーンマスがリードを守り切れないなど嫌な思い出も少なくはない。
ボーンマスは枚数をかみ合わせるように3-4-3を採用。ただし、マンツーからのハイプレスで潰していくぜ!というわけではなく、どうプレッシングをかけていくかを探っていくような立ち上がりだった。
キーになったのはサイドにおける攻防である。両チームともWBは比較的攻撃寄りの人選。受けに回るとこの部分がまず弱みになる。先にその弱みに付け込んだのはトッテナムの方だった。左サイドから裏を取ったペリシッチの折り返しからソン。タヴァニアのスペース管理の甘いところから背後の侵入に成功する。その後もトッテナムは中盤のデュエルを制しサイドに展開することで中途半端に高い位置を取るボーンマスのWBの背後を取り続けるように。
ボーンマスは低い位置からは4バックに変形しつつビルドアップを狙っていく。スパーズとの噛み合わせはずれたこともあり、プレスに対する脱出に特に問題を抱えたわけではなさそうだった。
トッテナム優位の流れを変えたのはラングレの負傷だ。その影響を受けて右サイドでコンビを組んだサンチェスとポロはこの試合のテンポを乱してしまう。右サイドがプレスに屈したトッテナムはあっさりと同点ゴールを献上。無理筋のパスを付けたサンチェスも悪いが、インサイドに切り込むチャレンジで傷口を広げたポロも責任は免れないだろう。
その後もミドルゾーンでの怪しさが際立つトッテナム。ややバタバタした形で前半を折り返す。
そんな前半を振り切るかのようにトッテナムの後半は積極的な立ち上がりだった。プレスも非常に意欲的で前から相手を捕まえに行く。
しかし、ボーンマスはこの状況をひっくり返すことで好転させる。左サイドからサンチェスと入れ替わり、ポロの雑な対応を誘発。そのまま逆転ゴールを引き起こして見せた。
前向きな相手に対してはソランケの高い位置での収まり方の信頼感が異常。押し返したらプレスで高い位置から圧をかけていくスタンスまで含めて、ボーンマスはトッテナムの後半頭のスタンスに十分すぎる回答を示した。
リードを奪われたトッテナムは不甲斐ないパフォーマンスが続くサンチェスのインアウトからダンジュマを投入して重心を前に。さらにはリシャルリソンも投入し、前線の活性化を狙っていく。ボーンマスはトッテナムとは逆に5バックの体裁を整える交代で手を打って行く。
トッテナムは押し込む機会を得ると、結果を出したのはここまでなかなか出場機会に恵まれなかったダンジュマ。AT直前の同点ゴールで勝利へと望みをつなぐ。
だが、終了間際に決定的なチャンスをリシャルリソンが逃すと、最後に勝利の女神が微笑んだのはボーンマス。ワッタラの冷静な切り返しからホイビュアをおいていくと冷静に決勝点を押し込んで勝負あり。またしても劇的な決着となったボーンマスの対ノースロンドンとのストーリーは残留争いに向けて大きな勝ち点3獲得で幕を閉じた。
ひとこと
後方でソランケのマッチアップをしていたのがポロということを踏まえると、トッテナムは前がかりのリスクのツケを払ったことになる。やはりソランケは信頼できる。
試合結果
2023.4.15
プレミアリーグ 第31節
トッテナム 2-3 ボーンマス
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:14′ ソン, 88′ ダンジュマ
BHA:38′ ビニャ, 51′ ソランケ, 90+5′ ワッタラ
主審:アンディ・マドレー
マンチェスター・シティ【2位】×レスター【19位】
5-4-1我慢の素養が…
リーグ戦との両立が難しいとされるCLの準々決勝以降のラウンド。1週間という間隔を挟んで行われる1stレグと2ndレグの間に挟まれるリーグ戦は非常にハンドリングが難しく、ともすればテンションが緩み思わぬ勝ち点を落とすこともしばしばだ。
となれば、そんなチームと対戦するタイミングを迎えられたチームは幸運といえるだろう。今回でいえばマンチェスター・シティに対峙するレスターはその立場に当たる。
だが、多少の日程面における有利不利くらいでは両チームの差は埋まらないということだろう。レスターは5-4-1でトップにヴァーディを置くという撤退守備+カウンターという専制守備のリスペクトスタンスでこの試合に臨む。
5-4-1の撤退守備というのは非常に根気が必要で、ミスが許されず、体力と精神力が問われる。このように両チームに力の差がある場合、まずは非保持側に十分な精神力があるかを問われる展開が多い。
そうした部分でこの日のレスターは十分とは言えなかった。マンチェスター・シティはあっという間に攻略法を迎える。左右の大外から侵入し、ラインを下げたところでセカンドボールを拾い続ける。時には左サイドにベルナルドとデ・ブライネを終結させることでオーバーロード気味にサイドの打開をすることも多かった。
レスターはクロスの対応が甘く、サイドからの揺さぶりにバタバタしては後手を踏む。立ち上がりすぐに失点しても不思議ではない出来だった。そして、実際に失点をしてしまう。セットプレーからの守備を跳ね返し切れなかったところをストーンズが豪快に仕留めて先制する。
こうした枠の外のプレーというのは多少は仕方ないと割り切れなければいけないのが撤退守備の定めである。しかしながら、2失点目につながったエンディディのハンドは軽率そのものである。こういうプレーが減らないチームは自陣でのプレー頻度を下げることくらいしか回避方法がない。
あっという間に2点のリードを手にしたマンチェスター・シティ。すると、ここでさすがにトーンは下がる。プレッシングの強度が下がってきたマンチェスター・シティに対して、ついにレスターがボール保持の時間を確保できるようになる。
しかしながら、いける!と思うところでミスが出るのが今季のレスターである。前半終了間際に決定的なミスから試合を前半の内にリードされた傷口をあっさりと広げてしまうことに。
3点を決めて簡単に試合を支配するマンチェスター・シティ。さすがにCLウィークということもあり、後半はだいぶトーンダウン。選手交代も含めた積極策でターンオーバーを狙っていく。
ゆったりとした保持の隙をついてカウンターを狙っていくのが後半のレスターのスタンス。しかしながら、ボール保持の正確性にはつながらず。マンチェスター・シティからボールを奪おうとしても空転してばかりだった。
ボール保持で時間を稼ぎ続けるマンチェスター・シティに対して、レスターはセットプレーからようやく1点を奪い取ることが出来たらが、時は既に遅し。イヘアナチョというパワープレーを入れた時は悪くはない流れになったが、試合をトータルで見ると動かすには至らなかったというのが正直なところ。日程では埋められない差が両チームにはあり、その差に比べれば、日程というファクターは小さいものということだったのだろう。
ひとこと
トーンダウンしてなお試合を支配できるのはシティの強さ。
試合結果
2023.4.15
プレミアリーグ 第31節
マンチェスター・シティ 3-1 レスター
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:5‘ ストーンズ, 13’ (PK), 25‘ ハーランド
LEI:75’ イヘアナチョ
主審:ダレン・イングランド
ウェストハム【14位】×アーセナル【1位】
プレスから握り返したウェストハム
レビューはこちら。
立ち上がりはほぼ完ぺきなアーセナルペースといっていい試合だろう。前から中盤を捕まえに来るウェストハムに対して、アーセナルのバックラインはショートパスの連打で応戦。トーマスが華麗な体捌きから前を向くと、ライン間のウーデゴールから一気に勝負をかけていく。
縦に長いレンジのパスから前進のエネルギーを得たアーセナルは敵陣深い位置でWGとの1on1を作ることに成功。ウェストハムはプレスバックが間に合ったときにはSHとSBのダブルチームでサカに対応していたため、基本は2人でWGを見たかったのだろう。
しかしながら、縦に早いパスを付けることが出来たアーセナルに対して、ウェストハムはキッチリと守る状況を用意しきれず。バタバタのバックラインに対して、アーセナルは右サイドで解放されたホワイトからファーのジェズスにアシストを決めて先制する。
息をつくひまもなくアーセナルはさらに追加点。今度は左サイドで1on1の機会を得たマルティネッリがこれを制してファーのウーデゴールにアシストを決めた。
完璧だったアーセナルの試合運びは徐々にバックラインのショートパスの怪しさでかげりが見えるように。インサイド、アウトサイドのどちらに立っていてもパスが単調で速度が足りていないティアニーのロストから段々とウェストハムがカウンターからチャンスを作るように。
前線の起点となるアントニオはこの日非常に目立ったパフォーマンスを披露。ホールディング相手に簡単にラインを上げさせないはたらきを見せていた。
そして、極めつけはトーマスへのプレス。このチャレンジにライスが成功するとPAのパケタへの対応でガブリエウがPKを献上。このPKをベンラーマが決めてウェストハムが反撃に打って出る。
このゴール以降、アーセナルは比較的簡単にボールを捨てるようになってしまう。ウェストハムとの肉弾戦に臨むことになる機会が増えたアーセナルは徐々に主導権を喪失。セットプレーの嵐に耐え忍ぶ時間が続くことになる。
後半も同じ流れが継続すると、ウェストハムは同点のゴールをゲット。セットプレーの二次攻撃から右サイドを破ったボーウェンが角度のないところからラムズデールを打ち抜いて見せた。保持で迷子になっていたティアニーはここでも裏を取られてしまうなど、この日の出来は散々だった。
アーセナルはジョルジーニョを投入し、保持から主導権を握る。だが、保持に主導権を握ることに気を取られてしまってか、トロサールやウーデゴールは過剰に降りていく展開になってしまい、エリア内の人数が足りなくなっていく。PKという3点目の絶好のチャンスを逃したサカはどこか覇気のないパフォーマンスに終始する。
リバプール戦と同じく2点リードの状況から勝ち点3を逃したアーセナル。追ってくるシティとの勝ち点差は4に縮まることとなった。
ひとこと
アーセナルのダメさが先に来てしまいがちだけどプレスから主導権を握り返したウェストハムは普通に立派。
試合結果
2023.4.16
プレミアリーグ 第31節
ウェストハム 2-2 アーセナル
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:33‘(PK) ベンラーマ, 54’ ボーウェン
ARS:7’ ジェズス, 10‘ ウーデゴール
主審:デビッド・クーテ
ノッティンガム・フォレスト【18位】×マンチェスター・ユナイテッド【4位】
前がかりなスタンスに顕在化するリスク
戦績は右肩下がり、そして終盤に待ち受けるは強豪との連戦。中盤戦は安泰かと思われたフォレストの残留に向けた物語はここに来て大きな逆風に見舞われているといっていいだろう。
この日の相手は連戦で疲労困憊気味のユナイテッド。そんなユナイテッド相手にフォレストは勢いよくぶつかるスタンスを選択する。前にとっとと当てて起点を作り、バックラインに対しては高い位置から捕まえに行くというスタンスに対して、マンチェスター・ユナイテッドはやや戸惑い気味だったといってもいいだろう。
しかしながら百戦錬磨のユナイテッドにとってはフォレストから受ける圧力をいなすのはそこまで難しい注文ではなかった。前がかりなプレスの陣形に対して、冷静に縦へのパスを差すユナイテッドはすぐさま主導権を取り返す。フォレストは前向きの強気の矢印のリスクを十分に感じさせるスタートとなっていた。
フォレストはマグワイアの背後を必死で狙い続けるが、30分になると段々と前に出て行けなくなるように。そうなると、ペースはユナイテッドに流れる。高い位置からダニーロを狙い撃ちしてのショートカウンターから先制。この先制点を担保にユナイテッドはペースを落としていく。ペースを落としながら試合を支配するということは今のユナイテッドにとっては何よりも大事なことである。
後半、保持でペースを握るのは引き続きユナイテッドの方。ELで消耗した分、ゆったりとしたペースで試合をコントロールしながら時計の針を進めていく。フォレストは右サイドのクロスからあわやというシーンを作り出すが、同点ゴールが遠い状況は依然変わらない。
黙々と試合を制御するユナイテッドに待望の追加点が入ったのは終盤の76分のことだった。アントニーのタメを生かす形で後方から飛び出したダロトが試合を決定づける追加点を決める。
終盤までフォレストは抵抗するが、さざ波以上のものは起こすことが出来ず。対応力とロートーンでの支配でユナイテッドが勝ち点3を手にした。
ひとこと
30分以降のフォレストの様子を見ると立ち上がりの奇襲で先制点が欲しかったことだろう。
試合結果
2023.4.16
プレミアリーグ 第31節
ノッティンガム・フォレスト 0-2 マンチェスター・ユナイテッド
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
Man Utd:32′ アントニー, 76′ ダロト
主審:クレイグ・ポーソン
リーズ【16位】×リバプール【8位】
アイデアと縁薄い大量ゴール
アーセナル戦で周りを驚かせたアレクサンダー=アーノルドのインサイドでの起用は今節も継続。展開力のある自身が中央から司令塔的に振る舞うだけでなく、アーセナル戦ではIHのビルドアップ関与が免除された流れで左サイドの攻撃が活性化していたため、彼以外の選手がメリットを享受する狙いもあるのかもしれないとぼんやり考えている。
いずれにしてもリバプールはこの後方の3-2ブロックを軸に大外へのルートを自在に使うことが出来ていた。ただ、現状では大外に届けた後の構築は甘い部分があるのも確かである。特に大外にアレクサンダー=アーノルドが回る動きがなくなった右サイドはややサラー頼みに回帰している感じがあった。
6得点という結果を見れば、リバプールのテストは大成功という見立てを持つこともできなくはない。が、試合を動かすという意味で重要な前半の得点はこうした構造的な要因と因果が比較的薄いトランジッションの局面から発生していた。アレクサンダー=アーノルドのボール奪取が起点となってはいたが、比較的サイドに近い位置だった気もするので3-2の恩恵!となるのはちょっと違う気もする。
そして、追加点もトランジッションから。ロングカウンターから左サイドを抜け出したサラーが追加点を奪い、リバプールは前半の内にリードを2点に広げる。
リーズは左サイドを軸に保持からの構築を狙っていく。ライン間の2列目を狙った加速はそれなりに機能していたし、5レーン気味のリバプールのアタックに対してもCHが最終ラインに落ちる動きで抵抗をしていた。が、そんな彼らでもトランジッションにおけるリバプールの猛攻は防げなかったということだろう。
後半早々にシニステラのボール奪取から追撃弾を決めたリーズ。やらかしてしまったコナテを救うかのようにこれ以降はリバプールのアタッカー陣が火を噴いて援護を行う。そして、後半のリバプールのチャンスも多くはトランジッション。3点目を奪うことに成功すると、リーズがプレスを強めて更なるリバプールのトランジッションの得点を呼ぶというマッチポンプのような形で得点を重ねていく。
アレクサンダー=アーノルドが底にいる形ならではのゴールを決めたのはリバプールの6点目だった。裏への一発のパスで抜け出しを促すと、これがヌニェスのゴールにつながった。
景気のいい大量得点を決めたリバプール。虎視眈々と勝ち点を積み、上位勢の取りこぼしを待ち構える。
ひとこと
アレクサンダー=アーノルドのインサイド起用がもたらす功罪についてはもうちょい静観したい。
試合結果
2023.4.17
プレミアリーグ 第31節
リーズ 1-6 リバプール
エランド・ロード
【得点者】
LEE:47′ シニステラ
LIV:35′ ガクポ, 39′ 64′ サラー, 52′ 73′ ジョッタ, 90′ ヌニェス
主審:シモン・フーパー