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「Catch up Premier League」~Match week 35~ 2023.5.6-5.8

目次

ボーンマス【13位】×チェルシー【12位】

惜しくも逃した12位チャレンジ

 勝てば12位を確保できるのはシックスポインターというのかはわからないが、勝った方が上の順位を見据えることができる近い位置にいる両チームの一戦である。

 ボールを持つターンになったのはチェルシーの方だった。この日のチェルシーは4バックを採用。いつもよりもSBが低い位置からゲームメイクに参加してくという姿勢を見せていた。2トップの脇からボールを持つサイドから前進していくというのがチェルシーのイメージだろう。

 ボーンマスはこれに対して高い位置からのプレスで相手の保持を積極的に阻害していく。ただ、CBにプレスに行く意識が強かった分、時折エンソを逃がしてしまうシーンも散見された。ここでフリーでボールを受けられてしまうと、チェルシーは一気に攻勢に出ることができる。

 エンソがフリーでボールを持った先の受け皿になっていたのは右サイド。大外のマドゥエケを軸としたトライアングルから攻撃を構築していく。

 一方のボーンマスはCFのポストプレーを積極的に活用していくアプロ―チ。左右に動くビリングが基準点となり、ポストから前を向く選手を作りながら前進していく。

 イメージとしてはチェルシーはアタッカーが前を向いた時の出力勝負。そしてボーンマスはアタッカーに前を向かせる仕組みで勝負といったところだろうか。

 前半はそれぞれが狙っている攻撃の形から得点を取り合う展開だった。先制したのはチェルシー。右の大外に開いたカンテから上がってクロスを決めたのはギャラガー。徹底的に攻略していた右サイドからの攻撃が結実したゴールだった。

 一方のボーンマスは左サイドに流れるソランケのポストからビニャが侵入。ややサイドに流れてのポストもこの試合でボーンマスが狙っていた形だったといえるだろう。

 後半もチェルシーは変わらず右サイドの攻略を主戦場として戦っていく。微妙にマイナーチェンジを加えたのはボーンマス。2列目の配置を微妙にいじることでサイドの選手のカラーを少しずつ変える形になった。

 左サイドに移動したワッタラはこのハーフタイム以降に存在感を増した1人。左サイドからマドゥエケの背後を持ちあがることで陣地回復に貢献していく。

 前半に比べれば明らかにボーンマスは押し込む時間が増えたといえるだろう。ソランケへのチェルシーのタックルにレビュー映像が差し込まれたり、あるいはビニャのオーバーラップの抜け出しからシュートまで結び付けるシーンがあったりなど、前半よりも明らかにゴールに近づくシーンが増えていく。

 しかし、後半先に得点にたどり着いたのはチェルシー。セットプレーからゴールを決めたのはバディアシル。後半、なかなかつかめなかった得点の機会をようやくモノにする。

 このゴールで勢いがついたのかチェルシーはさらに追加点。スターリングが左サイドからフェリックスのゴールをサポートして3-1に。

 接戦の末、終盤に差が付いた両チーム。ボーンマスはチェルシーを上回るチャンスを惜しくも逃すこととなった。

ひとこと

 終盤のボーンマスの盛り返しはとてもよかっただけに後半早めの時間帯にゴールが欲しかったところだ。

試合結果

2023.5.6
プレミアリーグ 第35節
ボーンマス 1-3 チェルシー
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:21′ ビニャ
CHE:9′ ギャラガー, 82′ バディアシル, 86′ フェリックス
主審:ジョン・ブルックス

マンチェスター・シティ【1位】×リーズ【17位】

どっちも天才

 アーセナルを超えて、リーグ戦では優勝争いの運転席に鎮座。シーズンのラストスパートに入っているマンチェスター・シティ。次なる敵はまさかのカムバックを果たしたビッグサムの初陣を迎えるリーズである。

 リーズのシティの対策は4-2-3-1。実質的にCHが最終ラインに入るシーンが多く見られるため、5バック気味に変化することが多いが、これはおそらくロカとマケニーがそれぞれIHのアルバレスとデ・ブライネにマンツーで追いかけ回す機会が多いからだろう。

 しかしながら、シティの通常のフォーメーションは3-2-5型。4-2-3-1の受け方ではトップに入るフォーショウがルイスとギュンドアンの両方を見る必要がある。この構造的なエラーに対して、リーズはほとんど無策。中央に止まるギュンドアンとサイドに入り込みながら3人目の崩しの役割を担当するルイスをフォーショウは両方監視するのは分裂でもしない限り無理である。

 結果的にマーカーが決まっているはずの中盤もパスの受け渡しが頻発。これによって、シティの中盤はギャップでフリーで受ける機会が頻発する。特にデ・ブライネはマーカーが外れた瞬間にフリーになってチャンスメイクするなど、仙人ぶりを遺憾なく発揮していた。

 そしてインサイドでのそうしたミスマッチは大外のケアが遅れることに。ただでさえパワーバランスが攻撃寄りのマフレズとフィルポのマッチアップはさらにシティが優位になる。シティはこの大外のマフレズからリーズのバックラインを揺さぶることに成功してゴールを2つ記録。決めたのは構造上フリーになりやすいギュンドアンだった。

 リーズは攻撃に出るシーンもなくはなかったが、やはり単発で時間を作ることができず。2点奪われてからのセットプレーの決定機はあったが、十分なチャンスの多さを作ることはできなかった。

 後半、リーズは高い位置からボール保持を阻害するためのプレスを行っていく。しかしながら、特に守備のプレー原則は変わっておらず。結局は中央に立つルイス、ギュンドアンと中盤の背後を狙うデ・ブライネとのマークの両立に苦戦。中央からの縦パス連打でチャンスメイクをしていく。

 ロドリゴの併用あたりからなんとなくリーズのロングボール攻勢が実る雰囲気がないこともなかったので、シティとしては早めに3点目を決めておきたいところ。しかしながら、この日決定機はあってもゴールを決め切ることができないハーランドにボールを集めようとしているため、やや得点を取るのに手を焼いている感があった。

 ようやく3点目としてフォーデンが迎えたPKのチャンスだったが、おそらく半ば強引にハットトリックチャンスとしてキッカーに名乗り出たギュンドアンがこれを失敗。すると、ロドリゴがワンチャンスを仕留めて試合は1点差に縮まることに。

 数字的にはわからなくなった展開だが、シティは交代でベルナルドとロドリという展開固めに最高の2人を投入。そして、やたらとコーナーフラッグ周りの時間稼ぎが上手いハーランドがクローズに貢献し試合は終了。シティが逃げ切りで勝利を収めた。

ひとこと

 プランAがちっとも機能せず、1点差に迫った後もがっちりと追撃を阻止されたくせにあれだけの一体感をサポーターにもたらすことができるビッグサムは天才だし、2点取ったのに一番チームで怒られてそうなギュンドアンもまた天才。

試合結果

2023.5.6
プレミアリーグ 第35節
マンチェスター・シティ 2-1 リーズ
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:19′ 27′ ギュンドアン
LEE:85′ ロドリゴ
主審:アンディ・マドレー

トッテナム【7位】×クリスタル・パレス【11位】

起伏のない90分に一刺しのセットプレー

 徐々に欧州への扉が閉ざされつつあるトッテナム。今節の相手はクリスタル・パレス。無風地帯にいるもの同士のロンドンダービーである。

 お互いにバックラインがゆったり持つ立ち上がり。後方から時間を作って押し上げるタイプのチームではないので、どちらも無理にDFにプレッシャーをかけることをしない立ち上がりだった。ちなみにトッテナムは保持ではいつもの3-4-3をキープしつつ、非保持ではソンとポロがサイドハーフに入る4-4-2のような形に変形をしていた。

 その分、崩しのアクションは前線に依存をする傾向があった。トッテナムにおいて最終局面の違いを作ることを託されたのはリシャルリソン。最終ラインからスムーズに抜け出すアクションをこなすことでクリスタル・パレスのバックラインに対してギャップを作っていく。

 一方のクリスタル・パレスはWGの突破力が生命線である。トッテナムが中央に安易に刺してくるパスを捕まえてのカウンターと掛け合わすことができればさらに威力は増していく。元々チャンスが少なくなかなか動かさなそうな試合だったが、30分を境にパレスがロングカウンターの機会を増加させて少しずつチャンスの頻度は増えていくようになった。

しかしながら、得点を決めたのはトッテナム。前半ラストプレー、右サイドのポロから上がったクロスをケインが決めて先制。限られた機会を得点に結びつけるエースの働きで前半終了間際にようやくトッテナムが前に出る。

 先行を許したクリスタル・パレスは前半に比べればトッテナムのバックラインに対するプレッシングを強めていくことで出力を上げていく。だが、こうしたパレスの姿勢にも関わらず、試合は前半以上に見せ場の少ない展開に。散発的なカウンターとセットプレーくらいしか見どころのない流れとなっていく。

 ソンが一発で抜け出すアクションから大チャンスを迎えれば、パレスはセットプレーから決定的なチャンスを迎える。後は凪といった状態でただただ時間だけが過ぎていく展開に。選手交代もほとんど何かをもたらすことがなく淡々と90分が過ぎていく試合だった。

 結局試合はそのまま終了。前半終了間際のセットプレーの一発で逃げ切ることに成功したトッテナムがのらりくらりと勝ち点3を手にした試合だった。

ひとこと

 ちょっと、つまんなすぎませんか。笑

試合結果

2023.5.6
プレミアリーグ 第35節
トッテナム 1-0 クリスタル・パレス
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:45+1′ ケイン
主審:ダレン・イングランド

ウォルバーハンプトン【14位】×アストンビラ【8位】

ビラの持ち味を殺して逃げ切る

 共にウェスト・ミッドランズに籍を置く両チームの一戦。ボール保持で主導権を握ったのは今季上の順位でシーズンを過ごしているアストンビラの方だ。ライン間に立つ選手(主にブエンディア)にボールを送り、反転して前を向くと逆サイドに展開を繰り返し、薄いサイドを作り出していく。 

 ウルブスはこれに対してハイプレスで対抗。2トップがスイッチを入れることにより、ビラのビルドアップを咎めていく。そして押し込んだところからセットプレーで先制。前半の早い時間でリードを奪う。

 序盤は調子が良かったアストンビラだったが、時間の経過と共に徐々に怪しい空気が出てくるように。というのもリードしたウルブスが徐々にアストンビラでの後方のボール回しを放置し始め、ライン間のスペースが空かなくなってしまったのである。

 今季のビラにとってはリスクを犯してでも相手を自陣に引き付けて間のスペースを作り出す形は生命線。その前提である食いつくというアクションをウルブスが止めてしまったのである。これにより、ビラの攻撃は外循環に。ハーフスペースの突撃などいつもはあまり見られない動かし方からウルブスのDFブロックを揺さぶっていくこととなった

 一方のウルブスも持つ機会になればバックラインがゆったりとビルドアップを行っていく。そして、ボールを持てなくなればリトリート。そして、自陣の深い位置まで下がってスペースを消す。時にはSHが下がって5バックのような形で守るシーンも見られるようになった。

 堅い展開となった試合は後半も変わらずビラが保持でウルブスのブロックを崩せるかのトライを繰り返していく構図。大外に投入したベイリーはこの日のビラでいえばキーマンだったかもしれないが、対面のトティ・ゴメスがひたすらついていく形で優位を生むことを許さない。

 高い位置からのプレスとリトリートを使い分けながらビラの前進を苦しめつつ時計を進めていくウルブス。彼らを前にビラは何も抵抗が出来ずにただただ時間が過ぎていく状態に。

 前半はビラの攻撃の象徴だったライン間への縦パスのトライも続けるが、入った後のスピードアップがイマイチでウルブスのリトリートを裏切るようなアクションを見せることができない。

 結局試合はそのまま終了。先制点を担保に見事に試合を塩漬けにすることに成功したウルブスがローカルライバルから勝ち点3をもぎ取ることに成功した。

ひとこと

 先制点とキーマン封じを担当したトティ・ゴメスがえらい。

試合結果

2023.5.6
プレミアリーグ 第35節
ウォルバーハンプトン 1-0 アストンビラ
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:9′ T.ゴメス
主審:スチュアート・アットウェル

リバプール【5位】×ブレントフォード【9位】

ポゼッションを武器に手堅さを手に入れたリバプール

 アレクサンダー=アーノルドに中盤タスクを負わせるようになってから絶好調のリバプール。連勝を重ねているが、上位陣が勝ち星を落とさずなかなかCL出場権のお鉢が回ってこない。

 ブレントフォード相手でも落ち着いた戦い方は健在だった。4-3-3から後方を3-2型にするいつもの形を披露する。序盤はサラーがフリーロールから相手のゴールに迫っていったが、これはアドリブだろう。時間の経過とともに右サイドに張り直していく。

 両翼を機能的に活用することができるのは今のリバプールの後方の仕組みの良さ。左サイドでは人数をかけた崩しからのチャンスメイク。右は大外のサラーを活用してチャンスを作り出していく。

 先制点のシーンの崩しは見事の一言である。右の大外で深さをとったサラーから折り返しのボールを受けたファビーニョが逆サイドに展開。ファン・ダイクの折り返しをサラーが押し込んで先制。彼らの崩しの美しさを詰め込んだゴールと言えるだろう。

 リードを奪われたブレントフォードは高い位置からのプレスに出ていくが、なかなかプレスは空転してしまい歯が立たない。アレクサンダー=アーノルドの長いレンジのパスはハイプレス殺しだし、シンプルに中盤の降りてくるアクションについていけずに反転を許す場面も。前線の豊富なタレントが2点差となるゴールが決まったんだろうよってジリジリと押し込まれる展開が続く。

 それを払拭したのが30分過ぎからのブレントフォードのパフォーマンス。徐々に強気のプレスが実るようになり、リバプールのバックラインのパスミスを利用したショートカウンターも出てくるようになった。

 裏抜け、セットプレーなど徐々に自分たちの形からチャンスを作り出すブレントフォード。かさばるカードにも心配が募るリバプールだが、なんとかここでブレントフォードの攻勢を食い止める事に成功。試合はハーフタイムを迎える。

 ハーフタイム明けは試合はブレントフォードのペースだった。ハイプレスからボールを奪い返すと左右の深い位置からのクロスからチャンスメイク。特に左サイドの裏からヘンリーが抜け出す形を積極的に作っていたのはリバプールに対して効果抜群だった。

 しかしながら、ハイプレスからオープンな形でリズムを突き動かすブレントフォードのスタンスはリバプールにもチャンスを与えるように。ポゼッションからブレントフォードの手薄なサイドを作り、前に進んでいくなど徐々にペースを引き戻していく。

 終盤の決め手になったのは交代選手である。リバプールの交代選手たちはゲームクローズに向けて手堅い試合運びに終始した一方で、ブレントフォードの前線はなかなか交代選手たちが活性化させられない状態に。

 後半の頭は苦しんだが逃げ切りに成功したリバプール。2試合連続の1-0で連勝をさらに伸ばした。

ひとこと

 ポゼッションという手堅さを身につけつつあるリバプール。撤退守備の強度よりもポゼッションでいちいち盛り返すことで波状攻撃を寸断している。

試合結果

2023.5.6
プレミアリーグ 第35節
リバプール 1-0 ブレントフォード
アンフィールド
【得点者】
LIV:13′ サラー
主審:アンソニー・テイラー

ニューカッスル【3位】×アーセナル【2位】

難局を保持で切り抜ける

 レビューはこちら。

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 優勝に望みをつなぎたいアーセナルに対して立ちはだかるのは今季のプレミアの中でも屈指の難所であるセント・ジェームズ・パーク。念願のCL出場権確保に着々と近づいている今、スタジアムの雰囲気はニューカッスルの面々を後押しする素晴らしいものになっている。

 そうした後押しを受けたかのようにニューカッスルは序盤からチャンスを生み出す。自陣からのファストブレイクからマーフィーのシュートがポストを叩くと、セットプレーからギマランイスのシュートがキヴィオルのハンドを誘いPKを判定。これはなんとかOFRで無罪放免となり事なきを得たアーセナルだが、危うくスタジアムの空気に飲まれてしまいそうな立ち上がりとなった。

 アーセナルの受難はビルドアップでも続く。右のCBに左利きのキヴィオルを起用したことで、アーセナルはボール周りが左循環にこれをニューカッスルに狙い撃ちされてしまい、アーセナルは高い位置からニューカッスルのカウンターを食らうシーンが目につくように。

 しかし、逆サイドのプレスは甘く、このサイドにイサクを活用したこともあり、ニューカッスルの左サイドは守備面では連携難がある。セットプレーの流れから右サイドに流れた13分の先制点のシーンではそのニューカッスルの課題が浮き彫りに。サカとホワイトに気を取られたニューカッスルの守備陣はバイタルのウーデゴールを完全に放置。思い切り振り切ったシュートはボットマンのブロックを素通りしてポープの守るゴールを破って見せた。

 このゴールからアーセナルは徐々にペースを握る。ビルドアップでもジンチェンコ、ジョルジーニョを軸に左サイドの細かい駆け引きからチャンスメイクができるようになっていく。

 もちろん、ニューカッスルも保持から反撃は出来る。中盤のポストからフリーマンを作ると、サイドの奥にボールを送り、ここからハイクロスで勝負。エリア内の高さと枚数を確保できている彼ららしい圧力のかけ方でゴールを狙う。

 アーセナルのリードで迎えた後半、ニューカッスルはサイド攻撃とセットプレーからそれぞれ決定機を得る立ち上がり。しかしながら、このピンチをしのいだアーセナルは後半はニューカッスルのハイプレスの間合いを完全に見切れるように。前半以上に前がかりになるニューカッスルに対してロングカウンターから反撃に打って出る。

 サイド攻撃を軸としたニューカッスルとロングカウンターベースのアーセナル。次に試合を動かしたのはまたしてもアーセナル。ニューカッスルのサイド攻撃に対して手当てをしたティアニーのボール奪取からのポジトラはマルティネッリの下に。エンドライン側から鋭い弾道でのクロスはシェアのオウンゴールを誘いアーセナルが2点目を奪う。

 この2点でアーセナルは試合をうまくコントロールした印象だ。サン=マクシマン、アルミロンとサイドアタッカーを入れ替えたニューカッスルだったが、ブロックの外からのシュートやクロスに終始し、序盤ほどアーセナルのゴールを脅かすことができない。

 前線は時間を作りつつ、ブロック守備には全員がきっちりと戻す。チェルシー戦では見られなかったソリッドさを見せたアーセナルがセント・ジェームズ・パークの攻略に成功。優勝に望みをつなぐ勝ち点3を手にした。

ひとこと

 いろいろいいところはあるけども、プレスに屈したシティ戦を経て、プレスにつなぐ形で解決策を見せたアーセナルはとてもよかった。

試合結果

2023.5.7
プレミアリーグ 第35節
ニューカッスル 0-2 アーセナル
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
ARS:14‘ ウーデゴール, 71‘ シェア(OG)
主審:クリス・カバナフ

ウェストハム【15位】×マンチェスター・ユナイテッド【4位】

デ・ヘア痛恨のミスが尾を引く敗戦

 試合は少し意外な立ち上がりだったといえるだろう。マンチェスター・ユナイテッドが自陣からレイオフを連打で前進するのはそれなりに想定内である。いつもに比べると、ややポストプレーを使う割合は多かったかもしれないが、トップ下的にベグホルストを使うという時点でそうしたプランは十分に想像できるだろう。

 より意外だったのはウェストハムである。細かいパスワークからマンチェスター・ユナイテッドのプレス隊を引きつけてからリリースをしながら前進するというビルドアップを行っていく。あまりキャラではないと思うのだが、時間とスペースを前に送るような形はマンチェスター・ユナイテッドの守備陣に対してそれなりに通用していた。

 ウェストハムの意外性は面白かったが、より前進が確実だったのはマンチェスター・ユナイテッドの方だろう。ベグホルストの前にラッシュフォードがいることでポストからフリーマンを作った後にフィニッシャーを創出するのが無理なくできる。右サイドにはアントニーもいて、高い位置で相手の最終ラインを固定しながらマイナスのパスからミドルシュートのチャンスを作る場面もあった。

 ビルドアップも最終ラインが代わる代わる列上げをするという変則的なもの。ウェストハムは徐々にプレスの積極性が失われていき、少しずつ前進の機会が奪われていく流れとなった。

 そんな中で先制したのは意外にもウェストハム。根性でつないだボールはカウンター気味にベンラーマの下に。抜け出し切れていた状況ではなかったのだが、ひとまず打ったシュートをデヘアがこぼしてしまいそのままゴールイン。マンチェスター・ユナイテッドとしてはかなり可能性の薄いところからの失点となってしまった。

 その後もベンラーマは単発で攻撃の機会をウェストハムに提供。マグワイアはあわやハンドを取られてもおかしくないシーンがあったが、VARが下した判断はおとがめなしだった。

 リードをしたこともあり、ウェストハムは後半もロングカウンター主体のスタイルを継続。マンチェスター・ユナイテッドはつなぎのポイントを作りながらシュートパス主体の前進で少しずつ前に進んでいく。

 ウェストハムはセットプレーからの追加点と思わしきシーンもあったが、これはアントニオのファウルでノーゴール判定。それでもカウンター主体で攻撃に出る機会は十分に確保できていたとするべきだろう。

 ベグホルストの交代以降は前進のスムーズさにかけたマンチェスター・ユナイテッド。最後は空中戦に打って出るがこれも不発。逃げ切り体制に入ったウェストハムの背中を最後まで捉えることが出来ず、痛い黒星を喫してしまった。

ひとこと

 デ・ヘア、たまにこういうのありますよね。

試合結果

2023.5.7
プレミアリーグ 第35節
ウェストハム 1-0 マンチェスター・ユナイテッド
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:27′ ベンラーマ
主審:ピーター・バンクス

フラム【10位】×レスター【16位】

バラバラの守備ブロックをフラムが前半で解体完了

 均衡した状況が続く残留争いのボトム5。レスターとしては敵地とは言え無風地帯にいるフラムが相手ということを考えれば、ここは勝ち点を確保しておきたいところだろう。

 序盤からボールを持ったのはフラム。パリ―ニャをアンカー気味において、CBは開きながらフラムの2トップの外を取っていく。アンカーを受け渡しながら2トップを見る守り方をするようなチームの王道パターンといっていいだろう。

 左サイドでリームがいない分はウィリアンやケアニーといった選手たちがラインを下げてボールを引き取ることでカバー。いつもより低い位置でのプレーを増やすことで保持においてきっちりつなぐことを優先していた。

 レスターはフラムのボール保持のスタンスに対しては慎重な姿勢に終始。2列目はラインを下げることを優先し自陣にこもることをいとわない。まずは守備からという意識を感じさせた立ち上がりだった。

 しかし、そんなレスターの目論見を台無しにしたのがセットプレー。ウィリアンが放ったFKは誰にも触ることなくゴールマウスに吸い込まれていった。合わせるのか誰も触らないのかの判断はGKにとっては悩ましいのだろうが、リプレイの弾道を見る限りはGKのイヴェルセンが対応するのが丸かったと思われる場面だった。

 反撃に出たいレスターだが、狭くサイドを限定するように追い込んでいくフラムの守備に苦戦。左サイドにボールを集めるが、不安定なパスワークからなかなかリズムをつかめない。クリスティアンセンやスマレなど見ていてこちらが不安になるようなパスでフラムにカウンターのチャンスを与えてしまう。

 するとフラムはカウンターから追加点をゲット。確かに中盤でフリーの選手を作れていたが、いくらなんでもそこから先をスムーズにいかせすぎである。特にCBの2人はどちらもとにかくボールに吸い込まれていくようなポジションを取るせいでラインはガタガタ、お互いの距離感はぐちゃぐちゃ。ユニットとして守るのではなく、1人で守りたがるCBがただ2人並んでいただけだったといえるだろう。2点目のシーンの目を覆いたくなるようなDFラインを見れば、フラムがここから簡単に得点を重ねていく流れになるのは想像に難くはない。

 レスターは中央に縦パスは入るのだけども、なかなかそこからスムーズにサイドに展開が出来ず。もたもたしてサイドにボールが流れ着いた時にはもう手遅れ。抜ききれないクロスから上げたハイクロスをただただ跳ね返される展開が続く。

 前半に3点の差を付けられてしまい、後がなくなったレスターは後半頭から強気のプレッシングを敢行。前半の流れを変えるべくハイラインから反撃に出て行く。

 しかしながら3点目と同じくケアニーにゴールを破られて失点。出鼻をくじかれる立ち上がりとなってしまった。

 それでも、マディソンのタメからようやくフリーでボールを持てたバーンズが追撃弾を挙げると、直後にはレノが飛び出したヴァーディを倒してPKを献上。もしかしたらもしかする?というレスターファンの思いはそのヴァーディの甘いPKが止められた瞬間に一気にしぼんでしまう。そして、ウィリアンのゴールで彼らの落胆は決定的なものになった。

 パリ―ニャの軽率なエリア内の対応でのPK献上や、ダフィーの信じられないパスワークからフラムはそれ以降やたらレスターにプレゼントゴールを渡していた。だが、追い上げは2点差まで。大量5失点を喫したレスターはこれで降格圏に足を踏み入れて残り3試合を迎えることになった。

ひとこと

 CBは実力も大事だけど組み合わせも大事。この組み合わせは無理。

試合結果

2023.5.8
プレミアリーグ 第35節
フラム 5-3 レスター
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:10′ 70′ ウィリアン, 18′ ヴィニシウス, 44′ 51′ ケアニー
LEI:59′ 89′ バーンズ, 81′(PK) マディソン
主審:ロベルト・ジョーンズ

ブライトン【6位】×エバートン【19位】

ダイチから学ぶ三笘の泳がせ方

 ニューカッスルとマンチェスター・ユナイテッドが揃って敗戦を喫したことでまだまだ混沌としているCL出場権争い。リバプールと共にフォロワーの先頭を走るブライトンにはこのチャンスを生かすほかない。残留争いに苦しむエバートンを叩いてきっちり勝ち点3を確保しておきたいところだ。

 しかし、そんなブライトンの目論見は数十秒でエバートンに挫かれる。ボールを奪った速攻から右サイドにキャルバート=ルーウィンが抜け出すとドゥクレへのラストパスが決まりあっさりと先制。ブライトンは三笘周辺のボールの失い方に加えて、ダンクの対応の拙さが状況をさらに悪くしてしまっていた。

 この先制点で両チームのスタンスは決定。ブライトンはボール保持でエバートンのブロックを壊し、それをリトリート+ロングカウンターでエバートンがやり返すといった構図である。

 負傷明けのマーチをベンチに控えさせたブライトンは三笘を中心にボールを集めた攻撃を展開。1on1でパターソンと対峙することが出来た三笘はカットインからクロスでチャンスを創出していく。

 初めは三笘が優勢と思われたマッチアップだったが時間の経過と共に徐々に怪しい部分が出てくる。まずはパターソンの背後に構えるイウォビがインサイドに立ちふさがっていることで、カットインからの中央のコンビネーションが分断されるように。三笘がカジュアルに選ぶことができる選択肢はファーへのクロスになるが、これはターコウスキとマイコレンコが全て跳ね返すことで対抗する。

 三笘にはボールが入る、ひっかけることなくPA内にボールを送る。一見ブライトンペースのように見えるが、インサイドを埋めるエバートンの対応により、ファーへのクロスに結末を収束させることでエバートンは得意な形の対応の範疇で三笘に対応してした。

 左サイドは三笘とエストゥピニャンの2人で関係性が終始していたのも気になった。ここでもう少し存在感のある3人目が積極的に絡めれば展開は違ったのかもしれない。

 しかし、打開策を見つけられないブライトンは強引にインサイドにパスを付けるように。これがエバートンのカウンターの燃料になってしまう。ひとたびボールを奪われるとキャルバート=ルーウィンに時間を作られ、イウォビとマクニールにボールを運ばれ、ドゥクレに走られて後手を踏む。多くの人数を高い位置に上げていたブライトンはこうしてカウンターに晒されるたびに失点の危機を迎える。

 そして、ドゥクレがこの日2点目のゴールをゲット。どこに出すか迷っていたウェブスターのロストからエバートンが見事にカウンターを決める。

 さらに前半の内に3点目をゲット。一度は速攻を止めたかに見えたブライトンだったが、右サイドの守備対応が拙くもう1点追加点を許してしまう格好となった。

 後半、ブライトンは4枚替えで一気に流れを取り戻しに行く。中でも効果があったのは右に入ったマーチ。前半はほぼ三笘一辺倒だったサイド攻撃の翼が右にも揃い、ブライトンはようやく反撃の体制が整う。

 しかしながらエリア内の空中戦の対応力とSHとSBの優れた連携から徐々にエバートンはサイドの封鎖に成功していく。カウンターに対する対策に光が見えないのも変わらず。ブライトンの攻撃に影を落としていく。

 4枚替えを敢行したにも関わらず殴っても殴ってもこじ開けられないブライトン。すると、マーチのパスミスからエバートンがカウンターを発動。これをマクニールが制して試合は4点差に。さらに、このプレーでマーチが足を負傷。リスクを賭して3点差を追い上げに行ったブライトンには最悪のシナリオとなってしまった。

 追撃するブライトンは三笘の折り返しから1点を返すが、トリを飾ったのはブライトンではなくこの日イケイケのマクニール。左サイドから独力で持ち上がると角度のないところからスティールを打ち抜いて5点目をゲット。

 完膚なきまでにブライトンを叩いたエバートン。残留に向けた大きな自信と勝ち点3を手にするビックサプライズをプレミアファンに提供した。

ひとこと

 ハマった時のエバートンは恐ろしい。豪華版ダイチ・バーンリーの名は伊達じゃない。

試合結果

2023.5.8
プレミアリーグ 第35節
ブライトン 1-5 エバートン
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:79′ マック=アリスター
EVE:1′ 29′ ドゥクレ, 35′ スティール(OG), 76′ 90+6′ マクニール
主審:サイモン・フーパー

ノッティンガム・フォレスト【18位】×サウサンプトン【20位】

前半の拙い守備が大一番の命取りに

 第35節のトリを飾るのは残留をかけた大一番。奇跡の逆転残留のきっかけをつかみたいサウサンプトンと安全圏に逃げ出したいノッティンガム・フォレストのシックスポインターである。

 立ち上がりにボールを持ったのはサウサンプトン。いつものようにバックラインが広がりながらボールを動かして前進のきっかけを探している。珍しかったのはノッティンガム・フォレストの守り方である。4バックにせよ、5バックにせよ彼らのトップの守り方は基本的にナローで前残り優先。しかしながらこの日は3トップが横に大きく開きながら守る形がメインだった。

 保持においても広がるCBからショートパスを軸に前進。WGでSBをピン留めしてその背後にアウォニィを走らせる形からサウサンプトンのDFラインの背後を取る。

 サウサンプトンのバックラインと中盤は縦パスを受けるフォレストの選手を積極的に阻害していくが、逆にフォレストはラヴィアの背後を取る形でカウンターを発動。DF-MF間でフリーマンを作りながら確実にカウンターの手順を踏んでいく。

 先制点を奪ったのは試合の内容的にもリズムよく運べていたフォレストの方。自陣からのダニーロの大きなトランジッションで抜け出したジョンソンからの折り返しをアウォニィが決めて先行する。勢いに乗るフォレストはさらに追加点をゲット。立て続けにゴールを決めてリードを広げる。

 2失点のサウサンプトンにはもう少しやりようがあったはず。1失点目はメイトランド=ナイルズがあまりにも簡単に抜け出されてしまっていたし、2失点目はボックスの手前で何か所か止められそうなポイントがあった。

 サウサンプトンはダニーロ+ギブス=ホワイトのパス交換のミスからアルカラスが追撃弾をあげるが依然最終ラインのバタバタ感を拭うことが出来ず。ボックス内に人はいるけどもガチャガチャしており、やたらフリーの選手がいるという状況が多発する。トランジッションが絡むともはや絶望的である。

 そして、前半の内にフォレストは3点目をゲット。メイトランド=ナイルズがあまりにも軽率なタックルでジョンソンを対してPKを献上。アルバレスの追撃弾を台無しにしてしまう。

 後半も同じ流れになりつつあったが、セットプレーからサウサンプトンがリャンコのゴールで1点差に迫る。基本的にはオープンな試合だったが、これ以降はサウサンプトンが押し込みながらフォレスト陣内を攻略するフェーズに入っていく。

 左右からのクロスを軸に徐々に攻勢を強めていくサウサンプトン。フォレストはカウンターから反撃に出る形で粘り続けていく。

 なんとか追加タイムまで粘ったフォレストはこの時間帯に貴重な追加点をゲット。これで勝負をほぼ手中に収める。それでも96分にウォード=プラウズが1点差に迫るPKを決めた残り時間は4分は張り詰めたものに。

 サウサンプトンは猛攻でゴールに迫るが、なんとかクロス攻勢を阻み続けたフォレストが逃げ切りに成功して勝ち点3をゲット。残留に向けて大きな大きな勝ち点3を手にした。

ひとこと

 あまりにも前半の雑多な守備が悔やまれる。特にメイトランド=ナイルズは個人レベルでも決定的なミスを連発。残留のラストチャンスとなった試合でのプレーとしてはあまりに軽いものばかりだった。

試合結果

2023.5.8
プレミアリーグ 第35節
ノッティンガム・フォレスト 4-3 サウサンプトン
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:18′ 21′ アウォニィ, 44′(PK) ギブス=ホワイト, 73′ ダニーロ
SOU:25′ アルカラス, 51′ リャンコ, 90+6′(PK) ウォード=プラウズ
主審:マイケル・オリバー

今節のベストイレブン

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