1st leg
紙一重だったチャロバー
マドリード遠征のダメージは2点のビハインドと出場停止のチルウェル。ロンドンではこのディスアドバンテージを跳ね返す必要がある。
ランパードがたどり着いたやり方は4人のMFを並べる5バックである。一見消極的なプランではあるが、この形は少なくともプレッシングにおいては悪くなかったように見える。マドリーの4-3-3に対してバックラインへのプレッシングは噛み合った感はあまりなかった。だが、IHもしくはカマヴィンガが中盤でドリブルで運ぶというマドリーの前進達成要件と中盤でボールハントを狙うチェルシーのやり方はチェルシー側にとって相性がいいように見えた。
チェルシーが非保持で犯したリスクはヴィニシウスとのマッチアップをフォファナに任せたこと。チェルシーはスペースを与えると運ぶことができるカマヴィンガを前から抑えるアクションをジェームズに任せる必要があった。よって、このチェルシーの仕組みを成り立たせるのはフォファナがこのマッチアップで踏ん張れるかに大きく依存していた。フォファナはとてもよくやっていたと思う。
ボール保持でもチェルシーは主導権を握る。3バックは広い距離をとりながら非常に冷静な対応でマドリーのプレスをいなす。ときにはCHであるエンソやコバチッチとポジションを入れ替えることで前後関係を変更することでマドリーの中央部分のズレに侵入していく。
マドリーはWGの前へのプレスの積極性とIHがそのプレスへの追従が持続的に行われたいたため、中央に穴を開けるシーンもしばしば。チェルシーは落ち着いてボールを運ぶことができており、低い位置から引っ掛けてしまうピンチはほぼなかった。
チェルシーのチャンスメイクは対角フィードもしくはサイドの裏抜けによるものがほとんど。よって、マドリーがブロック守備を組み切ったときにはほぼノーチャンスだった。ただし、マドリーはヴィニシウスが自陣に戻って守備をしないため、チェルシーの右サイド側からは常に裏抜けのチャンスがあった状況だ。
マドリーとしてもこのスペースの放置はあえてという発想はあったかもしれない。カウンターから決定機を迎えるということと2点のリードを踏まえれば、ある程度チェルシーに食いつかせる判断を許容していた可能性はある。
マドリーはヴィニシウスや右サイドからのIHが抜け出す形からカウンターで迎えるチャンスもちらほら。その一方でポゼッションからのチャンスはヴィニシウスにロドリゴが寄り添う形から迎えるオーバーロード的な形が一度あったくらいだろう。基本は肉を切らせて骨を断つというカウンター寄りのプランに時間の経過とともに集約された感があった。
コンスタントにチャンスを迎えることでゴールに迫るチェルシー。なお、チェルシーがエリアで迎えるチャンスのフィニッシャーがカンテやククレジャなのは人選や出場停止による弊害によるところがあるのは否めない。前半最後のククレジャのチャンスには思わずチルウェルがいれば!と思ってしまった。チェルシーとしては総じて悪くはない前半だったが、2点のビハインドという重石を全く取り除けなかったことから目を背けるわけにはいかないといった流れだった。
後半、マドリーが積極的に出ていく立ち上がり。左右からのクロスで決定機を迎えるスタートとなった。プレッシングにおいても改善傾向が見られたマドリー。IHが前へのプレスに追従する以外に、逆サイドへのスライドと同サイドへのフォローを積極的に行うことで、縦への間延びを防いでいた。
サイドへのスペースが空かなくなってきたチェルシー。それだけにミリトンと入れ替わったチャロバーのシーンは非常に貴重な機会だった。ミリトンが犯したファウルにスタンフォード・ブリッジのファンとチェルシーのイレブンは2枚目の警告を要求するが、オルサトはカードに手をかけなかった。
結果的にはこれがチェルシーにとって最後の追いつく目だったということになるだろう。直後にマドリーは右サイドからクリーンな突破を決めてロドリゴがトータルで3点リードとなるゴールを仕留める。右への展開がミリトンだったことや、入れ替わられたのがチャロバーというのもなかなかの展開の妙であった。チャロバーにとっては相手を10人に追い込むチャンスから失点の起点になってしまったのだから、色々と紙一重だった試合となってしまった。
ロドリゴが更なるゴールを決め、両チームの差が4点になってからはマドリーが追加点を入れる可能性を残しながら、チェルシーの面々が敗退に向けて心の準備を整えるための時間に。きっちりとブロックを組むマドリーに対して、チェルシーにはこれを壊す武器をこの日は持っていなかった。
試合はトータルスコアで4-0。2回の監督交代を経て臨んだチェルシーのCLの旅路はここで幕を閉じた。
ひとこと
マドリーがしたたかだったという見方もできるが、正直2ndレグは目覚めないまま決着がついた感もある。チェルシーのこの試合のプランは個人的には悪いものだとは思わなかったが、今季の残りでこれが一番大事な試合!と言われたときに清々しい気分になれるチェルシーファンがどれだけいるかということだろう。マドリーは次ラウンドで累積警告でミリトンを欠くという状況を乗り越えられるかがキーになる。
試合結果
2023.4.18
UEFAチャンピオンズリーグ
Quarter-final 2nd leg
チェルシー 0-2 レアル・マドリー
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
RMA:58′ 80′ ロドリゴ
主審:ダニエレ・オルサト