■捨ててでも噛みつく
先に言っておくが、グループBの第6節の2試合は面白かったのでオススメである。
この試合を面白くしたのは間違いなくコソボである。第4節、第5節のコソボは最終ラインの可変をベースとして、5レーンを埋めながらのアタックを行ってきた。Jリーグでいうと若干鳥栖のような感じ。ジョージアやギリシャに対して渡り合いながら勝ち点をもぎ取ってきた。
スペインに対して、この可変を引っ提げてどう戦うのかな?と思っていたのだけど、普通に第6節のコソボはこの可変をあっさりと捨てる。4-4-2で組まれたコソボの陣形は特に動くことはなく、可変の要素は非常に減った。
恐らく、この変更はレギュラーのIHであるハリミがサスペンション、ベリシャが前節と負傷(この試合モベンチにはいた)と苦しいやりくりだったことと無関係ではないはず。しかし、このやり方は十分スペイン対策とコソボの弱点を隠す形になっていた。
前節のギリシャ戦でコソボが見せた課題はバックラインにプレスをかけられた際にボールコントロールが乱れ、怪しいショートカウンターを受けてしまうということである。
この試合のコソボのボール回しはSBにまずボールを預ける。すると、スペインは前線が横方向にスライドしながらプレスをする。こうなると、コソボは逆サイドのSBにピッチを横断するロブパスを送る。スペインの前線がスライドした分、時間がもらえたコソボのSBはここから2トップに向けて一気に裏に蹴りだす。コソボはスペインのプレスの裏をかくこと、そして自軍のビルドアップ耐性の低さを覆い隠すいいやり方を見つけたように思った。
コソボが徹底していたのは中央をなるべく保持において使わないこと。先ほどのボール循環のルートを見ればわかるが、ほぼ中央でのロストの可能性はない。仮に中央を使うとしたら2トップにロングボールを当てるときくらい。これも、当然ショートカウンターの危険性は少ない。しかも、ラシツァとムリキは割と収まったし、裏抜けのところからチャンスは作れていた。
そりゃ、中央を経由できた方がチャンスはあるだろうが、スペインが相手ならばおかせないリスクはあるだろう。大量にあるチャンスを外した!というのは言い過ぎだが、どれかを決めていればあるいは・・・と夢をみれるくらいにはコソボにはチャンスはあった。
守備の局面でスペインに対するときにはハーフスペースと大外をどう埋めるかは課題になる。コソボは左右でやり方を変えていたのが印象的だった。右サイドはSHのラシャニが根性で大外をケア。逆サイドの大外はSBのヴォイヴォダがでていったところをCHのドレシェヴィッチを埋める形だった。このドレシェヴィッチが最終ラインに出たり、入ったりするのがうまい。下がりっぱなしだと、バイタルが空きすぎてしまうし、もちろん最終ラインに穴をあけてはまずい。ここをドレシェヴィッチはうまくこなしていた。
横移動を減らし、ズレを作りにくくしたコソボの4-4-2はだいぶ効いていた。スペインは左のユニットであるマルティネス、レギロンの組み合わせはここ2試合の組み合わせと比べるとビルドアップであまり効いていなかったのも大きかった。
だが、スペインもさるもの。押し込んだ状態から細かいパス交換で最後はフォルナルスが仕上げ。前半のうちにコソボのブロックをこじ開けて見せた。
細かい部分においてもスペインはさすが。コソボのCBへのプレスが甘いと見るや、ブスケッツが1列前に出たりなどポゼッションの調整を図っていたし、フェラン・トーレスのクイックネスが一番効いてることを見ると、後半はアダマ・トラオレを入れてみるなど、十分に嫌がらせは出来ていた。
チーム全体の話でいうと、後半のスペインはワンタッチのパスを増やしてテンポを早めに前に運び、コソボの守備ブロックの変形の時間を奪い、判断の負荷を上げていた。
見事な対策を打ったコソボだったが、スペインはもう一段上だった。それでも時折、スペインは背筋を凍る思いをするくらいにはコソボもチャンスを作っていた。敗れはしたが10月以降も楽しみなチームとなったコソボだった。
Pick up player:イブラヒム・ドレシェヴィッチ(KOS)
穴をあけることが少ないブロック守備を形成できたのは彼の判断能力の高さを生かしたシステムが成功したことが大きい。急造感のあるフォーメーションをうまく回す原動力となった選手。
試合結果
2021.9.8
カタールW杯欧州予選 第6節
コソボ 0-2 スペイン
プリシュティナシティ・スタジアム
【得点者】
ESP:32′ フォルナルス, 88′ トーレス
主審:ボビー・マッデン