■ハイプレスに隠された事情
前節、ジョージアに競り勝ちW杯予選史上初の勝利を決めたコソボ。上位に食いついていくためには、ジョージア以外の相手からも勝ち点を奪い取れなければ厳しい。そういう意味ではこのギリシャ戦は試金石となる試合だろう。
一方のギリシャは開幕後2試合で未勝利。スペインはともかく、ジョージアに引き分けのは痛恨で出遅れをここから巻き返していかなければいけない立場となる。
局面としては互いに等しくボールを持つ時間を持てる展開となった。コソボの保持は前節と同じ。ハデルジョナイを片上げする、ややアシメな3バック化。ギリシャに対してサイドを押し上げる。ギリシャの守備はコソボの左サイドにボールがある時は若干厳しめでこちらのサイドからはボールを運ばせないという意思を感じた
コソボの左サイドはこれに対してIHのベリシャが外に流れるなどしてマークを乱しに。高い位置をとるハデルジョナイを生かすために動きをつけていく。逆に右のサイドからはズレを作れずに苦しんでいる感じ。ボールを進めるならば左から運びたいのだろうなと思った。
ギリシャは5-3-2の形をあまり変形させない形でのビルドアップ。これに対してコソボはワイドのCBに対してはWGがマーク、CFのムリキはアンカーを警戒する。ギリシャのWBへのチェック役はIHが出ていき、逆サイドのIHがアンカーのドレシェヴィッチとフラットに並びながら中央をカバー。前線と中央が連動しながらギリシャのバックラインに対してミドルブロックを組み、プレスをかけていく。
ギリシャはCBの中央であるツァベラスが最も時間に猶予を持ってプレーすることができていた。ここから幅を使ったフィードを飛ばせれば、コソボのIHが出てくる前に前進できるのだが、このフィードがどうも決まらない。
コソボは左サイドのズレ、ギリシャは数的優位のバックラインのところから前進のチャンスがありそうな状況だったが、なかなかミドルゾーンからゴール前まで進むことができない。
ズレを生かしてゴールに迫ることが互いにできず、拙攻が続く中でチャンスを得たのはギリシャ。ミドルプレスから引っ掛けたところで、この試合ではなかなか見られなかったカウンターを発動。最後はドゥヴィカスが仕留めて前半終了間際に先制点を獲得する。
後半頭から、リードを得たギリシャはよりタイトにコソボにプレッシャーをかけていく。これまでの時間帯においては最終ラインにあまりプレッシャーを受けない状況で進んでいったコソボだったが、プレスに晒され時間の余裕がないとミスが目につくように。プレス耐性にはやや課題を覗かせたコソボだった。
しかし、ギリシャにもギリシャでハイプレスに打って出る事情がある。撤退した際の守備の強度がどうも怪しい。EUROを優勝したイメージから堅守の印象が強いチームだが、このギリシャはエリア内の対応が結構怪しい。だからこそ、前から捕まえに行かないと守り切れないのだろう。
プレスが弱まったことで前進できたコソボはボールを左右に振りながらエリア内にハイクロスを放り込んでくる。その試みが実を結んだのは後半追加タイム。エリア内に飛び込んだハデルジョナイの折り返しからムリキが同点弾を決めて土壇場で勝ち点を確保した。
2節連続で勝ち点確保に成功したコソボ。次節はいよいよスペイン戦。ハリミが出場停止、ベリシャが負傷交代と厳しい台所事情ではあるが、チームは上昇気流で強豪に胸を借りることができそうだ。
Pick up player:アナスタシオス・バカセタス(GRE)
引き分けた試合はどちらから選手を選ぶか迷ったけど、本文がコソボの話が多めだったのでギリシャから選出。プレスに出た後半の立ち上がりはこの試合において最も力関係が片方に傾いていた時間帯だったし、IHは比較的長い時間ホルダーをチェイスしながらプレスを成り立たせようと奮闘していた。その中でも先制点のインターセプトに絡んだバカセタスをチョイス。
試合結果
2021.9.5
カタールW杯欧州予選 第5節
コソボ 1-1 ギリシャ
プリシュティナシティ・スタジアム
【得点者】
KOS:90+2′ ムリキ
GRE:45+1′ ドゥヴィカス
主審:フランシス・ルテクシエ