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「三笘封じに力を注ぐところから」~2023.5.15 プレミアリーグ 第36節 アーセナル×ブライトン プレビュー

目次

Fixture

プレミアリーグ 第36節
2023.5.14
アーセナル(2位/25勝6分4敗/勝ち点81/得点83 失点39)
×
ブライトン(6位/16勝7分10敗/勝ち点55/得点63 失点45)
@エミレーツ・スタジアム

戦績

過去の対戦成績

 過去5年間の対戦でアーセナルの3勝、ブライトンの5勝、引き分けが3つ。

アーセナルホームでの成績

過去10回の対戦でアーセナルの5勝、ブライトンの3勝、引き分けが2つ。

Head-to-head from BBC sport

Head-to-head
  • ブライトンは直近4回のアーセナルとのアウェイの公式戦で3勝。それ以前の8回の遠征では勝ちがなかった。
  • 今季すでにここまで2回の対戦。エミレーツでのリーグカップではブライトンが1-3で勝利し、12月のプレミアリーグではアーセナルがアメックスで2-4の勝利を挙げている。

スカッド情報

Arsenal
  • ミケル・アルテタはニューカッスル戦でふくらはぎを負傷したオレクサンドル・ジンチェンコの今季中の復帰を除外せず。
  • この試合はキーラン・ティアニーがLSBの先発を務めることが濃厚。ウィリアム・サリバは引き続き欠場。
Brighton
  • ソリー・マーチとアダム・ウェブスターはエバートン戦の負傷で欠場。
  • イヴァン・ファーガソンには4月15日以来の復帰の可能性。

Match facts from BBC sport

Arsenal
  • プレミアにおけるクラブのプレミアレコードとなる26勝まであと1つ。この記録は01-02と03-04に達成しており、どちらのシーズンも優勝している。
  • 03-04の無敗優勝で達成したクラブレコードとなる勝ち点90に到達するには残り3試合で全勝が必要。
  • 直近6試合のエミレーツでの試合は5勝1分で無敗。いずれも3得点以上を決めている。
  • 1950年に達成した7試合連続のホームゲームでの3得点以上の記録に並ぶ可能性がある。
  • 5月に開催されたプレミアでのホームゲームは直近12戦無敗で11勝。唯一の例外は2019年に1-1で引き分けたブライトン戦。
  • 今季の公式戦100得点まであと2つ。
  • 今季のリーグ戦の13のクリーンシートのうち、ホームは3つのみ。これより少ないのはサウサンプトンだけ(1)
  • ウィリアム・サリバがいない試合では勝率50%、平均勝ち点1.9。彼がいる試合では勝率78%、平均勝ち点2.4を記録している。
  • ブカヨ・サカは直近7試合のリーグ戦の出場において6試合でゴールに絡めていない。
  • レアンドロ・トロサールはアーセナルに加入する以前、ブライトンでの115試合の出場で26得点を記録。アーセナルに加入以降は8アシストを決めており、この期間ではトレント・アレクサンダー=アーノルドと並びトップタイ。
Brighton
  • プレミアにおけるクラブの最多勝ち点(55)、最多勝利(16)、最多得点(63)を達成ずみ。
  • 10月のトッテナム戦、ブレントフォード戦に続き、今季2回目のリーグ戦連敗の可能性。
  • 直近3試合のアウェイのリーグ戦で2敗。それ以前の10試合と同じ負け数。
  • トップハーフにいるチームとのアウェイゲームはここまで6戦で1勝だけ。唯一の勝利は開幕戦のマンチェスター・ユナイテッド戦。
  • パスカル・グロスはグレン・ムライとニール・モペイが記録している通算26得点まであと1つと迫っている。
  • イヴァン・ファーガソンはケビン・ガレンとウェイン・ルーニーに続き、プレミアにおいて同一シーズン内にアーセナル相手にホームとアウェイで得点を決めた3人目の10代選手になる可能性。

予習

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予想スタメン

展望

左右のバランスが崩れ、引き起こされる不具合

 ニューカッスル、マンチェスター・ユナイテッドと4位以内を確保しているチームにやや足踏み感が見られる5月上旬のプレミアリーグ。4位争いのフォロワーとしてリバプールと共に先頭集団を走っているのがブライトンである。

 しかしながら、直近のブライトンは内容的にも勝ち点的にも少し苦しい戦いが続いている状況である。その大きな要因はFA杯の躍進および不可抗力の延期によって積み重なった未消化のリーグ戦である。

 5月に戦うミッドウィークのリーグ戦はなんと3試合。しかも、相手はマンチェスター・ユナイテッド、ニューカッスル、そしてマンチェスター・シティとCLレベルの相手がズラリ。実質的に欧州カップ戦と二足の草鞋でリーグ戦を戦っているのとほぼ同等の負荷がかかっている状態ということができるだろう。

 それに伴って負傷者が出てきているのが辛いところ。フェルトマンはスタメンと欠場を繰り返し、ララーナはなかなか復帰することができず、サルミエントやランプティも長く負傷で離脱してしまっている。さらには3点を追いかける展開になったエバートン戦でマーチとウェブスターを失ってしまった。スカッドを最大限活用しているとはいえ、人件費では下から数えたほうが圧倒的に早いブライトンにとってこうした怪我人がダメージにならないわけがない。

 そうした状況の中でなかなかブライトンは普段通りの強みが出せなくなっている。そこに触れる前にまずは今季のブライトンのスタイルを振り返ってみよう。

 基本的なフォーメーションは4-2-3-1もしくは4-4-2。ビルドアップはバックラインが大きく距離をとりながらゆったりとパスワークを回していくスタイルだ。最終ラインの司令塔はダンク。長短のパスを蹴り分けることができる彼かGKのスティールからブライトンの攻撃が始まることが多い。

 CHはビルドアップに積極的に関与する姿勢を見せるが、最終ラインに落ちるほど明確に降りる動きはあまり見られない。むしろ、中央にとどまり相手を背負った状態でも我慢を続けることが多い。そうした状態でも縦パスは飛んでくる。自ら前を向けない状態の時は無理にターンせずにすぐさま出し手にリターンパスを出す。

 そして、次のアングルでボールを受けられるかどうかを探っていく。ポイントはCHより前方にいるCFとトップ下の2人も彼らの背後で同じアクションを繰り返すことである。ウェルベック、マック=アリスター、ファーガソンあたりはバックラインからの直接のパスを収めるポジションを見極める能力と、受けた後のパスワークに定評がある。よって最終ラインには縦パスにCHだけでなくCFもしくはトップ下という選択肢が加わることになる。ジャブとなる縦パスを上下動させながら本命の縦パスを狙っていく。ブライトンのパスワークはそう言った風情のものと言えるだろう。

 ブライトンのCHとCF&トップ下を抑えるには相手チームはCHとCBを動員しなければいけない。すると、ブライトンは動員されたCBの奥にも選択肢を作ることができる。大外から斜めに走り込むWGの三笘とマーチのランである。CFで前に気を取られてしまうと、背後をWGに突かれる。アーセナル的な思い出で言えばマドゥエケに食らった失点のような動きを繰り返すことができるチームといえばいいだろうか。

 よって、ブライトンと対峙する守備は3つの異なる脅威にさらされることになる。CHへの縦パス、CFへの縦パス、そして背後を狙うWGである。

 もっともWGの動きは裏へのランだけではない。大外に張っての働きも十分。1枚剥がし、かつカットインしてのシュートもレパートリーにある三笘とマーチはCFのポストとの相性も抜群。高い位置で1on1の状況になれば迷わず仕掛けてアタッキングサードの脅威になることができる。

 しかしながら、マーチが負傷で欠場している状態ではこのアタッキングサードにおける負荷が三笘にのしかかっている状態になっている。ブライトンのサイドの崩しは大外のWG基準で行われている色が濃く、この2人のどちらかが欠けた状態では機能不全に陥りやすい。

 多くの人数をかけてポジションをぐるぐる回るというよりも大外で勝負できるWGを基準に他の選手がポジションを取ることで強みを発揮している節がある。マーチの不在は右サイドでこうした働きができる選手がいなくなってしまうことを示している。

 よって、現状の三笘は攻撃における比較的早い段階でボールが回ってくることが多い状況。もちろん、そこからでもチャンスメイクはできるのだが、ストライカーの得点力だけでは勝負できないブライトンにとって三笘がゴールの位置から遠ざかる役割に忙殺されているのはやや辛いものがある。三笘へのチャンスメイクの負荷の集中とそれに伴うスコアラーのアタッキングサードへの侵入不足が、今のブライトンが負傷者によって抱えている問題の1つだ。

リーグを代表する両翼として

 というわけでマーチがいなくなってからのブライトンは三笘へのチャンスメイクに依存している感が強い。よって、アーセナルはまず彼を潰すところから逆算して守備のプランを組んでもいいだろう。

 三笘のアタッキングサードにおけるプレーのレパートリーは大きく分けて4つ。ファーからやってくるクロスへのヘッド、エンドライン側へのドリブルからマイナス方向へのラストパス、ファーサイドに送るクロス、そしてカットインからのインサイドの選手との細かいパス交換からの侵入。以上である。

 この4つのうち、初めの2つは対面するホワイトが気合いで対応したいところ。特にエンドライン側へのドリブルはカットイン後のスペースを消すのが難しく、相手がシュートを外してくれるのを祈らなくてはいけない場面も出てくる可能性もある。ホワイトは外を集中的にケアする意識を持ちたい。3つ目のクロス対応はティアニーとガブリエウに頑張ってもらおう。

 4つ目のカットインからの連携にはホワイトが外側のケアに注力している分、MFのスライドで対応したいところ。2列目のサカ、ウーデゴール、ジョルジーニョorトーマスのいずれかがハーフレーンに立ち、三笘がホワイトをドリブルで抜くのに使うであろうコースに立つ。1on2ではなく、1on1の二段構えといったイメージである。ちなみにこのやり方はエバートン戦のイウォビのメソッドの丸パクリである。

 両翼にWGが入れば片側サイドにこれだけリソースをかけるのはリスクがある。だけども、今のブライトンにおいて三笘がチャンスメイクで担う役割の多さを考えたら、これくらいの人員を動員する価値は十分にあると思う。

 自陣をきっちり固めることを優先していい理由はアーセナルのロングカウンターが刺さる可能性が十分にあるから。ブライトンのバックラインは高い位置をとるSBの背後を全てケアできるほどのアジリティはない。中盤のカイセドさえ突破できれば、アーセナルのアタッカーは十分にスピード面で優位を作れるだろう。サイドからきっちり裏をとり、ホルダーと並行にサポートする選手をもう1人作る。ブライトンが近頃苦しんでいるこの形はアーセナルにも十分に再現可能である。

 ただし、ブライトンは即時奪回やプレッシングに積極的なスタンスを見せているチーム。アーセナルとしてはビルドアップには細心の注意を払う必要がある。キヴィオルは安定したパフォーマンスを見せているが、右サイドの押し上げには寄与できていないし、その歪みを解決すべく狭いスペースで受けるアクションを繰り返せるジンチェンコはこの試合ではいない。バックラインからの繋ぎの部分でミスが出ないかどうかには注意したい。ティアニーにはジャカがきっちりとサポートをするアクションが欲しいところである。

 ハイプレスにおいてはブライトンはWGがスイッチになりつつ、CFとCHがそれに追従する形が多い。噛み合わせをずらすことは意識しておきたいところ。場合によってはSBは絞る必要もない状況も出てくるだろう。

 ブライトンのCBは高さがあるため、単なるハイクロスでは破るのは難しい。その代わり、サイドのマッチアップにはアーセナルに分があるだろう。ブライトンの右サイドは選手の入れ替わりによって連携面に難があるし、サカとエストゥピニャンのマッチアップでは前者に軍配が上がるだろう。サイドへの守備のサポートという面でもニューカッスルに比べれば手厚いとは言えない。

 ブライトンの三笘とマーチは今季のプレミアを代表する両翼と言っていいだろう。だが、マルティネッリとサカだって負けてはいない。アーセナルにもリーグを代表するWGが両サイドにいることを改めて知らしめたいところだ。

 非保持においてはCFが前に出ていくのも重要だが、中盤と連携してブライトンのCHを封鎖するのも重要である。ブライトンのCFはポストも上手いため、アーセナルの中盤は後方に挟み込む意識も必要。プレスと後方サポートの使い分けが重要になるだろう。

 今シーズンの終わりがどうなるかにかかわらず、今季のブライトンが素晴らしいチームであることに疑いの余地はない。しかしながら、この終盤においてスタイルを突き詰めてきたからこそ、それを実現できない苦難に直面しているように思う。

 同じく、レギュラーを固定し1つのスタイルを目指してきたアーセナルは今のブライトンの気持ちが痛いほどわかる。望むスタイルに手が届かないのはもどかしい。だからこそ、敵として狡猾にこの状況を利用したいところ。徹底した三笘封じとロングカウンターの組み合わせからブライトンの最も嫌がる展開できっちり主導権を握りたいところだ。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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