たたき続けた扉は最後に開く
破壊力抜群のスポルティングを丸め込み、したたかに準決勝進出を決めたユベントス。おそらく残る4チームの中での「格」で言えば、彼らが一番上ということになるだろう。
そのユベントスに立ちはだかるのはこのELという大会において歴史的に最も成績を残しているクラブであるセビージャ。角度の違う2つの本命が準決勝で相まみえる。
ボールを持つ機会が多かったのはホームのユベントス。3人のCBにGKを絡めたビルドアップでセビージャに対して後方の数的優位を確保する。
セビージャはCFを軸に同サイドにプレスを追いやる形でユベントスのビルドアップを狭める選択肢をとっていた。こういうアプローチは個人的にはユベントスは苦手なのではないかな?と思ったのだけど、粘り強くボールを握りながらプレスの回避を狙っていく。セットプレーから強引にチャンスを作る。
流れの中での攻撃の加速のきっかけになっているのはヴラホビッチのポスト。ここで前を向く選手を作れれば、流れの中からもチャンスができそうな雰囲気はあった。
セビージャは無理にプレスに出ていく必要がないという判断。中盤のタイトさを重視し、強引にインサイドにボールをつけに来たときはカウンターで迎え撃つ。つまり、流れの中からヴラホビッチで加速されることを避けたかったということだろう。
ユベントスは撤退が間に合ったときは十分な強度を発揮することができるが、カウンター対応は怪しさ満載。セビージャの得点もカウンターからワンチャンスをエン=ネシリがものにした流れだった。
ユベントスは後ろに重く守るのが得意というよりも、前に出て行ってボールを狩るアクションが苦手なのだろう。劣勢の時のオプションが備わっていないように見えた。そんな彼らを尻目にセビージャはハイプレスから徐々に手ごたえをつかんでくる。先制点以降はショートカウンターを差し続けたセビージャがペースを握る。
劣勢のユベントスは大外にイリング=ジュニオールとキエーザの2枚を置くことで外に攻撃の基準点を作る。中央に網を張るセビージャの警備が手薄なところに攻撃の主役を持ってきたユベントスは大外+ハーフスペースの裏抜けのコンボからセビージャを徐々に撤退させる。
これに手ごたえを得たユベントスはボヌッチの負傷交代に乗じてミリクを投入して4バックにシフト。前線のターゲットを2枚にする。
このやり方はユベントスに相応のリスクが跳ね返ってくるもの。2トップ+ワイドのサポートの両立に専念すれば、中盤の空洞化が進む陣形になっているので、攻撃をどこまでやり切れるかが重要なポイントになってくる。
セビージャもサイドを狭くしつつ粘り強い裏抜けの対応でなんとか踏ん張る形を作る。カウンターからチャンスを作れれば理想だが、オカンポスが負傷交代しているのは非常に痛かった。
負傷者もあり消耗戦になった終盤、押し込むユベントスは後半追加タイムにガッディがセットプレーから同点に。殴り続けた扉を最後にこじ開けることに成功し、2nd legにビハインドを持ち越さずに90分を過ごした。
ひとこと
後半の捨て身のユベントスと受けきれそうだったセビージャのドンパチは結構見ごたえがあった。オカンポスが負傷しなかった世界線は気になるところだけど。
試合結果
2023.5.11
UEFAヨーロッパリーグ
Semi-final 1st leg
ユベントス 1-1 セビージャ
ユベントス・スタジアム
【得点者】
JUV:97′ ガッティ
SEV:26′ エン=ネシリ
主審:ダニエル・シーベルト