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「FIFA World Cup QATAR 2022 チーム別まとめ」~セネガル代表編~

目次

第1節 オランダ戦

■2つの顔を見せた一戦をオランダが制する

 アフリカ勢で一番手の登場となったセネガル。グループAの本命と目されるオランダとのいきなりの一戦となる。

 両チームとも攻めには手応えを感じる立ち上がりとなった。序盤に特に深くまで攻め込むことができたのはセネガルの方。中盤を中心にマンマーク色が強い守り方をしてくるオランダに対して、セネガルはSBにボールをつけることでオランダのWBを手前に引き出してくる。

 特に右のWBであるダンフリースは遅れてでも前にプレスに出てくるので、オランダの守備の陣形にはズレが生じる。セネガルの狙いはこうした際にできるオランダのWB-CBのギャップ。素早くWGにボールをつけることで広いスペースでも勝負する状況を作っていく。もっとも、左WGのサールに関してはダンフリースを前に引き出すことができなくても1on1で優位に立てていたので問題なかったけども。

 基本的にオランダの守備はコンパクトに守るということに無頓着。特に中盤は広いスペースを恒常的に管理することになっていることが多かった。そのため、セネガルのWGは奥を取るだけでなく、横ドリブルから逆サイドの深い位置まで展開することも可能。カバー役となったファン・ダイクは縦に横に大忙しである。

 一方のセネガルもコンパクトに守れていたとは言い難い。保持におけるベースである4-3-3から4-4-2にシフトする形で非保持の陣形を組んでいたセネガルに対して、オランダは降りていくフレンキー・デ・ヨングで対応。セネガルはフレンキーを全くケアできなかったため、自由自在にボールを運ぶことができる。

 「列に落ちることは後ろに重くなるからとにかく悪」という派閥をたまに見かけるけど、この日のフレンキーほどフリーで無限に運べるならば全く列落ちは問題ない。ボールを持つフレンキーはマリオカートのスター状態のように無敵状態で敵陣に進撃していった。セネガルはそもそも相手が3バックならバックラインに同数で4-3-3の方が守りやすいのでは?という疑念を感じた。少なくともわざわざ4-4-2にする意義はあまり感じなかった。

 オランダの攻め手はフレンキーから大きく左に展開し、ベルフワインとブリントのコンビネーションでの打開する形と、トランジッションにおいて猪突猛進する右WBのダンフリース。しかしながら、アタッキングサードにおける仕上げの部分で存在感を発揮できる選手が不在で、中盤にスペースがある割には決定機に迫る場面を作れず。

 もっとも、これはセネガルにも言えること。こちらは強引なシュートからオランダのDF陣にブロックに遭いまくるという現象の繰り返しとなった。

 後半、プランに変化をつけたのはセネガル。守備を4-5-1に変更し、中盤のスペースを制限。前半のように慌ただしい局面を避けて、フレンキー無双を防ぐことから始まる立ち上がりとなった。

 ボールをキャリーしていたフレンキーとダンフリースは前半は非常にふんだんにスペースを生かしまくっていたので、セネガルのスペースを消してくるプランに対してオランダは勢いを失うことになった。それでもファン・ダイクが延々と競り勝つことができるセットプレーでチャンスを作ることはできていた。

 試合のテンポを落とすことに成功したセネガル。ただ、落ち着いてスペースがなくなる展開がセネガルが攻める局面において助かるわけではない。セネガルはショートパスからのビルドアップができるわけではないので、ロングカウンター一辺倒に。中盤でスペースができる状態が減った分、セネガルの攻めの選択肢もまた減ることになったという感じである。

 後半に生まれたジリジリとした展開を一気に吹き飛ばしたのはオランダ。エリアの外からアーリー気味にクロスを上げたフレンキーのボールに合わせたのはガクポ。セネガルのDFラインの逆を取る一撃で、ついに先制点を手にすることに。

 アタッカーを入れ替えたことでフレッシュになったオランダに比べて、セネガルは時間経過とともに苦しい状況に。リードを得たオランダは落ち着いて試合を支配すると、後半追加タイムにクラーセンが2点目をゲットし試合を決める。

 前半は乱戦、後半は均衡という2つの顔を見せた試合を制したのはオランダ。地力の差を見せて苦戦しながらも白星スタートを飾ることに成功した。

試合結果
2022.11.21
FIFA World Cup QATAR 2022
Group A 第1節
セネガル 0-2 オランダ
アル・トゥマーマ・スタジアム
【得点者】
NED:84′ ガクポ, 90+9′ クラーセン
主審:ウィルトン・サンパイオ

第2節 カタール戦

■猪突猛進のセネガルにまたも網を破られたカタール

 開催国ながらグループステージ敗退の危機に瀕しているカタール。同じく第1節を落としてしまったセネガルと突破の可能性を残すための一騎打ちである。

 個人的にはやや意外だったのだがボールを持つのはセネガルの方。カタールの5-3-2ブロックは隙あらばラインを上げようとはしていたけども、ラインを下げてのブロック形成を優先。セネガルもセネガルで無理に急ぐことはなく、ボールを持つという立ち位置を許容していた。

 セネガルの配置はビッチリとした4-4-2。レーン分け?なにそれ美味しいの?と言った風情できっちりと中央と外に並んでいる姿はなかなかに珍しい。よって、ななめ成分の生み出しは個人のドリブルに委ねられることになる。その役割を担っていたのは右サイドのサール。3センターの脇から5バックに突っ込んでいく形でカタールの守備ブロックの網に突っ込んでいく。

 セオリーとしては相手をろくにずらさずに5バックに突っ込んでいくというのはややイマイチのように思うが、セネガルとカタールのフィジカルの力関係を掛け合わせればセネガルに軍配があがる。相手に捕まっていても突き破りながら進めるセネガルにカタールは手を焼き続ける。この辺りは前節に引き続き、カタールと相手国のフィジカルの差を感じる部分だった。

 前を向かせてしまってはサールの進撃を止めることは難しいと考えたカタールはサールのサイドだけは早めのチェックをかけることを選択。裏を空けるリスクをとってでも高い位置からプレスに行く。

 だが、この日のセネガルは非常に柔軟だった。サールのところに手厚く網を張られるならば、ゲイェとディアのコンビネーションで中央を打開するなど、1つの攻略法に固執することはなかった。

 カタールの前進はセネガルに比べると苦しい。前進には比較的手数がかかる割には味方を押し上げることができずに、突破するための敵が増える一方になってしまう。サイドチェンジも駆使してはいたのだが、敵を同サイドに引き付けずに一発でサイドチェンジをしてしまうため、逆サイドを薄いサイドとして使うことができなかった。

 あわやPKとなったアフィーフの抜け出しのシーンが最もスマートだったと言えるだろう。出し手となったアフィーフが淀みなく前線に進んでいく形でカタールの攻撃がスムーズに加速した場面だった。

 前進がうまく行く機会が少なかったカタールはハイプレスを積極的に仕掛けるように。そうなればセネガルも素早くハイラインの裏を狙う仕様に切り替える。カタールの仕掛ける手に対して、セネガルが非常に早く対応しているのが印象的だった。

 そうした状況で先制したのはセネガル。強引にでもバックラインにつっかければ網を破れる!というこの試合のセネガルを表すような形でカタールのミスを誘発。ディアが先制ゴールを奪う。カタールはバックラインの不安定さがこの場面以外にも散見。GKを代えてもなお不安定さは尽きず、バックラインの出来は足を引っ張ることになってしまった。

 後半早々にセネガルは追加点をゲット。高さの優位を活かしたパワーでさらにリードを広げる。このリードを得たことでセネガルはやや全体的にプレーが雑に。カタールがボールを持ちながら前進ができるようになってきた。

 前節、ポゼッションの際に落ちる動きをしていたアフィーフは今節も落ちてはいた。けども、代わりに12番のブディアフが高い位置に出ていくことができていたので全体のポジションバランスはエクアドル戦よりは取れていた印象だった。

 セネガルは4-3-3にシフト。前節も展開を落ち着かせたい時にはこの4-3-3を採用していたため、彼らにとってはこれが静的なフォーメーションなのだろう。

 ボールを持たせてくれたセネガルに対して、カタールはセットプレー、インスイングで裏に抜ける形のクロスなどいくつかの形からゴールに迫っていく。そして、ようやくこじ開けたのはムンタリ。カタール史上初という歴史的なゴールを決めて、セネガルを追い上げる。

 しかしながら、セネガルは冷静に追加点。右サイドからの仕掛けでカタールのバックラインを破り、三度カタールのゴールをこじ開けてみせた。

 構造的な面白さを見せることはできても、強度の部分で第1節に続き苦しい戦況に陥っていた感が否めないカタール。初めてのW杯は屈辱の最速敗退。早くも今大会の決勝トーナメント進出の目が絶たれることとなった。

試合結果
2022.11.25
FIFA World Cup QATAR 2022
Group A 第2節
カタール 1-3 セネガル
アル・トゥマーマ・スタジアム
【得点者】
QAT:78′ ムンタリ
SEN:41′ ディア, 48′ ディエディウ, 84′ バンバ・ディエング
主審:アントニオ・マテウ・ラオス

第3節 エクアドル戦

■高い身体能力×組織力の掛け合わせで20年ぶりの決勝Tへ

 グループステージ突破をかけた直接対決。エクアドルは目の前のセネガルを上回ることができれば突破が確定。引き分け以上というのが突破の要件となる。一方のセネガルは引き分けでも突破の可能性は数字上は残るが、オランダが複数失点でカタールに敗れるという実現見込みが低い他力が絡む必要がある。こちらも実質目の前のセネガルを上回る勝利を手にすることが突破要件と言えるだろう。

 より厳しい突破要件を持っているチームの方が吹っ切れたパフォーマンスを見せることができるというのはサッカー界のあるあるである。この試合もこのあるあるに則り、のびのびとパフォーマンスをしていたのはセネガルの方だった。

 セネガルはボールを奪うと素早く縦に。左サイドはハーフスペースの裏抜けからパブ・ゲイェが飛び出してエリア内に侵入。折り返しからチャンスメイクを作っていく。右サイドはシンプルに大外の裏抜けを重ねる形で突破していく形である。

 前節のカタール戦でもそうだったが、セネガルは理屈の上では突破できない状況でも運動能力の高さで解決してしまう場面が多い。この試合でも右サイドでは大外に縦に並んだSB→SHのパスで抜け出してエクアドルのサイドをエグるという現代サッカーのポゼッションにおける攻略としてはあまり見ないルートでチャンスを作り出していた。

 セネガルのゴリゴリにエクアドルは対応しきれなかった。メンデス不在による4-3-3へのシフトも裏目でセネガルはカットインからアンカー脇のスペースに侵入を繰り返すことができていた。

 一方のエクアドルは攻め手が見つからない。セネガルのプレスはマンマークともゾーンともつかないものだが、IHとWGが前向きの矢印を気まぐれに出してくるスタンスに手を焼いていた。4-3-3で後方の人数不足による引っ掛けが多発していたため、途中からカイセドが低い位置に降りてプレスの脱出をサポートするように。これによりミドルゾーンまでボールを運ぶ頻度が増えたエクアドル。しかしながらアタッキングサードに繋ぐ段階でパスミスが出てしまい、セネガル陣内の広大なスペースを打ち壊すまでには至らない。

 セネガルのバックラインは組み立ての危うさはあった。だが、エクアドルがそもそも前に出ていけない状況だったことに加え、セネガルが迷いなく前に放り込むことができていたため、彼らの足元の組み立てはアキレス腱にはならなかった。

 そうした中で先手を奪ったのはセネガル。エリア内で倒されたサールが自ら決めて突破に必要なリードを奪う。PK判定自体はやや微妙な印象を受けたが、アバウトなボールでも前に出ることができるセネガルの強みが出た場面とも言えるだろう。

 後がなくなったエクアドル。後半にシステムを4-4-2に変更。セネガル相手にリスク勝利で間延びしつつもダイレクトに2トップに当てる形で前進を狙っていく。

 しかしながら、セネガルはしたたか。前半とは異なり、前に出ていくことを抑制した4-1-4-1で中央を封鎖し、エクアドルの攻撃の動線をサイドに限定。右サイドからのプレシアードのオーバーラップもヤコブスが封じており、うまく丸め込むことができていたと言えるだろう。

 苦しいエクアドルだが、セットプレーの好機を活かして先制する。決めたのはカイセド。ニアでのフリックをファーで待ち構える形で同点を奪う。これにより、再び2位はエクアドルのものになった。

 しかしながら、すぐにセネガルはやり返す。こちらも負けじとセットプレーでの反撃。FW顔負けのボレーを決めたクリバリにより、セネガルは再び前に出ることに成功する。

 以降はエクアドルがうまくセネガルに丸め込まれてしまった。セネガルは前に出て行ける時と構える時のメリハリが見事。正直、ここまでの戦いは大味な印象が先行していたセネガルだったが、この試合の後半は出ていくところと控えるところのさじ加減が絶妙。これまでには感じられなかった組織的な意思統一の強固さを感じさせる試合運びだった。

 CFからサイドに配置を変えたディアは対面のエストゥピニャンを簡単に手玉に取っており、背負ってはターンを決めまくる。セネガルがリード後にも受け身一辺倒にならなかったのは彼の功績が大きい。

 最後のエクアドルのパワープレーもクリバリとメンディを中心に跳ね返してみせたセネガル。終了のホイッスルは20年ぶりの決勝トーナメント進出を決める合図となった。

試合結果
2022.11.29
FIFA World Cup QATAR 2022
Group A 第3節
エクアドル 1-2 セネガル
ハリファ・インターナショナル・スタジアム
【得点者】
ECU:67′ カイセド
SEN:44′(PK)’ サール, 70′ クリバリ
主審:クレマン・トゥルパン

Round 16 イングランド戦

■安定したビルドアップと斬れ味抜群のカウンターで完勝

 ここまでは全て首位通過した3チームが勝利しているノックアウトラウンド。B組首位のイングランドは列強に続けるかどうか、エクアドルとのしばき合いを制したセネガルとの一戦に臨むことになる。

 どちらのチームに関してもまず目立ったのはボール非保持。中盤より高い位置でボールを奪い、敵陣の方向にボールを押し込んでいく意識が強く見られた。

 イングランドはWGが積極的なプレッシャーをかけて、セネガルのバックラインから時間を奪っていく形を狙っていく。セネガルのバックラインはプレス耐性が弱く、イングランドのプレッシングにうまく対応ができない。サカの外切りプレスに対して、頭を越すパスをつけることができれば反撃はできるのだが、そうした足元の技術をセネガルのバックラインに求めるのは酷。GKのメンディが思ったようにパスをつけられないのはプレミアではお馴染みの光景である。

 そうした時にロングボールを使って前線の身体能力に任せることができれば大きいのだが、セネガルの前線はなかなかイングランド相手のバックラインに対して優位が取れない。イングランドはマグワイアのところが崩れかけるシーンもあるのだが、セネガルの前線の選手たちはゴリっと反転を狙うので、抜かれたとしても遅らせることさえできれば周りのカバーでなんとかなることが多かった。

 前進のメカニズムがより整っていたのはイングランド。2CBにウォーカー、ライス、ショウの3人が2-3の形で並びセネガルの前4枚に対して数的優位を作る。キーになるのはウォーカー。セネガルの2トップがハメてくるならば、ラインを1列下げることでCBと並んでボールを引き出すし、2トップがアンカーを受け渡すならば1列前に入る。

 ややインサイドに絞ることができれば、ヘンダーソンが外に開いてボールを受けることも。ウォーカーの列調整もヘンダーソンの外流れもクラブでお馴染みの光景である。2-3と3-2を使い分けるウォーカーの器用さはビルドアップに非常に役に立っている。

 セネガルに対してビルドアップ隊は基本的に数的優位を維持。バックラインからの組み立ては非常にスムーズでイングランドは前進をすることができていた。同サイドにボールを追い込んでシスのところでボールを奪い取ることができればセネガルにもショートカウンターの目があるが、イングランドはそうしたルートに頻繁には追い込まれずにビルドアップをすることができていた。

 先制点はイングランド。数的優位の左サイドのビルドアップ隊にケインが絡んできてポストプレーを行う。追い越す形でポストを受けたのはベリンガム。一気に攻撃を加速させてゴール前まで入り込むと、マイナスで待ち構えていたのはヘンダーソン。両IHの攻撃参加によって先手を奪う。

 2点目も主役になったのはベリンガムだ。セネガルの中盤からボールを奪うと、カウンター発動のための密集を脱出したのが彼である。ボールを前に運ぶと、フォーデンにボールを渡して最後はケインがゲット。前半のうちに追加点まで奪う。

 セネガルからすると中盤のシスの前がかりなロストが想定外。この時間帯は右サイドのサールがウォーカーとのマッチアップで可能性を見せていただけに、2失点が重たくのしかかることとなった。

 2点リードを奪ったイングランドは淡々と試合を運んでいく。セネガルが3枚ハーフタイムで選手を代えようと、システム変更的な対応はしてこないため、ボール保持を優先としたプレー選択をすることができれば、時計の針は問題なく進めることができる。

 攻撃においてもセネガルは傾向は変えることができず。独力で突っ込んで行っては跳ね返されてしまい、カウンターを食らうことになる。決め手となった3点目は比較的早く決まることとなった。セネガルの攻撃を受け止めると、ショウの縦パスからカウンターが発動。ケインのポストからフォーデンにボールがつながり、最後はサカがゲット。セネガルの気持ちを完全にへし折る追加点を決めてみせた。

 どうにかして一矢報いたいセネガルだが、きっかけを掴むことができない。前半は攻めのきっかけとなっていた左サイドのサールも、交代でラッシュフォードの登場から2枚で対応されるように。前線が献身的にプレスバックをすることができる選手が揃っているのはサウスゲート就任以降のイングランド代表の強みである。

 最後までセネガルに壁になり立ちはだかったイングランド。攻撃を受け止めての切れ味抜群のカウンターでセネガルに完勝。一段上の試合運びでベスト8に駒を進めた。

あとがき

 セネガルからすると相性が悪い相手だったなと思う。GSで見る限り、彼らの強みは相手が敷いている網に引っかかった場合の強引なぶち破り方である。強度自慢のイングランドというのはくじ運が悪かったように思う。多少システマティックな相手でも馬力で勝れるチームならワンチャンスはあったかもしれない。

 イングランドはそうした馬力勝負に耐えれたことに加えて、クラブで学んでいることをビルドアップで還元できているのはいい流れである。この試合で言えばヘンダーソンやウォーカー、フォーデンはそれに当たると言えるだろう。選手の入れ替え方も理想的でライスとケイン、ショウ以外の戦力はプレータイムを分割しながら勝ち進めることができている。次ラウンドのフランス戦ではいよいよその力の真価が問われることになる。

試合結果
2022.12.4
FIFA World Cup QATAR 2022
Round 16
イングランド 3-0 セネガル
アル・バイト・スタジアム
【得点者】
ENG:38′ ヘンダーソン, 45+3′ ケイン, 57′ サカ
主審:イヴァン・バートン

総括

■トレンドと逆行の猪突猛進網やぶりスタイル

 今大会はアフリカ勢の近代化が著しく進んでいることが記憶される大会になることはもはや確実。そうしたトレンドにおいて明らかに異質な存在といえるのがセネガルだ。

 4-4-2と4-3-3というメインパターンのフォーメーションを四角四面にとらえるスタンスは非常に珍しく、可変システムってなんですか?楽しいんですか?というような内容で相手に立ち向かっていた。変化を付ける成分はWGの斜め方向のドリブルか、IHのハーフスペースへの裏抜けくらいなもの。よって、非保持側からすると比較的網を張りやすいタイプのチームだといえる。

 しかし、張っている網にかかりまくっている状態でベスト16を取れるほどW杯は甘くない。セネガルは網を張っているところに突っ込みながら蹴破ることでここまでの進撃を見せてきたチーム。盤面上はハマっていたとしても、ターンやドリブルで強引に対面の相手を抜き去り、作戦盤には存在しないはずの穴を作り出して見せた。

 カタールとの一戦はまさに象徴的だった。網を張り続けるカタールをセネガルがぶち破り続ける姿には前者がグループステージ敗退に追い込まれ、後者がノックアウトラウンドに進出した理由を非常にシンプルに表していた一戦といえるだろう。一方で、グループ最終節のエクアドル戦では勝ち越しゴールで突き放した後は、ゆったりとボールを持ちながら相手の攻撃をいなし続けるなど大人の一面も見せていたことも付け加えておきたい。

 それだけにノックアウトラウンドの初戦でイングランドにぶち当たってしまったというのは不運でしかない。セネガルのプランが通用するのはあくまでフィジカルの側面で優位が取れる相手に限った話である。グループステージで食いつくことが出来たオランダがおそらくギリギリのラインだろう。

 イングランド人のバックラインにとってはセネガルの前線を擁する馬力のチームと戦うのは日常茶飯事のことである。そうなってしまうと、セネガルの強みは日常の範囲内になってしまう。持ち味であるバレてても突き破る!が全く通用しなくなると、イングランド相手に通用せずに動けなくなってしまったのは大いなる反省点であろう。

 単に強くなるということでいえば、多様な局面に対応できるチームを志向して柔軟な戦い方を選べるような形で成長していくのが理想的。ただ、現状ではそういう方向で伸ばしていくイメージは思い浮かばない。規律の部分と、いわゆる野生の部分でどこにバランスを取るか。セネガルにとっては向こう十数年向き合っていくべき課題になるだろう。

Pick up player:カイドゥ・クリバリ
クリバリの活躍でのグループステージ突破を想像した居た人は少なくないだろうが、フォワード顔負けのボレーで決勝弾を決めるという形でというところまで想像できた人がいればそれはもう未来人でしかない。

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