モウリーニョで燃えるローマをELマイスターが鎮火
欧州をまたにかける3つのカップのファイナル。先陣を切るのはヨーロッパリーグである。カップ戦のリニューアル後は圧倒的にこのコンペティションの強者であり、ELマイスターと名高いセビージャが3つのファイナルすべてにチームを送り込んだイタリア勢からローマを迎え撃つ一戦である。
互いにかみ合わないフォーメーションということで高い位置からボールを持つ動きは積極的に仕掛けなかった両チーム。どちらかといえば行きっぷりを見せたのはセビージャの方か。バックラインでボールを回す相手に対して、2列目から時折プレスに出ていくことがあった。スイッチ役になることが多かったのは右のSHのオカンポスだった。
だが、基本的にはきっかけをつかめなければセビージャはリトリートが優先。先に名前を挙げたオカンポスも含めて、大体は上がってくるローマのWBに合わせて自陣に戻るアクションが多かった。
中盤はその分人を捕まえるアクションが豊富。ローマはサイドからの前進を余儀なくさせられる。右サイド、ディバラのドリブルからの下げるアクションで相手を押し下げるとバイタルに入り込んだスピナッツォーラがミドルを放ってゴールを脅かす。
だがこうした定点攻撃からのチャンスは少ないものだった。基本的にはエイブラハムの機動力を軸としたトランジッションの方が有望。ボールを動かしながらのチャンスメイクではそこまで多くのチャンスを迎えられなかった。
セビージャが攻撃に回っても同じ形。外を回してのクロスが多く、インサイドに入り込むことができないという苦しい状況。セビージャにはエン=ネシリがいる分、やや強引な放り込みでも構わないが、ボックス内のローマのCBは跳ね返しが優秀。入れるだけに簡単にチャンスができるわけではなかった。
チャンスは少なく、ロングボールのコンタクトでよく試合は止まることが多い展開に。じりじりとしたチャンスが少ない流れで試合を動かしたのはトランジッションだった。ラキティッチのところからクリスタンテがボールを奪うと、発動したカウンターを沈めたのはディバラ。これでローマが先手をとる。
得点をきっかけに試合の流れが大きく変わることもない静かな試合だった。もっとも小競り合いは起きていたので静かとは程遠いけど。手の打ち合いのような試合にはならなかったという意味である。
セビージャはビハインドで迎えた後半にも地道にサイドからのクロスで切り崩しを狙っていく。ローマは後半に5-3-2ブロックを採用。さらに後ろの重心を固めてリードを守り切ろうとする。
早い段階でセビージャに欲しかった結果が出たのは大きかった。右サイドのクロスからボックス内の対応で踏ん張り切れなかったマンシーニがオウンゴールを献上。やはり、エン=ネシリを向こうに回しながらの空中戦対応はハードなのだろう。不十分な体勢のせいでボールをきっちりコントロールができなかった。
得点後もセビージャはサイドからのクロスでローマを押し込んでいく。ローマは高い位置に出ていこうとするが、これも早い段階でセビージャにとがめられてしまい、なかなか陣地回復のきっかけを見いだせない。
共にチャンスにたどり着く前にはファウルで潰しあいに発展する場面が徐々に目立つように。ベンチからそれを煽るモウリーニョという構図はいかにも彼がいるファイナルという感じ。会見はともかく、待ち伏せして文句という試合後の振る舞いは褒められはしないが、試合中のエネルギーの注入の仕方は彼らしいなとは思った。
そういうわけで両チームともこれ以降のチャンスはほとんどがセットプレーに集約されることに。混戦からイバニェスが押し込めなかったり、ペッレグリーニのスルーパスに抜け出したペロッティが決定機を迎えたりなど、可能性を感じさせたのはローマの方だった。
だが、セビージャはそもそも前進の機会が多かった。ローマが前からのプレスに出てきても落ち着いて対応。むしろ、スペースがある中での攻め込むチャンスという形で好機に変換していた。
小競り合いとセットプレーが目に付く試合は延長戦でも決着がつかず。PKまでもつれ込んだ試合を制したのはセビージャ。ELマイスターの名をほしいままにするスペインの雄がタイトルと来季のCL出場権を勝ち取った。
ひとこと
モウリーニョがカップ戦の決勝に出てくるとやっぱり盛り上がるね。
試合結果
2023.5.31
UEFAヨーロッパリーグ
Final
セビージャ 1-1(PK:4-1) ローマ
プスカシュ・アレーナ
【得点者】
SEV:55‘ マンシーニ(OG)
ROM:35‘ ディバラ
主審:アンソニー・テイラー