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「Catch FIFA World Cup QATAR 2022」~Day 4 ハイライト~ 2022.11.23

目次

【グループF 第1節】モロッコ×クロアチア

■整備された守備の賜物か、最後の局面の整備不足か

 どちらのチームもフォーメーションは3センターが逆三角形型に並ぶ4-3-3。ミラーのようでミラーでないフォーメーションの組み合わせで両チームは対峙することになる。

 相手にボールを持つことをより許容していたのはモロッコの方。トップのエン=ネシリのプレスの開始位置はアンカーのブロゾビッチが中心。クロアチアのCBにはボールを持たせる格好になった。

 モロッコほどではないにしてもクロアチアのプレッシングもそこまで前がかりではない。中盤からモドリッチが飛び出して前線のプレスに加わるパターンはあるものの、この辺りは決まりというよりモドリッチにタイミングを託されたアドリブ色が強いもの。レアル・マドリーでも見られる「いけると思ったら行ってもいいよ」くらいの制約のものだと思う。

 よって、まずは問われるのは互いの保持による解決能力である。モロッコのプランは外からボールを回していく形である。どちらのチームも基本的にはインサイドを閉めて、外でボールを回されることは許容していく形だったので、モロッコがボールを回す形を作るのはそこまで難しいことではなかった。

 サイドの崩しの主役となったのは右サイドのツィエク。パス交換からの動き直しからフリーになり、クロスを上げる間を取りながらPAにボールを放り込んだり、あるいは逆サイドに展開したりなど攻撃の起点になっていた。同サイドには大外を駆け上がることができるハキミもおり、モロッコは明確にこちらのサイドが強みという格好になる。

 しかしながら、この縦関係を強みにするための整備にはもう少し時間がかかるように見えた。ハリルホジッチ解任まで代表から長らく離れていたツィエクにとっては少し猶予が必要だろう。長いボールを蹴ることを囮としながら、ハキミの推進力を活かす形を作ることができるのはまだ先の話になるはずだ。

 クロアチアの保持はそれでも固めている中央でズレを作ろうというもの。CBがボールを運びながらモロッコの中盤を引き出し、空いたスペースにクロアチアの中盤が入り込みボールを引き取る。

 このプランを遂行するにおけるクロアチアの強みは3CHが均質的な役割をこなすことができること。どの選手も低い位置からボールを引き取ることができるし、ポジションをサイドや高い位置に動かしてもプレーができる。その分、個人個人が移動距離を長くしても許容ができる。その分、モロッコの中盤は受け渡すかついていくかを悩む部分が出てくるようになる。

 クロアチアは非常に慎重に試合を運んでいたため、中盤の選択肢の優先度はロストをしないポゼッションだった。その分、高い位置で前を向くトライは控えめ。前線や高い位置のサイドとの連携は薄く、ポゼッションからチャンスを作るのは難しかった。彼らがチャンスを作ったのはむしろ高い位置からモロッコの保持を引っ掛けたカウンターからの方が多かった。前半終了間際の大チャンスはクロアチアとしてはきっちり決めたかったところだろう。

 スコアレスで迎えた後半の頭、高い位置からプレスに行くようになったのはモロッコ。プレスを受けてもなお繋ごうとするクロアチア。近い位置でショートパスを繋いでのトライはモロッコのプレスに引っかかり、なかなか自陣から脱出することができない。後半の立ち上がりはクロアチアが中盤で捕まるシーンが多く、モロッコは敵陣内でプレーする時間が長くなった。セットプレーも含め、後半の立ち上がりはモロッコに最も得点のチャンスがあった時間帯と言っていいだろう。

 しかしながら、後半の立ち上がりを凌ぐと徐々にクロアチアがポゼッションを取り戻していく。中盤の移動は前半以上に多く、特にアンカーのブロゾビッチの左右に顔を出すことが増えるようになった。

 時間帯が進んでもバックラインが高い位置のチェイシングをやめなかったのもクロアチアの方だった。敵陣でプレーする機会を増やすための手助けになった。モロッコは試合終盤はこのクロアチアのハイラインを打ち破るロングカウンターに専念することになる。

 前後半を通じて、敵陣までは迫ることができてもそこからこじ開けることができなかった両軍。それが両チームのアタッキングサードにおける整備不足なのか、はたまたバランスが簡単に崩れない規律正しい守備の賜物なのかは残りのグループステージで答えが出るはずだ。

試合結果
2022.11.23
FIFA World Cup QATAR 2022
Group F 第1節
モロッコ 0-0 クロアチア
アル・バイト・スタジアム
主審:フェルナンド・ラパリーニ

【グループE 第1節】ドイツ×日本

【グループE 第1節】スペイン×コスタリカ

■波乱続きのカタールを黙らせる衝撃の大勝

 2強2弱というグループの構図は早々に崩れたグループE。ドイツには続きたくないスペインの初戦はプレーオフを制してカタールにたどり着いたコスタリカである。

 コスタリカのフォーメーションは4-4-2。2トップでアンカーを受け渡しながら後ろは4-4ブロックで守るというやり方でスペインを迎え撃つ。スペインはサイドから大外を基準にポゼッション。両サイドでトライアングルを作りながらコスタリカの攻略に取り組んでいく。

 コスタリカの4-4ブロックの中で異質だったのは左のSHであるベネット。ブロックの中からかなり早い段階で飛び出し、スペインのバックラインを捕まえに走る。その分、後方のブロックの負荷は増大。SBのオビエドが孤立するという状況を招く。

 そうしたキャラクターが不在なコスタリカの逆サイドはむしろCHのスライドが気になる部分。同サイドに閉じ込めるという観点で言えば、そのスライドは正解なのだけど、スペインほどのスキルを持っているチームならば簡単にサイドから脱出できてしまう。

 「ボールが蹴りにくいのかな?」と思うほど、この大会はここまで長いレンジのパスがスムーズではないチームばかりだった。しかしながらこのスペインは別格。ミドルレンジのパスを使いながらサイドと中央を器用に移動させてボールを操っていた。

 スペインが攻略の狙い目にしたのは左サイドからの横パス。すなわち、コスタリカのCHがスライドするサイドである。その分、空いているバイタルに待ち構えているのはアセンシオを軸に、横パスをこのエリアでフリーで受けることでPA内侵入の足がかりにする。

 1点目、このエリアに侵入してみせたのはガビ。相手に引っ掛けながらもダニ・オルモの先制ゴールをアシストしてみせた。2点目はアセンシオがミドルでこの位置から沈める。スペインは20分足らずであっさりと2点リードを奪ってみせた。3点目はPK。デュアルテのトリッピングでスペインにPKが与えられる。

 サイドを起点に自在な出し入れを行い、即時奪回で敵陣でプレーし続けたスペイン。前半のうちに日本に続くアップセットの可能性を完全に潰した状態でハーフタイムを迎える。

 コスタリカは前半の途中から5-4-1に移行。ミドルゾーンである程度構えながら我慢しようとするが、奥行きを使いながら裏抜けを増やすスペインにとっては大した問題ではない。広がるMF-DFのライン間は自在に使えるし、コスタリカのバックラインはオフサイドを取るのに苦労していたからである。

 ならば!と後半はワイドのCBが迎撃を強化するコスタリカ。しかし、これはコスタリカがラインを整える難易度がさらに上がっただけ。パスの受け手を捕まえたとしても、問題なくワンタッチでいなしてしまうスペインにとってはこのコスタリカの迎撃はそこまで大きな意味がない。左サイドでコスタリカのバックラインを誘き寄せたスペインはサイドを変えて、フェラン・トーレスがこの日2点目となるゴールを決める。

 ここからは完全にスペインのゴールショーという展開と言っていいだろう。5点目はガビが才能を世界に示すスーパーなボレー。ゴールなしでもスーパーであることを示し続けた若武者が、掛け値なしのスーパーゴールで自らの価値をさらに高めてみせた。

 以降は主力を休ませながら、コンディションに不安のある選手のテストを積極的に行っていくスペイン。右サイドから感触を確かめるように裏抜けを繰り返していたモラタは印象的だった。

 ソレール、モラタが得点を決めてゴールショーの幕を閉じたスペイン。圧巻の7ゴールと、コスタリカにシュートを許さなかった支配力で完勝。波乱が続いていたカタールの舞台を黙らせるように、世界にその実力を改めて知らしめてみせた。

試合結果
2022.11.23
FIFA World Cup QATAR 2022
Group E 第1節
スペイン 7-0 コスタリカ
アル・トゥマーマ・スタジアム
【得点者】
ESP:11′ ダニ・オルモ, 21′ アセンシオ, 31′(PK) 54′ フェラン・トーレス, 74′ ガビ, 90′ ソレール, 90+2′ モラタ
主審:モハメド・アブドゥラ・モハメド

【グループF 第1節】ベルギー×カナダ

■序盤の猛攻を受けきり強かに勝利したベルギー

 4日目の最後はグループFからベルギーが登場。突破の本命である彼らだが、序盤のこの試合の主役はベルギーではなく対戦相手のカナダの方だった。

 比較的、初戦は慎重な入りをするチームが多い中、この試合のカナダの立ち上がりは異彩を放っていたと言ってもいいだろう。高い位置からのプレッシングから縦に鋭いカウンターなど、カナダは強度に全振りするかのようなスタート。その強度はベルギーを飲み込んでしまう勢いだった。

 特に強烈だったのはワイドの選手のスピード。左のデイビスはお馴染みだろうが、右サイドのラリアもなかなかのインパクト。システム的に右サイドはジョンストンがSBロールをする分、WBのラリアが高い位置で働くことができたのも重要なポイント。ベルギーはこちらのサイドのマッチアップがアザール、デ・ブライネという守備の規律を大事するタイプではなかったため、オーバーラップしたジョンストンに押し出されるようにラリアが抜け出す形でアタッキングサードに入り込むことができていた。スピードだけでなく構造的にも攻め込むことができていた。

 両WBの勢いを引き継ぐように、3トップもアタッキングサードで躍動。シュートを放ち、ベルギーのゴールマウスを脅かす。しかし、そこに立ちはだかったのはクルトワ。平時のシュートだけでなく、ハンドから得たPKまでストップ。強力な壁としてカナダの前に立ち塞がる。デイビスにとってはなんとしても決めたいチャンスを逃してしまう形であった。

 強度に飲み込まれたベルギー。守備においては対面の選手をシンプルに捕まえられない状況が続き苦しい展開ではあったが、クルトワに助けられてなんとか序盤の苦戦を凌ぐ。

 バックラインの3枚+中盤の3枚でのベルギーのビルドアップはカナダのプレス隊に対して、1,2枚多い状況が多かった。攻撃の主役になったのはデ・ブライネ。ベルギーの攻撃の起点のほとんどは彼のドリブルからスタート。攻撃が機能していなかったわけではないが、ここまでのチームの中でもかなり個人への依存が高い状況だったのはやや気になるところである。

 それでも先制点をゲットしたのはベルギー。アルデルワイレルドのフィードから抜け出したバチュアイがゴールに押し込む。後方で数的優位を作れていたベルギーとしてはフリーの選手を作れることと、カナダの高いラインをうまく利用した格好。ホルダーをフリーにするハイラインは危ないという定石を活用してしたたかに先手を奪う。カナダはCBのヴィトーリアの対応が少し気になった場面だった。

 リードを奪われたカナダは後半強気の立ち上がり。マンマークの成分を高めながらベルギーに高い位置からプレッシャーをかけていく。前半ほど余裕がなくなったベルギーではあったが、その分スペースができた中盤でフラフラするデ・ブライネのボールを受けるスキルの高さはさすが。一度ボールがつながりさえすれば、敵陣深くまで間違いなく運んでくれるという信頼度の高さもリードしているチームにとっては大きなポイントになる。

 ベルギーは非保持においてはアザールを明確にワイドにおく5-4-1に変化。噛み合わせを重視し、前半にやられていたサイドのケアを手厚くする。カナダは前半振り切ることができていた1対1でのスピード勝負で徐々に優位に立てないように。この辺りは前半の立ち上がりでエネルギーを使った影響も否めない部分だろう。

 加えて、愚直に裏を狙いすぎたのもカナダにとってはあまりいいことではなかった。直線的に急ぎすぎてラインの裏を執拗に狙うチームは、この大会では苦しむ傾向が強い。カナダのこのパターンにハマってしまった格好。2枚選手を交代し、4-1-4-1にしてからはややコンビネーションから一息おきながら攻め込むシーンも増えたが、ベルギーのゴールを再び脅かすには少し時間が足りなかった。

 序盤の劣勢を凌ぎきり、先制点を掠め取って強かに試合を運んだベルギーがカナダのフレッシュさをいなして開幕戦に勝利。大舞台での存在を高めてきた経験の賜物なのだろうか。

試合結果
2022.11.23
FIFA World Cup QATAR 2022
Group F 第1節
ベルギー 1-0 カナダ
アフメド・ビン・アリー・スタジアム
【得点者】
BEL:44′ バチュアイ
主審:ジャニー・シカズウェ

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