エースのゲームメイカー化でHT前に解決策を見つける
EURO予選は4連勝中のイングランド。敵地でウクライナを下せば本戦出場というミッションに大きく近づくことができる。
試合はイングランドがボールを保持する形でスタート。3バックを基調に左はチルウェル、右はサカが幅を取る形でウクライナの4-2-3-1の破壊にトライする。
バグとして仕込まれていたのは左のハーフスペース。IHのベリンガムとWGのマディソンはともにこの位置を中心にポジションを取り、ビルドアップには関与してこない。縦関係を頻繁に変えるこの2人への対応にはステパネンコやスダコフを中心にウクライナは手を焼いていた印象である。
左で詰まれば右でも勝負できるのがイングランドの強み。左ほどボールプレイヤーは多くはないが、サカという大駒がいれば大外から1on1を仕掛けることは十分できるだろう。
アタッキングサードでの攻略という部分では心許ないところがあるイングランド。だが、ボールを回収し続けることができたので、このままトライできればOKという思いはあったはず。
このままではまずいと思ったのはウクライナ。延々とボールを持たれるターンが続き、数少ない自陣からでの保持でも手応えはない。というわけで中盤のヘルプを強化してプレッシングの枚数を増やそうという修正策に出ていく。
ウクライナの前向きなプレスの姿勢に対して、イングランドはやや後手を踏む。ビルドアップの枚数をあまり最低ないイングランドは中盤の長い距離のパスをカットされながらカウンターを受ける機会が増えていく。
ペースを掴んだウクライナはワンチャンスから先制。カウンターから右サイドのツィガンコフにボールを預けると、追い越す形でオーバーラップを仕掛けたコノプリャーをイングランドは食い止めることができず。折り返しからジンチェンコが仕留めて先制する。イングランドは自由な配置の左サイドがややプレスバックの規律が乱れた隙をつかれてしまう。
マディソンはこの先制点前後からやや波に乗れていない様子。保持では決定機でコントロールが乱れ、激しいタックルから警告を受けてしまう。格好のアピールの場だが苦しい前半となった。
ビハインドのチームを救ったのはケイン。再びプレスラインを下げたウクライナに対して、ブロックの外でゲームメイクに参加すると、右サイドから斜めにPAに侵入するウォーカーにタッチダウンパス。あっという間に同点に。
以降もケインは降りてきては右のサカに大きく展開するなど、エースがゲームメイクに目覚めるという形でイングランドはハーフタイム前に解決策に辿り着く。
後半、タイスコアに戻ったこともあり、前半の立ち上がりに盤面は戻った感がある。後方は3バック+ライスで組み立てはOKというのがイングランドのスタンス。高い位置からのプレッシングにより勢いよく出ていくくらいだろう。
ウクライナは保持の方から右サイドを突っついていくスタンス。敵陣に入っていく部分はトップにドフビクが入ってからはカジュアルになっていった印象で、ロングボールからお手軽な前進ができるようになった。
イングランドも左の大外に交代で入ったラッシュフォードを構えさせる形を採用。右のサカもゴールに近づいておりイングランドもサイド攻撃から活路を見出しにいく。しかしながら両軍ともに仕上げの精度に欠けており、ネットを揺らすことができない。
ジンチェンコを下げて以降はウクライナが5バックを活用しながら撤退守備を強化。これにより、試合はさらにクローズドに。イングランドはゴールをこじ開けることができず、重心が下がったウクライナは前進をムドリクにベットした感があったが、こちらもカウンターからの有効打は打てず。試合は痛み分けで勝ち点1を分け合った。
ひとこと
コンペ的な見立てをするのであれば、イングランドはここは引き分けでOKだろう。マディソンは立場を確立する絶好機を逃した感があるが、リーグで今の出来を続けることができれば、またすぐにチャンスが回ってくる気もする。
試合結果
2023.9.9
EURO 2024 予選 グループC 第5節
ウクライナ 1-1 イングランド
ヴロツワフ市立競技場
【得点者】
UKR:26′ ジンチェンコ
ENG:41′ ウォーカー
主審:ギオルギ・カバコフ