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「3回目のオファーから本気出すから」〜アーセナル 個人レビュー2022-23 GK&DF編

 毎年恒例!選手の個人レビューだ!早速GKとDFから!

目次

GK

アーロン・ラムズデール

更なるスケールアップが見えた一年

 アーセナルを支えた守護神は昨シーズンよりも明らかにスケールアップした1年を過ごしたといえるだろう。短期的にコンディションが落ちる時期もあったり、ここは止めてほしい!と思うシュートを止められなかったりなど、不満がないパフォーマンスだったわけではない。

 しかしながら、圧倒的に救われる回数の方が多いのも確かであり、少ない守備機会という難しい状況もなんとか救い、今年も多くのアーセナルの勝ち点奪取に貢献したといえるだろう。

 成績もさることながら熱い思いを体現するタイプというのも今のチームにあっている。勝利した時のファンの鼓舞や、契約延長を決めた時のメッセージなどアーセナルファンにはそのストレートな感情表現がぶっ刺さりまくっている。

 加入前の評判はなかなか厳しいものもあったが、彼がアーセナルの守護神に君臨したことで何人のアーセナルファンが彼にごめんなさいをすることになっただろうか。少なくとも自分がファンになってからは歴代最高レベルの手のひら返しが見られたように思える。

 今後はファン側も第2のラムズデールを生み出さないためにも、補強の候補として名前があがった選手は積極的にいいところを探すことを肝に銘じ、彼がチームを救うセーブを見せるたびにあの日の自分にごめんなさいする謙虚な気持ちを忘れないでいきたいところである。

マット・ターナー

ELで見せた課題を克服し、タイトルを掲げたい

 今季はELを中心に2nd GKを担当する。セービングの能力は高く、ラムズデールと同じくチームを救うショットストップで活躍する姿を見せた。

 しかしながら、まだ歴戦のアーセナルの第2GKには肩を並べるのは早いという感じ。カップ戦でもセービングのところ以外でのアラがみえるのが気になる。

 ハイボールの飛び出しが遅れやすいこと。攻め立ててくる相手に対して、ボールを落ち着かせずに素早くリスタートを行ってしまうことなど、要所で甘さが見えたのも事実である。

 こうしたゲームコントロールの部分は実際の試合に即して鍛えていくしかないだろう。第2GKとして準備を欠かさずにいざというときに備えておきたいところだ。

 近年のアーセナルがFAカップを掲げるとき、近年は優れた第2GKがゴールマウス立っていることが多い。いつかターナーと共にカップ戦のタイトルをとる日々を夢見て来季も彼のパフォーマンスを見守っていきたい。

カール・ヤコブ・ハイン

トップチーム初出場を達成

 カラバオカップのブライトン戦で出場。これがデビュー戦ですおめでとう。今季のアーセナルにおいて出場した1試合が負けというのはレアケースだが、腐らずに頑張ってほしい。

DF

キーラン・ティアニー

まずは強みを出すところから巻き返しを

 ファンからの人気が高い半袖のテスコ・ボーイにとっては非常に厳しい1年になってしまったといえるだろう。昨夏加入したジンチェンコに開幕早々にレギュラーの座を奪われると、2番手としても苦戦。冨安やキヴィオルといった専門家ではない選手にポジションを奪われてしまったのも屈辱的であった。

 もちろん、監督の求めるSB像とのギャップといった外部要因も停滞の原因ではあっただろう。シーズンが進むにつれて、左サイドはSBがインサイドに入り込む動きを求めるように。この変化はティアニーにとってはしんどかった。

 自分自身がインサイドに入るタイミングや、外に開くタイミング、そしてボールをどこに出すかの視野や認知の部分に難があり、パスミスを連発。なかなか難しいだろうなというのは一目見るだけで明らかだった。

 彼自身が活きるのは大外でのロールに注力できる形なのは間違いない。アタッカーを外から追い越してクロスを上げる動きが最も得意なパターンであることに疑いの余地はない。

 しかしながら、そのパターンが今やっているほかのシステムを棚上げしてまでやるべきなのか?は微妙なところ。「ティアニーシステム」を組むのであれば、チームにそれを強いるほどの説得力がなければ難しい。彼の高い位置でのクロスはそれ1つで得点が量産できるほどのものではない。クロスの精度はここ数年むしろやや割引気味というのが正直な印象だ。

 ウェストハム戦でボーウェンを逃がしてしまったオフザボールの守備などジンチェンコ相手に上回れそうな部分はきっちりと上回りたいところ。彼自身の強みや実直さを前面に押し出すことができれば、インサイドへの絞りがうまくなくたって、このチームには十分に彼の居場所はある。なれないことへの適応のためには、自分の強みを出すことが先んじて求められることになるだろう。

ベン・ホワイト

変化の一年を過ごした功労者

 昨季はマガリャンイスと共にCBコンビを形成したが、サリバの加入によって今季は右のSBに挑戦。出遅れた冨安を考えての緊急措置かと思ったが、普通にそのまま定着し、通年でSBのレギュラーを守り切った。

 後方の迎撃や前が空いた時のロングキックなど、初めは彼の持ち味らしい部分を生かしながらのスタートになったが、シーズンが進むにつれて攻撃面でも大きな変化を遂げることとなる。

 特に大きく進化したのはオーバーラップのタイミングだろう。インサイドに狙いを定めるサカの外を回るようなオーバーラップは秀逸。これがあることにより、自らがボールを受けることはもちろん、サカのインサイドへのカットインのサポートにもなる。

 他の右SBと比べて圧倒的に優位だった面はこのサカとの連携をしてのオーバーラップだろう。終盤は完全に相手のスキを突くタイミングを覚えたのか、逆サイドからのクロスに飛び込んでのゴールみたいなこともやり始めた。ジャカの影に隠れがちだが、今季思わぬ方向へと進化を遂げたという意味ではホワイトのSBも大きなファクターになったといえるだろう。

 明らかにガス欠になったりなど、かなりフィジカル的にしんどそうな時期もあったが、フルシーズンを通して何とか戦いきったといえるだろう。欠点を挙げるとすれば積極的な持ち運びのオチが猪突猛進の密集突撃であること。人ごみに突っ込まないと止まれないんかという勢いで突っ込んでは相手のボールにしてしまっていた。来季は止まることも覚えましょう。

 来季は同ポジションでの補強が検討されており、本人もCB復帰の可能性が報じられている。どこで使うにしても今季のコンバートの経験は生きてくるだろう。最終ラインを年間通して支えた功労者である。

ガブリエウ・マガリャンイス

安定感、爆発力の両面でスケールアップした一年

 バックス部門の今季のMVPは彼で間違いない。なぜか序盤戦は不振扱いされていたが、あれは単にチームがDFのラインを大幅に引き上げる際に引き起こされる摩擦のようなものだろう。彼自身のミスというよりも、DFが賄わないといけないスペースが増えたことにより、危うい場面が目立つようになっただけだろう。

 高い身体能力を生かした潰しは空中戦でも地上戦でも両面で対応可能。ポストプレーの潰しもロングボールの競り合いもお手の物で、リーグ戦ではかなわないほどコテンパンにやられる相手はほとんどいなかった。左足からのパスもシーズンが深まることに進歩が見えており、文字通り攻守両面で不可欠な存在に。

 大きな負傷や出場停止もなく、通年でアーセナルのCBを勤め上げた。コンディション面ではなぜか呼ばれなかったワールドカップもプラスに働いたことだろう。昨年までは見られていた試合ごとのパフォーマンスのばらつきはほぼ消え、チームの中でも最も安定したシーズンを過ごした一人だった。

 試合ごとの安定感、最大出力の両面でスケールアップを果たし、リーグを代表するCBの仲間入りを果たした一年。チームの成績の向上と合わせるように、課題だったメンタル面も安定。馬鹿みたいに切れ散らかす場面は減って、もめ事も節度を守った罵りあいに終始していた。

 シーズン途中には契約延長も発表。ふっと沸いてはあっという間に立ち消える移籍話の動向を見ても、おそらくクラブへの忠誠心は非常に高いものがあるはず。

 あとはもう本当に継続することだけだろう。このパフォーマンスを来季も保ち、長い年月アーセナルの最終ラインを怪我無くプロテクトし続けてくれることをファンは節に願っているはずだ。

ウィリアム・サリバ

存在感と喪失感で特大のインパクト

 数々の素行不良や問題発言。レンタル先での振る舞いから、シーズンが始まる前のサリバに対するアーセナルファンからの評判はかなり千差万別だった。頼りないDFラインの救世主ととらえる向きもあれば、素行不良で退団に至った多くのOBたちと同じ道をたどるのではないかと心配する声もあった。アーセナルでプレーする前にこれだけ要否で議論が分かれたのはあまりないケースのように思う。

 結果的にこうした議論があまり意味をなさなかった。なぜならば、そのプレーを一目見れば彼がアーセナルに必要な存在であることは明らかだったから。まさに百聞は一見に如かずである。

 素早い潰し、背走する選手に置いて行かれない身体能力はアーセナルファンが長年待ち望んでいたDFの柱にふさわしいもの。そのエレガントな動きでの対応はロールスロイスと称され、ファンの間で絶賛されることとなった。

 プレスを受けながらの素早いパスワークにも徐々に順応。シーズンを通して明確に落ち着いてプレスをいなしての前進やドリブルでのキャリーができるようになった。

 ほとんど完璧な前半戦を過ごした後、後半戦は少しテイストが違った形で彼の偉大さをアーセナルファンは実感することになる。ターニングポイントはもちろん、悪夢のスポルティング戦だ。冨安と共に前半で途中交代したサリバは結果的にそれが22-23シーズン最後のプレーとなってしまう。

 彼がいなくなった右サイドはボールを押し上げるアクションの減少と、背後をとられる心配が増えたことにより、重心が下がってしまうように。これによりサカのサポートをするホワイトが高い位置をとれなくなった。右サイドの攻撃時の連携が悪くなったのは右のCBから持ち上がれるサリバがいなくなった影響だろう。

 存在感と喪失感の両面で特大のインパクトを放った22-23のサリバ。来季はタイトル獲得への大きな貢献でチームにさらなる特大のインパクトを残してほしいところである。

ヤクブ・キヴィオル

早めに訪れたプレータイムを成長に落とし込みたい

 ファビオ・ヴィエイラで発揮されたステルス移籍は冬にも炸裂。イタリアからキヴィオルをあっという間に獲得したことで、エドゥの得意技は隠密行動に決まった感がある。

 ということで基本的には先を見据えた投資枠だろう。左利きということで長期的にはマガリャンイスのバックアッパーを務めたり、レギュラー格になることが求められるだろうが、22-23シーズンでその役割を勤め上げるのはなかなか難しいだろうというのが大方の見立てである。

 実際に試合の出来を見ると 頑張ってはいるがやはり即レギュラー格というわけにはいかないだろうなという感想は持たざるを得ないだろう。左足から放たれるフィードの美しさは才能の片鱗を感じさせたが、肉弾戦では明らかに後手を踏んでおり、この辺りは時間をかけた肉体づくりや経験が必要になってくる。

 最終盤に起用されたSBであれば肉弾戦の部類は回避しやすいかもしれないが、今度はスピード面でWGと勝負できるか?という懸念がある。大外レーンからではあまりフィードの良さが出ないうえに、味方を追い越すアクションもそこまで得意ではない。特別この位置で起用したい理由が見えにくく、現状では「左SBも可能」の領域を出ないように思えた。

 予定通りだったかはわからないが、終盤戦に出番を得ることができたことはキヴィオルにとってはポジティブ。来季以降のプレミアで戦っていくために足りないもののデータを引き出せたはずだ。得られた出場機会を課題克服に還元できれば、早い段階でレギュラーを任せることができる存在になっても不思議ではない。

ロブ・ホールディング

良くも悪くも期待通り

 今やすっかり古参枠となった古き良き英国産CB。速く走ることはできないし、鋭いボールを蹴ることはできないが、体を投げ出しても防ぐというエリア内での根性はある!というタイプである。

 はっきり言ってしまえばよくも悪くもなく期待通りのシーズンだったといえるだろう。クローザーとしては優秀で5バックにシフトするときの定番の打ち手。最終盤にクロスを跳ね返す役回りを託されたときは問題なく立ち回ることができた。

 しかしながら、サリバの代役として先発の舞台に立つと、やはりどうしても目立ってしまうのは仕方ないところ。ボール保持ではボールを持っても怖さがないため放置され、守備では1on1をスピードで狙い撃ちされる。ハーランドとの2回のマッチアップをオールコートマンツーで対抗したアルテタは非常に勇気があると思う。

 生まれ持ったスピードは速くはならないし、できることが大きく増えるかといわれると難しい。サウサンプトン戦のセットプレーでの立ち回りなど、ブロック守備における立ち回りも完璧なわけではない。チームが上を目指すのであれば序列の低下は避けられないだろう。

 22-23での学びはサリバ不在時のプラン構築の必要性が高いことであり、そこで存在感を発揮できなかったホールディングのプレータイムは減ることはあっても、大幅に増えることは考えにくい。いてくれれば助かる存在ではあるが、本人が外に出場機会を求めてしまえば止めるのは難しい。

冨安健洋

稼働率さえ整えば信頼は自然とついてくる

 非常に悔しいシーズンとなったといえるだろう。昨年は右のSBのレギュラーとして君臨したが、今季はコンバートされたホワイトに右のSBのレギュラーを献上。完全に出遅れたシーズンとなってしまった。

 それでも、ジンチェンコの負傷からサラーにぶつけられる形で左のSBでスタメンを奪ってしまうのはマルチロール的な彼らしい才能といえるだろう。インサイドに絞る動きに関しても、ジンチェンコとは比べ物にはならないが、シーズン後半に同じ動きを強いられたティアニーのぎこちなさを見れば、いかに冨安が器用にその役割をこなしていたかがうかがえる。

 ジンチェンコ復帰以降は右のSBを中心としたクローザーとして活躍。だが、3月のELで負傷してしまうと、そこから残りのシーズンは全休に。リーグ戦のプレー時間は昨季の半分にも満たない651分にとどまった。

 少ない機会ながらも役割としては貴重なロールを担っていることに疑いの余地はないだろう。最終ラインの全ポジションを高水準でこなせる選手は世界的に見ても非常に希少であり、退団になった場合はもっとも代役を見つけることが難しい選手の1人。最終ラインの誰が怪我しても控えの一番手には冨安がいる安心感は大きい。

 問題はやはり稼働率になるだろう。レギュラー選手よりも先に離脱してしまうようだと、安心感を得るのはさすがに難しい。W杯もあった難しいシーズンからリフレッシュして来季はまず稼働率を上げるところからだろう。

 レギュラー奪取のためには課題もある。サカの相棒役としてはホワイトに水をあけられてしまった一年になったし、ほかの最終ラインもメンバーが固まりつつある。そしてここにきて獲得がうわさされているティンバーが実際に加入すればさらに競争は熾烈になる。

 それでも今の最終ラインのほかのメンバーにはない強みで勝負ができるのは大きい。マルチロールとクローザーとして最終ラインのバックアップ1番手を務めれば、長いシーズンの中では必ず彼のもとにチャンスはめぐってくる。そのためにキャンプから万全のシーズンを過ごしたいところだろう。

オレクサンドル・ジンチェンコ

プラスの上積みを求めたい特殊技能者

 冨安がマルチローラーであるならば、ジンチェンコは特殊技能者。実質的な代替は不可能であり、彼がいるといないとではまるっとロールの完成度が変わってしまうのが今のアーセナルの左のSBである。

 低い位置ではトーマスの横を主戦場とし、アンカーでマークを集めやすい彼へのプレッシャーを分散する役割を担う。これにより、アーセナルの自陣からのビルドアップは格段に進化を遂げる。

 前プレスへの耐性は大きくアップ。それだけでなく膠着したブロック攻略にもジンチェンコは大きく寄与。そこにスペースあった?というところに縦パスを入れての局面打開はほかの誰にもまねできない代物だった。

 守備ではやはり割引部分が目立つ。空中戦は十分戦えるが、地上戦では粗さが目立ったり、あるいはそこにそもそもいない状況から自陣を侵略されるきっかけになったりなど難はある。ただ、基本的にはこの難を埋めるというよりはプラスを最大限に使いましょう!という選手なのかなと思う。それで言えば向上ポイントはむしろ押し込んだ時によりゴールに直結するパスを増やしましょう!になるのかもしれない。

 CHとしての起用も考えられるだろうが、顔を出す出さないの神出鬼没感も含めてジンチェンコという感じはするので、基本的にはこのままSB起用が基本線になるのだろう。冨安ほどではないが、けがが少なくない選手なので、来季は1年を通して駆け抜けてほしいところだが。

セドリック・ソアレス

チームの成長に取り残されてしまった感が否めない

 左右を両方こなせる貴重なバックアッパーとして活躍してきたセドリック。しかしながらチームが大きく飛躍を遂げたシーズンの中では個人レベルでどうしてもおいていかれてしまった感が強いシーズンとなった。

 今季は左右のSBの攻撃の役割を整備した年でもあった。右はオーバーラップしてのサポート、左は神出鬼没なビルドアップでの顔出し。後方からのボールをの供給は左右のどちらのサイドでも求められる資質である。

 後方からのビルドアップ関与の分野はチームを去ったベジェリンやチェンバレンのように苦手であるし、オーバーラップでのサポートは主にオンザボールにおいて怖さが足りず、サカに比べると十分に無視ができてしまう水準のもの。それでいて冨安やティアニー、ホールディングのようなリリーフでの守備の増強には寄与できないだから、出番が激減するのは当然だろう。

 冨安が登場した時点で両SBができるというだけの売りでは相当薄いし、これといった武器もない。チームの成長によって取り残されてしまった感があるのは気の毒ではあるが、レンタル先でのフラムでも同じように出番がなかったのは偶然ではないだろう。レギュラーの負傷がなければ出番が回ってこないのが現在地ということである。

 アーセナルでの未来を見通すのは難しいだろう。レギュラーとして年間を通して求められるチームを見つけ、来季は心機一転の一年にしてほしいところだが。

続く!

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