【グループC 第1節】アルゼンチン×サウジアラビア
■向こう数十年語り継がれる偉業達成の要因は?
南米の雄、アルゼンチンは3日目に登場。開幕節はここまで散々のアジア勢からサウジアラビアが相対する。
ボールを持つのはアルゼンチン。非保持のサウジアラビアは4-4-2と4-3-3のハーフアンドハーフという感じ。基本線は4-4-2ベースの守備ではあるが、8番のアル・マルキは高い位置まで出ていく形がかなり多かった。
サウジアラビアの中盤は人にボールが入ったらついていく!というよりはおそらく、パスコースを消すためにバックラインにプレッシャーが必要!という場合にアルゼンチンのバックラインにプレッシャーをかけているのだろう。遅れ目にアル・マルキが出ていってインサイドが空きそうになった場合は右のSHのアル=ブライカーンが絞る形で中央のマーカーをチェックすることからもその傾向は伺える。
つまり、この試合のサウジアラビアの守備の優先事項は明らかにライン間への縦パスの阻害である。コンパクトな陣形を維持するため、高いラインをとり続けるサウジアラビアのバックラインからもそのサウジアラビアのプランは読み取ることができる。裏へのパスは全力でオフサイドを取りに行く。オンサイドの抜け出しを食らったらそこでおしまい!というのが彼らのスタンスだった。
裏パスは許容する!となった時に問題になるのはアルゼンチンのCBにプレスがかかっていないことだ。サウジアラビアはCBからのショートパスを咎めるスタンスではあるけども、ロングキックを蹴らせないスタンスではない。ハイライン勝負を仕掛けるにはホルダーを捕まえよう!という定石には逆らう形でアルゼンチンの前線とバックラインに挑んでいく。
それでもアルゼンチンの裏抜けは完遂することはなかった。ラウタロは1人で試行錯誤はしていたが、ネットを揺らしたシーンはオフサイドでわずかにタイミングが合わなかった。裏抜け完遂不発の要因は強気のハイラインに対して、立ち向かうのがラウタロ1枚だったこと。アルゼンチンの2列目はどちらかと言えば、ボールを受けてナンボの選手ばかり。コパアメリカでフリーランに勤しんでいたニコ・ゴンザレスの不在は痛い。
2列目の選手は後ろに下がりながらボールの出し手をやろうとするが、結局前を張ってラウタロと異なるタイミングで飛び出せる選手がいない問題の方が重くのしかかる。サウジアラビアが圧縮してきた中盤は完全に捨てた格好だ。それだけに早い時間にセットプレーからPKをもらったのはアルゼンチンにとって幸運だったと言えるだろう。
一方のサウジアラビアの保持はサイドに人を集める形が軸。本来、1トップであるアルブライカーンを右のSHに起用したのを見ると、左サイドからクロスを入れる形が理想なのだろう。だが、この形は絵に描いた餅となり、実現することはなかった。前半は保持で敵陣に迫ることができなかったサウジアラビアだった。
後半も試合の展開は同じ。ライン間圧縮し、裏抜けデュエルはかかってこいや!のサウジアラビアに対して、アルゼンチンが保持で解決策を探す展開だ。
後半早々に試合を動かしたのはなんとサウジアラビア。ライン間のメッシへの縦パスを咎めると、素早いカウンターから最後はアル・シェフリ。アルゼンチンは抜かれた状況が悪いとはいえ、ロメロの遅らせる対応が命取りになった格好。多少ダーティでも潰す!というスタイルがロメロなのだが、このあたりは負傷明けというコンディションが影響していたのかもしれない。
同点ゴールはサウジアラビアに勇気を与える。中盤のプレスは強気になり、プレス隊は前半は比較的放置していたアルゼンチンのCBにボールを持たせないようになった。アルゼンチンが59分に3枚替えを敢行した以降、サウジアラビアは再びハイプレスに出れなくなったことを考えれば(得点を挙げたせいかもしれないが)、早い段階で勝ち越しゴールを決めたのはサウジアラビアにとって大きかった。アッ=ドーサリーの殊勲のゴールは綺麗な軌道でマルティネスの手をすり抜けていった。
以降はアルゼンチンが敵陣でプレーする時間がひたすら続く。サウジアラビアが4バックの時間帯は大外からラインを下げることで、危険な形でアルゼンチンはPA内に迫ることができていた。
アルゼンチンの保持で気になったのは、サイドからのクロスで狙うのはライン側の選手ばかりであるということ。遅れて飛び込む選手(そもそもこの役割をできている選手がほぼいなかった)へのマイナスのクロスでサウジアラビアの最終ラインの狙いを外す選択肢を提示できれば、もう少しフリーでシュートを打つことができたはずだ。
この辺りは前半から「裏勝負!」ということをアルゼンチンに刷り込んだサウジアラビアの作戦勝ちかもしれない。前半からアルゼンチンは愚直にサウジアラビアの用意した土俵で良くも悪くも戦い続けた。アルゼンチンにとっては勝ち目のない土俵ではなかったと思うけども。
サウジアラビアがバックラインの枚数を増やすたびに、アルゼンチンはサイドからのつっかけでサウジアラビアの最終ラインの高さをコントロールするのが難しくなる。もっとも、コントロールできたとしても、それを活用できるマイナスのスペースに飛び込む選手がいなければ同じなのだけど。
ライン際の選手にひたすらクロスをあげ続けるアルゼンチンのスタンスはなかなか実らないまま時間だけが過ぎていく。サウジアラビアが残り時間を凌ぐことができた要因は2つ。1つはボールを持った局面できっちりと敵陣に押し返すポゼッションができたこと。CHを中心にサイドの奥に走る選手に向けてボールを蹴り出し、アルゼンチンのボール保持のスタート位置を自陣側に追いやることに成功していた。
もう1つはGKのアル=オワイスの落ち着いたプレー。不可抗力で自らと接触し負傷をしてしまったアッ=シャハラーニーの交代後も、少なくともプレーでは動揺していない姿を見せたのは勇敢だった。交代で入ったアル=アムリのスーパークリアも含め、バックラインの姿はサウジアラビアのイレブンに勇気を与えたことだろう。
長かった追加タイムをしのぎきり、W杯史に残るアップセットを引き起こしたサウジアラビア。アルゼンチンの無敗記録をストップし、W杯においてアルゼンチン相手にアジア勢初勝利を挙げることに成功。8万人の観客の後押しを受け、向こう数十年以上も語り継がれる偉業を達成してみせた。
試合結果
2022.11.22
FIFA World Cup QATAR 2022
Group C 第1節
アルゼンチン 1-2 サウジアラビア
ルサイル・スタジアム
【得点者】
ARG:10′(PK) メッシ
KSA:48′ アル・シェフリ, 53′ アッ=ドーサリー
主審:スラヴコ・ビンチッチ
【グループD 第1節】デンマーク×チュニジア
■保持の安定≠効果的な前進
本命のフランスを追いかける両チームの対戦。混戦となる予想がされるグループステージ突破争いで主導権を握るべく、まずは勝利で優位に立ちたいところである。
積極的にプレスをかけていったのはデンマークの方。チュニジアのバックラインに高い位置からプレスをかけていく。しかしながらバックラインがGKを交えてのビルドアップを行うチュニジアに対して、プレスはかけきれないデンマーク。ハイラインだけど相手を捕まえきれない状態に苦しむことになる。
チュニジアにとっては中盤で体を張れたのも大きかった。特に目立っていたのは14番のライドゥニ。序盤から闘志むき出しでプレーしていた彼と同サイドのシャドーのユセフ・ムサクニの2人を軸に左サイドでボールの落ち着きどころを作っていた。
アンカー役となっていた17番のエリス・スキリが最終ラインに下がりながらCB2枚とGKと菱形を作ることが多かったことからも分かるように、ショートパスで繋ぎたがっていたチュニジア。中盤から抜けるところまではボールを運びながらデンマークに対抗できていたと言っていいだろう。
デンマークに比べれば、チュニジアは明らかにバックラインに対してプレッシャーをかけてこなかった。チュニジアのトップのケアはアンカーのデラニー付近が起点に。デンマークは3バック+アンカーの3-1でボールを運ぼうとするが、中央に明確な預けどころを見つけることができない。
デンマークの保持のメインルートとなったのはサイドの方。左サイドは大外を回るメーレが敵陣を抉るようにアタックをかけていたし、右サイドはFW陣がサイドに流れることで起点に。右サイドは逆にインサイドにはR.クリステンセンが入り込むことで、FW陣が作り出したスペースを有効活用していた印象だ。
立ち上がりは中盤同士のデュエルが頻発し、ややチュニジアが優勢となっていたが、25分過ぎからはデンマークがボールを持つ機会がグンと増える。きっかけとなったのはIHの降りる動き。エリクセンやホイビュアなどは積極的に列を落ちる動きを行うことでポゼッションを安定させていた。
しかしながら、保持の安定とボールを前に進めるかどうかはまた別の話。後ろに重いポゼッションは前進の手助けにはならず、ボールを持ちながらもゴールに進めない状況が続くことになるデンマークだった。ボールを持てる機会が減ったチュニジアはややロングボールに頼る傾向が強くなる。デュエルで負け始めたチュニジアは自陣に押し込まれる機会が増えることとなった。
均衡した状態で迎えた後半も同じくデンマークがボールを持つ展開に。アクセントになったのは前半途中のデラニーの負傷交代によって投入されたダムスゴー。低い位置に降りてから前を向くと、馬力のあるドリブルで前線までボールをキャリー。降りても自分で運べればよし!のルールに乗っ取って、高い位置までボールを運ぶことで降りる動きを正当化していた。
右サイドはインサイドに入るR.クリステンセンがアクセントになっていたデンマーク。左サイドもダムスゴーの登場でデンマークはサイドで崩すための動きが増えることとなった。左サイドは交代でWGにイェンセンが入ると、ビルドアップに献身的に参加。同サイドのメーレは前半から高い位置のクロスで収支はプラスになっており、後半もビルドアップに絡ませることはほとんどなかった。けども、割と終盤は割と移動がバレていた節があるので、効果的だったかは微妙なところである。
左右できっかけを見つけることができたデンマークは後半も押し込みながらの攻撃に専念。チュニジアはロングカウンターを軸に一発でひっくり返す形を継続して狙っていく形になっていた。
大きな展開よりも、エリクセンがライン間に入り込むような動きにパスを
重ねることができたりする方が得点の匂いがしたデンマーク。前半から優位を取っているセットプレーも含めて敵陣深くまで攻め込むが、最後まで解決策を見つけることができないまま試合は終了。
デンマークが終盤にかけて押し込む展開を続けることになったが、決定的なゴールを生み出すことができず試合はスコアレスドローに。両チームとも勝ち点1を分け合う発進になった。
試合結果
2022.11.22
FIFA World Cup QATAR 2022
Group D 第1節
デンマーク 0-0 チュニジア
エデュケーション・シティ・スタジアム
主審:セサル・アルトゥール・ラモス
【グループC 第1節】メキシコ×ポーランド
■レヴァンドフスキに立ちはだかる『名物男』
サウジアラビアがアルゼンチンを下すという衝撃的なスタートを飾ったグループCの戦い。ここで勝利すればアルゼンチン相手に一歩前に出る絶好のチャンスとなった両チームの一戦である。
ポゼッションで優位を取ったのはメキシコの方。保持におけるメキシコは左右の形が非対称。左の大外はSBのガジャルドがとるのに対して、右の大外はWGのロサノが取る形でアシメな陣形を作る。
ビルドアップに関与する枚数調整はSB、IHも含めた後方7枚で送っていく形。アンカーのアルバレスと両CBはマストであとは状況に応じて!というスタンスである。ポーランドは中盤より後ろは割とはっきりとした人を捕まえるアクションをしていた。もっともその傾向が強かったのはガジャルドの対面になったカミンスキ。高い位置に出ていくポジションはガジャルドに合わせたもの。彼のポジション次第ではポーランドの非保持は4バックに見えることもあった。
逆にアルバレスの受け渡しはやたらファジー。トップのレバンドフスキが持ち場を離れる際には、マークを引き継ぐ選手が不在。アルバレスはフリーのまま放置されることが多く、特に管理させることなく自由に動きまくっていたのが印象的であった。キーマンがフリーとなったメキシコは安定したポゼッションでゲームを進めることができる。
メキシコの攻撃のアクセントになっていたのはWGを追い越すようにオーバーラップを仕掛けるSB。高さのないメキシコはクロスを上げる前の工夫が必須。そのためにはオーバーラップするSBでポーランドのラインをコントロールしたほうがいい。ガジャルド、サンチェスの2人はオーバーラップからチャンスを作り出すがその頻度はもう一声!という感じだった。
ポーランドはボール保持になると4-3-3のフォーメーションに。右のシャドーのジエリンスキがCHにスライドし、カミンスキが大外を駆け上がる形で変形する。対面のガジャルドは攻め上がることが多かったため、トランジッションで右サイドは狙い目になる。
逆に、静的なポゼッションの時の狙い目は左サイド。メキシコのWGとSBの間にシマンスキがサイドに流れることでズレを作り出すことができていた。レバンドフスキのポストも含め、ポーランドのポゼッション時の手段はそこまで少なくはない。保持の機会はなかなか少ないのだけども。
後半、システムに手をつけたのはポーランド。ベーシックな4-4-2に移行する。狙いは若干読み取りにくいがレヴァンドフスキとジエリンスキがはっきりとアルバレスの受け渡しを行っていたので、前半は曖昧だったアンカーの処遇を明確にすることなのかなと推察する。
ただし、相手についていく精神は4-4-2にしても健在で、メキシコのSBのオーバーラップには対面のSHが下がって対応。よって時にはポーランドのバックラインの枚数が変わって見える現象は後半も継続することとなった。
そのポーランドの変化がもたらしたのがPK奪取である。ジエリンスキがアルバレスのターンを咎めるチェックに成功したことで、ポーランドはショートカウンターを発動。体をはってボールを追いかけたレヴァンドフスキにはPKというご褒美が与えられる。
しかし、立ちはだかるのはオチョア。メキシコのワールドカップは彼抜きに語ることはできない!という名物男である。名物男は早速初戦から存在感を発揮。レヴァンドフスキのシュートをストップし、今大会初めてのPK阻止に成功する。
このセービングで勢いに乗ったのはメキシコ。サイドアタックを軸に敵陣に一気に攻め込む機会を増やしていく。しかしながら、クロスからの仕上げがイマイチだったメキシコ。ポーランドの中盤のスペースが徐々に空いて攻める余裕があった分、ゴールへの向かい方が単調だったように思える。最短ルートで休みなくゴールに向かった結果、相手からしても止めやすいし、味方も動き出しのタイミングを掴めない!みたいな。ちょっとサウジアラビア戦のアルゼンチンと似ている節があった。
ロサノやアントゥナの仕掛けのスキル自体は面白かったけど、どこか得点に繋がる匂いがしなかったのは、味方にゴールに向かう動きを生み出す一呼吸が足りなかったからのように思う。ポーランドの選手も含めて多くの選手が忙しい展開になる中で、唯一味方に時間を与えるタメを作り続けていたのはせっせとポストプレーを繰り返すレヴァンドフスキという構図だった。
一本調子の攻めでイケイケムードを制することができなかったメキシコにとっても、PKという絶好のチャンスを活かせなかったポーランドにとっても
後悔が残るドローだろう。グループCは開幕節で唯一の勝利をあげたのがサウジアラビアという波乱のスタートとなった。
試合結果
2022.11.22
FIFA World Cup QATAR 2022
Group C 第1節
メキシコ 0-0 ポーランド
スタジアム974
主審:クリストファー・ビース
【グループD 第1節】フランス×オーストラリア
■最悪の立ち上がりからギアを踏み込み直して逆転勝利
「優勝を目指す強豪国は序盤にピークを持ってこない」というのは定説になりつつある。その定説の存在を感じさせるのがこの日のフランスの立ち上がりだったと言えるだろう。規律的な緩さを感じ、立ち上がりは同日にサウジアラビアに敗れたアルゼンチン以上に心配になる展開だった。
WGのムバッペとデンベレはプレッシングにおいて積極的に高い位置をとりにいくのだけど、背後のスペースをケアする選手が皆無。遅れてCHが出ていくか、あるいは遅れてSBが出ていくか。どちらにしても後方のユニットは4-3で守るケースが頻発するフランスは中盤の歪みが頻発。オーストラリアにそこにめちゃめちゃ付け入ることを許す立ち上がりだったと言えるだろう。
さらにはWGとSBの1on1においてもオーストラリアは活路を見出すことができる展開に。特にパヴァールはオーストラリアにとって攻めることができていたポイントだった。だが、結果を出したのは逆サイドの突破。右サイドから侵入したオーストラリアがファーへのクロスを上げる。待ち受ける左サイドではパヴァールを出し抜いたグッドウィルがゴールを決める。
フランスにとってはまさに踏んだり蹴ったりな失点。サイドを破られた原因はリュカが一連のプレーで怪我を負ってしまったから。非接触型の負傷で大怪我の公算が強そうな様子だったのは非常に心配だ。フランスにとっては先制点献上と負傷者発生という考えられうる限りの最悪のスタートを切ることとなってしまった。しばらくはなんでもないところでの非常に軽いミスが続き、端にも棒にもかからない展開が続くフランス。先制点と負傷者の動揺が見えた立ち上がりになった。
しかしながら、悪い流れの時間も含めてフランスは攻撃の手を緩めることはなかった。サイドにおいてはオンザボール、オフザボールにかかわらず、ムバッペとデンベレがひたすらスピード勝負を挑んでおり、エリア内にボールを入れる迫力は十分に担保。オーストラリアのコンパクトな4-5-1に対して、勝負できるポイントがあったのは強みと言えるだろう。
懸念であるボール運びも中盤に降りてくるグリーズマンの登場で懸念は解消。保持時においては実質フリーマンのように振る舞うグリーズマンはオーストラリアにとっては常に厄介な存在に。低い位置ではオーストラリアのプレス回避の急先鋒になっていたし、サイド攻撃では両翼を助ける+1として猛威を奮っていた。この日のフランスの攻撃の中心は間違いなく彼だったと言えるだろう。
フランスはセットプレーの流れから同点。ラビオのゴールでセカンドチャンスをものにし、前半の内に追いついてみせる。オーストラリアからするとここだけでは絶対にやらせたくなかったはず。痛恨の失点と言えるだろう。
オーストラリアの受難は続く。前半はポゼッションの起点となっていたフランスのWG背後のオーストラリアのSBが決定的なピンチを作り出してしまう。アトキンソンはトラップミスでラビオとムバッペに挟まれる状況を作られると、フランスはショートカウンターからジルーが勝ち越しゴールをゲット。立ち上がりは攻めの起点にできていたはずのポイントから失点につながってしまうのは辛いところである。
以降のフランスは序盤に見られたような緩さは消え去るように。前線から無理にプレスに行くことはなく、WGはプレスバックを優先。SBが受ける背後のスペースを消すことでオーストラリアの前進のきっかけを取り去る。パヴァールのところは唯一不安が残るポイントではあったが、オーストラリアはそもそもそこまで辿り着く機会が限定的なので問題なしというところだろう。
後半になっても試合の構図はほとんど変わらない。プレスラインを若干前に設定し、高い位置からのプレスを強化したようにも見えたが、試合の展開に大勢を与えることはなし。フランスは前半と同じ仕組みで問題なくポゼッションができていた。
実質トドメとなる3点目は爆走し続けていたWGコンビから。デンベレのクロスはピンポイントでムバッペのもとに。デンベレ、ちゃんとすればちゃんとしてるなというのがこの試合の感想。前回大会でポグバをマンマークの兵隊として鍛え上げることができたことを見ても、スター選手をちゃんとさせられるかどうかがデシャンのフランスの成功の分かれ目なのかなと思う。デンベレがちゃんとし続けられるかはフランス成功の鍵を握っている可能性もあるのかなとほんのり思ったシーンだった。
仕上げとなった4点目はジルー。ベンゼマに「ゴーカート」と揶揄されてはいるが、うまく行く時には常にジルーの影があるというのもまた近年のフランスの特徴でもあったりする。
最悪の立ち上がりからリカバリーをしてみせたフランス。ギアを入れ替えて、エンジンを踏み込んでから完成度は段違い。オーストラリアを一気においていく試合運びで逆転勝利を呼び込んでみせた。
試合結果
2022.11.22
FIFA World Cup QATAR 2022
Group D 第1節
フランス 4-1 オーストラリア
ルサイル・スタジアム
【得点者】
FRA:27′ ラビオ, 32′ 71′ ジルー, 68′ ムバッペ
AUS:9′ グッドウィン
主審:ヴィクター・ゴメス