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「Catch up 日本代表」~2022.11.17 国際親善試合 日本×カナダ ハイライトレビュー

■遠藤、守田不在で見られた収穫と課題は

 どの国も人員のやりくりがスクランブル感が否めないカタールW杯。欧州組を数多く抱える日本も例外ではない。直前の親善試合に冨安、三笘、遠藤、守田を起用できなかったのは明らかに痛手である。

 欧州組は合流の日程が直前だった関係もあり、スタメンを飾ったのは多くが早めに合流できた選手たちだった。そのため、この日のスタメンから今の代表の序列を見出すのは難しいところである。

 カナダは攻守に4-4-2がベースのフォーメーション。日本の4-2-3-1は中央でもワイドでも噛み合わせがいい形であるため、保持においてはズレる工夫をする必要がある。田中碧が見せた右サイドに流れてカナダの2トップ脇に立つアクションはその一つである。酒井と相馬を高い位置に押し出す形で変化をつけていく。

 柴崎のラストパスを受けた相馬の飛び出しも、幅を取る役割よりも最終ラインにアタックしての裏取りの姿勢が実ったもの。そういう意味ではこうした右のサイドのズレもある程度の意味があったと言えるだろう。

 しかしながら、この田中のアクションはトータルで見たときに収支がプレスに触れるかは怪しいところである。まず、CHが中央から離れることによる被カウンター耐性が弱まることが気になるポイント。川崎色の強いこの田中の移動は基本的には「取られないこと」が前提にある。

 ただ、この日の日本は前線のテイストを見ても「きっちり保持する」よりは「いってこい!」色が強かったため、先に挙げた前提が守られているようにも思えない。つまり、自由なポジショニングの弊害である非保持におけるカウンターの脆弱性がカバーされる仕組みになっていないのである。

 保持にフォーカスしたとしても、正解かは微妙なところ。結局、得点シーンのようにこの日の日本が攻撃を加速することができるのは柴崎がボールを操れるかどうかにかかっている。田中の自由な移動は特に柴崎を解放するためのスイッチになっていなかった。田中の移動と柴崎をフリーにするという加速条件の関係の薄さも、ややチグハグ感があった一因だろう。田中が高い位置に攻め上がるためのタメを作ることもできておらず、自由なポジションがメリットに転じる機会も少なかった。

 どこまで保持成分を高めていくか?のところは、本戦を見据えても難しい。数日前にインタビューに答えていた守田のコメントを見ても、保持の要素をどこまで突き詰めるかは微妙なところではある。この試合ではCHが強制入れ替えだったのでなおさらだ。トップの浅野はそれなりに下りていたとは思うけど、さらに降りることを森保さんに指示されていたので、自分が想定したよりも保持色を強くするテイストのテストをしたがったのかもしれないなと思った。

 カナダの保持は4-4-2が基本。CHには割とポジション的な自由が与えられており、時にはサイドに流れたり、時には最終ラインに落ちたりなどある程度の裁量を与えてもらいながら、変形をしていた。日本はCHが無理に深追いをせずに、4バックに対して数的不利のまま守っていた。そのため、カナダのバックラインはボールを持つ頃ができた。

 狙っていたのはサイド攻撃。特に右サイドでSBが久保の背後でボールを受ける形ができれば大きい。伊藤、谷口の2人は割とあっさりと距離が出来やすかったので、カナダは右のブキャナンが裏を強襲していた。カナダがバックラインが自由にボールを持てたので、右サイドへの展開は問題なし。久保の背後でSBのジョンストンが受けることができれば、谷口と伊藤のギャップをスムーズに使うことができたいた。

 カナダは長いボールを使うことが多かったが、日本が跳ね返しのセカンドを拾うことができなかった。セカンドを拾えなかったことはカナダの攻撃をシャットアウトし、押し返すことができなかった一因だ。前に出ていくことだけでなく、この辺りも遠藤と守田の守備範囲の広さがなくなった弊害と言えるだろう。

 さらに日本を苦しめたのはセットプレー。CKは軒並みカナダに触られておりピンチに。あっさりと同点ゴールを許したのもCKからである。跳ね返せない守備を見て、権田が飛び出しを敢行するも間に合わないなど全体的に悪循環の流れは止まらず。日本は苦しい対応となった。

 後半の日本は3枚選手交代。浅野→上田のスイッチやSBに山根を投入したことなど、やや保持に振れた構成となった。ボールをキープすることに長けている上田を使ったコンビネーションは前半になかった日本のボールの動かし方である。裏抜けや左右に流れての起点作りも含めて上田のパフォーマンスは上々だった。

 日本は田中→鎌田のCHのスイッチを敢行したが、CHの役割が大きく変わらず。例えば、鎌田にスイッチしたからといって、低い位置でボールを捌く役割が薄くなると言ったことはなかった。それでも保持色が強くなった分、鎌田が低い位置から攻め上がることができる時間を稼げたのは改善した点。攻め上がりの迫力も十分でパフォーマンス的にも上々。ただし、鎌田はそもそも前で使えばいいのでは?という意見に対する説得力のある反論になっているかは微妙。本戦でこのプランがどこまで優先されるかは未知数である。

 日本は保持ではほんのり時間を作る意識が増えた一方で、非保持においてはそこまでの改善は見られなかった。上田はプレスの意欲は十分であるが、後ろが付いてこず、全体的に間延びするテイストとなったのは課題。遠藤、守田がいなければプレス強度を増したスタイルはなかなか十分なクオリティにはならないというのがこのテストの結論になるだろうか。フリーマンとして低い位置に降りることを許されているデイビッドも日本にとっては前半から悩みの種であった。

 加えて、カナダは右のSBにウォーターマンが入って以降、前半はビルドアップに関与しなかった右のSBも組み立てに関わるように。日本だけでなく、カナダも保持色が増えた格好である。狙いは相変わらず、右サイドが中心で選手交代を重ねて以降はこちらのサイドに流れたホイレットを軸に深い位置まで進撃する。

 終盤、日本は吉田の投入で3バックへ変化する。その結果として、大外でフリーになった山根が柴崎のパスから決定機を迎えるなど保持面で奇襲をかけることに成功する。

 クロス対応は絞る動きでピンチを防いでいたり、対人守備でも苦戦しながらも粘っていた山根。攻撃面で存在感を見せた形だったが、最後の最後でPKを献上し、守備面での課題を露呈することとなった。

 PKを与えた場面では右サイドの守備のローテで混乱が見られた。谷口と山根のレーンの入れ替わりが戻らなかったのがPK献上の原因の1つと指摘する声もあるが、地味にレーンを戻すタイミングがない。一度バックパスを出させた後に堂安がステイすることができれば、戻るきっかけになったかもしれないが、堂安がプレスに行ったため、ほどなく大外を再び使われることになった。そうなれば、谷口のサイドへの再出撃は免れない。山根の対応、サイドに出て行った谷口の潰し切るスキル以外にも、サイドの守備の連携面でも対応が気になったシーンだったと言えるだろう。

あとがき

 テストマッチなので、何をどこまで見ればいいのか難しいところ。柴崎と田中のスタートならある程度保持色を強めることは予見できるけど、これをそのままドイツ戦に移植する可能性は低いように思える。柴崎に関しては縦パスのスイッチ役として十二分に働くことができたので、エッセンスとして組み込むことを模索する可能性は大いにあるとは思う。

 本番はカナダ戦がどうこうというよりはコンディションがどこまで上がってくるかの要素が強いのかなと思う。それは日本に限らず、どこの国も同じ。残念だけど、全体的にそういうテイストの大会になってしまっているように思う。そうした中でこの試合で手に入れた柴崎の保持における異能ぶりがどの立ち位置になるかは本番の見どころになるのかもしれない。

試合結果
2022.11.17
国際親善試合
日本 1-2 カナダ
アール・マクトゥーム・スタジアム
【得点者】
JPN:9′ 相馬勇紀
CAN:21′ ヴィトーリア, 90+5′(PK) カヴァリーニ
主審:オマル・ムハマド・アルアリ

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