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「Catch up Premier League」~Match week 16~ 2022.11.12-11.13

目次

①マンチェスター・シティ【2位】×ブレントフォード【11位】

■サウスゲートを睨む2ゴールでエティハド陥落

 ブレントフォードの今季のパフォーマンスには当たり外れがある。当たればマンチェスター・ユナイテッドをボコボコにできるし、外れればなす術もなく破れることも珍しくない。

 この日のブレントフォードは立ち上がりから紛れもなく「当たり」の日であった。意欲的にプレスを行い、シティのバックラインに制限をかけていく。キーになっていたのはアンカーのジャネルト。ブレントフォードが高い位置までプレスに出ていく時は彼がロドリを捕まえにいく。中央を封鎖したブレントフォードはサイドにボールを追いやり、高い位置に出ていくWBで前進の機会を奪う。

 ボールを奪い返したブレントフォードは素早く縦に。2トップにボールを当てて時間を作り、サイドに展開していく。2トップに当ててWBに展開という攻撃の流れは今季あまり見られない昨シーズンのスタイルの踏襲である。特にこの日冴えていたのは左WBのヘンリー。とにかくカウンターの出足が良く、爆速で相手を交わして敵陣に入り込んでいく。

 シティも負けてはいない。ブレントフォードの前線の3-2のライン間を分断し、この3と2の間に侵入。横断をしながら手薄なサイドを作り、エリア内に迫っていく。アクセントをつけたのはカンセロ。逆サイドへの展開だけでなく、横断の最中に縦に進んでいく形で攻撃の方向に変化をつけていく。

 ともにゴールに迫る手段はある中で先制したのはブレントフォード。自陣からのFKはミー→トニーと繋がり、シティのゴールマウスに収まる。リスタートから一度も地面に落とすことなく得点を奪うことに成功したシティが一歩前に出る。

 シティは失点後勢いを増す。これ以降、ブレントフォードはジャネルトが前に出てプレスを行う機会はほとんどなかった。シティは手薄なサイドを作り、ブレントフォードを押し込み続ける。

 だが、ブレントフォードの後方の5-3ブロックのスライドはギリギリ間に合っていた印象。クロスの跳ね返しはなんとかなっており、シティの攻撃を凌いでいた。PK疑惑のシーンもあったが、この日のブレントフォードはそれを見逃してもらえるツキもあった。

 もっとも押し込んだ状態を跳ね返されても決定機を作れるのが今季のシティだ。ブレントフォードの攻撃を受けてもデ・ブライネからのカウンターで反撃するなど、今季のシティは理不尽さで勝負している節がある。ボール保持で支配できなくても得点をとることができるのが今のシティ。だが、この部分の精度がいつもより割引。好機を作る手前でのエラーが目につく。

 前半終了間際にフォーデンのゴールで追いつくと、後半も引き続き攻勢を強めるシティ。ハーランドととのパス交換で抜け出したギュンドアンの決定機など、追加点となるゴールが生まれてもおかしくないシーンはできてはいた。

 しかし、決められないまま時間を過ごしていくと、終盤に再びブレントフォードにチャンスが。トニーへのロングボールで徐々に盛り返す機会を作れるように。大外で幅とり役をやっていた左のSBをフォーデンにスイッチするなど、シティも最後まで強気のスタンスで得点を狙いに行く。

 だが、最後に笑ったのはブレントフォード。左サイドからヘンリーがデ・ブライネを交わして作ったチャンスがきっかけというのはいかにもこの試合らしい。ダ・シルバのところで一度攻撃は止まったが、ベルナルドとアカンジは数的優位を生かす守り方ができず、ダ・シルバに再加速を許す。そして最後はトニー。後半追加タイムに劇的なゴールを決めて見せる。

 エティハドの観客とサウスゲートに自らの存在を痛烈にアピールしてみせたトニー。「当たり」を引く不運に見舞われたシティは今季エティハドで初黒星を喫することとなった。

試合結果
2022.11.12
プレミアリーグ 第16節
マンチェスター・シティ 1-2 ブレントフォード
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:45+1′ フォーデン
BRE:16′ 90+8′ トニー
主審:ピーター・バンクス

②ボーンマス【17位】×エバートン【16位】

■低迷の要因に光が差し込む3点目

 直近のリーグ戦では思うように勝ち点を伸ばすことができていない両チームの対戦。降格圏がすぐ目の前の中で悪い状況を断ち切りたい中断前最後の一戦である。

 勢いよく入ったのはホームのボーンマス。サイドを高い位置で止めに行く強気のプレッシングで普段以上に高いプレス意識でエバートンの守備陣に襲いかかっていく。

 とはいえ、ボーンマスは過剰に中盤から人をかけて時間を奪っていくことはしないので、エバートンは中央ので数的優位がある。GK-CB-アンカーを2トップで見る仕組みであるボーンマスに対しては、エバートンはここから前進が可能。

 しかし、配置の上で前進が可能なことと実際に前進ができるかはまた別の話。ピックフォードはビルドアップでフリーになることで持ち味を発揮できるタイプではないし、アンカーのゲイェもボールを受ける際のエラーが失点に繋がりやすい選手。ボーンマスに対して優位を活かすことができない。

 エバートンの前進の成否はIHが前を向けるかどうかで決まる。SBからの横パスだったり、降りてくる前線の落としから前進する形が作れれば問題ない。しかし、トップには最も収まるキャルバート=ルーウィンが不在。エースの欠場により、前線の収まりもSBからの供給も不安定。なかなか敵陣まで迫ることができない。

 一方のボーンマスはショートパスからの前進を狙っていく。トップにあててフリーの選手を作るというメカニズムはエバートンと似ているが、ボーンマスの方が上手くエバートンの中盤やバックラインを動かしていた印象。自由に動く前線4枚をエバートンのバックラインは捕まえきれていなかった。

 エバートンの間延びした守備は非常に気になる。いい時は高い位置でのプレスからのショートカウンターが効いていた中盤3枚だが、この試合でははっきりいって見る影もない。1人の追い回しに他の選手がついていくことをせず、個々の運動量の豊富さがむしろ無駄に中盤に穴を開けている印象すら受ける。ボーンマスの前線にとっては受けるスペースを見つけるのは難しくなかったはずだ。

 前半に入ったボーンマスの2ゴールはいずれもエバートンのゆるさが際立つもの。タヴァニアの先制ゴールはピックフォードの処理がスマートであれば避けられたものではあるが、そもそも1本目のシュートを打たれるまでの中盤とバックラインの怠慢がひどい。

 2点目のセットプレーでは5本近く連続で自陣のPA内で相手選手に先にボールを触られている。そうした状況ではむしろ失点を防ぐ方が難しい。ピックフォードが怒るのは無理もない。

 後半の頭は積極的なプレスで前から取り返しにいくエバートンだが、この日のコミットしないテンションで前から奪いに行けばより間延びするのは明白。二度追いしない前線と中盤のツケをバックラインが払いきれずに、ボーンマスに決定的な3点目を許す。

 ここ数試合のボーンマスは得点を取れてはいたが、後半に失速して逆転負けを喫するという流れが鉄板。なので、後半にダメ押しゴールを決めることができたのは大きな収穫。決めたのは交代で入ったアンソニー。後半失速の原因の1つが前線の控え選手のパンチ力不足ということから考えても非常に有意義だ。

 終盤はボーンマスは撤退してエバートンを迎え撃つ。ボールを持てるようになったエバートンだが、サイドからひたすらクロスを放り込む以上のことはできず。ガードを固めるボーンマスの上からとりあえず効くかわからないパンチで殴り続けている感じ。この観点から言ってもキャルバート=ルーウィンは欲しかったはずだ。

 課題を解決して逃げ切り快勝を決めたボーンマスが連敗ストップに成功。対するエバートンは試合後に選手たちがサポーターと不穏なやりとりをしている幕切れに。雑音に悩まされる中断期間となりそうだ。

試合結果
2022.11.12
プレミアリーグ 第16節
ボーンマス 3-0 エバートン
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:18′ タヴァニア, 25′ ムーア, 69′ アンソニー
主審:クレイグ・ポーソン

③リバプール【8位】×サウサンプトン【18位】

■起点にフィニッシャーに大暴れのヌニェス

 トッテナムの本拠地を攻略し、悪い流れをひとまず食い止めたリバプール。W杯の中断前の最後の試合はホームにネイサン・ジョーンズ新監督の初陣となるサウサンプトンを迎えての一戦となる。

 リバプールのフォーメーションはすっかりお馴染みの3トップを軸としたもの。4-3の後方にトップの個性を合わせながら戦っていくものである。

   この日の主役はヌニェス。サウサンプトンの4-4-2の2トップ脇からチアゴやロバートソンがボールを持ち、同サイドの裏側にボールを蹴り出す。裏に走るヌニェスとベラ=コチャプの戦いはなかなかに見応えがあった。ベラ=コチャプも奮闘してはいたが、ここはヌニェスの得意分野。パワーとスピードをスペースで競う形では負けない。

 逆サイドではサラーが相手を背負う形で起点を作る。サイドを主体に押し込む機会を得たリバプールはセットプレーから先制。右サイドからのFKで先手を奪ったのはフィルミーノ。ブラジル代表に選ばれなかった悔しさをぶつける先制点をもぎ取り、リバプールがリードする。

 しかし、サウサンプトンも即座に同点に。こちらもセットプレーからアダムスがゴールを奪った。すぐにやり返すことができたのは、リバプールと同じくサウサンプトンも流れの中で前進の手段を得ていたからである。

 非保持においては4-4-2気味だったが、保持においてはやや変化をつけてきたサウサンプトン。ウォード=プラウズが1列前に入り、S.アームストロングがインサイドに絞り、プローがWBに入る3-1-4-2気味の陣形に。

 アダムスへのポストをS.アームストロングが拾い、そこからサイドに展開しながら敵陣に迫るという形は効果的。アダムスはリバプールのバックライン相手に十分ボールを収めることができていたし、MF陣はリバプールの中盤の守備の切れ目で巧みにボールを拾ってみせたし、パスワークのリズムとスピードも順調だった。

 ヌニェスとアダムス、どちらのFWも前進に大きく貢献していたが、ここから先の時間帯でのフィニッシュの貢献度には差が出ることに。勝ち越しゴールを決めたのはヌニェス。エリオットからの抜け出しで追加点を奪うと、ロバートソンのオーバーラップから折り返しを受けて前半のうちにさらに加点。ハーフタイムまでに2点のリードを奪う。

 後半のアダムスにも得点を奪うチャンスは十分あったが、立ちはだかったのはアリソン。髭を剃って見た目が変わっても、リバプールのゴールマウスに鍵をかける役割は同じ。アダムスの更なる得点を許さない。リバプールが徐々に4-4-2フラットの陣形で低い位置まで下がるブロックを組むようになったこともあり、後半のサウサンプトンは前半ほど伸び伸びと攻めることはできなかった。

 早い時間でリードを奪ったということもあるが、高いラインを張るサウサンプトンとリバプールのFWのダイナミズムを活かした攻めの相性は良かったように思う。試合終盤までリバプールには決定的な得点のチャンスがあったし、その多くはサイドの裏抜けから生み出されたものである。

 撤退ブロックの崩しという課題は据え置きだが、そこの課題に向き合うのは前線の故障者が帰ってきてからということになるだろう。終盤まで攻め続けたリバプールはサウサンプトンに反撃を許さずに逃げ切りに成功。苦しい前半戦となったが、最後は連勝で中断期間を迎えることになった。

試合結果
2022.11.12
プレミアリーグ 第16節
リバプール 3-1 サウサンプトン
アンフィールド
【得点者】
LIV:6′ フィルミーノ, 21′ 42′ ヌニェス
SOU:9′ アダムス
主審:シモン・フーパー

④ノッティンガム・フォレスト【20位】×クリスタル・パレス【10位】

■PKのピンチを切り抜けて先制点で波に乗る

 最下位ながらも徐々に戦績が改善しつつあるノッティンガム・フォレスト。勝てばW杯中断前にボトムハーフ脱出のチャンスがある。

 フォレストの戦い方は普段通り。守備においては相手のバックラインは放置。クリスタル・パレスのCBは自由にボールを持つことができていたし、トップに入ったギブス=ホワイトはアンカーのドゥクレを監視する形で戦う。

 パレスは問題なく前進ができていた。ズレを作ったのは左サイド。IHのシュラップが1列降りる形でボールを受ける。IHのイエーツはこれにどこまでついていくかを悩む。なぜならば、彼の背後ではエゼが絞って中央で受けようとしているからだ。

 シュラップとエゼの動きの恩恵を受けたのがSBのミッチェル。大外を駆け上がるスペースを享受し、絞ったシュラップやエゼからボールを引き取ってボールをフリーで持ち上がることができていた。

 相手を奥まで押し込んだ際には即時奪回を敢行。フォレストは比較的苦しい状態でもバックラインから繋ごうとしていたので、パレスはホルダーにプレッシャーをかけることで、セカンドボールを拾って波状攻撃に繋げることができていた。

 優位に試合を進めていたパレスに比べるとフォレストは前進が厳しい。ライン間のギブス=ホワイトに繋ぐことができれば、右サイドのジョンソンの抜け出しを活用することができるが、偶発的な流れ以外ではギブス=ホワイトに前を向かせられずに苦戦する。

 そうした展開に沿うように先制のチャンスが訪れたのはクリスタル・パレス。ザハがPA内で倒されてPKを獲得。絶好の機会を得るが、このPKはまさかの枠外。前半のうちに先行する大チャンスを逃してしまう。

 後半も試合の展開は変わらず。パレスがボールを持ちながら、フォレストがカウンターを機会を伺う形で対抗する。優勢だったのはパレスだったが、それをひっくり返して先制したのはフォレスト。アンカーのフロイラーがパス交換から前線までボールを運ぶと、右サイドのジョンソンに展開。折り返しをギブス=ホワイトが押し込んで均衡を破って見せる。

 このゴールを手にしたフォレストは勢いに乗る。3トップの裏抜けはこれ以降冴え渡り、特にリンガードの抜け出しから追加点のチャンスを多く作り出していた。追加点を決められれば完璧だったが、先制点を境に明らかにペースはフォレスト側に流れた。

 パレスはエビオウェイ、マテタ、エドゥアールなどアタッカーを続々と投入するが、ペースを再び戻すことはできなかった。ザハのPK失敗の代償は大きく、先制点を掻っ攫われたパレスは完封負け。勝利したフォレストは18位に浮上し、中断前に最下位から脱出することに成功した。

試合結果
2022.11.12
プレミアリーグ 第16節
ノッティンガム・フォレスト 1-0 クリスタル・パレス
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:54′ ギブス=ホワイト
主審:ジョン・ブルックス

⑤トッテナム【4位】×リーズ【12位】

■三度のリードとゲームクローズを咎めたクルゼフスキ

 リーグ戦ではホームゲーム連敗中のトッテナム。大物食いの印象が強いリーズは楽な相手ではないが、上位追走のためにも悪い流れを止めるためにもどうしてもここで連敗には歯止めをかけたいところである。

 リーズはここ数試合と同じく、リーズは相手にハイテンポな対応を仕掛けるようなパフォーマンス。高い位置からのプレッシングと奪ったら素早く裏を狙うスタンスで、トッテナムを早いペースに誘っていく。

 しかし、リーズの先制点は自陣からのビルドアップのもの。右サイドのロングボールから左サイドに展開し、サマーフィルが最後は仕留めてみせた。左サイドにスムーズに運んだ右サイドの面々と、フィニッシャーのサマーフィルは素晴らしい働き。一方で、中盤で反転を許したホイビュアと逆サイドで2対1を作るのに失敗したエメルソンの対応は勿体無いように思えた。

 先制を許したトッテナムだが、リーズの誘導するテンポに乗っかるのはやぶさかではない。早い攻撃は彼らの得意なところである。ソンがいない分、いつもより直線的ではなかったが、右サイドからクルゼフスキがストライクの裏をとりゴールに迫っていくように。しかし、いつものソンを使った直線的なルートに比べると、右の裏をとってから中央から攻略する形は手数が多い分、トッテナムの不安定なポゼッションからリーズのカウンターを食らうこともしばしばである。

 セットプレーから同点に追いついたトッテナムだが、そのゴールの流れに乗り切れずペースを引き込めない。リーズもカウンターを仕留めきれず、ファウルの応酬になり続けた前半の終盤。乱戦気味の展開で追加点を奪ったのはリーズ。セットプレーから二次攻撃を行いながら、ロドリゴがゴールを決めて前半に再びリードを奪う。

 後半は前半以上に得点の奪い合いに。トッテナムが押し込む流れから、スローインのリスタートでクルゼフスキが奥行きをとり、マイナスのパスからミドルがピンボール状に跳ね返りゴールに吸い込まれた。

 失点すると奮起するのがこの日のリーズ。今日、3回目のリードとなった3点目はベンタンクールのドリブルを咎めるところからカウンターで再びロドリゴが決める。

 両チームとも互いにフォーメーション変更した終盤。5-3-2に変化したトッテナムはビスマの投入で中盤の持ち運びの頻度が増加。その分、非保持の際にケアが回りにくいサイドではリーズが安定したポゼッションができるようになっていた。それでも、リーズが使いたいであろう中央を閉めるというプランは悪くないように思う。ただ、リードする前にこのプランを使ったということは前線の控えの枯渇による消極的な選択である可能性も捨てきれないけども。

 同じく、前線の控えが乏しいリーズは5-4-1にシフト。最終ラインの人員を増加し、トッテナムのサイド攻撃に備える。しかし、この備えはクルゼフスキにとっては関係なし。右サイドからの彼の侵入は3点目と4点目を決めたベンタンクールにばっちりつながり、一気にトッテナムは逆転まで持っていく。

 なんとか再び得点を決めたいリーズだが、アダムズの退場でジエンド。本拠地で3回リードを許したトッテナムが最後は意地をみせての逆転勝利。ホームでの連敗をストップし、中断期間に突入することとなった。

試合結果
2022.11.12
プレミアリーグ 第16節
トッテナム 4-3 リーズ
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:25′ ケイン, 51′ デイビス, 81′ 83′ ベンタンクール
LEE:10′ サマーフィル, 43′ 76′ ロドリゴ
主審:マイケル・サリスベリー

⑥ウェストハム【15位】×レスター【14位】

■らしさが滲み出てきたレスターがカウンター2発で完勝

 フォーメーション上ではレスターは4-3-3のような形だが、非保持においてはデューズバリー=ホールを1列上げる4-4-2のプレッシングを行う。そのため、どちらのチームも保持に回った時は4-4-2を攻略する手段を模索する試合となった。

 トップのプレスは過度ではないけども、バックラインはどちらのチームも降りる動きに対しては比較的強気でついていく。よって、降りる動きに合わせてつけられるパスには厳しく咎められる両チーム。久しぶりの出場となったトーマスも早い段階でインターセプトからチャンスを作れたため、自信いっぱいでプレスをかけられたと思う。次のプレーでは張り切りすぎて裏取られていたけども。

 裏をとるという部分で言うとどちらも左サイドから光を見出せていた。アマーティとカスターニュの間が空いていることが多かったため、そのサイドから逆サイドのボーウェンが裏を狙う!みたいなこともあった。

 しかし、結果を出したのはレスターの方。中盤でのこぼれ球を拾ったスマレから左サイドの裏を一発でとるバーンズへのパスでカウンターを発動。逆サイドまで展開し、最後はマディソンが沈めて先制点を奪い取る。

 ウェストハムのアンカーの管理が怪しかった分、裏を狙うために起点にしたい中盤でフリーの選手を作ることができたのはレスターの方。その分、きっちりと優勢に試合を進めた印象で、前半終了間際にはダカの抜け出しからPKを獲得する。しかしながら、これはファビアンスキがセーブ。ティーレマンスは絶好のチャンスを逃してしまう。

 流れに乗るチャンスを得たウェストハムだが、なかなか攻撃が活性化せず。特にスカマッカのポストを軸にした攻撃ができず、アタッキングサードにおける解決策が見つからない。

 レスターが後半早めにティーレマンス→ンディディの交代を実施した結果、重心がだいぶ下がったため、ウェストハムは押し込む機会を得ることになった。だが、固められた中央ではスカマッカを活かしたポストはできず。さらにはサイド攻撃もフォローが少なく、SBが孤立する形になってしまう。こうなるといい形でエリア内に入れるのは難しく、単調なハイクロスに注視することになってしまう。

 ボール保持をなんとか頑張りたいウェストハムはソーチェク→フォルナルスの交代を実施。しかしながら、交代で入ったフォルナルスのパスミスから、レスターがロングカウンターを発動。最後はバーンズが決めて試合は決着する。

 先発も交代メンバーでの修正も得点に結実しなかったウェストハム。ビルドアップの引き出しが増えて徐々にロジャーズらしさが見えてきたレスターとは対照的に苦しい状況が滲み出る敗戦となってしまった。

試合結果
2022.11.12
プレミアリーグ 第16節
ウェストハム 0-2 レスター
ロンドン・スタジアム
【得点者】
LEI:8′ マディソン, 78′ バーンズ
主審:ジャレット・ジレット

⑦ニューカッスル【3位】×チェルシー【7位】

■明暗くっきりのセント・ジェームズ・パーク

 敗れた試合は未だ1試合だけと快進撃を続けるニューカッスル。中断前の最後の相手には4試合リーグ戦に勝っておらず、CL出場権との勝ち点差が開いているチェルシーである。

 注目度の高さとは裏腹にジリジリするスタートとなったこの対戦。試合はまずはアクシデントから幕を開けることとなる。チェルシーのロフタス=チークが早々に負傷退場。チアゴ・シウバを投入し、アスピリクエタを1列前に上げる形でポッターは手当を行う。

 ただ、この交代はこの日のチェルシーの前進手法から考えるとやや厳しいものになった印象だ。サイドに流れるブロヤのキープを主体とした前進なのだが、キャッチアップするWBはサポート役として重要。ブロヤの手前でターゲットになり、ブロヤに裏抜けのパスを送るか、あるいはロングボールを収めてキープするブロヤを追い越す形で、オーバーラップを行うかのどちらかができる選手を準備したかった。そうした役割はアスピリクエタよりはダイナミズムのあるロフタス=チークの方が向いていたはず。

 シャドーにマウントとギャラガーというMF色の強い選手を置いたこの日のチェルシー。ブロヤに収まった後のところで彼らはエリア内に入るタイミングが遅く、PAが空っぽになってしまうことがしばしば。ブロヤに収まりはしていたが、その手前と先の部分を整備できない分、チェルシーの前進は不安定なものになってしまった。

 一方のニューカッスルの保持は安定感はより感じられるものに。低い位置をプロテクトするチェルシーのWBとシャドーの距離が空いているところを安全地帯とし、ニューカッスルはチャンスメイクを行う。

 左サイドのウィロックのカットインなど、サイドの深い位置からの決定機創出もチェルシーよりはできたいたニューカッスル。ただ、対戦相手に襲いかかるようないつも通りの迫力を出せていたかと言われると難しいところ。中盤でのデュエルでファウルを繰り返したことで、ややリズムよく攻め込む機会を確保するには苦労した印象だ。

 迎えた後半もニューカッスルの優勢は変わらない。左右のサイドから攻め込み、前半よりも奥行きを取る形でチェルシー陣内を抉りながら侵食していく。特に狙っていたのは右サイド。デビュー戦となったホールのサイドから絶好調のアルミロンを軸に攻め立てる。

 チェルシーはビルドアップからの脱出ができず苦しむ状態が続く。押し込まれ続けたチェルシーはついに失点。アルミロンの横ドリブルでクリバリを振り切ると、ドリブルを引き取る形になったウィロックがミドルを決めてついに均衡を破る。

 ビハインドになったチェルシーは4-3-3にシステム変更。WGをはっきりさせたことでサイドの深い位置は取れるようになった。しかしながら、CFをハフェルツに変更したにも関わらず、2人マークにつかれているハフェルツにハイボールを放り込むなど、不可解な攻めが目についた。WGのツィエク、プリシッチはいずれも決定的な仕事をすることができず、チェルシーはこの日も沈黙でゲームを終えることに。

 かたや、クリスマスを3位で終えることを決め、かたやリーグ戦5試合勝ちなし、公式戦300分ノーゴール。試合を終えたセント・ジェームズ・パークの両雄の表情は明暗がくっきり分かれるものとなった。

試合結果
2022.11.12
プレミアリーグ 第16節
ニューカッスル 1-0 チェルシー
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:67′ ウィロック
主審:ロベルト・ジョーンズ

⑧ウォルバーハンプトン【19位】×アーセナル【1位】

■5バックに対する十分な対抗策提示

 レビューはこちら。

 ウルブスは3枚のCBを並べるスタメン。ウルブスは3バックの印象が強い!という人が多いかもしれないが、今季はほとんど4バック。スタートから3バックの採用はここまでわずかに1試合だけである。

 というわけでアーセナルがウルブスのブロック守備を崩すチャレンジをするというのがこの試合のメインストリームだった。ブロック守備を敷いているウルブスはアンカーのトーマスを3-2の前線のユニットで幽閉し、左右の素早い展開を塞ぐ。

 そうなると陣形的にワイドが手薄になるウルブス。ここで奮闘したのはウルブスのWB。特に左のWBに起用されたブエノはかなり印象的なパフォーマンス。正直、アーセナルファン目線で言うと、ブエノは攻撃的なキャラクターのイメージだったので、対面のサカで優位が取れると思っていたのだけど、ブエノはかなり粘り強いパフォーマンスに終始していた。

 アーセナルにとって誤算だったのはジャカの途中交代。ポジションチェンジが増えている左サイドでの抜け出しが巧みなジャカが体調不良によっていなくなってしまったことで、左サイドの機能性が低下。交代直後はヴィエイラが戸惑っていたことや、SBのジンチェンコが低い位置で構えていたことで崩しの兆しが見えなかった。

 ロングカウンターに徹するウルブスも攻撃という観点では苦戦。ロングカウンターの申し子と言えるアダマ・トラオレはあっという間にアーセナルに囲まれてしまい、なかなか前に進むことができない。

 サイドに流れるところで存在感があったのはゲデス。直線的に前に進むよりも、ジンチェンコの裏を取る形からゴールに迫る形の方がアーセナルのPAまでボールを運ぶことができていた。しかしながら、そもそも保持で攻める機会が足りておらず、アーセナルに比べてウルブスが効く攻撃を繰り出せているというわけではなかった。

 後半、停滞した攻撃の状況に解決策を見出すことができたのはアーセナル。SBは高い位置で攻撃参加するようになり、IHのファビオ・ヴィエイラが左のハーフスペースの抜け出しを増やすなど、徐々にアタッキングサードでの動きを増やしていく。

 すると、アーセナルの先制点は55分。マルティネッリのサイドチェンジ、ジェズスの横ドリブル、ヴィエイラの抜け出しと折り返し。どれをとっても素晴らしい5バック対策の理詰めの崩し。ウーデゴールの先制ゴールはウルブスの5バックに対しての模範解答と言えるものだった。

 失点したウルブスは反撃するべく攻撃的なタレントを投入。前からのプレッシングを高めていく。しかし、WBのレンビキサのところからウルブスは失点。ボールを奪ったマルティネッリから大外を回ったジンチェンコがエリア内を抉っていくと、最後は再びウーデゴールが仕留めて決定的な2点目を得る。

 崩し、ダメ押し、シャットアウト。時間はかかったが、ウルブスの5バックに対して十分な対抗策を示したアーセナル。クリスマスの首位を気持ちよく確定させて、中断期間を迎えることとなった。

試合結果
2022.11.12
プレミアリーグ 第16節
ウォルバーハンプトン 0-2 アーセナル
モリニュー・スタジアム
【得点者】
ARS:55′ 75′ ウーデゴール
主審:スチュアート・アットウェル

⑨ブライトン【6位】×アストンビラ【13位】

■ルイスのリベンジ達成が逆転ゴールの足がかりに

 1分に達する前に試合は動く。先制したのはブライトン。ドウグラス・ルイスへの縦パスを咎めたマック=アリスターがそのままシュートを蹴り込み先制する。

 ビラの失点の仕方はユナイテッド戦を見る限り、いかにもこういう形からのミスはありそうだなという類のもの。相手を引きつけて擬似カウンターの「引きつけて」の部分で決定的なミスが起こってしまうというやつである。

 先制はされたビラだが、引きつけての擬似カウンターというプランがうまくいっていないわけではなかった。GK-CBの3人でフラットに並んでのビルドアップはマルティネスに正確なフィードがあることもあり、前線への長いボールは普通に機能。降りてくるCHにボールを入れるタイミングも失点直後のララーナの負傷のタイミングで整理した感があった。

 アストンビラの前線にボールが入れば、ブライトンとのバックラインとのスピード勝負になる。ビラの擬似カウンターは選択肢を突きつけながら前に進んでいくというよりは、少ない人数で広いスペースの状態を前線に作り出し、わかっていても止められない形を作り出すことに重きが置かれているように思う。

 同点ゴールとなったPKのシーンはまさにその形。ブエンディアの選択肢は実質マッギンへのパスしかなかったが、ダンクとのスピードのミスマッチを活用し、マッギンは見事にファウルをもぎ取ってみせた。

 ブライトンは試合のテンションに引っ張られるようにやや落ち着きのないボール保持になった。高い位置からプレスにくるビラのバックラインにCBがあたふたすることもしばしばで、いつものように相手を見て穴があるところにボールを送るような形は鳴りを顰めるように。

 CBに抜擢されたコルウィルはチャレンジングなパスを好み、攻め筋はいつもよりも直線的。やり直しの少なさはいつもと少し異なるテイストを感じたし、そうした中で前線に顔を出せるマック=アリスターや、左サイドを駆け上がれるエストゥピニャンなどは頼りになる存在だったと言える。

 展開としては互角に近いものだったが、完成度の違いが出にくい予想のつきにくい流れに持っていったのは、監督就任間もないビラの方が好都合な前半だったと言えるかもしれない。

 後半は前半よりは保持で落ち着きを見せるようになったブライトン。このまま、押し切るモードになるかと思いきや、まさかの落とし穴。なんと、自陣でのボールロストをカウンターで仕留められてしまう。ルイスがマック=アリスターを咎めてのショートカウンターという構図はブライトンの1点目と全く逆の形。ルイスはリベンジ達成した格好になった。

 3バックに移行してWBの攻撃参加を促すブライトン。右はマーチ、左はトロサールが幅をとり両翼から攻撃を仕掛けていく。対するビラは即座にバックラインの人数を増やす。5バックかと思いきやまさかの6バック。人余ってるし、ライン揃えにくくなるだけでは?と思ったし、あまり実効的ではない気もしたが逃げ切れたのできっと正義なのだろう。

 終盤はビラが交互に無限にカードを貰い続ける展開に。ブライトンにとっては非常にストレスの溜まる状況だったはず。ファウルに塹壕戦と何もかも投げ打って守りに入ったビラが逆転勝利に成功。エメリはこれで就任後2連勝を飾ることとなった。

試合結果
2022.11.13
プレミアリーグ 第16節
ブライトン 1-2 アストンビラ
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:1′ マック=アリスター
AVL:20′(PK) 54′ イングス
主審:クリス・カバナフ

⑩フラム【9位】×マンチェスター・ユナイテッド【5位】

■18歳の新星が生み出した劇的な結末

 W杯直前のリーグ戦は今節が最後。プレミアの最後を飾るのは昇格組のフラムがホームにマンチェスター・ユナイテッドを迎える一戦である。

 両チームとも非常に意欲的な立ち上がりだったと言えるだろう。ユナイテッドはキック&ラッシュ寄り。中盤でのボール回しよりも、とっとと長いボールを前線に当てる形で、フラムのストロングである中盤のフィルターを超えてしまおうという算段なのだろう。ショートパスにこだわって、ミスに繋がったシーンもあったので、ユナイテッドがこのプランを基本線にしたのはそれなりに意義がある。

 一方のフラムは前進のルートがかなり明確。降りてくるウィリアンの大外を回るようにオーバーラップするロビンソンを生かして左サイドから裏を狙っていく。好調なのはウィリアン。ヴィニシウスへのロングボールの落としから、素早く拾える位置に移動。前を迎えるポジションを取ったことで攻撃を加速させることができる。

 出場停止のハリソン・リードに代わって中盤に起用されたのはケアニー。ボールを運ぶ意欲が高く、積極的にボールを持ってからのキャリーで存在感を示そうとしていた。

 しかし、そのケアニーの意気込みが裏目に出てしまったのが、ユナイテッドの先制点の場面。エリクセンがドリブルを咎めると、左サイドに展開。ブルーノのシュート気味のラストパスを押し込んだのはボール奪取の起点になったエリクセンだった。

 ビハインドになったフラム。だが、ヴィニシウスへのロングボールの落としを拾っての左右の展開はかなり形としては効いていた。序盤はやや停滞気味だった右サイドも前半の中盤からは積極的に使えるように。スコア上はビハインドだけど、フラムもやれることは割とできている感があるはずだ。

 後半も試合はアップテンポな状態に。リームのフィードからヴィニシウスが決定機を迎えるなど、敵陣の深い位置まで侵入してチャンスを作り続ける。デ・ヘアが立ちはだからなければ、フラムは後半開始早々に追いついてもおかしくはなかった。

 一方のユナイテッドも相手のプレスを一枚一枚剥がしながら前進していくスタンスから着実に敵陣に迫っていく。後半開始から両チームともゴール前のシーンが多く、どちらのチームに次の得点が入ってもおかしくなかった。

 そうした展開の中で点を決めたのはフラムだった。左サイドでボールを持ったウィリアンは同サイドの高い位置まで走り込んだケアニーへのパスを選択。速い折り返しに合わせたのはジェームズ。古巣相手に大仕事を果たしたウェールズ代表の一撃で試合は振り出しに戻る。

 以降も一進一退の攻防が繰り広げられるが、中盤での出足はややフラムが優勢だったか。後半追加タイムは短かったこともあり、このままドローで終わるかと思われた矢先に大仕事をしたのはユナイテッドの18歳。エリクセンとのワンツーで抜け出したガルナチョが決めたプレミア初ゴールは勝ち点3をもたらす大きな得点となった。

 新星のプレミア初ゴールで劇的な勝利を飾ったユナイテッド。決め切れない引き分けをラストワンプレーでドラマティックな夜に変えてみせたガルナチョが殊勲であることに疑いの余地はない。

試合結果
2022.11.13
プレミアリーグ 第16節
フラム 1-2 マンチェスター・ユナイテッド
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:61′ ジェームズ
Man Utd:14′ エリクセン, 90+3′ ガルナチョ
主審:ポール・ティアニー

今節のベストイレブン

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