①ノッティンガム・フォレスト【20位】×リバプール【7位】
■デザインされたセットプレーで最大級のアップセットを提供
なかなか未勝利地獄から脱出できないノッティンガム・フォレスト。ランチタイムで迎える今節の相手はようやく連勝で勢いが出てきたリバプールである。
だが、星取りとは裏腹にリバプールは台所事情の苦しさが目立つ。特に苦しいのは前線。ディアス、ジョッタに続いて今節はヌニェスも欠場となり、控えメンバーで最も攻撃的な選手はオックスレイド=チェンバレンになっている。司令塔のチアゴも不在となり、中盤のやりくりも決して楽ではない状況だ。
というわけで早い時間に得点が欲しいリバプール。フォレストは立ち上がりから猛プレスをしてくることはないので、問題なくボールを持つことができる。
この日のリバプールの攻撃は右サイド偏重。とはいえこれまでと違い、逆サイドがディアスではないのである程度は仕方ないという感じでもある。カルバーリョはボールが集まってくるわけではなかったけども、動き出しをサボらずに駆け引きしている感じはよかった。そしてその動き出しを見逃さないゴメスの配球もよかった。
右サイドの攻撃はミルナーの斜めのランが効いていた。大外に相手を釘付けにしてから斜め方向に内側に入ってくるオフザボールの動きでフォレストを翻弄する。動けるクヤテの注意をきっちり外に向けることができればかなりクリティカルなチャンスになっていた。
セットプレーの好機もあり、押し込むこと自体がある程度得点のチャンスに掴み取れないそうなリバプール。しかし、無理に中央につけようとするとフォレストのカウンターの好機に。前半の中盤あたりはかなりリバプールはミスが目立っていたため、少なくない機会でフォレストはロングカウンターに向かうことができていた。
しかし、フォレストはこの好機を活かせない。ボールを2,3本繋ぐ過程でミスが出てしまい、リバプールのDF陣にチャレンジする手前の段階で攻撃が終了してしまうのは勿体無い。リンガードにはこの辺りをスムーズに牽引して欲しいのだが、なかなかスマートにボールを前につなげない。
序盤を見る限りリバプールのプレスは中盤の連動が遅れていたため、フォレストはショートパス主体の保持を根性入れて頑張る!でもよかったのだけども、早い攻撃も遅い攻撃もなかなかリバプールを脅かすクオリティまでは持っていけず。攻略するのには苦労した前半となった。
迎えた後半はカウンターの打ち合いからスタート。打ち合いになればリバプールに分がありそうなものだが、ゴメスのパスミスからファウルを与えると、このプレーからアウォニイが先制ゴールをゲット。大外にクックを走らせるデザインされたセットプレーから先手を奪う。
追い込まれたリバプールはアレクサンダー=アーノルドを投入。右サイドの攻撃力強化に加えて、セットプレーのキッカーを強化することで畳み掛けにいく。
フォレストは5-3-2に変更し、撤退を最優先。ジョンソン、ギブス=ホワイト、クヤテorイエーツでロングカウンターからあわよくばという形にシフトする。試合終盤には2トップもサイドの守備に駆り出されるようになり、場面によっては6-4-0のように見える場面すらあったほどである。
そんな撤退守備に対して、リバプールはセットプレーを中心に攻め立てる。おそらく、この日一番決定機を多く手にしたリバプールの選手はファン・ダイクというのがリバプールの攻撃を物語っている。
しかし、立ちはだかったのはヘンダーソン。押し込まれても冷静にミスなくプレーを正確に刻み続ける守護神によって、リバプールはゴールをこじ開けることができない。
試合はそのまま終了。フォレストはウェストハム戦以来の今季2勝目をゲット。一方のリバプールはアウェイでのリーグ戦は5戦勝ちなし。ワールドカップまでにアウェイで勝利を挙げるにはトッテナムを下さないといけないという状況になった。
試合結果
2022.10.22
プレミアリーグ 第13節
ノッティンガム・フォレスト 1-0 リバプール
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:55′ アウォニイ
主審:ポール・ティアニー
②エバートン【15位】×クリスタル・パレス【11位】
■二度押し切ったエバートン
積極策に出てきたエバートンが終始クリスタル・パレスを上回った試合と言っていいだろう。立ち上がりのプレスの姿勢がそのまま両チームの優劣に反映された印象を持った。
パレスはプレッシングは限定的。WGにもプレスバックのタスクを課し、自陣の深い位置までの守備を行っていた。一方のエバートンは高い位置から前線がプレッシングに行く。特にイウォビとキャルバート=ルーウィンというプレス隊の2トップの献身性は光るものがあった。GKまで縦方向に深追いするアクションはもちろん、横へのスライドにも力を入れていた。
サイドにボールを追い込む時にボールサイドではないFWがアンカーを消しに圧縮することで時間を奪う動きができているのが印象的だった。同サイドに閉じ込められる格好になったパレスはなかなかここから開けたスペースに展開することができない。
エバートンの先制点は高い位置からのプレッシングが呼び水になったものだった。逆サイドから絞ったキャルバート=ルーウィンがミリボイェビッチを潰し、カウンターを発動。最後は再びゴール前に顔を出したキャルバート=ルーウィンが決める。前節は攻守に連動せずに空回りが多かったキャルバート=ルーウィンだったが、今節は立ち上がりから攻守に大車輪の活躍を見せることができた。
リードを許したパレスは前進のきっかけを見つけることができず。プレスをスライドさせながら中盤に自由を許さないエバートンの守備網に対して中々ボールを運ぶことができない。降りてくる前線の選手も次々捕まり、アタッカーは呼吸するのも難しかった。パレスのビルドアップ以上に、エバートンのプレッシングが上手だったことも無視できない要素ではあるけども。
一方のエバートンはオナナとイウォビが左右で高さを変えてビルドアップを行っていることに加え、ゴードンやグレイ、キャルバート=ルーウィンなどが中盤に降りてきてアンカー脇に入り込むことでパレスの中盤を混乱させる。保持でも非保持でも優位に立ったエバートン。40分過ぎから反撃に出たパレスは試合をフラットに戻そうと押し込むが、肝心なところでミリボイェビッチにミスが出てしまうなどどうも波に乗ることができない。
そんなパレスを尻目にエバートンは後半に追加点。中盤に降りてきたからスピードアップすると、前線に素早くボールを当てるところからフリーでオーバーラップしてきたマイコレンコにボールが渡る。彼のシュートをゴードンが押し込んでリードを広げる。
3点目のゴールはマクニールのドリブルから。ブロックに切り込みながらイウォビとのパス交換でエリア内に入り込み、一気にフィニッシュまで持っていった。攻撃を期待されて入ったエビオウェイだが、このシーンでは軽い守備が崩壊のきっかけを作ってしまった。
前半の優位と後半の突き放し。2回パレスを圧倒したエバートンが完勝した試合だったと言っていいだろう。
試合結果
2022.10.22
プレミアリーグ 第13節
エバートン 3-0 クリスタル・パレス
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:11′ キャルバート=ルーウィン, 63′ ゴードン, 84′ マクニール
主審:シモン・フーパー
③マンチェスター・シティ【2位】×ブライトン【8位】
■悪い流れは得点で断ち切ればOK
ポッター退任以降、未勝利が続いているブライトン。監督交代後初勝利を目指してエティハドに乗り込むデ・ゼルビが用意してきたプランはオールコートマンツーでのプレッシングだった。
敵陣からとりあえず人を捕まえて追いかけ回す。ポジションを移動してもなるべくついていく形でシティにプレッシャーをかける。シティはエデルソンがボールを持ちながら攻略法を探る展開が続くという状態になる。
前から追いかけ回してくる相手に対して、シティはポジションチェンジを繰り返して対抗する。ブライトンはポジションの入れ替わりのたびに受け渡すか?ついていくか?の判断を繰り返すことになるし、マフレズなどのドリブラーが1枚剥がすことができると、強制的にズレが発生することになる。
ベルナルド、カンセロあたりはこうしたプレスの中でプレーするのは日常といった涼しい顔。時間の経過とともに対面の相手を嘲笑うかのように裏をかくプレーをオンザボールとオフザボールで繰り返す。
もう一つ、オールコートマンツーの対抗法はとっとと前線に蹴ってしまうこと。システムの都合上、保持側が前線が広いスペースで勝負できるというのがオールコートマンツーの弱点の1つである。ハーランド×ダンクのマッチアップであれば、シティに好機ができるのはある意味当然。エデルソンからのキック一発で抜け出したハーランドは飛び出してきたサンチェスとも簡単に入れ替わりあっという間に先制点をゲットする。
2点目はポジションの入れ替わりを生かしたプレーから。離れながらダンクに突っ掛けるベルナルドの身のこなしは見事そのもの。ハーランドがこの2点目となるPKを叩き込み、リードを広げる。
ブライトンの保持は3バックがややアシンメトリーになる形。左に大きく張るトロサールとウェブスターの間にはややスペースがあり、LSB不在のような状況になっていたが、カイセドが上下動することでリンクマンの役割をこなしていた。
ブライトンは敵陣に押し込んだ時は3-2-5でプレー。左はトロサール、右はマーチで勝負して欲しいという願いがこもった陣形。フォローがない代わりに、サイドを変えながらマーチとトロサールに1on1の形を準備することができたブライトン。しかし、特にトロサールが1on1でのマッチアップに苦しんだ印象。対面するアカンジを抜けるシーンがなかなかできなかった。
そもそもブライトンは押し込んでの3-2-5という状況を作るのに、やや苦労していた。途中から降りる選手を使いながら回避するというシティと似た解決策に辿り着くまでに、少し時間を要していた印象である。そういった部分で前半は機会が足りていなかった印象だ。
後半のブライトンはランプティを投入し、左サイドにマーチを移動。トロサールの外に順足のWBを置き、逆サイドにも縦に進めるランプティを配置。サイドの選択肢を増やしながら敵陣深い位置に迫っていく。中盤の飛び出しも増えていき、ブライトンらしい攻撃でシティのゴールを脅かす。
トロサールの追撃弾も同サイドに攻め上がる味方がいたことでフリーになった印象だ。それにしてもあの位置からニアでエデルソンを破るシュートはやばいけども。
前プレがかからなくなったシティは深い位置まで下げられてしまい、ガッツリと自陣側に押し込まれてしまう。リズムは完全に手放してしまったが、流れは悪かろうと得点は取れるのが今季のシティのすごいところ。ハーランドを警戒して4バック気味になり、マンマーク色が弱まったブライトンに対して、ベルナルドが中央から持ち上がるとフリーのデ・ブライネにラストパス。芸術の域であるミドルで突き放すゴールを叩き込み試合を決める。
悪い流れはゴールで断ち切る。強引なやり方でブライトンを黙らせたシティ。昨季とは違う強さを見せて、アーセナルを追撃する勝ち点3を積み上げた。
試合結果
2022.10.22
プレミアリーグ 第13節
マンチェスター・シティ 3-1 ブライトン
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:22′ 43′(PK) ハーランド. 75′ デ・ブライネ
BHA:53′ トロサール
主審:クレイグ・ポーソン
④チェルシー【4位】×マンチェスター・ユナイテッド【5位】
■ポッターの手当てでユナイテッド主導の展開をチャラに
現段階ではCL出場権争いのボーダーにいる両チームの対戦である。ちなみにユナイテッドはこの試合が終われば、前半戦のビック6との直接対決を終えることになる。
試合は順位が下のユナイテッドの方が明確にいい入りだったと言えるだろう。チェルシーはプレッシングにおいてはCBにもプレスをかけるのを諦めない。マウントはリサンドロ・マルティネスに対して、外切りでのプレスをかけるシーンもあった。
ユナイテッドはバックラインでボールを動かしながらチャンスを伺う。バックラインは外を回しながら相手の中盤に穴が開くかを探っている。よくある動かし方はバックラインが左→右に展開。その移動に合わせてカゼミーロが右に流れる。空いた左側のスペースにエリクセンが降りてくると、横パスを受けてフリーに。そこからサイドの高い位置に大きな展開を見せる。
仕上げとなった左サイドは、チェルシーのバックラインを動かしながらクロスを上げる形でPAに入っていく。ユナイテッドに得点があってもおかしくない場面もあり、好調な滑り出しと言えるだろう。
明確な前進ルートを持っていたユナイテッドに比べるとチェルシーはやや前進の物足りなさが際立った。ユナイテッドは前からプレスにはきていたが、枚数は余らせる形。そのため、アスピリクエタのところが比較的余るのだが、大きな展開で素早くアスピリクエタまで動かすことができなかったりというチームの問題や、あるいは素早く持ち上がりにくいというアスピリクエタの性質でなかなか打開の決め手にはならなかった。
前半のうちにコバチッチを入れて修正したポッターのアイデアは、ユナイテッドが有利な状況に風穴を開けるものだった。中盤の経由地を増やすことでユナイテッドはプレスで中盤を潰し切ることができなくなっていた。アスピリクエタ以外に起点を作ったことでチェルシーは前進にだいぶ兆しが見えてきた。
中盤の枚数をチェルシーが増やした影響は非保持面でも。ユナイテッドの中盤を捕まえ切ることができるようになったことでサイドへの展開役であるエリクセンの潰しが間に合う場面が増えた。これでユナイテッドのサイド攻撃の機会は幾分か抑制されたと言えるだろう。
ユナイテッドの優位をチェルシーの対策が打ち消した格好になった後半。チェルシーはワイドに人を置く4-3-3気味の形に陣形を修正する。明確な変更というよりはマウントとスターリングがやや外を気にするようになったという程度の調整と言えるだろう。
中盤が捕まる状況が変わらないユナイテッドはフレッジの投入で4-2-3-1に移行。フォーメーションでどうこうというよりは、列移動しながらボールを受けられるフレッジが欲しくなるというのはわかる。サンチョとショーでなんともならなかった左サイド攻略の3人目の登場人物としてもフレッジは重要だ。
交代で徐々にアスリート系の選手が増えてきたこともあり、試合は終盤に進むにつれてビルドアップの隙を探す展開から、ややダイレクトに縦に進む展開になっていた。しかし、どちらのチームもアタッキングサードにおける攻略に活路を見出せず。試合は膠着した展開に。
そんな状況を変えたのがPK判定だ。マクトミネイがPA内でブロヤを抱え込みPK。こういうのどんどんPKとった方がいいよね。このPKをジョルジーニョが決めて87分にチェルシーが先制する。
ここからやや小競り合いが増えたこの試合。ユナイテッドは守備陣を中心にやや空回りしているかのような振る舞いが続き、なかなか自陣から脱出することすらままならない。
そんな状況を変えて敵陣までボールを運ぶことができたのは左サイドを進んだエランガ。その後のセットプレーでカゼミーロが同点弾を奪うきっかけを作ったのは彼である。
カゼミーロのプレミア初ゴールは劇的であり、高い技術に裏打ちされたもの。あれだけ体が伸びているのに、逆サイドに正確にボールを落とせるヘッドができるのはすごい。場所甘ければケパが届いていた可能性もあった場面だったが、見事にコースを撃ち抜いたシュートで同点に追いついてみせた。
トッテナム戦同様、ビックマッチをまたしても終了間際に落としてしまったチェルシー。展開としてドローは互角だが、終盤までリードをしていたということもあり悔しさは残る。ちなみにユナイテッドとのリーグ戦はこれで5試合連続のドローゲームとなった。
試合結果
2022.10.22
プレミアリーグ 第13節
チェルシー 1-1 マンチェスター・ユナイテッド
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:87′(PK) ジョルジーニョ
Man Utd:90+4′ カゼミーロ
主審:スチュアート・アットウェル
⑤アストンビラ【17位】×ブレントフォード【10位】
■就任初陣としてはパーフェクトな大勝
ついに職を解かれてしまったスティーブン・ジェラード。プレミアのレジェンドとお別れしたビラはこの試合の後になったがウナイ・エメリという11月以降の後任人事が発表された。ひとまず暫定監督となったのはトップチームのコーチだったアーロン・ダンクスである。
ダンクスが採用した4-2-3-1はなかなか面白かった。3センター時代には絶対的なレギュラーだったマッギンとラムジーをベンチに下げて、ルイス(あのレッド、許されたんですね)の相棒にデンドンケルを起用した。WGは左右を入れ替え、ワトキンスを右、ベイリーを左に置いて順足の形になる布陣に。
初陣において先制点が早めに入ったことは非常に心強かったはず。セットプレーからのベイリーのミドルで試合は早々に動き出す。
新布陣においてはいくつかの改善点が見られる。アンカーだと動きすぎるドウグラス・ルイスのケアとして2センターの採用というのも面白いが、最も印象的だったのは左サイドの縦関係。ヤングとベイリーという左右のドリブラーを並べた左サイドの破壊力は魅力的だった。
2点目はこの2人の関係性を生かした斜め方向の崩しで数的には有利だったブレントフォードの守備網をあっさり破壊。最後に決めたイングスはもはや仕上げるだけだったといえるだろう。ワトキンスも右サイドでキープ力を発揮しており、前線の役割としては十分だったといえるだろう。
ブレントフォードとしては2列目の手前の時点で止めたかったが、そこの関門を突破されてしまうことが多かったのが痛恨だった。後列からの人数をかけたビルドアップは大きなサイドへの展開という形で一定の効果を見せてはいたが、いい流れを作る前にアイエルがPA内で相手を引っ張りまくってPK献上。反撃に転じる前に3点のビハインドを背負ってしまう。
流れを取り戻すべくハイプレスに転じたり、1つ奥を狙った縦パスからのレイオフで前進を狙ったりなどブレントフォードは抵抗を見せる。だが、この日はアタッキングサードにおけるサイドからのクロスでなかなからしい破壊力を見せることができない。
後半も勢いよく巻き返しに出てくるブレントフォードだが、アストンビラはポゼッションで一回展開を落ち着けるという大人の対応。2枚交代による巻き返しによる効果は限定的なものだった。
後半も先に得点をしたのはビラ。カウンターから4点目を奪い、後半の反撃の芽を摘む。直後のカウンターでのブレントフォードの決定機が刺さらなかったことで試合は完全決着したといえるだろう。
終盤はワイドを使いながら徐々に保持を増やしたブレントフォードがペースを取り返すが、ボール回しが増えるばかりで中を打開する策がどうしても出てこず苦戦。最後までマルティネスからゴールを奪うことはできなかった。
監督交代後の初陣としては完璧な働きをしたダンクス。いい流れを絶やさずにエメリへのバトンをつなげるか、次節のニューカッスル戦にひときわ注目が集まる結果になった。
試合結果
2022.10.23
プレミアリーグ 第13節
アストンビラ 4-0 ブレントフォード
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:2′ ベイリー, 7′ 14′(PK) イングス, 58′ ワトキンス
主審:ダレン・イングランド
⑥リーズ【16位】×フラム【9位】
■セットプレーで流れを引き戻したフラムがトップハーフをキープ
互いに4-2-3-1。前線からきつめのハイプレスを仕掛けてくるという点で立ち上がりは落ち着かない展開になった。だが、試合は数分もすれば保持側が相手にハイプレスを諦めさせる形に収束していく。
先に相手のハイプレスを解除することができたのはリーズの方。中盤のヘルプに出てくるフラムのSHの裏を効果的に使うことで、ズレを生かしながら前進することが出来ていた。フラム攻略の第一歩は「とりあえずミドルゾーンでのプレスを押し下げること」なので、リーズは10分もかからずにそこまでたどり着くことが出来たといっていいだろう。
一方のフラムも15分ほどすれば落ち着いたポゼッションが可能に。こちらはパリーニャがフリーになれるかがプレス脱出のキーポイントになる。プレッシングがきつかったリーズに対しては後方からの繋ぎだけではなかなかパリーニャに自由を与えるのは難しい。
ここで登場するのがフラムの前線。リーズのバックラインを背負っての落としをパリーニャまでつなぐことでポストからパリーニャへの導線を確保する。際立っていたのはウィリアン。彼が降りることでミトロビッチの組み立てのタスクを軽減できるし、左右に動きながらのボールの引き出しもお手の物。黒子として十分な働きをしているといっていいだろう。
もう1人、フラムの中で目立っていたのはハリソン・リード。右のCHが基本ポジションの彼だが、右のハーフスペースに抜け出す動きが際立っていた。この動き自体は普段から多く見られているのだが、この日は余計に目立っていたように見える。インサイドに入り込むウィルソンとの関係性がよかったのかもしれない。
一進一退の攻防の中で先制したのはリーズ。ロビンソンをきれいにはがしたハリソンが一気にゴール前まで迫ると最後はロドリゴがゲット。リーズが先手を奪う。
しかし、フラムはすぐに反撃。セットプレーからニアのミトロビッチという形であっさりと同点に追いつく。
互いにエースが決めると試合は再び打ち合いの展開に。リーズがFKのチャンスを得ると、そのFKを跳ね返したフラムがペレイラの独走からチャンスを迎えるなど目まぐるしい展開となった。
後半も互いに組み合う展開になった両チームだが、やや優勢に進めたのはリーズか。プレッシングを打ち破るシーンとひっかけるシーンを作りながらフラム相手にゴールに迫っていく。
流れに逆らうというほどではないのだけど、この試合のフラムはリーズにペースが流れそうだった時にセットプレーから得点を挙げることが出来ていた。後半に決めたのはボビー・リード。前半に続きセットプレーを決めたフラムが一歩前に出る。
フラムはさらにリードを広げる。後半も右の裏抜けを積極的に行っていたハリソン・リードがチャンスメイク。ウィリアンにラストパスを送り、試合を決める3点目を奪った。
ダフィーを入れて5バックに移行した後に、リーズに追撃弾を入れられたのは課題ではあるが、フラムは何とか逃げ切り勝利。トップハーフを堅持することに成功する。逆にリーズは降格圏に足を踏み入れる手痛い逆転負けとなってしまった。
試合結果
2022.10.23
プレミアリーグ 第13節
リーズ 2-3 フラム
エランド・ロード
【得点者】
LEE:20′ ロドリゴ, 90+1′ サマーフィル
FUL:26′ ミトロビッチ, 74′ B.リード, 84′ ウィリアン
主審:アンソニー・テイラー
⑦サウサンプトン【14位】×アーセナル【1位】
■対照的な前後半で痛み分け
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ようやくELにある程度カタがついた感があるアーセナル。連勝継続中とはいえ、パフォーマンスがなだやかに低下しているリーグ戦にここから注力していきたいところである。今節はアーセナルにとってはあまりいい思い出がないセント・メリーズ。中2日で迎える難所をどのように攻略していくかがポイントになる。
ウォーカー=ピータースが不在のサウサンプトンはリャンコ、サリス、チャレタ=カーの3枚のCBを並べるバックラインを形成する。だが、布陣は4バックを維持。この選択が序盤のサウサンプトンの劣勢を招く。
4バックを選択したことにより、サウサンプトンはアーセナルのWGに広げられたバックラインの横幅を守りきれないシーンが目立つ。特に、SB-CB間を守るのに後手を踏み、ここからラインを押し下げられる。
サウサンプトンのCHを引っ張り出すことに成功したアーセナルはここからマイナスの折り返しでチャンスメイク。右サイドからサカとホワイトで押し下げたことで開いたマイナスのスペースに入り込んだジャカが先制ゴールを奪う。これでジャカは逆足で公式戦2試合連続のゴールとなる。
ライン間のコンパクトさも維持できず、アーセナルのチャンスメイクに苦しんだサウサンプトンは前半の内に布陣を変更。5-4-1でひとまずサイドの手当てを図り、ライン間にもCBがアタックしやすい環境を作る。
これによりひとまずアーセナルのチャンスメイクを食い止めることができたサウサンプトン。しかし、ビハインドの状態ではなかなかこの布陣で得点を取るのは難しい。
そこで後半、サウサンプトンはアダム・アームストロングに右のCFとSHを半分ずつやらせるという5-3-2を採用。3センターはサカとホワイトをケアするようにアーセナルの右サイド側にずれており、こちらのサイドは重点的に網を張っていた。
アーセナルからすると距離感が歪な左サイドから攻めたいところ。しかしながら、インサイドに絞る冨安がこのギャップをうまく使うことができず、やや手詰まりになっていく。
ティアニーが入った終盤は大外とインサイドのレーン分けこそできるようになったもの、奥行きを使った裏抜けやレーンの入れ替えは限定的。ウーデゴールがネットを揺らした場面こそ、うまく奥行きを使えていたが、これは一連のプレーの中でエンドラインを割ったとしてノーゴール判定。これ以降は疲れからか、いつものように滑らかなポジションチェンジは少なくなってしまい、敵陣のゴールに迫れなくなっていく。
奥行きを作る頻度が足りないことに悩むアーセナルを尻目にサウサンプトンは反撃。前半からターゲットになっていたアリボを追い越すように裏に走ったプローがアーセナルのDFラインを破ると、逆サイドに展開。ここからエルユヌシとS.アームストロングのコンビで右サイドを打開し、同点ゴールをゲットする。
力のない後半を過ごしたアーセナルに対して、前半の拙さのリカバリーに成功したサウサンプトン。前後半で対照的な出来だった両チームが勝ち点1を分け合う結果となった。
試合結果
2022.10.23
プレミアリーグ 第13節
サウサンプトン 1-1 アーセナル
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:65′ S.アームストロング
ARS:11′ ジャカ
主審:ロベルト・ジョーンズ
⑧ウォルバーハンプトン【18位】×レスター【19位】
■要所で当てたクリーンヒットが大勝の要因
序盤から見ごたえたっぷりの積極策に出て来た両チーム。高い位置からプレスに出て行くことでボールを奪いに行く。かみ合わせでいえば、4-4-2にスムーズに移行できるウルブスの方がプレスをかけやすい気もするが、レスターも4-1-4-1からデューズバリー=ホールが前に出て2トップになる形なので実質同じ。
むしろ、アンカーを2トップで管理する意識が強いウルブスよりもレスターの方が前がかりのプレッシングを行っていたといえるだろう。だが、どちらのチームもロングボールを使っての脱出が出来ていた。特にサイドにおける攻防はいずれも攻撃側が有利で、序盤はアダマ・トラオレが特にブイブイ言わせていた。
受けるのが苦しくなったバックラインは互いにファウルを犯し、FKのチャンスを与える。どちらのチームにもあったFKのチャンスだが、これをモノにしたのはレスター。セットプレーの流れからティーレマンスが見事なミドルを決めて先手を奪う。
このゴールの前後はどちらかといえばウルブスの方がゴールに迫る機会が多かった。例えば4-1-4-1から前に出て行くデューズバリー=ホールの背後のスペースなどはウルブスにとって明確な狙い目になっており、前がかりな守備をひっくり返せる攻め手にはなっていた。
しかし、徐々にレスターがハイプレスからカウンターに移行するなど風向きが変わってきた印象。アダマ・トラオレの早めのロストが目立つのとは対照的に、バーンズが仕掛けをスマートに追加点につなげていたのが印象的だった。殴る機会でいえばウルブスの方が多かったが、前線の攻撃のクリティカルさはレスターの方が上だったということだろう。
後半開始、優勢だったのは2点のビハインドを背負うウルブス。コンパクトさを維持することができないレスターの中盤に対して、ファウルを奪ったりなど敵陣でのプレータイムが長い時間帯となった。
しかしながら、試合の流れを変えたのはまたしてもゴールだ。ウルブスの後半立ち上がりの攻勢を受け切ったレスターは流れを一刀両断するゴールから巻き返しに成功する。マディソンが3点目を沈め、ウルブスの反撃ムードを鎮火する。
さらに畳みかけていくレスター。ハイプレスからボールを奪うと、右サイドからショートカウンターを発動。仕上げたのはヴァーディ。前半に続き、後半も2つのゴールを奪ったレスターはこれでウルブスを完全にノックアウトする。
反撃に出たいウルブスだが、交代する選手たちは軒並み不発。巻き返し切れないままタイムアップする。4点差が試合の内容を正しく反映しているものとは言い難いが、要所で相手にクリーンヒットさせる攻撃を見せたレスターの方が勝者にふさわしかったのは確かである。
試合結果
2022.10.23
プレミアリーグ 第13節
ウォルバーハンプトン 0-4 レスター
モリニュー・スタジアム
【得点者】
LEI:8′ ティーレマンス, 19′ バーンズ, 65′ マディソン, 79′ ヴァーディ
主審:マイケル・オリバー
⑨トッテナム【3位】×ニューカッスル【6位】
■ロンドンを完全制圧したニューカッスルが4位浮上
前日にチェルシーとマンチェスター・ユナイテッドが引き分けたため、勝てば4位というチャンスが巡ってきたニューカッスル。このチャンスを手にするにはトッテナムのホームスタジアムを攻略する必要がある。
トッテナム目線からすると連敗は避けたいところ。しかし、リシャルリソンとクルゼフスキに加えて、この試合ではホイビュアとロメロが不在。苦しいやりくりを強いられている中で難敵を迎えることになる。
立ち上がりはトッテナムがプレッシングに打って出た。まずは腕試し。どれくらいプレスが効くかのチャレンジ。ここ数試合お馴染みのやつである。これをニューカッスルはあっさりと外してみせる。バックラインが横幅を振りながらビルドアップ回避を行う。
詰まらされてしまったら、前に大きく蹴る。蹴ってからは即時奪回を狙い、全体が押し上げていくという流れである。割り切りを見せたニューカッスルの前に今日もトッテナムのハイプレスは空振りに終わってしまう。
一方のトッテナムの保持は「ケインとソンにボールを届けようゲーム」といった感じだった。手段不問、とりあえずこの2人になんとかしていい形で預けるというゲームである。バックラインは横パスを使いながらソンとケインに抜け出すタイミングを伺う。
ニューカッスルに比べるとトッテナムのバックラインのボール回しは少々コントロールが怪しかった。よって、ボールを動かすことはかなりリスキー。それでも確かにバックラインで横に振ることでソンやケインは抜け出しのタイミングを伺えていたので、リスク承知の横パスはある程度の効果があったと言えるだろう。
そうした状況の中で長いボールで先制点を奪ったのはニューカッスル。シェアの長いボールをロリスが処理ミス。抜け目なく奪い取ったウィルソンが無人のゴールにボールをすっぽり収める。絶妙だったのはシェアのフィード。右に回転をかけることで転がりを抑え、ロリスの処理ミスを呼んだ。お見事。
ニューカッスルは続く40分に追加点。こちらは絶好調のアルミロン。中盤からスピードにのったドリブルを仕掛けると、ラングレをあっという間に置き去りにし、角度のないところからロリスを撃ち抜く。確変が止まらないアルミロンのゴールでニューカッスルはさらにリードを広げる。
迎える後半、トッテナムはセットプレーから1点を返す。だがペースをニューカッスルから奪い返すことができない。強固な中盤、前線とバックラインの駆け引き。どこの局面をとってもニューカッスルがこの日は明らかに上手で強いチームだった。
トッテナムは前後半にそれぞれPKの可能性が高い場面で反則を取られなかったという幸運にも助けられ、終盤まで1点差で食らいつく頃ができたが、正直この日はこれで一杯。不在選手の大きな穴を感じるトッテナムをニューカッスルが叩きのめし、4位浮上となった。
試合結果
2022.10.23
プレミアリーグ 第13節
トッテナム 1-2 ニューカッスル
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:54′ ケイン
NEW:31′ ウィルソン, 40′ アルミロン
主審:ジャレット・ジレット
⑩ウェストハム【13位】×ボーンマス【12位】
■上位互換でボーンマスを飲み込む
ここまで見てきたように今節のカードはやたらと打ち合いが多いが、このカードは4-4-2での睨み合いという様相。悪戯に前からプレスをかけてこない相手に対して保持側がどうズレを作っていくかの勝負になったと言えるだろう。
ボールを持つことになったのはウェストハム。しかしながら彼らはそこまで配置でズレを作るタイプのチームではない。よって、序盤はシンプルに背負いながら剥がすチャレンジを行う。しかしながらこのやり方はボーンマスには通用せず。力技では剥がせないことは立ち上がりすぐにわかった。
ということで上下動を始めるウェストハムの面々。スカマッカ、ボーウェンなどの前線の選手が降りて受けることで、相手のマークがどこまでついてくるかを探る。
ボーンマスの選手たちは降りていく選手にはついていくのだけど、上がっていく選手に関しては割と無関心。よって、ウェストハムは元のフォーメーションから縦関係の立ち位置を入れ替える形が有効だと判断。ボーウェンとジョンソンが逆に動くことでフリーの選手を作り出すことに成功する。
一方のボーンマスはなかなか長いボールが刺さらない。ウェストハムは段々と縦パスに対して落としを拾う選手を準備することができていたが、ボーンマスはなかなかできていなかった。この部分で両チームには前進の精度に差があったと言えるだろう。
サイドのドリブラーの質、前線のキープ力も含めて全体的にウェストハムはボーンマスの能力値の一回り上。似たような組み方のチーム同士の対戦は戦力差がくっきり出るという法則で、ウェストハムが優位に立つ。ボーンマスはネト、ソランケというセンターラインの主力を負傷欠場で失ってしまいさらに苦しくなることに。
先制点は前半終了間際。セットプレーからズマがゴールをゲット。試合の流れを反映するように優勢だったウェストハムがハーフタイム前に均衡を破る。
後半も流れは大きくは変わらず。ボーンマスはウェストハム相手に試合を能動的に動かすことができる手段がない感じ。リードしたウェストハムは前進を強引にする必要もないので、前に進まないポゼッションをのんびりできることもボーンマスにとっては悪い話だったと言えるだろう。ウェストハムはやばくなったらボールをあっさり捨てる割り切りも見せていた。
ミドルゾーンで選手が捕まり、ロストが多いボーンマスはいつものように保持からリズムを作ることができない。ウェストハムの下手なロストで巡ってきたチャンスもカウンターでスピードアップがろくにできず。なかなかゴールに迫ることができない。
長いボールが収まるスカマッカを軸にウェストハムは後半にポゼッションの時間を増やしながら相手のプレスを回避する。ボーンマスは逆転のきっかけをなかなか掴めない。
一点が遠く、ウェストハムのゴールをこじ開けられないボーンマスは後半追加タイムにゼムラがハンドでPK献上。ベンラーマがこれを決めて完全決着。上位互換となったウェストハムがボーンマスを下し、勝ち点の確保に成功した。
試合結果
2022.10.23
プレミアリーグ 第13節
ウェストハム 2-0 ボーンマス
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:45′ ズマ, 90+2′(PK) ベンラーマ
主審:デビッド・クーテ