Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第31節
2022.10.2
北海道コンサドーレ札幌(11位/8勝11分10敗/勝ち点35/得点33/失点45)
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川崎フロンターレ(2位/16勝6分7敗/勝ち点54/得点51/失点32)
@札幌厚別公園競技場
戦績
近年の対戦成績
直近10試合で札幌の1勝、川崎の7勝、引き分けが2つ。
札幌ホームでの戦績
直近10試合で札幌の1勝、川崎の7勝、引き分けが2つ。
Head-to-head
基本的にはこのカードの過去戦績は川崎の圧勝である。札幌は川崎にとってはお得意様であり、ここ32試合においても負けたのはわずかに2回。そのうちのほとんどは勝利を飾っているという一方的な内容。勝てば昨年に続いてのシーズンダブル達成となる。
札幌ホームの試合においては川崎はJ1ではまだ負けなし。また厚別競技場でも川崎は未だに負けていない。札幌が勝てばJ1初のホーム勝利と初の厚別での勝利を記録することになる。
スカッド情報
【北海道コンサドーレ札幌】
・深井一希は右膝前十字靭帯断裂で今季絶望。
【川崎フロンターレ】
・レアンドロ・ダミアンは右足関節外側じん帯損傷および右腓骨筋肉離れで10週間の離脱。
・離脱していた車屋紳太郎は練習に復帰した模様。
・チャナティップは右長内転筋肉離れで3週間の離脱。
・大島僚太は右ヒラメ筋の肉離れで6週間の離脱。
・山根視来は累積警告による出場停止から復帰。
予想スタメン
Match facts
【北海道コンサドーレ札幌】
リーグ戦は直近3試合負けなし。残留争いではひとまず危険水域は抜けたという認識でよさそうだ。2試合連続のクリーンシートも継続中は結構珍しいのかなと思ったのだが、今季はすでにリーグ戦で5試合連続クリーンシートを達成済み。失点数は多いがクリーンシートが少ないわけではない。
上位チームに対しては比較的強さを見せており、現在のトップ4相手にはここまで6戦して1敗のみ。その1敗が等々力での川崎戦である。ホームゲームは連勝中だが、連勝以前の4試合は勝ちなしと明らかなアドバンテージがあるわけではない。
今季のチームの公式戦のトップスコアラーはやや意外な感じするが青木亮太。等々力でもゴールを決めており、川崎にもいいイメージはあるはず。相性が悪いチームと指揮官を勝利に導きたいところだ。
【川崎フロンターレ】
直近で勝ち点を落とすケースは全て追いつかれているものばかり。直近10試合の公式戦は全て先制しているが、そのうち過半数の6試合では一度は追いつかれている。唯一そこから勝ち越せたのは横浜FM戦である。追いつかれた試合はアウェイゲームばかり。苦戦が続いている。
間が空けば強いというイメージがある川崎だが、今季は間が空いたタイミングの成績も悪くここまで3戦2敗。ただし、唯一の勝利が6月の札幌戦だ。
このカードといえばやはり小林悠だろう。近年の唯一の札幌戦敗戦の2020年は欠場しており、出場した札幌戦は11戦連続得点記録中で合計14得点を挙げているというちょっと過去に類を見ないキラーぶり。昨年6月以来の2試合連続得点に向けて闘志を燃やしているはずだ。
予習
第28節 C大阪戦
第29節 磐田戦
第30節 横浜FM戦
展望
■多士済々の前線で攻め手にメリハリをつける
リーグ戦はここ3戦で2勝1分。まだ完全に大丈夫!というわけではないだろうが、この間に得た勝ち点7によって札幌の残留はほとんど確実なものになったといえるだろう。安心ではないが一段落という感じだ。
彼らのこの3試合は非常にドラマチックだった。ラストプレーで劇的なゴールを挙げたC大阪戦、大量得点で快勝した磐田戦、そして首位相手に敵地でのスコアレスドローで勝ち点をもぎ取った横浜FM戦。三者三様の結果ではあるが、いずれもチームとしての士気が上がるものであることは間違いない。
ベースとしてはミトロビッチのチームらしくダイナミックな展開を好む。つまり大きくは変わっていないということである。バックラインは基本的には3枚でうち1枚(主に左のCB)は相手のプレス隊の脇に入る。
中盤は最終ラインの近くでゲームメイクを担う役割が1人。横浜FM戦ではCHの高嶺がはっきりと最終ラインに落ちる頻度が高かった。おそらく、これはバックラインの特性に合わせたものだろう。この日の左CBは福森ではなく菅。よりWB的な適性の菅に高い位置を取ってもらうべく、高嶺はCHからバックラインに入ることでサイドから押し出すことを意図したように思う。
バックラインに枚数を揃えると次の手順は縦パスだ。ポストからの落としを受けた中盤がワイドに展開し、そこからWBが仕掛けるという形でエリアに迫っていく。彼らの突破力をチャンスメイクに直結させるお膳立てを整える形である。
磐田のようにタイトに来れなかった相手に対しては前線でタメが作れる選手にボールを預け、ホルダーを追い越す形を使いながら人数をかけた中央突破を行う。磐田は中途半端なマンマークをしたせいで、この追い越す選手を離しまくった上に対応できる選手がいない状態を作られてしまい、ボコボコにされた。
ここ3試合を見る限り、前線のメンバーの中で最も出番をもらっているのがシャビエルはまさしくタメが効く選手。前線の中では興梠も似たような役割を担えるといえるだろう。
怪我人の復帰と夏の新戦力の獲得のおかげで攻撃陣の層の厚みが増したのは好材料といえるだろう。小柏のようなタイプを使えばよりスピードを生かした形にも対応可能。興梠やシャビエルとはまた違った形で持ち味を発揮できる。ジョーカーとして機能しているスパチョーク、ゴンヒなども含めれば多士済々である。
WBも同様でルーカスや金子なサイドでラインを背負った形を得意とする選手もいれば、より直線的な展開を好む青木をコンバートすることもできる。こちらも相手次第で調整が効く部分だ。
守備の懸念は少なくないチームではあるが、田中、高嶺、岡村あたりが揃うと比較的強度が保たれている感がある。降りていく選手にはきっちりついていって縦パスを潰すというミッションは彼らがいればある程度の精度を担保することができる。PAでの粘り腰も多少は見られるようになってきている。ただ、基本的にはマンマークで高い位置から捕まえていきたいチームではあるし、彼らとしてはある程度前プレスの勝算は欲しいところではあるだろう。
最後方にはこちらも絶好調の菅野。セービングとノッた時の手ごわさでいえばリーグでの随一の守護神は良い流れでここ数試合来ている。川崎に対する最後の砦として立ちはだかる展開も十分に考えられるだろう。
■WBがボールを持った時の対策は?
基本的には札幌のプランは高い位置からマンマークで捕まえて、なるべく敵陣でのプレータイムを増やしていこうという発想が根底にある。2020年の等々力での敗戦などはこの意識がハマったことが大きく札幌の勝利に影響した。
アグレッシブ志向が強いペドロビッチは極端に言えばこの時の再現を狙ってくるはず。それであれば興梠やゴンヒよりも小柏や青木といった高い機動力があり直線的なスタイルに適応できる人材を活用する横浜FM戦のやり方を再現する可能性は十分にある。
よって、川崎のバックラインは彼らのスピードに対応しなければいけない。ドイツ帰りの谷口にとっては非常にハードなミッションになるだろう。ここ数試合、前からのプレッシングがハマり切らない川崎にとっては中央でCH→CFへの楔を入れられて、サイドに展開される形からWBとの1on1という札幌の得意なマッチアップに持ち込まれる可能性はある。
対人の観点からいうとポイントになるのはSB。右は山根として、左は佐々木の継続起用の可能性もあるだろう。対面となる金子はここ数試合の相手とは違うタイプでカットインからのペナ角クロスを好むタイプ。プレーする場所だけでいえば家長のようなタイプだ。クロスを上げさせない間合いまで深く追い込む必要があることは頭に入れたい。
サイドでの守備が後手に回ってしまい、IHやアンカーが駆り出される展開になると、今度はバイタルが空く。ワイドからの仕掛けで跳ね返ったボールをミドルで叩き込まれる展開だけは避けたいところ。ラインアップとスライドをサボらずに危険なエリアのケアは継続していきたい。
保持においてはマンマークとの真っ向勝負になるだろう。札幌は2CB+アンカー型のチームには3トップを変形させて2トップ+トップ下で噛み合わせてプレスをかけてくるのがここ数試合のスタンダード。シミッチにはマンマークでついてくることが想定される。
シミッチを使いながら大きな展開を行うのが理想ではあるが、無理してのショートカウンターは最悪なパターン。捕まるようなら蹴りだした方がマシである。
前回の対戦では結果こそ5-2の大勝だったが、決着がついた時間はかなり遅く、スコアほど楽に勝ててはいない。きっちりどこで勝負できるかを探りながらプレスを回避したいところだ。
とはいえ、後半戦の川崎はマンマーク側のチームにはそこまで手を焼いていない。広島のプレスもバラして見せたし今の川崎ならプレス対応に迫られたとしても、脱出さえできれば後ろにスペースがあるマンマークの方がやりやすい可能性もある。
バックラインから時間を作るのはもちろんだが、前線もマッチアップでは負けたくない。マルシーニョが田中に止められまくるパターンも想定できるので、奮起を促したいのはCF。知念は広島戦の再現が理想。相手を背負いながら手前に大きくトラップする形はライン間をコンパクトに維持できない札幌相手には効くはずだ。
小林は逆に駆け引きで勝負したいところ。裏抜けを生かしながら得意な札幌相手に2戦連続で結果を出したい。マルシーニョにはトランジッションから偶発的にできたチャンスを沈める決定力を求めたいところ。札幌のようなバランスに偏りがあるチームならば、そうしたチャンスは転がってくるはず。今年の等々力の対戦のように1つのゴールから流れを一気に持って行きたい。
札幌は粘れる強さも持っているし、終盤に流れを引き寄せられる一体感もある。乗せると怖いチームである。おそらく、札幌ほど極端なマンマークをしてくるチームはここから後には見当たらないので、ここが対マンマークの最終試験ともいえるだろう。今季の後半戦の完成度の高さを見せる一戦にして優勝に望みをつなぎたい。