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本当に信頼できる移籍情報ソースはどこなのか?2023 夏のアーセナル編

 まるで情報洪水というべき欧州の移籍市場。特にプレミア周りの移籍の話はまさに魑魅魍魎。人気とお金があるだけに取り巻く情報量も非常に多い。

 そうなれば情報はまさに玉石混交。どの情報に信頼がおけるかを受け取る側が判断しなければいけない。この記事では夏前半のアーセナルの移籍を振り返りながら、移籍市場の「ソース」の評価を独断と偏見で行っていきたい。まずは各案件の動きから復習しよう。

目次

移籍報道の流れ

デクラン・ライス

 市場開幕よりもはるかに前の段階でアーセナルの関心は伝えられており、この夏のNo.1ターゲットだったことは公然の事実だったといっていいだろう。ウェストハムの狙いは一貫してアーセナルに競合を当てて移籍金を引き上げること。独自案件として見受けられて値切られる展開は避けたかったので、参戦を匂わせてはあっという間に消えたバイエルン以降にレースに残ってくれたシティの存在は彼らにとってはありがたかったはず。バイエルンがライスに興味を持っていたのはうそではないのだろうが「有力視」と踏み込んだ表現をしたPlettenbergの信用は大きく落ちることとなった。

 シティの参入はまことしやかに囁かれていたが、本格参入を一報として投げたのはDi Marzio。近年の英国案件ではない存在感を発揮する展開かと思われたが、「オファーを出した」という勇み足や「シティとライスが一気に合意に近づいている」という報道は「オファーは出していない」「ライスはあくまでアーセナル希望」と英国記者連合軍に反旗を翻されており、当初はスタンスが近そうだったRomanoやOrnsteinからも切り離される格好に。

 その後の展開を見ても基本的にはライスとシティの接触の内容はオファーのタイミングは英国の情報筋の方が正しかったのだろう。シティとアーセナルんp両チームのオファーについて速報役としてフロントランナーになったのはOrnsteinだった。

 もう1つ、この交渉で重要視されていたのは支払いの構造とアドオンの内容。存在は触れつつも有力なジャーナリストが掘り下げなかったこの分野で存在感を発揮したのはTransfer Checker、ExWHUemployee。前者はTwitter、後者はPatreonで、アーセナルのオファーが抱える総額以外の問題点を具体的な数字で指摘し続けた。

 ブレイクスルーとなったシティの撤退の報道を行ったのはJack GaughanやSimon Bajkowskiなどシティ方面の番記者。彼らを発信元として、数分後にRomanoなどの大手が追従する形に。

 シティの撤退および総額の合意から交渉はなかなか進まずヤキモキした展開になりつつあったが、Romanoをはじめとしたソースが問題ないことを強調し続け、最終的には交渉はまとまった。

イルカイ・ギュンドアン

 シティ残留以外にはサウジアラビア、バルセロナ、アーセナルと3つの選択肢がギュンドアンには用意されていた。合計4つの選択肢のうちシティ(Evening Standard)、サウジ(Rahman)、アーセナル(Rahman)の3つには否定的な報道があったため、基本的にはバルセロナの移籍には前向きだったのだろう。

最後の最後でスペイン側のMundo Deportivoが「アーセナルに猛プッシュをかけている」という謎のアーセナルへの追い風が吹いたが、最終的には一斉に報じられたバルセロナ行きとHere we goで決着。滞りなくバルセロナの選手となった。

カイ・ハヴァーツ

 真っ先に声を挙げたのはPatreonをベースとしたチェルシー寄りのメディアを持っているAlex Goldbergとこちらもチェルシー寄りのDaily TelegraphのMatt Law。

6/7にこの2つから興味が伝えられてから、話が本格化したのは一週間後の6/14だった。Arseblogがアーセナルサイドでは初めてハヴァーツの関心に触れると、Team news and ticksやCharles Wattsなどアーセナル寄りのメディアが追従し、OrnsteinとRomanoが太鼓判を押す格好になった。

 バイエルン、マドリーを中心にいくつかのクラブも競合として名前が出たが、一貫して価格交渉のテーブルに着いたのはアーセナルだけということだろう。チェルシーの要求である£70-75mとアーセナルの要求である£50mの綱引きが続き、最終的に£60+5mという中間点で決した形になる。

 この夏の中でも多くの報道が一つの方向に向かっていた案件であり、興味から交渉と合意までが一本道に進んでいったことがあることから選手と両クラブの三者の思惑が一致していたケースといえるだろう。早い段階で可能性を指摘していたAlex Goldbergにとってはやや信頼度を高める結果になったか。

ユリエン・ティンバー

 David Ornsteinが第一報と共にオファーを報じたこの夏随一のステルス案件。注目銘柄ながらアーセナルとのリンクがなかったことや、ロンドンにあるウェンブリーをFA杯決勝で訪れていた伏線などから一気に火が付いた案件である。

 Romanoや英国記者もOrnsteinの一報を後押しすると、翌日にはオランダの大家であるMike Verweijが登場。リサマル案件でおなじみのアヤックスのTier1がオランダ側からの情報を提供することで、英国から発信された状況に判を押していく格好になった。中でも本人が退団ではなくアーセナル入団を希望している状況はアーセナルにとっては大きな後押しになった。

 Ad.Nlという同じオランダメディアからはRCが存在するという話が流れたが、こちらはVerweijがすぐに否定。その後の交渉からも存在が効いてこなかった感じがすることからもVerweijが正しいのだろう。バイエルンチェッカーのPlettenbergもバイエルンの参戦を否定し、ここからは一本道で交渉が進むことに。

 Romano主導の報道で2回目のオファーが提示されると以降は条件の詰めに向かって非常に楽観的な見通しが広がる案件だった。

ウィリアム・サリバ

 混乱を引き起こしたのは「The Sun」のMark Irwin。交渉が難航しており、チームと選手の評価に大幅に乖離があることを指摘すると、「90min」のBaileyもこれにマイルドに追従。退団希望はないが、ふさわしい待遇を求めている旨を伝えた。

 ただし、初動以降はスムーズに進んだ案件といえるだろう。Sheth、Kaynak、Taylorなどの中堅どころが契約に前向きな状況を伝えると、Romanoが太鼓判を押す。

 最後の決め手になったのは速報を出したOrnstein。やや間を空けて追従したRomanoがHere we goを出して契約締結に決着が見られた。

トーマス・パーティ

 CrossやBengeなどいくつかのメディアからまことしやかにイタリア行きの噂が流れていたが、本格化したのは6/18のRomano参戦だろう。これにより一気に退団の現実味が帯びることとなった。

 なかなか条件が表面化してこないのがこの案件の特徴であり、退団意向が選手主導なのかチーム主導なのか、移籍金をいくらに設定したのか、中東への移籍は前向きなのか、退団の場合アーセナルの代役は誰になるのかなどあらゆる状況が宙に浮いたまま進んでいく不思議な案件だった。

移籍ソース短評

評価はあくまでアーセナルが絡んだ案件に対して行う。

Gianluca Di Marzio

【主媒体】DiMarzio.com、Sky、Twitter

 イタリアの重鎮。「イタリア方面には強いがそれ以外には弱い」というのが、近年の定説だが、それを覆すべくライスの獲得レース報道に参戦。シティ本格参入のタイミングを報じたのは速報性として評価できるが、「オファーを出して一気に合意に近づいた」という報道は勇み足をした感がある。シティ参入以降はライス案件での存在感はなく、近年の定説を覆せたとは言い難い。

精度:D 速報性:A 存在感:B 勇み足度:A

Florian Plettenberg

【主媒体】Twitter、Sky

 ライス、ハヴァーツ、他クラブであればケインととりあえずいろんな案件をバイエルンに結びつけまくった夏だった。その割にバイエルンの腰が重たい夏だったのでバイエルンの首脳陣会議の日をリマインドしてくれた人としか言いようがない。「ライスはドイツ行きに前向き!」勢いよくBreakingを出すが自分で出した報道を数時間後自己否定したりなど、結構スタンスをころころ変える。間違いを認める点はある意味潔かったが、基本的には今移籍市場においては逆神的な存在だったといえるだろう。

精度:E 速報性:B 存在感:C バイエルンのリマインダー度:A

ExWHUemployee

【主媒体】Patreon、Twitter

 ウェストハムの内部情報者的な立ち位置からPatreonというサイトでサブスク的に投稿を行っていた人。主にアーセナルとはライス関係でのみ接点あり。報道に対するカウンター的な立ち位置をとることが多く、著名ジャーナリストの「シティがライスにオファー」という報道を否定し、「今日誰からもオファーないから」と先陣を切って述べた。

 オファーの条件詳細について述べることも多く、RomanoやOrnsteinが触れない細かい支払い構造にも言及していたため説得力はあった。守備範囲が狭いが、ライス周りの報道で独自性を出した点は評価できるだろう。

精度:A 速報性:B 存在感:A 守備範囲:G サブスク駄々洩れ度:A

Transfer Checker

【主媒体】Twitter

 ライスの報道に絡めて早い段階で支払い構造について触れており、ExWHUemployeeと並び独自色が豊かなソースだったといえるだろう。ExWHUemployeeと異なり、ウェストハムやアーセナルが絡まない案件にも触れている。細かい精度まではチェックはしてはいないが、新進気鋭の移籍情報ソースとして存在感を発揮した夏。Romanoに「俺が先に触れているのに【Exclusive】はねぇだろ!!」と激怒するなど、感情豊かな面も見せた。

精度:B 速報性:B 存在感:B 独自色:B

Ian Abrahams

【主媒体】Twitter

 Bio欄に特にハマーズに関する記述はないが、アイコンとヘッダーに自身がハマーズのユニフォームを着ていることから、おそらくハマーズ寄りの番記者の立ち位置なのだろう。

ExWHUemployeeに比べるとライス案件での存在感は薄かったが、毎度毎度ソースに自身と選手のツーショットを並べることで取材力を前面に押し出している感じがかわいかった。おすすめはナスリとの一枚。ナスリが単に笑顔が下手なのか、この人が嫌いなのかは不明である。

精度:B 速報性:D 存在感:D 選手との距離感:A

Ben Jacobs

【主媒体】Twitter

 第一報を出すことはあまり多くはないが、報じた内容をベースに独自の見解を示したり、今後を展望したりなど、割とストーリー性を持ちながら長めのツイートで案件に触れてくれる。よって、移籍市場ビギナーに対しては比較的優しい存在といえるだろう。アーセナルだけでなくプレミア全体が守備範囲なので「なにがどうなってんねん!」を知るにはいいかもしれない。

精度:C 速報性:C 存在感:B ストーリーテラー度:A

Simon Collings

【主媒体】Evening Standard、Twitter

 相変わらず堅実ではあるが、明らかな釣り案件であるボーイに向けた具体的な興味を報じた英国側の数少ないソースだったのは減点材料といえるだろう。カンセロに関してもやや勇み足だったか。カイセドに関してもライスと両獲り寄りのスタンスが強く、今夏はヒットよりは空回り感がある。

精度:B 速報性:B 存在感:C 釣られちゃったね度:B

Sami Mokbel

【主媒体】Daily Mail

 Collingsと同じく、嘘はつかないけどヒットも飛ばさないくらいの人。大手ジャーナリストの中では具体的な数字を交えてライスの支払い条件に踏み込んでいた数少ない媒体だった。あと、ユナイテッドもライスに興味あったよ派閥の人。マグワイアとエランガを絡めたオファーは彼が大本。トーマスの移籍の話は彼が前向きではない報道を出してから鎮静化した。

精度:B 速報性:B 存在感:C トーマス鎮火度:B

David Ornstein

【主媒体】The Athletic、Twitter

 アーセナルをはじめとして広い範囲をカバーする信頼度の高いジャーナリスト。ティンバーの獲得の動きへの第一報を出したり、シティとアーセナルの両軍のライスのオファー時には速報性を発揮したりなど、いつになく今夏はTier1としての実力を発揮した年だったといえるだろう。

精度:A 速報性:S 存在感:S 神感:S

Fabrizio Romano

【主媒体】Twitter、Caught Offside

 言わずと知れた移籍情報を追いかける第一人者。Here we goおじさん。速報性という意味合いではやや今夏はOrnsteinに後手を踏んだ感はあるが、移籍情報の決裁者としての役割を全う。出てくる状況にハンコを押す作業として権威を十分に発揮した。

 ライス獲得交渉の際は「アルテタ、めっちゃ頑張っているから」というアルテタの努力を伝道する人となり、アーセナルファンに対してアルテタの努力を伝え続け、Here we goから公式まで時間がかかってる時も「何の問題もないから!」とアーセナルファンを励まし続けていた。

精度:S 速報性:B 存在感:S 応援おじさん度:S グヴァルディオルの件はごめん度:A

Mike Verweji

【主媒体】De Telegraaf、Twitter

 オランダ方面での記者で特にアヤックスに関してのTier1。昨夏はリサマル、今夏はティンバーでお世話になった。アヤックス案件はリサマルのこともあり「釣りあげられまくったらどうしよう」という不安がある中での交渉だったが、定期的にティンバーのアーセナル希望と交渉が順調に進み、マイルドな条件での合意を示唆するなどアーセナルにとって今夏は安心をもたらす情報元となった。

精度:A 速報性:A 存在感:A 安心感:A

Jacque Talbot

【主媒体】Twitter,、Football Transfer

 冬のデッドラインデーに「カイセドと合意した」と盛大に飛ばし、後日めっちゃ謝罪する羽目になった人。今夏も懲りずにチュアメニの名前を出しているので反省しているかは不明。

精度:G 速報性:E 存在感:D 反省度:E

Matt Law(Daily Telegraph)&Alex Goldberg

 ハヴァーツ獲得が本格化する1週間前にアーセナル側の関心をほのめかしていた人たち。

先読み度:A

PSG-INFINITE、The Red Side of London、Football Transfers

 この夏にムバッペへのアーセナルの関心をほのめかしていた人たち。

関心を持つだけなら自由だから度:A

Team news and ticks

【主媒体】Twitter

 シーズン中はスタメンを発表前にリークする人という感じだったが、アーセナル寄りの媒体として移籍市場では暗躍。ハヴァーツの関心に関するarseblogの内容を後押ししたり、一時期暗雲が立ち込めたサリバの契約延長にプッシュするなど、第一報に対しての方向性を結果論的に正しく整理していたあたりに内部の人っぽい精度と立ち位置の取り方を感じる。

精度:B 速報性:B 存在感:C 内部の人っぽさ:A

Ekrem Konur

【主媒体】Twitter

 とりあえず広く抽象的な移籍情報をバラまくことでなんとなくみんなに夢を持たせてくれる人。とにかく具体的なことは書かない&どこかから薄いソースが流れてきたら転載元なしでがっつりと丸パクリする。ツイート量はめっちゃ多いので、基本的には数を打てばたまに当たるが、文脈がないのでたまたま感が否めない。

精度:G 速報性:B 存在感:F 夢バラマキ人度:A

おしまい!

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