①アーセナル【1位】×トッテナム【3位】
■カウンターによる反撃も考慮した攻略法で完勝
レビューはこちら。
首位と3位。トッテナムが勝てば順位が入れ替わるという過去に類を見ないほどテーブルのトップに近い位置で行われたノースロンドンダービー。試合は順位の拮抗にそぐわない一方的な内容で進むことになる。
立ち上がり、トッテナムのプレスをいなして敵陣に進むアーセナル。これでトッテナムのプレスは心が折れてしまった感があった。しかし、撤退守備はトッテナムにとっては織り込み済みの範疇と言っていいだろう。精度の高いロングカウンターを備えている彼らにとって、自陣に押し込まれることが必ずしも劣勢につながるとは限らない。
アーセナルはここからトッテナムの撤退守備を攻略する必要がある。だが、この日のアーセナルは明確にトッテナムの守備のブロックを攻略するスキルを持っていた。トッテナムは守備の仕組みとしてWBのフォローにシャドーが入っていく形で低い位置まで下がっていくことが多かった。
アーセナルはこのサイドの守備に2枚の選手がくる形を利用。一旦サイドにボールを預けて、トッテナムの2列目をサイドに釘付けにする。そこから横パスでトッテナムの2列目をサイドにスライドさせ続ける。トッテナムがシャドーが大外に引っ張り出されているので、アーセナルが5レーンをきっちり埋めたとすれば、トッテナムの中盤4枚では横幅を賄うのは難しい。
アーセナルはトッテナムの選手が前に立てば横パス、空けばそこから前に仕掛けていく。この原則を徹底していた。中盤をきちんとずらすことができていれば、横パスが続いて逆の大外まで辿り着いてもアーセナルはWGとトッテナムのWBの1on1を作ることができる。このマッチアップの力関係はアーセナルが上なので、アーセナル的にはこの構図を作れたら作れたでOK。横パスの最中に前が空いた際の成功例はもちろん先制点となったトーマスのミドルが挙げられるだろう。
空かない限り仕掛けを控えるというある意味慎重策ともいえるアーセナルのやり方はトッテナムのロングカウンターを警戒してのもの。失い方に下手を打ってしまってはトッテナムの反撃がすぐに飛んでくる。PKにつながった28分のサカのロストはややこの日のアーセナルの基準に比べると強引な仕掛けだったといえるだろう。その後の対応も拙かったアーセナルだが、トッテナムのロングカウンターの精度はさすがと言ったところ。アーセナルが警戒する理由がよくわかった場面だった。
同点に追いつかれたアーセナルは後半、右サイドからホワイトのオーバーラップを増やして攻撃に厚みを出す。前半はフリに使っていたサイドの攻撃を実際に活用するように。大外からのアタックにトッテナムが対応できない状態のまま、右の大外からジェズスが勝ち越しゴールをゲットする。
ビハインドになったトッテナムはエメルソンの退場でさらに窮地に立たされる。アーセナルはジャカの追加点でその直後に試合を決定づけると、トッテナムは3得点目以降、主力を徐々に下げながら終戦モードに移っていく。
序盤から明確な攻略法を打ち出し、最後まで手を緩めなかったアーセナルは完勝と言っていいだろう。ライバルを本拠地で叩きのめして、首位キープに成功した。
試合結果
2022.10.1
プレミアリーグ 第9節
アーセナル 3-1 トッテナム
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:20′ トーマス, 49′ ジェズス, 67′ ジャカ
TOT:31′(PK) ケイン
主審:アンソニー・テイラー
②ボーンマス【12位】×ブレントフォード【9位】
■決定機まで辿り着かないスコアレスドロー
ボーンマスは12位、ブレントフォードは9位。ド派手な補強がないながらも現在は中位で健闘している両チームの対戦である。
序盤にボールを持っていたのはブレントフォード。バックラインはGKを組み込んだビルドアップを行いながら距離をとり、相手を引き込みながらのショートパスで前進を狙っていく。
狙いとなるのはお馴染みのサイドからのクロス。これでターゲットになるトニーにクロスを放り込んでいく仕様である。ボーンマスは割り切った形で無理に前からのプレッシングには行かず。その分、ミドルゾーンより後ろの撤退守備に尽力。サイドをきっちり封鎖し、ブレントフォードはクロスを上げることができない。
ブレントフォードは高い位置の崩しにおいてもう少しオフザボールの動き出しは欲しかった。背負いながら反転して相手をおいていく!みたいなプレーができる選手はいないので、周りが動き出しながらフォローできないと厳しい。そうしたフォローがないため、相手を外す状態からのクロスを上げることができず。セットプレーの機会は取れているものの、得点の匂いがするところまで進むことができなかった。
バックラインにおけるボール回しももう少しパススピードが欲しい。広く使っている割にはボーンマスの4-4-2のスライドは間に合っていたので、やり方によって生まれるメリットを活かせたとは言い切れなかった。
一方のボーンマスもバックラインからの横パスとロングボールを組み合わせるいつものスタンス。だが、こちらもロングボールが収まる状況を作ることができずに押し返すことができない。
ボーンマスが厚みのある攻撃ができるパターンはいつも言っているが左サイドのゼムラがオーバーラップしていく形を作れた場合。ボーンマスはゼムラのオーバーラップからあわやPKというシーンを演出するが、これはOFRの末にノーファウル判定に。
後半もどちらも決め手を欠く展開が続く。ボーンマスは縦パスを積極的に入れるようになり、後半の立ち上がりはブレントフォードがギリギリの対応で追い込まれる場面も見られるようになる。ロングカウンターも含めてボーンマスが一番機能していた時間帯と言ってもいいだろう。
ブレントフォードはウィサが入り、ダイナミックな攻撃に舵を切ったことで前半よりは敵陣に迫ることができるようにはなっていた。だが、決定機と言えるほどの決定機を作ることができず。
カウンター、ボール保持、セットプレーいずれにおいても決め手を欠いた両チーム。試合はスコアレスドローに終わった。
試合結果
2022.10.1
プレミアリーグ 第9節
ボーンマス 0-0 ブレントフォード
ヴァイタリティ・スタジアム
主審:トーマス・ブラモール
③クリスタル・パレス【16位】×チェルシー【7位】
■変えたチェルシーと変えなかったパレス
チェルシーが採用したフォーメーションは4-3-1-2。ハフェルツをトップ下において、オーバメヤンとスターリングに2トップを組ませる形である。ボールの循環は右にやや偏る形。トップ下のハフェルツが右に流れる傾向が強いこともあって、人数とボールが右サイドに集まる形になっていた。
チェルシーはバックラインにパレスのWGを食い付かせて、その背後でジェームズが受ける。ここから間のハフェルツや裏に抜けるスターリングを狙ってボールを動かしていく。パレスがあまりチェルシーのバックラインにプレッシングをかけていかなかったこともあり、ボールを動かすことは比較的できていたと言えるだろう。
一方でパレスもビルドアップで短いパスを繋ぐことでチェルシーを動かすことができていた。4-3-1-2だとやはりパレスのSBのところをカバーするのが構造上難しくなる。パレスはいつも以上に丁寧にサイドを使いながらチェルシーのIHに負荷をかけていた。特に右のIHであるコバチッチは広い範囲をインテンシティでカバーしていくタイプではないので、とても苦労していたように思う。
互いに攻撃の形を持っている両チームだったが、先制したのはクリスタル・パレス。左右に揺さぶりながら、最後はエドゥアールへのクロスで仕留めて見せた。
パレスは押し込んだ後も武器があるのがいい。得点の場面でクロスを上げたアイェウもそうだけど、右のIHであるオリーズが大外まで流れることができる。キャラクターを考えれば当然の動きではあるんだけど、パレスはここまであまり大外レーンの交換はやってこなかったので、こうした試みは割と面白い。
チェルシーはやや危うい場面が目に付く。チアゴ・シウバのハンドの場面はあわやという感じだったし、そもそも先に挙げたボールの動かし方をなかなか修正できていなかった。前からプレスに行っても捕まえることができていない。
そんな中でチェルシーは前半のうちに同点ゴールまで漕ぎ着けられたのは大きい。セットプレーで前残りしたシウバにジェームズからロングボールを当てると、折り返しをオーバメヤンが押し込んだ。同点ゴールでだいぶ縦への鋭さは戻ってきた感じである。
チェルシーは後半に前線を1トップ+2WGに移行することで保持の安定感アップとワイドの守備のケアを両立させることに成功する。チェルシーがやり方を変えたものの、パレスはあまりやり方を変えず。個人的には彼らの特色であるロングカウンターをもっと織り交ぜてもよかったと思う。前半のようにサイドでズレを作れる前提であるならばゆっくりにこだわる意味はあると思うけど、チェルシーはハーフタイムの修正で噛み合わせてきたので、それならばパレスも少し趣向を変える方向に流れてもよかったのではないか。
というわけでペースは徐々にチェルシー側に流れていく。しかしながら、安定したポゼッションと引き換えて決め手にかけるという4-3-3あるあるに陥ってしまった感もあり、試合は膠着する。
停滞した試合を決めたのは交代選手。パレスにいたギャラガーがスーパーミドルを決めて決着する。今季なかなか馴染めていなかったギャラガーだったが面目躍如。昨季、慣れ親しんだスタジアムでようやくチェルシーファンに挨拶を済ませることができた。
試合結果
2022.10.1
プレミアリーグ 第9節
クリスタル・パレス 1-2 チェルシー
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:7‘ エドゥアール
CHE:38′ オーバメヤン, 90′ ギャラガー
主審:クリス・カバナフ
④フラム【6位】×ニューカッスル【10位】
■ミドルプレス回避から一気に主導権を握る
今季ここまでは負けないけども勝ちきれない試合が続いているニューカッスル。派手ではないが堅実な補強をしているだけあって、もう少し上の順位を狙いたいところである。上位にいるフラムは食っておきたい相手であるはずだ。
ボールを持ちながら試合を進めたのはニューカッスル。今季のフラムの持ち味はミドルゾーンにおけるプレッシングで中盤より前に壁を作っていく形である。ニューカッスルのボール保持はフラムが網を張っている中盤中央を避けるように動かす。横に大きな展開を作りながら大外にボールをつけて奥に進んでいく。外だけでなく、インサイドも使いながらフラムに内側を意識させていたのはよかった。
フラムはこれに対して落ち着く対抗策を見つけることができないままチャロバーが一発退場。数的不利に陥ってしまう。4-4-1にシフトしたフラムはギマランイスを捕まえられなくなり、ニューカッスルがよりスムーズに左右に展開することができるように。
先制したのは順当にニューカッスル。左からの大きい展開を受けた右サイドからトリッピアーがクロスを上げる。ファーのウィロックが折り返して、ウィルソンが押し込んで先手を奪う。
サイドを変えて、SHとSBの縦関係でひたすら殴り続ける。シンプルではあるが確実な方法でニューカッスルはフラムを苦しめている。2点目も右サイドの抜け出しから。裏に走ったアルミロンが技ありのスーパーゴールを決めてリードをさらに広げる。
苦しくなったフラム。さらにはこのゴールの直後にミトロビッチが負傷交代。シュートを打つどころか、10人になって自陣からの脱出ができなかったフラムには弱り目に祟り目である。さらにワンサイドの様相を呈するようになったニューカッスルはセットプレーからロングスタッフが決めて追加点をゲット。試合をほとんど決めてみせる。
前半最後の交代でフラムは5-3-1にシフト。10人で3点差という状況ということでマルコ・シウバは軟着陸を図っている感じもする。撤退守備を図るフラムに対して、ニューカッスルは5バックの裏を狙うフリーランで追い打ちをかける。ウィロックのフリーランからアルミロンが決めて、完全にとどめを刺す。
以降も、シュートも打てず押し返すこともできない時間帯が続くフラム。終了間際にボビー・リードのゴールで1点を返すことができたのは、むしろよくやったほうだと言えるだろう。
序盤からフラムを押し込み、ニューカッスルは90分間支配することに成功。開幕戦以来の勝利で今季2勝目をゲット。開幕戦の相手はフォレストだったので、2勝はいずれも昇格組相手の勝利となった。
試合結果
2022.10.1
プレミアリーグ 第9節
フラム 1−4 ニューカッスル
クレイヴン・コテージ
【得点者】
FUL:88′ B.リード
NEW:11′ ウィルソン, 33′ 57′ アルミロン, 43′ ロングスタッフ
主審:ダレン・イングランド
⑤リバプール【8位】×ブライトン【4位】
■らしさと結果を両立させた旅の始まり
監督の玉突き人事に見舞われたブライトン。ポッターとの突然の別れを経てデ・ゼルビとの新たな旅が今節から始まることになる。始まりの地はプレミア屈指の難所であるアンフィールドだ。
立ち上がりからブライトンはデ・ゼルビらしいボールの動かし方を見せる。変わったのは大きな展開の対角のパスが減り、バックラインと中盤を行き来する縦方向のベクトルのパスが増えたことである。
相手を1つ目の縦パスで動かし、リターンを受けた後方の選手が1つ目のパスで動かしたところを次のパスでつく。ざっくりといえばこういう流れだろうか。パスをフリに使って本命のパスを通し、フリーの選手がターンして前を向く。そうしたメカニズムで前進していく。
この日のブライトンにとって助かったのは対戦相手のリバプールとのかみ合わせが悪かったこと。バックラインにリバプールのWGを食いつかせることができれば、ブライトンのWBはフリーに。ブライトンはここを安全地帯としてチャレンジをすることができる。
縦パスを通す判断の素早さはこのサッカーで最も大きな特徴といえるだろう。ブライトンの先制点はセカンドボールで粘り切った中盤はさすが。その上で、ボールを奪ってからのアタッキングサードでの加速からあっという間にシュートチャンスを迎えたのはいかにもデ・ゼルビ流というところだろうか。マック=アリスター→ウェルベックとつなぎ、最後はトロサールがゴールを決めて見せた。
2点目はより狙いが如実に出たシーンといえるだろう。ワイドに揺さぶったウェルベックからマイナスのパスを受けたマーチがワンタッチで抜け出すトロサールに。マイナスのパスにいったんリバプールが食いつくように前がかりになったのをうまく利用したワンタッチパスだった。リバプールとしてはリアクションの良さが仇になった形になる。
ブライトンほどでははないが、リバプールの攻撃もそこまで悪いものではなかった。チアゴ、マティプが揃っていたことで遅攻のカギはあった。ブライトンは3トップを2トップ+トップ下気味にプレスで変化することでマーカーをはっきりさせていた。
リバプールの追撃弾はウェルバックから逃げたマティプが持ち運んだところから。プランは適切だったが、やり切ることが出来なかったブライトン。隙を突かれた形での失点となった。
徐々に試合はテンションが上昇し、強度勝負になっていく。そうなるとペースはリバプールに。後方の選手がパスを出す余裕をもてなくなったブライトンは怪しいひっかけ方を増やし、ビルドアップに安定感を失っていく。WBへのケアも強気になっており、リバプールは前がかりのやり方がハマったといえるだろう。
早い攻撃の打ち合いで決め手になったのはルイス・ディアス。後半から入ったディアスが同点弾をおぜん立てすると、リバプールはそこから一気に勢いに。セットプレーからウェブスターのオウンゴールを誘発し、逆転までこぎつける。
ビハインドの切り札としてデ・ゼルビが選んだのは三笘。左サイドから対面のアレクサンダー=アーノルドを手玉に取り、投入直後から存在感を見せる。そして、同点弾もこのサイドから。左サイドから三笘が上げたクロスを決めたのは三度トロサール。見事なハットトリックで再び試合を引き戻す。
就任初戦でいきなりらしさを見せたデ・ゼルビ。トロサールの大暴れと三笘の決定的な働きもあり、上々の船出に成功することとなった。
試合結果
2022.10.1
プレミアリーグ 第9節
リバプール 3-3 ブライトン
アンフィールド
【得点者】
LIV:33‘ 54’ フィルミーノ, 63‘ ウェブスター(OG)
BHA:4’ 17‘ 83’ トロサール
主審:アンディ・マドレー
⑥サウサンプトン【14位】×エバートン【13位】
■体を投げ出したDFラインで3ポイントを死守
立ち上がりからプレッシングに勢いを見せていたのはサウサンプトン。トップからプレスをかけていくのはもちろん、猛烈だったのは後方からの押し上げ。1トップのモペイが降りて行こうとすると、ベラ=コチャプが潰すためにどこまでもついていく形が印象的だった。
エバートンはこれに対して、大きなサイドチェンジで相手を外していくトライをしていく。中心となったのはコーディでサウサンプトンが強気でプレスにくるサイドと逆側にボールを逃してサウサンプトンのプレスをいなしていく。
左サイドにおいてはイウォビが相手を背負いながらもパス交換から外していく形で前進するパターンも。サウサンプトンのプレスを沈静化させながら、エバートンが試合を落ち着かせるようなボールの動かし方を披露する。
サウサンプトンはプレスの強度の割にはあまり成果は芳しくなかった。せっかく相手を捕まえられたのに距離感を見誤ったタックルが散見されたのが勿体無い。あまりプレータイムを得ることができていないメイトランド=ナイルズあたりが無駄なファウルを犯していたので、この辺は試合勘の影響もあるのだろうけども。
大きな展開で相手のいないところまでボールを動かす仕組みがあったエバートンとは異なり、サウサンプトンは誰が前線で背負って味方をフリーにしなければ前進が見込めない状態だった。そういう意味ではエバートンよりも無理をしながらでなければ、ボールを前に進めることができなかったと言っていいだろう。左で背負いながら落としを受けた選手が逆サイドのウォーカー=ピータースに預けて、ここから前に進む形が徐々に確立できるようになってきた。
イウォビという明確な司令塔がいる分、前半はややエバートンペースといえた。だが、後半頭はサウサンプトンの縦への鋭さが目立つ展開に。SBのラリオスの持ち上がりがチームに推進力を与えていた。
そのラリオスの持ち上がりを起点にサウサンプトンは先制点をゲット。サイドに流れるアダムスがスペースを作ると、最後はインサイドに入り込んだアリボが強烈なシュートを打ち込む。
だが、エバートンは失点をすぐに取り返すことに成功。セットプレーからファーのオナナの折り返しをコーディが押し込んで同点に。さらには直後に右サイドからのイウォビのクロスをマクニールが沈めて一気に逆転まで持っていく。サイドを入れ替えて、ファーへのクロスを狙っていく形が実った2点目となった。
サウサンプトンはここから一気に攻め立てる。エバートンのボールの運び屋を素早く囲んでボールを即時奪回。ハーフコートゲームに持ち込みながら、押し込んでいく。エバートンはゴードンなどのアタッカーを投入しても押し込まれる状況の改善は難しく、最後まで苦しい展開にはなった。
そんな展開で頼りになったのはバックライン。コーディ、ターコウスキを中心に昨季の残留争いの時期を彷彿とさせるような体の投げ出し方でPAを死守。勝手知ったる経験豊富なバックラインが意地を見せて、なんとかリードを守り切ってみせた。
試合結果
2022.10.1
プレミアリーグ 第9節
サウサンプトン 1-2 エバートン
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:49′ アリボ
EVE:52′ コーディ, 54′ マクニール
主審:アンドレ・マリナー
⑦ウェストハム【18位】×ウォルバーハンプトン【17位】
■CBとのミスマッチを最大限に活用
前節のシティ戦で勝ち点よりも貴重なCBを退場で失ってしまったウルブス。コリンズはここから3試合の出場停止。本職以外でCBを賄っていくウルブズのやりくりが今節からスタートする。今節、CBに選ばれたのはネベス。ジョニーとキルマンをワイドに置く5バックのような形も想定されるメンバーだったが、セメドをSHに置く4-4-2のような形だった。
ウルブスのプレッシングは強烈ではないが、ミドルゾーンよりは前で我慢するような形。強度はそこそこ、ラインは高めと言った感じだった。ウェストハムは窒息させられる感じはしなかっただろうが、下手こいてボールを引っ掛けてしまうことはあったので、ウルブスにチャンスがないわけではなかった。
サイドからクロスを上げる形からチャンスを作りたいウルブス。ポジションを入れ替えながら攻撃の形を作りにいくが、抜け出す選手を作ることができず、なかなかチャンスまで辿り着かない。独力で突破できるネトの負傷も痛手であろう。
守備面でもウルブスは苦しい。CBに抜擢されたネベスは早々に警告。次節はチェルシー相手に累積警告で出場停止。早い時間で追い込まれた今節も出ることができない次節も厳しいやりくりになる。
ウルブスのCBが本職ではないということでウェストハムは多少アバウトなボールを入れても前進することができた。スカマッカがこの試合でポストをしまくったことは相手との力関係を考えると、どこまで鵜呑みしていいかは微妙なところ。それでも、背負ってのポストからのターンが安定していたのは間違いない。
先制点の場面もスカマッカのポストから。大きな展開で右のボーウェンまで展開すると、折り返れたスカマッカが撃ち抜いてゴールを決めてみせる。押し込んで、ローラインに追い詰めてもスカマッカへのロングボールで一気にひっくり返されるのがCBに本職がいないウルブスの悲哀である。
後半にウェストハムは追加点をゲットした。後半から4-3-3に変更するウルブスを歯牙にもかけず前進。ブロックの外から打ったシュートが、ボーウェンの前に落ちたボールを押し込んで追加点をゲットする。今季不振に喘いでいたボーウェンにようやく結果がついてきた。
反撃に出たいウルブスはここから攻勢に。ウェストハムは撤退ベースになると、やや危うさが出てきたのでウルブスにもチャンスはありそうなものだった。しかしながら、この日デビュー戦だったコスタは決定機をものにすることができず。押し込みつつもゴールに向かう迫力ももう一声といった感じで、得点力不足は未だ健在と言った様子である。
下位で苦しむ中堅対決はウェストハムに軍配。CBとのミスマッチを活かしたスカマッカがウェストハムを勝利に導いた。
試合結果
2022.10.1
プレミアリーグ 第9節
ウェストハム 2-0 ウォルバーハンプトン
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:29′ スカマッカ, 54′ ボーウェン
主審:ポール・ティアニー
⑧マンチェスター・シティ【2位】×マンチェスター・ユナイテッド【5位】
■ダービーでも大暴れのハーランド
無敗のまま首位のアーセナルを追走するシティが再開初戦にホームに迎えるのは同じ町の隣人であるマンチェスター・ユナイテッド。連敗を跳ね返して連勝を重ね勢いに乗っているテン・ハーグのチームである。
ユナイテッドはシティに対して無理にプレスに行くことはしなかった。トップにロナウドを置かないメンバーだったため、ラッシュフォードを旗頭に強引に枚数を合わせに行く形もアリかな?と思ったのだが、そこまでリスクはかけないのが序盤の選択だった。
しかし、そんなユナイテッドを尻目にシティは立ち上がりからガンガン攻勢に出る。開始直後にチャンス潰しの警告がダロトに出ると、これを皮切りにユナイテッドの右サイドに狙いを一気に定める。
ユナイテッドは一気に押し下げられて苦しい状況に。開始直後からマクトミネイがエリアの中でひたすら体を張って跳ね返す場面ばかりになってしまい、失点は時間の問題のように思えた。攻勢をかけるシティはオーダー通りに先制点をゲット。グリーリッシュへの見事なサイドチェンジから深さを生かしたフォーデンが仕留めて早い時間に先行する。
シティのプレスの強度はそうでもなかったため、保持においてはユナイテッドは自陣から余裕をもってボールをつなぐことが出来た。ユナイテッドがアーセナル戦と違ったのはボール保持において中盤でブルーノやエリクセンを経由せずに、一気に裏にボールを蹴りだしていたことである。アーセナル戦はポイントを作りながら、穴を空けて前進できたからこそラッシュフォードのフリーランが活きたわけで、それをサボってしまえば苦しくなるのは当然である。
そんなユナイテッドを尻目にシティは追加点をゲット。セットプレーからハーランドが押しこんでリードを広げる。さらに3点目もハーランド。右サイドからのデ・ブライネのクロスは「え、うそ?まさかそれ届いちゃう?」というパスが出た時の俺たちのワクワクを「届いちゃいましたー!!!」とハーランドが蹴り込む形で生まれた。届くんかい。
ハーランドが暴れ始めてしまい、もうユナイテッドからするとシティは手を付けられない状態に。ブレントフォード戦ほど無力感を感じることはなくても、シティに殴り返される一発の威力がすごすぎて吹き飛ばされていく感じである。
前半の時点で4点リードしたシティは後半はややペースを落としてのんびりとプレー。今季のシティは前プレがかかりにくいメンバー構成もあってか、比較的ペースを落とす頻度は多いように思う。
前半よりはつなげるようになったユナイテッド。ウォーカーが負傷交代していることもあり、WGにボールを渡せば何とかしてくれる感があるメンバー構成。期待に応えたのはアントニー。右サイドからのカットインで前節に続き上位チームから得点をむしり取って見せた。
しかしながら、点を取られてもシティはあっさりと殴り返す。ゆったりとしたペースの中で輝いたのは左サイドのグリーリッシュ。溜める動きとボールを離した後の斜めのランで大外のゴメスにスペースを与えるとここからハーランドにアシスト。今季早くも3回目のハットトリックを決める。
ハーランドはまだまだ止まらず、フォーデンのハットトリックをおぜん立て。終わってみれば3ゴール、2アシストの大暴れである。
シティ相手に3得点奪ったユナイテッドや、途中出場のマルシャルが2得点という普通であれば健闘しているユナイテッド側の数字が霞むような圧巻の破壊力を見せたシティ。6得点で復調気配の隣人を叩きのめして見せた。
試合結果
2022.10.2
プレミアリーグ 第9節
マンチェスター・シティ 6-3 マンチェスター・ユナイテッド
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:8′ 44′ 73′ フォーデン, 34′ 37′ 64′ ハーランド
Man Utd:56′ アントニー, 84′ 90+1′(PK) マルシャル
主審:マイケル・オリバー
⑨リーズ【11位】×アストンビラ【15位】
■内を締めたリーズにビラの攻撃は届かず
序盤にボールを握ったのはホームのリーズ。強引にプレスでボールを奪い返してこないアストンビラに対して、ボールを回しながら攻略できるポイントを探っていく。
この日のリーズは普段と異なり、左右のSHが逆。リーズは左サイドに入ったシニステラのところから攻撃を狙っていく。バックラインからテンポ良くボールを動かしつつ、縦パスを入れて前を向ける位置を探っていく。アンカーのルイスの両脇を中心に縦パスを入れてターンで前を向くトライを行っていた。
アストンビラはそうしたスタイルとは真逆の前進方法。ボールを奪ったらとっととトップのワトキンスにボールを入れるロングボール主体のやり方で反撃に出る。リーズに比べると泥臭さが際立つが、ワトキンスのボールの収まり方が悪くないので、前進の手段としては十分だったと言えるだろう。セットプレーや空中戦など肉弾戦ではアストンビラに分があり、ボールを持たれても攻め手がないわけではなかった。
前を向く選手を作ることができれば十分に加速できるリーズは立ち上がりこそペースを握るものの、徐々にトーンダウン。形を作れなくても長いボールを蹴ることさえできれば前進ができるビラが敵陣に迫る機会が増えていくようになる。やはりワトキンスのようなターゲット型のCFは偉大。ロドリゴも悪くはないが、うまくいかない時間帯においてはやはりバンフォードがどうしても恋しくなってしまう。
後半、リーズは再びバックラインから粘り強いポゼッションを開始。なかなか超えることができないビラの2列目を動かすトライを行う。しかし、シニステラがリスタートを妨害したことで2枚目の警告を受けて退場。これで展開は一変する。
退場直後は4-4-1で構えていたリーズだが、フィルポの投入から5-3-1に移行。中を固めて撤退守備の色を強めてアストンビラを迎え撃つ。ビラはボールを持ち、攻める機会が増やしはしたがブロックの中に踏み込むことができない。
5-3-1の攻略はインサイドに入り込む手段と外から殴る手段を両方持っているとだいぶ楽なのだが、ビラは大外のクロスにこだわりすぎてしまった感がある。コウチーニョやブエンディアが細かいことをやる機会はもっと増やしてもよかったかもしれない。
後半は逆にリーズが長いボールからファウルを奪い、限られたチャンスを作っていく。日本戦では静かだったアーロンソンはクラブでは相変わらず好調そう。ファウルが取れる彼は10人で攻める際の貴重なカード。バンフォードが交代で入ったこともあり、アバウトさを許容できるようになる。
機会は十分に得ることができたビラだが、距離があるシュートは問題なくメリエに処理をされる時間が続いていく。10人のリーズに絡め取られたビラは最後までゴールを奪うことができず。試合はスコアレスドローで幕を閉じた。
試合結果
2022.10.2
プレミアリーグ 第9節
リーズ 0-0 アストンビラ
エランド・ロード
主審:スチュアート・アットウェル
⑩レスター【20位】×ノッティンガム・フォレスト【19位】
■長かったトンネルの出口は9節に
6連敗で最下位。泥沼状態のレスターがホームで迎え撃つのはすぐ上にいるノッティンガム・フォレスト。9節の最後を飾るカードは20位と19位の逆天王山である。
立ち上がりから両チームは積極的なもの。前からのプレッシングにも意欲的だし、縦に速いスピーディな展開で保持側はプレスの回避に挑んでいた。
有効打を打つことができていたのはホームのレスター。バックラインが深い位置からボールを回しながらフォレストのプレッシングを間延びさせていたし、サイドの裏に流れるヴァーディを起点として深さを作ることもできていた。
フォレストは押し返す手段が見当たらない。前からのプレスもハマり切らないし、保持ではレスターがハイプレスの構えを見せるとロングボールに逃げてしまう。そのロングボールも収まる先がないという状況でレスターによって苦しめられていた。
ビルドアップも前線の起点作りもレスターの方が優勢。押し込んだ後もレスターは両サイドから攻撃の形を見せ続ける。右サイドからはカスターニュとマディソンがクロスを上げていたし、左サイドでは今季苦しみ続けているバーンズがウィリアムスを手球に取っていた。
両サイドから主導権を握るレスター。先制点は左サイドのバーンズの仕掛けから。深さを作ることに成功すると、マディソンが放ったミドルシュートが跳ね返りゴールネットに吸い込まれる。
レスターは間髪入れずに追加点をゲット。サイドに流れるヴァーディにボールを収めると、インサイドに入り込んだバーンズがミドル。今季の鬱憤を晴らすかのようなスーパーゴールでさらにフォレストを突き放す。
取り返そうと高い位置からプレスにいくフォレスト。しかし、バックラインからピッチを広く使い、右から左にボールを動かすと、脱出したデューズバリー=ホールに対して後追いになったフォレストがファウル。このFKをマディソンが沈めて追加点。前半のうちにリードを3点に広げる。
後半、3枚がえを敢行したフォレストはバックラインから根性のプレス回避を行い、3点リードしてなおプレスにくるレスターをひっくり返す。ただ、この日のフォレストはとにかくシュートがポンコツ。前半のジョンソンや後半のデニスなど、大事な場面でへなちょこのシュートしか飛ばすことができない。ラインブレイクしてチャンスを作るところまではいくのだけど、フィニッシュが決まらないフォレスト。バーンズと違い、デニスはまだトンネルから脱出ができていない様子である。
そんなフォレストを嘲笑うかのようにレスターは仕上げの4点目をゲット。ティーレマンスでプレス回避を加速させると最後は右サイドからのクロスをおしゃれに押し込んだダカがゴールショーのトリを飾る。
大量4得点。今季唯一の未勝利だったレスターは9節でようやく初勝利をゲット。逆天王山を制し最下位脱出に成功した。
試合結果
2022.10.3
プレミアリーグ 第9節
レスター 4-0 ノッティンガム・フォレスト
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:25′ 35′ マディソン, 27′ バーンズ, 73′ ダガ
主審:ロベルト・ジョーンズ