【1位】アーセナル
6勝0分1敗/勝ち点18/得点17 失点7
■もっとも換えが効かないポジションは?
首位だぞ――――!!!去年の1回目の総括記事の時点ではボトムハーフ。確かに今季は比較的対戦相手が緩い序盤戦だったという側面はあるとはいえ、そうした相手にも苦戦を続けていた昨シーズンに比べれば明らかに完成度は上がっているといえるだろう。
好調ぶりを語るにおいて避けて通れないのはやはり新戦力組。シティからやってきたジェズスとジンチェンコは左サイドの乱数を増やし、攻撃のバリエーションを豊かにしている中心人物。悪くはなかったがやや決まった選手が決まったポジションに入ることに終始していた昨シーズンに足りない柔軟性をもたらしている。
特にジェズスは開幕戦からフル稼働。エリア内でのタスクと組み立てにおける顔出しのバランスが最適で、アーセナルのようにFWもビルドアップに顔を出してもらった方がスムーズに攻撃が進むチームにとってはうってつけの補強といえるだろう。
バックラインにおいてはサリバの復帰が非常に大きい。パワー、スピードという素材のポテンシャルはもちろんのこと、ミスをした後のプレーの堂々ぶりはプレミア初年度とは思えない存在感。プレミアの水に馴染むどころかすでにアーセナルを代表するCBとして君臨しているかのようだ。
バックラインの層の薄さは昨シーズンの課題であったが、今季はスタメンの4人に加えて冨安とティアニーまでは十分に計算ができる。この2人もタスクが多岐に渡るバックラインにおいてクオリティを落とさずに起用が可能。特に冨安は最終ラインのどのポジションでも起用可能というユーティリティさもある。6人で回せているうちはそこまで大きな問題にならないだろう。
過度な依存がなくなったという意味では両WGの負荷も取り除かれている。バックラインからの前進がスムーズになったことで、彼らをロングボールの的にする機会は減少。サカのパフォーマンスを心配する声はたまに聞こえてくるが、そもそも彼が2人や3人を常に抜かなければならない去年の方が異常。凄みはないかもしれないが、無理なく好パフォーマンスが継続できているように思う。心配事があるとすれば、ピッチ内よりもアルテタが自信を見せている契約延長交渉のリリースがなかなかされないことだろう。
ファビオ・ヴィエイラ、マルキーニョスなど将来を見据えた選手たちもデビューとゴールを飾り、昨年の問題だった層の薄さに対しても少しずつ兆しは見えつつある。そんな中で換えが最も効かなさそうなのは中盤の2人だろう。
トーマスは保持面ではチーム全体のクオリティが上がった分、依存度は下がったともいえるが、守備における強度も含めれば控え選手たちに比べるとやはり数段上。今季もすでに離脱をしているが、どれだけ稼働できるかの勝負になりそう。
そして、今季最大のサプライズといっていいのがジャカ。左サイドの流動性に難なく順応どころかすでに牽引する立場になっている。昨季は「前に顏を出すこともできるボランチ」くらいの感じだったが、今や組み立てだけでなく、ラストパスやフィニッシュにまで絡みながら守備の仕事の貢献を落とさないというかなり化け物じみた働きをしている。
ボランチ2人の換えが効かないこと以外に懸念を挙げるとすれば、前半で試合を着火できなかったときだ。終盤まで均衡した展開になった時のしたたかさみたいなものはまだ見えないので、そうなった時にどうするか。ユナイテッド戦ではプレスに押し切ろうと傾倒した結果、中央からあっさりと割られてしまうという脆さも見せた。
こうした我慢の時間帯のクオリティを上げることができれば、タイトルへの可能性は開けてくるだろう。ユナイテッド戦はそこで相手に屈した印象もある。強豪との対戦がちらほら出てくる10月にこうした部分は真価を問われることになる。
Pick up player:ウィリアム・サリバ
悩んだけども、プレミアへの適応の早さという意外性も含めてサリバで。アーセナルのようなシームレスなポジションチェンジや狭いところを通すためのチャレンジングなパスはネガトラで問題を抱えることも多いが、開幕戦から余裕でこなしてしまっている。ボーンマス戦では左サイドからの左足のミドルを決めて「練習通り」って言ってたけども、右利きの右CBがどこでその練習をしていたのかは依然謎のままである。
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【2位】マンチェスター・シティ
5勝2分0敗/勝ち点17/得点23 失点6
■局面を問わない破壊力を手に入れる
コミュニティ・シールドではやや不安定な姿を見せたものの、シーズンが始まればそんな不調はどこ吹く風。シティは今季も順調に勝ち点を積み続けている。
開幕節のウェストハム戦で見られたのはカンセロとウォーカーをインサイドに配置する2-3-5的なフォーメーションだ。これをベースとして、ロドリやウォーカーを下ろす3-2-5に変形したり、あるいは左のカンセロだけ高い位置をとるアシメの形にしたりなどのアレンジが行われている。最近は左のカンセロがビルドアップを優先する試合はかなり少ない。
SBがCH周辺の仕事を増やした分、サイドを上下動する役割を担っているのはWG。単に幅を取るだけでなく低い位置までボールを引き取りながら、運びつつアタッキングサードに迫っていく。高い位置で相手と正対してからのスキルに長けているマフレズよりもダイナミズムに長けたフォーデンやグリーリッシュの方が重用されているのは、今季のWGに託されたタスクの違いのように思う。
サイドにおける動的なPAの迫り方を意識した設計になっているのはハーランドを意識してのもの。スピードに乗った状態でアタッキングサードに迫っていく方がハーランドの能力を活かせるという部分はあるはずだ。それでもハーランド自身はPA内の細かい動き出しでの違いから得点も生み出せているので、従来のスタイルが不得手というわけではないけども。
ハイプレスの迫力は昨シーズンよりも低下した部分はあるだろう。しかしながら、ロングカウンターから反撃の能力が高まっているのは見逃せない。従来のシティであれば、ハイプレスを回避して押し込めば万事OK(難題ではあるが)だったのだが、押し込んだとて一気にハーランドとデ・ブライネの2人に進撃されてしまう恐れがあるのは怖い。こうした局面が変化したところでの脅威を突きつけている辺りはCLが照準になるチームなのだなと思う。
総じて各ポジションの層が薄いのが気がかり。フィリップス、ゴメスあたりのフィットは重要になってくる。アカンジがすでに問題なく試合をこなしているのはありがたいところだ。物理的に量が物足りないポジションはもちろん、スローな展開においても問題なくプレーできるギュンドアンやベルナルド、ロドリがいなくなると少し得意な展開が偏る危険性もある。
試合展開によらずに相手に得点の脅威を突きつけることができるようになった一方で、試合を保持や即時奪回で支配する部分に関しては現状ではやや薄れたところがある。もちろん、圧倒的な破壊力によって得点差で試合を支配している部分はあるけども。こうした仕様の変化がリーグ戦にどのように影響を与えるかは気になるところである。
Pick up player:アーリング・ハーランド
決定機を逸したコミュニティ・シールドを見てもなお「ほっといてもそのうち点は取り出すやろ」とは思っていたが、こんなに早い段階でハイペースで点を取るとは聞いていない。もはや1点だとちょっと物足りない感すらあるのはウケる。
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【3位】トッテナム
5勝2分0敗/勝ち点17/得点18 失点7
■得意パターンにいかに引き込めるか
昨シーズンのCL獲得の勢いをそのままにシーズン開幕に突入。7試合無敗で初めての代表ウィークまでを駆け抜けた。
大型補強が話題になった今季ではあるが、基本的な方針としてはあらゆる引き出しを増やすというよりも、昨季までの方向性をさらに深く潜るような形だろう。新戦力たちはこうした方向性を維持、もしくは発展させるための選手が多い。
よって、チームカラーは大枠では昨季と同じ。ただし、自分達の土俵に引き摺り込んだ際の仕留める力は向上しており、得意な早い攻撃の応酬においては、リーグ内のどの相手に対しても戦うことができるチームと言えるだろう。
そうしたスタイルは新戦力によってメンバーが代わっても持続可能になっている。リシャルリソンで速い攻撃の迫力はソンがいなくなっても健在だし、ペリシッチは大外からエリア内に迫る殺傷性の高いクロスを入れることができる。昨年は11人でなければ成り立たなかったものが徐々に人数を広げながらより高い破壊力を有するようになったのは純粋な上積みと言えるだろう。
セットプレーでのバリエーションが増えたのも大きい。セットプレー専用コーチを呼んだらしいが、こうした成果は上がっており、実際にセットプレーから結果を出す機会も増加している。不得手とされていた押し込む展開から得点を取るためには重要と言えるだろう。
ただ、得意な速い展開に相手を引き込むためのスキルについては向上の余地はあるだろう。ハイプレスに関してはスポルティング戦で外され続けてしまっているし、逆に高い位置からのプレスに苦しむ場合も多い。敵陣でアタッカーが前を向くという無双状態に意図的に持っていくという部分では課題もあるだろう。試合を自分たちのペースに引き込んでいくという点においては上の2チームに比べればやや物足りなさはある。もっともこの部分も新戦力のラングレが積極的にボール運びや縦パスを通すなど光明はある。
バックラインとケインの離脱はアキレス腱になる。ホイビュアとベンタンクールのCHもほぼ出ずっぱりではあるものの、こちらはビスマがいればある程度ローテーションしながらクオリティを維持することはできるはずだ。クオリティも含めた代替の効かなさはCFとCBの方が上と言えるだろう。
リーグ戦とCLの二足の草鞋も課題になるだろう。コンテが好成績を残しているのはリーグ戦に集中できた場合が多く、CLでの成績はあまり芳しくはない。中期的なチームマネジメントでスカッドを拡大することができれば、十分にシーズン終盤も優勝争いを演じているポテンシャルは高いチームと言えるだろう。
Pick up player:ハリー・ケイン
昨季の序盤戦はやや大人しかった感があるが、今季は序盤戦から順調な滑り出しと言えるだろう。リシャルリソンはいざという時のバックアッパーではあるが、基本的にはCFとコンビを組ませた方が生きるタイプではある。そういう意味では今季も彼への依存度はなかなか下がらなさそうだ。
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【4位】ブライトン
4勝1分1敗/勝ち点13/得点11 失点5
■最高の滑り出しに立ちはだかる想定外の監督交代
三笘薫の加入もあり、今季の日本での注目度がかなり高かったブライトン。チームとしてはポッターの2シーズン目ということもあり、チームとしての完成度を高めるシーズンにしたいところである。
フォーメーションは元来柔軟で試合中に陣形をいじることは当たり前といった風情のポッター。だが、今季のメインプランは3-1-4-2のような形。前線の2はウェルベックを前に置いた縦関係になることが多い。トップ下に入るのはララーナが多かったが、負傷離脱によりややポジション割りは流動的。
中盤は完全にアンカーが板についたマック=アリスターをどっしりと中央に置き、前線にサイドに組み立てにあらゆるところに顔を出せるカイセドとよりPA内での仕事をメインとするグロスのコンビが猛威を振るっている。ビスマを懐かしく思う隙がないほど充実していると言えるだろう。
ワイドはトロサール、マーチの2人を軸としてランプティ、三笘とベンチも充実。中央は1人かけても万能性が高い他の選手でリプレイスをし、ワイドは2セット用意することで中央とワイドのクオリティを維持している。
シーズンの出だしはまさにチームとしての完成度の高さを感じさせる立ち上がりだったと言えるだろう。開幕戦はオールド・トラフォードで完勝。テン・ハーグの船出となったマンチェスター・ユナイテッドをほぼ圧倒して勝利を飾る。この勝利を皮切りに勝ち点を重ねて、1試合少ない中で4位という素晴らしい成績を維持している。昨季は頻発していたゴール欠乏症もここまでは顔を覗かせるのは限定的である。
順風満帆に思えたシーズンだったが、なんとブライトンのスタイルを大きく変えたポッターがチェルシーに引き抜きにあってしまい、想定外の監督交代をする羽目に。Aマッチデーにリーグ戦の延期とデ・ゼルビには十分な時間が与えられるとはいえ、難しいミッションと立ち向かうことになる。
スカッドで言えば層の薄いポジションは懸念になる。特にベテランは稼働率に難がある選手も多いため、不可欠なポジションのやりくりもデ・ゼルビに課されるミッションの1つと言えるだろう。
Pick up player:ダニー・ウェルベック
誰を選んでもいいくらいみんなコンディションはいいのだが、代替の効かなさという部分でウェルベックを選出。仮に詰まらされてしまっても大きな展開を収めることができるウェルベックはスカッドの中では唯一無二。深さを作れる存在として異彩を放っている。怪我での離脱が少なくないだけに、彼がいない時のプランの完成度は成績を大きく左右するはずだ。
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【5位】マンチェスター・ユナイテッド
4勝0分2敗/勝ち点12/得点8 失点8
■着地点の位置と完成のスピード感がポイントになる
アヤックスからやってきたテン・ハーグは古巣のアヤックス色を強く打ち出す布陣構成に踏み切った。リサンドロ・マルティネスやアントニーはもちろん、エリクセンも元々はアヤックスの選手。今夏ご執心だったフレンキー・デ・ヨングまで含めれば、この夏に狙った選手とアヤックスとの結びつきの強さは無視はできない。
昨季、CLで見かけたアヤックスは自陣の深い位置から少ない人数でボールを繋ごうとする意識は強かった。ユナイテッドでも同様の形を見せるのが理想ではあるが、ひとまずこのプランは開幕2試合の連敗で頓挫したようだ。つなげないデ・ヘアを後ろに抱える形ではさしものリサンドロ・マルティネスやアンカーのエリクセンも苦戦を免れない。
特にブレントフォード戦はそうした意味でテン・ハーグの理想を完全にぶち壊された格好だろう。ハイプレスにロングボールでの圧殺はテン・ハーグのオランダを強く意識したスタイルの強度は十分なのか?ということが話題になるくらいインパクトが強かった。
しかし、この敗戦がきっかけでだいぶ攻守のバランスをプレミア仕様に割り切って切り替えてきた感がある。アンカーだけではなく、MFはもう1枚ヘルプにやってくることで人数のバランスを取ることでプレスをモロに喰らってしまうことを回避する。
それに加えて前線が存在感を見せるように。新加入のアントニーはアーセナル戦でいきなりゴールをあげたし、ブルーノ・フェルナンデスやラッシュフォードは復調気配。後方から縦パスを入れてからのスピードアップは見事で攻撃に鋭さは出てきている。
攻守のバランスと前線の復調で戦績は上向きに。ブレントフォード戦との大敗を糧とした改善で連敗の後は4連勝と勢いを取り戻しつつある状態だ。
問題はここから先のスタイルの着地点になる。今の形はおそらくテン・ハーグが思い描いていたというよりは、ある程度自分たちの完成度とリーグに要求される強度の部分を擦り合わせた結果と言えるだろう。ここから先、どのように自らの理想をチームに落とし込んでいくのかは大きな見どころになるだろう。
気がかりなのは一部の選手の負荷の高さ。エリクセンがいない状態でもセンターラインの繋ぎは機能するのか、バックラインでボールを持てる選手が限られているだけにリサンドロ・マルティネスの離脱時も怖い。カゼミーロのような違う戦い方でもリーグ屈指のクオリティを持てる選手がいるだけにオプションプランの装備にどこまで走るかも気になるところ。
チームが完成する過程とスピード感など、まだまだテン・ハーグのユナイテッドからは目が離せない展開が続くことになりそうだ。
Pick up player:クリスティアン・エリクセン
フィットまでのスピード感と新スタイルへの貢献度が群を抜いている。即効性という意味ではこれ以上ない補強であり、費用対効果を考えればこの夏リーグベストの獲得となる可能性すらある。スムーズに保持型のチームに移行できれば、彼の貢献は間違いなく非常に大きなものとなるだろう。
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【6位】フラム
3勝2分2敗/勝ち点11/得点12 失点11
■プレミア仕様のミトロビッチとミドルプレスの持続性が残留達成の鍵
昇格組は例年1チームは旋風を起こすのだが、今年はフラムがその枠を担いそうである。ただ、例年と違って革新的なスタイルでリーグを席巻という色は薄く、堅実に結果を上げて勝ち点を積み重ねているという印象である。
最も大きかったのはフラムの今季のプレミア成功の鍵を握る「今のミトロビッチはプレミアで通用するのか?」という命題に早々に結果が出たことである。チャンピオンシップで脅威的な数字を残してプレミア再挑戦に臨むミトロビッチは開幕戦から大暴れ。ファン・ダイクからいきなりPKを獲得するなど、別格な存在感を示している。
フィニッシャーとしての心強さも段違い。ここまで7試合で6得点はケインと並ぶ数字。人間の中ではトップのゴール数である。彼にボールを集めて、ゴールを奪うというメカニズムがきっちり機能しているのがまず大きい。
攻撃においては絶好調のペレイラに加えて、ウィリアンがフォレスト戦で大活躍したのは大きな光。2列目が充実すれば2年前のプレミア挑戦とは異なる結果が待ち受けている可能性は十分にある。
守備はミドルゾーンからのプレッシングが持ち味。ハーフウェイラインよりもなるべく手前でボールを処理できれば、一気にフラムペースに持ち込むことができる。ブライトンのボール保持すら封じるなど、精度はなかなかである。ただし、前線の運動量次第なところは大きく、トッテナム戦のようにミドルプレスがビタイチ機能しない状況はどうしようもないという感じである。
ただ、ローブロックに関しても精度は2年前よりも上。リーム、アダラバイオの2人とレノのトライアングルは跳ね返しに長けており、耐久度は確実に上がっている。それでもこれ一辺倒で1試合を凌げるほどの強度ではない。ミドルゾーンで粘りながら、敵陣でプレーできる時間を伸ばし、最後はローブロックで跳ね返して逃げ切るのが理想のパターンと言えるだろう。
懸念となるのはチームを支えるセンターラインに代替が難しい選手が多いこと。ミトロビッチ、ペレイラ、パリーニャ、H.リード、アダラバイオあたりがいなくなるとセンターラインの強度を維持するのは難しくなるだろう。特にミトロビッチとペレイラのコンディションを保てるかどうかが躍進のポイントになるだろう。
Pick up player:ジョアン・パリーニャ
パンチ力のあるミドルにボール捌きの安定感と開幕戦から既にフラムにおいては別格の存在感になっている。攻守の要でありミトロビッチと同じく強固なセンターラインを支えている。
ここまでのハイライト
【7位】チェルシー
3勝1分2敗/勝ち点10/得点8 失点9
■情状酌量の余地がある出遅れから再構築に舵を切る
個人的には開幕戦から悪くない戦いをしているとは思っていたのだけども、好機を逃しているうちに試合の中での僅かな違和感がガンガン失点に繋がってしまい勝ち点を落としている。今季のチェルシーに対してそうした印象を持っている。
一番大きいのは中盤の負傷者の多さだ。クオリティには問題ないが稼働率に難があるコバチッチとカンテのコンビは今年も順調なスタートが切れず。代役として抜擢されたギャラガーも明らかに苦しむ形で持ち味を出せずにいる。
バックラインはククレジャとクリバリという大型補強の甲斐があって、リュディガーの退団にもかかわらず質は担保できている。ただし、ビハインド時に攻撃的なタレントを中盤やWBに逐次投入するトゥヘルのプランにおいて、増大した負荷には耐えられない場面も目立つ。クリバリは既に退場を経験しているし、シウバは流石なシーンの方が多いとはいえ物理的なスピードにおいては限界がある。この辺りはリュディガーの不在というよりはチームのバランスを崩していることがトリガーになっている部分が否めない。
ハフェルツ、マウントなど既存戦力がなかなか本領を発揮できない前線においてはスターリングが独力で存在感を放っている。前者2人はもう少し後方とうまくリンクしながら攻め上がっていきたいのだろうけども、今のところ少しMFとの連携がうまくいっていないように思う。後方からの運びに対して合わせるような動き出しが増えて来ればもう少しコンディションは上がってくるはずだ。
問題は確かにあるが、エクスキューズも当然ある。そもそも、今夏のチェルシーはアブラモビッチのゴタゴタから体制の変化を受動的にしなくてはならない状況に追い込まれていた。その上、リュディガーをはじめ主力級の選手の退団が控えており、補強は不可避な夏。その中でチーム強化のプランも後追いになるケースが非常に多かった。
結果的にビックネームを確保することには成功しているが、新戦力合流のスピード感も含めると上位陣に比べて、駆け込み感が強くなってしまったのは事実。W杯の影響で開幕が早まっているシーズンであることも相まって、出遅れの可能性はそもそもある程度高かった。そういう意味ではピッチ上の問題は構築途上のものが多く、ある意味この程度の難の抱え方は許容のように思う。
そうした中でのトゥヘルの解任がサポーターにどのように映っているのかは気になるところ。記事を読む限り、オーナーが任せたかった役割とトゥヘルが担いたかった役割に齟齬を感じるので、遅かれ早かれ解任は免れなかった感はある。
問題はそうしたプレッシャーが全てポッターに行くことである。豊富な戦力を活かしながら前任者よりも結果と内容を両立したものを提供しなければいけないとなれば、並大抵な難易度のオーダーではないだろう。ブライトン時代のような複雑な役割を選手に課すならば、スター選手に厳しい規律を遵守させることにもなる。そういう部分ではブライトン時代とは異なる要素も求められることになる。
ポッターには稀代の名将になるチャンスである一方で、難しいミッションが課された感も強い。ビッククラブ初挑戦となるポッターのチーム再建は非常にプレッシャーのかかるものになるだろう。
Pick up player:チアゴ・シウバ
変革期におけるチームでも変わらず最後方の中央に陣取って、チームを骨組みから支える安定感は圧巻。苦しいチームを水際で支えながらピンチの芽を積むクオリティは38歳になっても全く衰えることがない。
ここまでのハイライト
【8位】リバプール
2勝3分1敗/勝ち点9/得点15 失点6
■停滞感の理由はどこに?
コミュニティ・シールドでは勝利で勢いよく開幕をしたもののそこからは停滞気味のシーズンに。開幕戦では昇格組のフラムに引き分けると、次節にはクリスタル・パレスに引き分け。アンデルセンの挑発に乗ったヌニェスが一発退場になるなど悪い流れが止まらない。
未勝利対決となったユナイテッドとのナショナルダービーでは敗戦し、結局リーグ戦では開幕3試合勝ちなし。それ以降は2勝1分と無敗ではあるが、そのうちの1勝であるニューカッスル戦では後半追加タイムのラストプレーで薄氷の勝利。快勝と言える試合はボーンマス相手の9-0しかない。
内容を見てみると不調は頷ける部分が多い。攻撃ルートは限定的で左サイドからの対角パスで右サイドからの崩しでPAに入り、左サイドの選手たちが飛び込んでフィニッシュという形がほとんど。サラー+アレクサンダー=アーノルドの右サイドの2人にIHのエリオットが絡みながらフィニッシュに向かう。
中に入っていけるサラーと外から打ち抜けるアレクサンダー=アーノルドのコンビは十分強力なのだが、あまりにもこのルートに偏りすぎている感がある。この攻撃ルートではディアスとフィルミーノの2人の出番が少ない。
フィルミーノは好調なのだが、縦パスを入れてもらって周りと繋がりながら良さが出る選手であり、チアゴの不在で機能性は落ちてしまう。ディアスは苦しい時ほど個人でなんとかしてしまうというど根性枠という感じ。こちらも攻撃ルートの上には乗っていない。
方向性がやや変わるのはヌニェスがCFに入った時で、早い段階でラインの裏にボールを放り込みながら上下動を増やしていく形が増える。巧さというよりもなぜかゴールまでボールを押し込めてしまうという泥臭いストライカーであるヌニェスを生かすためのスタイルとして、サイドの手数はほとほどにとっととトップに預けるという形である。
ここまでの現象をまとめると、リバプールの攻撃がやや単調なのはチアゴの不在で左右にバランス良く攻撃を配給できる選手がいなくなったことと、ヌニェスの出場停止でプランを広げる方向に舵を切ることができず、右サイドルート以外の攻撃を生かすことができなかったことによるものと見る。
大勝したボーンマス戦はエネルギー全開のいわゆるストーミング的な振る舞いから一気に大量得点で畳み掛けた試合。これをスタンダードとする可能性もあるだろうが、ナショナルダービーやマージーサイドダービーといった舞台装置においてもそのポテンシャルは引き出せなかったので難しいのだろう。
要因として考えられるのはプレスのスイッチ役であるヘンダーソンの不在。ハイプレスの号令をかけるキャプテンの代役はエリオットには流石に荷が重たく、ハイテンポにペースを引き上げるための足枷になっている可能性はある。とはいえ、こうした大きい試合でエンジンがかからないのはリバプールのアイデンティティと反した印象で、今季の内容の中で最も気掛かりな要素と言っても過言ではない。
守備面においてはトランジッションの弱さも課題。特に右サイドの脆弱さは顕著で裏を取られてそもそもいないアレクサンダー=アーノルドとそのカバーに追われる右のCBがてんやわんや。そうした歪みを帳消しにできるファン・ダイクもパフォーマンスが上がらず、アリソンに頼りっきりになってしまっている。
復調には戦力の帰還は必須だろう。マティプ、コナテ、ヘンダーソンなどベテラン勢がきっちり脇を固めて、ヌニェスやカルバーリョなど新しい戦力を活かしたアレンジを一刻も早く始めたい。まずはそこにたどり着くのが目標となる。個人的にはどうせリバプールはほっといても勝ち出すとは思っているが、シティとの勝ち点差がズルズル広がっていくようだと、W杯前に優勝争いから脱落の可能性も否定できなくなる。
シティは今年は層の薄さが顕著で、ノースロンドン勢は通年の安定感という部分で実績には欠ける。勝ち点3とチームの構築を両立し、出遅れをリカバーする上昇気流に乗れれば、優勝争いへの再参戦するための時間はまだ十分に残されていると言えるだろう。
Pick up player:アリソン
苦しい中でもセービングの安定感はさすが。彼の存在がリバプールからゴールを奪うための最後の砦となっている。勝利はもちろん引き分けにおいてもスーパーセーブを連発。マージーサイドダービーではピックフォードが目立ったが、彼もまたエバートンに3ポイントを渡さなかった立役者である。
ここまでのハイライト
【9位】ブレントフォード
2勝3分2敗/勝ち点9/得点15 失点12
■大勝のインパクトと平時のスタイルにギャップあり
昨シーズン、プレミアに旋風を巻き起こしたブレントフォード。対策が進む2シーズン目は一般的には苦しい戦い方になりがちだが、今季のブレントフォードも堅実な星取りを見せている。
第7節のアーセナル戦を除けばいずれも接戦。もう1つの敗戦であるフラム戦も後半追加タイムに決勝点を許しており、終盤までどちらに試合が転がるかはわからなかった。逆にエバートン、パレスといずれも終盤に追いつくなど粘り強さは対戦相手にとっての脅威になっている。
真骨頂は大勝した2試合。リーズ戦は後半に前線へのハイボールを集中的に行うことで相手のバックラインを破壊して5得点。もう1つの大勝は今季ここまでのプレミアの中でも最もインパクトがあったと言っても過言ではないユナイテッド戦。前半で4-0という衝撃的なスコアを生み出したのは試行錯誤中のユナイテッドのビルドアップを破壊したハイプレス。デ・ヘアとCBの出しどころがなくなるほどのプレスからのショートカウンターでひたすら決定機を創出し続けた。これも昨季の彼ららしいスタイルだ。
その一方で、平時はこうしたハイプレスはあまり顔を覗かせない。4-1-4-1をベースに撤退守備を行う時間も長く、彼らのイメージほどはハイプレスを行う時間は多くはない。保持においてもロングボールを使ったシステマティックな前進は多くなく、IHをおろしながらじっくりショートパスを繋ぎながらゆったりとした試合のテンポで行うことも珍しくはない。
そうしたテンポを落とした展開を特に得意としている感じはないので、いわゆる昨季型のようなハイテンポのロングキック&ハイプレスの組み合わせの時間はなるべく増やしていきたいところではある。そして、それをしない事情がちょっと見えないのは気掛かりではある。
残留の危険性が脅かされる時があるとすればやはりトニーの離脱だろう。絶対的な大黒柱である彼が離脱することになれば、どういう形で試合を進めたとしても力が落ちるのは避けられない。
それでも要塞となっているホームスタジアムは残留に向けて大きな後押しになる。現段階ではむしろそうした不安感よりも今年も大物食いを果たしてくれるだろう!という期待感の方が大きいと言えるだろう。
Pick up player:イヴァン・トニー
今季も絶好調であり、長いボールを収める起点の役割とフィニッシャーとしての役割を両立。FKからも得点を決めるなど依存度は昨季以上と言ってもいいだろう。離脱時のことを考えるとちょっとゾッとするレベルだ。
ここまでのハイライト
【10位】ニューカッスル
1勝5分1敗/勝ち点8/得点8 失点7
■チームを勝たせる決め手を担うのは誰か
冬に行った大型補強の影響もあり、残留争いからブーストで脱出。終盤戦はアーセナルのCL出場権を絶望的なものにするなど、徐々にパフォーマンスで存在感を発揮した後半戦となった。
今季も厄介さは健在。ソリッドな4-3-3は非常に強力。前線からバックラインまでコンパクトに維持し、相手に簡単に攻撃のスペースを与えない。新戦力のボットマンやポープも素早くチームになじみ、強固なバックラインを構築するための重要な存在になっている。
中盤はギマランイス、ジョエリントン、ウィロックで鉄板。PAに顔を出す役割とDFライン前の壁となる役割を両立できる彼らの万能性の高さはプレミアの中でも上位に来るレベルであると言えるだろう。
WGはチームのリズムを一変させるサン=マクシマンはもちろんのこと、逆サイドのアルミロンも攻守に豊富な運動量で自陣での守備とロングカウンターの両立に貢献している。CFのウィルソンは動き出しだけでなく、相手を背負ってのポストプレーもこなしている。新加入のイサクもアンフィールドでデビュー戦をゴールで飾るなどポテンシャルの大きさを感じさせる。
個々のパフォーマンスも十分、そして組織としても強固。こうしたチーム相手には当然勝ちにくい。しかし、今季のニューカッスルは彼ら自身の勝ちきれなさも目立つ。シティ相手の引き分けであれば十分な健闘と言えるのだけども、パレスやウルブスにドロー沼に引き摺り込まれてしまうなど、競る展開になる試合を決める力がどうしても出てこない。
7節のボーンマス戦は5-4-1で明確にボールを持たされる形において停滞感は否めず、撤退した相手への引き出し不足という明確な課題を露呈したと言えるだろう。強度が高い試合における攻撃の決め手としてはサン=マクシマンとイサクの連携向上という伸びしろはあるが、撤退守備に対する細かい打開の策を整備するには少し時間がかかるように思う。
強固なセンターラインから整えていくという方向性は大型補強が可能なチームとしては非常に堅実で好感が持てる。地味ではあるが一歩ずつ強くなっていく形だ。ただ、今季は上位チームもそれなりに難を抱えているシーズンであり、もっと上を狙える年でもあると思う。できれば欧州カップ出場圏争いに顔を出すところまで持っていきたいところ。そのために必要なのは勝ち切るための決め手である。
Pick up player:ジョエリントン
俺たちプレミアファンはジョエリントンが大好きなのである。明らかに大雑把なプレースタイルだろう!という見た目と献身的なプレースタイルのギャップは非常に魅力的。プレミア界の春日としてこれからもジョエリントンには頑張ってほしい。
ここまでのハイライト
つづく!