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「前提は通用するのか」~2022.10.8 J1 第32節 川崎フロンターレ×清水エスパルス プレビュー

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第32節
2022.10.8
川崎フロンターレ(2位/16勝6分8敗/勝ち点54/得点54/失点36)
×
清水エスパルス(14位/7勝11分12敗/勝ち点32/得点38/失点45)
@等々力陸上競技場

戦績

近年の対戦成績

 直近5年間の対戦で川崎が9勝、引き分けが2つ。
(*:川崎ホーム扱いだが、開催地は日本平)

川崎ホームでの戦績

 直近10試合で川崎の7勝、清水の1勝、引き分けが2つ。

Head-to-head

<Head-to-head>
・公式戦直近15試合の清水戦で川崎は負けなし(W12,D3)
・リーグ戦で清水が川崎を最後にクリーンシートで抑えたのは2012年7月のこと。
・川崎ホームにおいて清水が勝利したのは2014年11月。
・川崎が勝てばこのカード史上初めてのリーグ戦2年連続ダブル。

 相性でいえば川崎が圧倒的に有利な試合。公式戦はここしばらくは川崎の勝ちか引き分けのどちらか。近年に入り、むしろ川崎の勝利の割合が増えている印象があるくらいだ。

 特に川崎は大量得点を稼ぐことが多く派手なゴールショーも多い。清水が最後に川崎をクリーンシートで抑えてからはもう10年も時が経っており、以降のリーグ戦18試合は全て川崎が得点している。

 川崎のホームでも傾向は変わらず、優位は川崎。最後に清水が勝利したのは8年前である。勝てば川崎は2年連続の清水相手のシーズンダブルを初めて達成することになる。なお、「初めての2年連続シーズンダブル」の記録がかかっている状態は前節の札幌戦と全く同じ。今度はしくじらないようにしてほしいところだが。

スカッド情報

【川崎フロンターレ】

・レアンドロ・ダミアンは右足関節外側じん帯損傷および右腓骨筋肉離れで10週間の離脱。
・車屋紳太郎は筋肉系のトラブル、ジェジエウは指の骨折による負傷で札幌戦を途中交代。チョン・ソンリョンも膝を痛めている。
・チャナティップは右長内転筋肉離れで3週間の離脱。
・大島僚太は右ヒラメ筋の肉離れで6週間の離脱。
・橘田健人は累積警告による出場停止。

【清水エスパルス】

・梅田透吾は右膝前十字靭帯断裂で全治6~8か月の離脱。
・代表離脱した権田修一はフルメニューを消化。
・神谷優太は左足関節捻挫、足関節インピンジメント症候群、三角骨障害により手術。
・西澤健太は7月の浦和戦で右膝蓋骨骨折。3ヶ月の離脱中。
・オ・セフンは8月の練習で左足リスフラン関節捻挫、左関節外側靭帯損傷を受傷。3ヶ月の離脱の見込み。
・ヘナト・アウグストは7月に手術を実施。左ひざ関節軟骨損傷で8ヶ月の離脱。

予想スタメン

Match facts

【川崎フロンターレ】

<川崎のMatch facts>
・直近5試合のリーグ戦で1勝のみ(D2,L2)
・公式戦直近11試合連続で先制しているが、うち7回は追いつかれている。
・しかし、ホームのリーグ戦は5連勝中。この間は16得点2失点。
・リーグ戦で連敗すれば今季2回目のこと。
・橘田健人が入団以降に欠場したリーグ戦は10試合無敗(W8,D2)
・小林悠は川崎×清水で11得点。このカードの最多得点者。

 直近のリーグ戦では勝ち点を落とす試合が続いてしまい、優勝争いは難しくなった。なんといっても拙さが目立つのは試合運び。先制点は奪えていても追いつかれる試合の連続で勝ち点を落としているのはもったいないというか、力がないというか情けない限りである。

 ただ、これらは全てアウェイの話。ホームゲームのリーグ戦に限れば直近5連勝中と絶好調。等々力に戻ってこれるアドバンテージは十分にあるといえるだろう。今季2回目のリーグ戦連敗はどうしても避けたいところだ。

 今季は橘田が出場停止となる川崎。リーグ戦でいうと開幕戦のFC東京戦以来の欠場となるが、昨年も含めてリーグ戦は彼の欠場試合は負けなし。この試合でもなんとか彼の不在を埋めたいところではある。前線では連続得点を決めている小林が好調。清水も札幌、仙台に次いで得点を決めている相手。さらにはこの後控えている神戸にも11得点を決めている。終盤戦で勝ち星を落としたくない時に頼りにしたい存在だ。

【清水エスパルス】

<清水のMatch facts>
・リーグ戦はここ3試合未勝利。
・直近4試合の未勝利ゲームはいずれも追いつかれる形で勝ち点を落としている。
・直近4試合のリーグ戦の勝利はいずれもクリーンシート。
・今季挙げたリーグ戦7勝のうち、5勝はアウェイで挙げたもの。
・チアゴ・サンタナは直近12試合のリーグ戦で8得点を挙げている。
・乾貴士はC大阪の選手として今季等々力でプレーし、2得点を決めた。

 残留は一時期は安全圏と見られたもののG大阪、福岡の星取り次第では再び追い込まれる可能性はある。できればあと1勝は欲しいところだが、ここ3試合はその1勝が手に入っていない状況だ。

 もどかしいのは勝ち点を落とした試合はいずれも追いつかれる形であるということ。このあたりは川崎と全く同じで、終盤の粘り腰が足りないチーム同士の対戦といえるだろう。

 アウェイ自体は得意で今季5勝を挙げているが、等々力は鬼門。直近の勝利はいずれもクリーンシートというジンクスを組み合わせれば、リーグ戦18試合ぶりとなる対川崎のクリーンシートが求められることになる。エースのサンタナとすでに等々力で勝利を挙げた経験のある乾を旗頭に残留を確実にする1勝を狙いに来る。

予習

第28節 広島戦

第29節 湘南戦

第30節 福岡戦

展望

■底上げが感じられるゼ・リカルド政権の内容

 まずはサッカーどころではない2週間を過ごしてきた静岡在住の皆様に心からのお見舞い申し上げたい。苦しんだ地元の人たちの思いを背負って等々力に立つ清水の選手たちは川崎にとっては非常にタフな対戦相手になるだろう。

 そういった事情もあって、清水は先週の磐田戦は中止。間隔としては3週間空いた状況で今週の試合を迎えることになる。空いた間隔はもちろんだが、今回の災害で練習設備等への影響がどうだったかなど、どこまでコンディションを整えられているかは全くわからない。

 試合を見る限り、ゼ・リカルド就任以降の清水はここ数年の中では比較的パフォーマンスが安定しているように見える。保持はGK、CBが距離を取りながら最後方からの組み立てを志向。ショートパスからつないでいくやり方を狙っていく。

 CHは片方が中央の低い位置に降りてくることでGK、CBと共にひし形を形成する。もう片方のCHはトップ下のカルリーニョスとフラットになる高さまで上がり、ビルドアップへの関与は薄め。よって、中盤は逆三角形のような形になる。

 枚数調整役となるのはSB。山原、原、片山といったSBは高い位置でも低い位置でもプレーできる器用な選手たち。なるべくならば高い位置を取りたいだろうが、バックラインだけではビルドアップが苦しい時やGKのロングボールのターゲットになるべき時は低い位置まで顔を出している。

 ビルドアップの形として面白いのは福岡戦で見せたパターンである。この試合では左のSBである山原がバックラインに下がりながらゲームメイクに参加。同サイドの乾もそれに合わせて下がっていった。

 福岡は乾の対面の前嶋が乾についていくようにプレスに出て行った。その背後にチアゴ・サンタナが走り込むような形で前線の起点を作る。

 福岡からすると前嶋が乾についていけばサンタナに裏を取られるし、乾を無視すればフリーで受けた乾に簡単にボールを運ばれてしまう。どちらを選んでも清水からすると運ぶ手段はあった。ボリスタの記事にもあったが、こうした乾の動きは清水の定番といえる形のようだ。



ヤゴ・ピカチュウと乾貴士。清水の新たな両翼が担う役割をゼ・リカルド戦術から探る | footballista | フットボリスタ


シーズン途中に就任したゼ・リカルド監督の下、16位から一時は11位にまで順位を上げ、J1第31節時点で14位に位置している


www.footballista.jp

 こうした前から後ろまでがつながるようなビルドアップからの前進はここ数年の清水にはあまり見られなかったものである。毎試合コンスタントにこうしたパフォーマンスを見せることは出来てはいないのだが、兆しが見えているだけでも悪くはないといえるだろう。

 もちろん、ここまで紹介した組み立てが難しい時はサンタナやカルリーニョス目掛けたロングボールでもOK。彼らの相棒として右のSHのピカチュウは常にラインの裏を狙っている。こうした部分は柔軟性が見て取れる。

 非保持においては2トップがアンカーを管理しながらの守り方。プレッシングの強度は常に前がかりというわけではない。3枚目のプレス隊となるのはSHでバックラインに圧力をかけるように出て行く。

 展開によっては終盤でなくとも5-4-1を使うなどやられると思えば素早く手当て。清水はこうしたフォーメーション変更を試合中に頻繁に行うタイプのチームではないので、この部分もやや意外だった。

 攻守に底上げは出来ているように思うが、気になるところがあるとすれば、あまり尖っていないところだろうか。ここだけはどこにも負けん!みたいなところはあまり見当たらないかもしれない。撤退守備もプレスもそこそこにやるし、ショートパスもロングボールも使う。スピードを生かしたカウンターもやるし、ボール保持もやる。どれもやるけど、いまのところ清水といえばこれ!というものはない。

 終盤戦に失点が多いのはこういうところも影響しているのかもしれない。ビハインドの相手チームは「ここで勝負!」というところで襲い掛かってくるのが常。清水はそれなりに受けれてしまうので、そのまま受けて屈する!みたいな。いやいやこっちの土俵で戦いましょうよ!みたいなところが出てくるともっと強くなるのかもしれない。

 それでも、就任からの期間を考えれば十分だろう。こうした武器をとがらせるのはまだ先の話でいい。まずは今季のJ1残留。それを確実にするための勝ち点を着実に積み上げていきたい。

■清水の左への対処法は?

 川崎からすると清水は比較的苦手な局面が少ない分、ごまかしがきかない相手だなという感じはする。札幌相手に川崎が勝てなかった要因として大きいのはこれまでの札幌戦の優位の前提だった終盤の打ち合いにおける破壊力で優位に立てなかったからだ。

 あの日の川崎は怪我人が多かったという言い訳もたたないことはないが、今年のチームを見る限りは基本的にはチームとしての打ちあいの強さは薄れており、アドバンテージが減ってきているのは確かだろう。近年持っていた強みがいつまでも存在しているとは限らない。

 そういう意味で対清水においてこれまで川崎が強みとしてきた部分は2つ。まずはサンタナを抑えられたことだ。CB陣がサンタナを明確な起点として機能させない時間帯が長いため、清水戦では優位に立っていることが多い。

 今回はジェジエウが間に合うかが不透明なうえに、車屋と山村はコンディション面で不安がある。さらにはロングボールとセットで裏を狙えるカルリーニョスやピカチュウも清水側にはいる。そういう意味でもきっちりロングボールを無効化できるかどうかは不透明といえるだろう。

 もう1つは中盤のデュエルだ。この部分は橘田の不在が大きいだろう。ジンクス的には彼がいなくとも問題ないことになっているが、今季の川崎のスカッド事情を考えればそんな余裕をいっていられないのはまちがいない。

 中盤がターンで前を向けてサイドチェンジやPA内に迫っていく動きができるかどうかは大きなポイント。ここで引っ掛けてしまうとカウンターは打たれるし、押し込まれることになるだろう。この部分は清水戦に強い脇坂に頑張ってほしいところである。

 バックラインにおけるビルドアップからは逃げてはいけない。前回対戦では日本平で車屋がスムーズなボールの運びを見せた。出場できるのならば、札幌戦ではなく車屋には日本平のプレーの再現をお願いしたいところだ。

 清水がこれまでのスタイルでプレスに来た場合は上の図のように必ず1枚は空くはずなので、バックラインから前線にボールと一緒に時間を送るイメージは大事にしたい。CBに加えて、登里と山根が予想されるSBも対面SHの裏でボールを受けて、前に進むための推進力になりたい。

 守備においては先に示した乾が降りる動きに対しての対応策は欲しいところ。特にジェジエウが出場できないのであれば、山根が乾を捕まえに前に出て行った場合、右サイドの広範囲を山村がカバーすることにある。スピードスターと対面するわけではないが、川崎にとってはあまりうれしくない座組である。ここ数試合、ちっともはまっていないWGの外切りをやめて、SBにマンマーク気味につくのはやり方としてはあり。後方のメンバー次第では前線からバックラインに負荷をかけるリスクを取り除く慎重策が求められる可能性はある。

 やはり特に怖いのは清水の左サイド。乾、山原は十分ソロでも川崎と渡り合える実力者である。このサイドの被害をどれだけ抑えることができるかが清水に勝利するカギになるだろう。

【参考】
transfermarkt(
https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(
https://soccer-db.net/)
Football LAB(
http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(
https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(
https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(
https://www.nikkansports.com/soccer/)

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