アストンビラ【17位】×サウサンプトン【12位】
■今季ベストのコミットを見せた圧巻の逃げ切り
ホームのシティ戦では1-1のドロー。ジェラードのビラは前節になんとか踏みとどまった感がある。ここから2週間開くことを考えればインターナショナルブレイク前にどうしても結果を残したいところである。
序盤の主役はコウチーニョ。左サイドからタメを作り、味方の攻め上がりを促す。やや、ここにボールが集まりすぎな感があったが、左で作り右で仕留めるという傾向が強いビラにとっては、左のボールの置き所を定められたことは大きかった。
一方のビラはシンプルにサイドのスピード感で勝負。ウォーカー=ピータースとジェネポの2人が馬力を生かしてサイドを切り開いていく形で迫っていく。クロッサーとして優秀なウォード=プラウズも右サイドからクロスを上げることでチャンスを作っていた。中央ではアダムスも奮闘。体を張るポストでサイドを変える起点として機能しており、サウサンプトンが押し返す大きな原動力になっていた。
ややサウサンプトンの方がエリアに迫る頻度は多かったように思うが、アストンビラも後方からサイドを変えるまでの工程が今までよりもスムーズ。右サイドも使えるようになり押し込む頻度を増やしていく。
すると、先制点はセットプレーから。ポストに当たりピンボール気味になったところ押し込んでビラがゲット。ラムジーが背番号と同じ41分に試合を動かす。
後半はリードを奪ったビラがペースを掴む。とにかく、サウサンプトンに自陣側に攻め込ませない。ボールを持って敵陣に確実に押し込むし、何よりもネガトラが非常に早い。
特にブエンディアが入ってからの中盤の気合の入り方は異常。なんとしてでもここより前でボールを跳ね返してやろう!という気迫が伝わってきた。今季これまでのビラの中でも最もプランにコミットすることができていた45分だと思う。中盤が5枚のように守れるようになったことでルイス、マッギンなど運動量勝負ができるダイナモが広範囲に動いてもカバーできるようになったのもよかった。
サウサンプトンは4-3-3変形とアタッカー陣の投入など攻撃的な舵を切ったが効果は限定的。なにしろ、彼らにボールを届けるためにビラの中盤を超えるのがしんどいのである。
先制点を守って逃げ切るべく魂を見せたビラがホームで前節に続き勝ち点をゲット。何よりも後半の選手たちの気迫は巻き返しにおける明るい材料になり得るはずだ。
試合結果
2022.9.16
プレミアリーグ 第8節
アストンビラ 1-0 サウサンプトン
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:41′ ラムジー
主審:トニー・ハリントン
ノッティンガム・フォレスト【19位】×フラム【10位】
■逆転の6分間を演出した黒子は…?
昇格組同士の一戦。ここまでは堅実な戦いを繰り広げているフラムと20人以上の大量補強を行い巻き返しを図るノッティンガム・フォレストの一戦だ。
立ち上がりにポゼッションで試合を進めたのはフォレスト。バックラインで3バックが数的優位を作り、ボールを持つことができる。
縦にパスを入れるところで待ち構えるフラムは受け手をケアすることで前進を阻害。そのためフォレストは安定した保持ができてはいたが前に進むのには苦戦。トランジッションから右サイドのウィリアムスとジョンソンの抜け出しといういつものパターンでチャンスを狙う。
非保持においても悪くない立ち上がりを見せたフォレスト。2トップとトップ下の3人で2CBとパリーニャをマークする形。レノにはあえて持たせる形でボールの前進を許さない。
敵陣に押し込む時間が長くなったフォレストはセットプレーから先制。もたれている状況をどうにかせねば!と前に出てきたフラムをひっくり返した裏抜けからCKを奪ったという得点以前の流れが結構面白かった。ファーで合わせたアウォニイが先制点を奪い取る。
フラムはこれに対して右サイドからの前進を狙う。テイテイが絞ったりなど、ビルドアップにおいてこれまでにはない工夫を見せていたのが面白かった。その恩恵を受けたのは同サイドのウィリアン。余裕を持ってボールを受けることができたウィリアンからタメを作り、同サイドからトライアングルで飛び出す形からエリアに迫っていく。
左サイドは逆に縦パスを受けたボビー・リードに余裕がなく、攻め切ることができない。右はいいけど、左はイマイチという状況で決め手を欠いたフラム。CBが積極的に高い位置に顔を出し、サイドチェンジに関与していたため、押し込むことはバッチリだった。
後半も試合の展開は変わらず。押し込むフラムが同点弾を決めたのは先制点と同じくセットプレーだった。ウィリアンからのセットプレーをアダラバイオが決めて追いついてみせる。
このゴールをきっかけにフラムは一気に攻め立てる。もちろん、きっかけは右サイドから。ウィリアンから深さを作りマイナスの折り返しを受けたパリーニャが逆転ゴールを仕留めたのは同点ゴールの3分後のことだった。
そして、逆転ゴールのさらに3分後。今度は左サイドのボビー・リードの抜け出しから走り込んだハリソン・リードが3点目をゲット。この場面でもニアに引っ張るウィリアンのランが見事。この日の彼は立派な助演男優だった。
追いすがりたいフォレストは途中交代のリンガードが攻撃を加速させてオブライエンが追撃弾を決めるが、反撃はここまで。デニスは途中交代からなかなかインパクトを残せていないのは気になるところ。この試合でもボールロストの温床になっていた。
徹底的に右サイドを壊していたフラムは6分で3得点で一気に逆転。今季ここまでの勢いを反映した展開で逆転勝利を手にした。
試合結果
2022.9.16
プレミアリーグ 第8節
ノッティンガム・フォレスト 2-3 フラム
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:11′ アウォニィ, 77′ オブライエン
FUL:54′ アダラバイオ, 57′ パリーニャ, 60′ H.リード
主審:ジャレット・ジレット
ウォルバーハンプトン【14位】×マンチェスター・シティ【2位】
■WGの前残りによる負荷を集中攻撃
配置を整理する前に先制したのはシティ。右サイドのフォーデンとデ・ブライネのセットで一気に敵陣深くまで入り込んでゴールを奪う。試合開始からクロスに飛び込んだグリーリッシュがネットを揺らすまでに1分もかからず。電光石火の攻撃でシティが先制する。
この先制点の場面はウルブスの守備を象徴している部分も。この日のウルブスはWGがあまり積極的に自陣に戻らず、前に残っていることも多い。そのため、3センターがスライドしながら対応することもしばしばである。
そうなれば、3センターの横移動の負荷は高いし、間に合わなければSBが1人でサイド封鎖をすることになる。先制点の場面のようにアイト=ヌーリが1人でデ・ブライネとフォーデンに襲い掛かられてしまえば、得点の可能性が高いクロスが飛んでくるのは必然だろう。
それであればWGが前残りする意義を見つけたいウルブス。だが、ネトやゲデスが独力でゴールまで迫ることが出来た場面はそこまで多くはない。その代わり、自陣からつなぎながらシティのプレス回避には積極的にチャレンジ。外切りでWGへのパスを背中で消すシティに対して、幅を使いながら前進することはできていた。
敵陣に迫る手段がなかったわけではないウルブスだが、ここからさらなる苦境に立たされることに。まずはシティの追加点。ミドルゾーンでフリーになったベルナルドが加速すると、スピードに乗ったハーランドにパスを預ける。スピードアップしたハーランドはウルブス守備陣の飛び込むスキを与えずにそのままシュート。今日もノルマの1ゴールを決めて見せたハーランド。
ウルブスは3センターの横スライドが多いせいでベルナルドが空いてしまったことが痛恨。攻撃がスピードアップすることを簡単に許してしまった。
このように確かに後ろ7枚の守備における負荷が高いことによる不具合はあった。とはいえ、コリンズの退場は完全に余計なチャレンジ。誰がみても一発退場に値する無謀なチャージでウルブスは10人でプレーすることになる。
これで自陣からボールをつなぐこともままならなくなったウルブス。ハイプレスに対する対応は危うくなり、前半に安定していた部分も難しくなってしまった。
後半のシティはややトーンダウン。プレッシングの強度を下げつつ、保持では試合をコントロールするというインテンシティを下げたやり方で十分と考えたのだろう。
それでも3点目のように一度スイッチが入るとゴールまで一直線。デ・ブライネとハーランドが加速された攻撃を見事にフォーデンは沈めてさらにリードを広げていく。
ウルブスはシティのプレスが緩んだ分、つなぎながら前に出て行くチャンスがないわけではなかった。しかしながら、全体の重心が下がっていることは否めず。馬力のあるネトはともかく、ゲデスにこの状況で何かをしてもらうのは厳しかったように思う。
早々に奪った2点のリードと10人の相手に対して悠々自適に試合を進めることができたシティ。CL後の試合を少ないダメージで乗り切ることに成功した。
試合結果
2022.9.17
プレミアリーグ 第8節
ウォルバーハンプトン 0-3 マンチェスター・シティ
モリニュー・スタジアム
【得点者】
Man City:1‘ グリーリッシュ, 16’ ハーランド, 69‘ フォーデン
主審:アンソニー・テイラー
ニューカッスル【11位】×ボーンマス【13位】
■リスペクトに屈したドローに
内容としては自力を感じるものの、それが結果に結びついてこないニューカッスル。負けはしないけども、引き分け続きで勝ち点を伸ばせない影響もあり、前節ノッティンガム・フォレスト相手に大逆転勝利を挙げたボーンマスとは勝ち点で並んでいる。
試合は両チームともショートパスを基調とした保持から始まる。ボーンマスはソランケとビリングが縦関係。アンカーのギマランイスにはビリングが監視役としてつく。ショートパスを主体として左右に振りながらピッチの深いところまで侵入していくニューカッスル。クロスの形までは作れるし、なんならたまにサイドから抜け出す形もできてはいるが、決定機に至るまではもう一味が足りない感じであった。
一方のボーンマスもショートパスで繋ぎたい意志を見せる。敵陣までは運べているけど、サイドの崩しにおいてはやはりニューカッスルに比べると停滞感はある。特に相手を押し込んだ時間帯においては。カウンターから中央で時間を作り、LSBのゼムラがオーバーラップの時間を稼ぐというのがこのチームの1番の攻撃の形というのは相変わらずだった。
時間が進み、仕掛けてきたのはニューカッスル。プレッシングからボーンマスのポゼッションを脅かしにいく。ボーンマスは横のパスコースを作るのはうまいけど、縦のパスコースを作るのはあまり上手ではないので、特にSBがボールを持つときに詰まらされる感じがあった。
ただし、ハイプレスを交わせばチャンスも見込める。前向きの矢印が強いジョエリントンを超えることができれば、カウンターは成立の公算が十分に立てられる。というわけでこのプレス剥がしには前向きに挑むボーンマス。
プレス、保持、そしてサイドの仕上げとあらゆる局面で優位に立ったニューカッスルだが、攻撃のスピードアップからフィニッシュまでのスムーズさはややかけるところもある。ボーンマスがカード覚悟でニューカッスルを止めたことも影響はあるだろう。前半の終盤はファーのジョエリントンで仕上げられそうな場面もあったが、ここはネトの好セーブに阻まれる。
後半、プレスからボーンマスが反撃の意志を見せるも、やはり押し込むのはニューカッスル。サイドの攻防から優位に立ち、ボーンマスを自陣に釘付けにする。
だが、先制点はボーンマス。タヴァニアの素晴らしい突破から押し込む機会を得ると、オーバーラップしたゼムラのクロスにビリングが合わせて先制。出し手、受け手ともに抜群の働きを見せた見事な連携でニューカッスルを出し抜く。
しかし、直後にニューカッスルは同点に。ゼムラをマイナス方向に釣ったところに、走り込んだのはトリッピアー。慌てた対応になったレルマがハンドを犯してこれがPKとなる。イサクがこれを決めてニューカッスルは同点に。
その後もニューカッスルが攻める展開が続くが、5バックシフトとニアを封じるボーンマスのバックス(主にセネシ)の奮闘が続き、ニューカッスルは勝ち越せない。次々と守備的な手を躊躇なく打つボーンマスに対しては「そんなにリスペクトしないでよ」と言いたくなりそうなニューカッスルの苦しみ方であった。
ニアでは跳ね返され、ファーでは競り負けの展開は試合終了まで継続。ニューカッスルは最後までゴールをこじ開けられずまたしてもドローを積み重ねることになった。
試合結果
2022.9.17
プレミアリーグ 第8節
ニューカッスル 1-1 ボーンマス
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:67′(PK) イサク
BOU:62′ ビリング
主審:クレイグ・ポーソン
トッテナム【3位】×レスター【20位】
■バカ試合は前半だけで十分
サンチェスが先にスライディングして置いた足にジャスティンが引っ掛けてPK。そのPKをロリスがストップし歓喜するが、ゴールラインから早く動いてしまい蹴り直しに。再びPKスポットに立ったティーレマンスがネットを揺らすというカオスな立ち上がりがこの前半を象徴していると言えるだろう。キックオフから前半の最後まで落ち着かない状況が続く試合だった。
先制点の後、トッテナムはすぐにやり返す。降りていくトップの選手から、サイドを変えて深い位置まで侵入すると、そこからクロスを上げてレスターを殴り続ける。セットプレーの流れからクルゼフスキが右サイドのペナ角からファーに上げたクロスをケインが叩き込んで追いつく。
レスターのセットプレー対応はなかなかに落ち着かずにバタバタ。ニアのストーンが機能しない問題は相変わらず。トッテナムの2点目はセットプレーにおけるこの問題をついたもの。ニアに入るダイアーのヘッドは見事だったが、ニアのボールに届かせようともしないデューズバリー=ホールの対応はまずいだろう。
中盤がない落ち着きが展開にかまけて、このまま高い位置からプレスをかけて試合を決めたいトッテナム。しかしながら、ジャスティンの立ち位置を捕まえられず、ファエスの縦パスやウォードのキックなどで前に進まれてしまいトッテナムは押し込まれる。
トッテナムはここからのリカバリーが難しい。レスターはトランジッションが上々。トッテナムが幅を取りながらのビルドアップができないこともあり、降りて受けにいくCF陣に狙いを定めたレスターはネガトラから波状攻撃を仕掛けることに成功する。
真骨頂は同点ゴール。ウォードの驚きの切り返しからハイプレスを回避して前線にボールを送ると、マディソンのスーパーゴールが炸裂。驚異的な繋ぎとフィニッシュというアクロバティックな形から試合を振り出しに戻す。これもまぁカオス。
同点で迎えた後半は早々に試合が動く。レスターの連携ミスをベンタンクールが掻っ攫い、一気にゴールをゲット。トッテナムがいきなり先行する。
ここからはカウンターを中心としたソンのゴールラッシュ。ラインブレイクから、美しい軌道のシュートでゴールを重ねあっという間にハットトリックまで持っていく。トッテナムのお得意のパターンでようやくソンがトンネルから抜け出した格好だ。
レスターは反撃したいところだが、WBの交代による手当てと5-3-2というシステム変更でコンテに手堅く修正をかけられてからは手も足も出ない形になってしまった。
前半はバカ試合の様相を呈していたが、後半のトッテナムはバカ試合から卒業。3点目をきっかけに手堅い守備固めと鋭いカウンターを備えたソリッドなチームに変貌してみせた。
試合結果
2022.9.17
プレミアリーグ 第8節
トッテナム 6-2 レスター
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:8′ ケイン, 21′ ダイアー, 47′ ベンタンクール, 73′ 84′ 86′ ソン
LEI:6′(PK) ティーレマンス, 41′ マディソン
主審:シモン・フーパー
ブレントフォード【8位】×アーセナル【1位】
■Nice kick about with the boys.
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難所、ブレントフォード・コミュニティ・スタジアムに乗り込むのはこの地で昨季の開幕戦での惨敗スタートを喫してしまったアーセナル。ブレントフォード躍進の最初の餌食になったアーセナルが首位で1年越しのリベンジを果たしに来た格好だ。
ブレントフォードはなじみのある5-3-2に回帰。ここに戻れるくらい、戦力が徐々に戻ってきたということだろう。しかしながら、高い位置から無理にプレスに行くことはせず、アーセナルをサイドに追いやりながら閉じ込める立ち上がりとなった。
押し込むことはできるが、サイドで複数人に囲まれる大外のWGは封じられたアーセナル。WGの独力だけでは膠着を何とかできない。しかし、今季のアーセナルは決してサカとマルティネッリ頼みのチームではない。中盤とSBが頻繁にポジションを入れ替えながら守備の負荷の高いブレントフォードのIHにちょっかいをかけていく。
プレスの矢印を自分に向けて相手を引き出しつつパス回しを順調に進めるアーセナル。ブレントフォードの中盤を自在に操ることでマークを外したりスペースに入り込んだりなど攻略を着々と始めていく。
まず、結果を抱いたのはセットプレー。ニアに入り込んだサリバのヘディングでアーセナルは先制。するとさらに流れの中から追加点をゲット。ティアニーで深さを作ったことにより空いたジャカがマイナスでボールを受けると、ここからファーのジェズスにアシスト。さらにリードを広げる。
自陣に押し下げたられたブレントフォードはトニーへのロングボールから起点を作ろうとするが、ここはサリバとガブリエウが立ちはだかる。去年はパブロ・マリを相手にしなかったトニーだったが、今季はこの2人を相手に回して非常に苦しんだ。
自陣から脱出できないブレントフォードは後半頭にハイプレスで展開をひっくり返しに出て行く。しかし、これもアーセナルのボール回しでいなされてしまい、反撃の糸口を掴めない。それどころかファビオ・ヴィエイラのスーパーミドルというしっぺ返しを食らうことに。点差は縮まるどころか開いてしまうことになった。
アーセナルは終盤もボール保持で落ちつけつつ試合を掌握。さすがに終盤はブレントフォードに攻める機会を許すことになったが、今季ここまでの課題である後半のゲームコントロールに関しても一定の解答を見せることが出来たといっていいだろう。後半追加タイムにはマルキーニョスとプレミア最年少出場となったヌワネリがリーグデビューを飾る余裕も見せた。
この試合の冒頭の見出しの英文は1年前のこの試合の後に快勝したトニーのツイートが原文。今回はガブリエウがこの試合の後にやり返す形で全く同じ分をツイートした。このツイートが示すように今回の試合は1年前の開幕戦と完全に立場が入れ替わった展開に。撤退ブロックの攻略で差をつけた前半と反撃をいなして差を広げた後半。どちらも首位の貫禄十分の試合運びでブレントフォードを一蹴し、首位キープに成功した。
試合結果
2022.9.18
プレミアリーグ 第8節
ブレントフォード 0-3 アーセナル
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
ARS:17‘ サリバ, 28’ ジェズス, 49‘ ヴィエイラ
主審:デビッド・クート
エバートン【16位】×ウェストハム【18位】
■ようやくつかんだ初勝利で反撃態勢に
共に今季は序盤から苦しんでいるチーム同士。両チームの勝利数はここまで足してわずかに1。何とか今季初勝利を挙げたいエバートンと降格圏から脱出したウェストハムの一戦が第8節のトリを飾る。
どちらのチームも立ち上がりから過剰なハイプレスは行わなかった。エバートンは4-3-3、ウェストハムは4-2-3-1と両チームのシステムは微妙に違ってはいるが、中盤を噛み合わせながらトップまで深追いしない形はどちらも共通しており、大まかなコンセプトは同じであったといえるだろう。
ただし、設定したプランに対しての強度は両チームにやや差があった。中盤がタイトでなかなか自由を許してくれなかったエバートンに比べると、ウェストハムのプレッシングはやや緩慢さが目立つ。エバートンの選手は保持時に中盤で自在に反転することが可能で、簡単にフリーになることができた。そのためサイドチェンジから敵陣深くまでお手軽に進むことができた。
エバートンはワイドアタッカーを軸に、サイドでトライアングルを形成。裏抜けやペナ角付近のクロスなど敵陣に近い位置で攻撃に打って出ることが出来ていた。
押し込まれることが多くなったウェストハムの攻撃は自陣の深い位置からスタートすることが多かった。バックラインはエバートンと同様に、ある程度幅を取りながらビルドアップする姿勢を見せていたのだが、とにかく蹴りだすタイミングが早い。アントニオの左流れなど前進のパターンもないわけではなかったが、前線が好調とは言えない今季において前にとりあえず任せる!というやり方は少し厳しいように思える。
エバートンはトランジッションにおいても上々。特にイウォビの出来は日々向上しており、完全にエバートンに欠かせない存在になっている。タメから時間を作るプレーはもともとうまかったが、今季は攻撃をスピードアップさせるのもうまい。
後半に生まれた先制点はまさにこのイウォビの良さが出た場面。ポジションの取り直しからフリーでボールを受けると攻撃を加速させて最後はモペイ。加入後初ゴールは貴重な先制弾となった。
リードを奪ったエバートンは保持で時間を稼ぎながら時計を進める余裕が出るように。交代も中盤色が強い選手が増えていき、試合を落ち着かせる方向に進んでいく。
ウェストハムは後半早々の落ち着かない時間帯でなんとか点を奪いたかったはず。しかし、落ち着いてしまってからは前進の術と仕上げのところで決め手にかける状態に。
再びウェストハムにチャンスが出て来たのはコルネが入ってダイレクト志向が強まった時である。それでもチャンスを決めることができないウェストハム。なかなかボールが回ってこないスカマッカのイラ立ちはこの試合のウェストハムを象徴しているといえるだろう。
スコアだけでなく内容も相手を上回ったエバートン。4試合連続ドローという沼から脱する今季初勝利。ここから反撃態勢に転じたいところである。
試合結果
2022.9.18
プレミアリーグ 第8節
エバートン 1-0 ウェストハム
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:53′ モペイ
主審:マイケル・オリバー
今節のベストイレブン
ブライトン【7位】×クリスタル・パレス【12位】
いつもと違うパレス、いつもと同じ結果
M23ダービー、第2ラウンド。ブライトンはCL出場権争いにくらいついていくため、クリスタル・パレスは2023年初めての勝利を挙げるため。それぞれの目的を胸にダービーに臨む一戦である。
イメージで言えばブライトンがボールを持つ展開になるはずである。だが、この試合においてはブライトンも奪った後非常に縦に早くボールをつけていたため、試合自体がボールが行ったり来たりする流れになっていた。
パレスのプレッシングもいつもよりは積極的。ミドルゾーンに構えつつ、中盤へのケアはCHが動きながら対応する。しかしながら、こうした移動に対してブライトンのポゼッションは一枚上手。パレスの積極的なスタンスを裏返すようにボールをつなぐことができていた。
要は陣取り合戦の色が強かったということである。パレスは敵陣で少しでもプレーしたいという意志を感じたし、ブライトンはパレスのWGに対して強気でプレスに行くため高いラインを保つことができている。少しでも相手を押し込んでプレーしたいという意志を感じた試合だった。
こうした勝負になれば、試合の経過とともにブライトンが優勢になるのは仕方のないことだろう。先制点を決めたのもブライトン。タイトなマークを受けていた三笘がインサイドにカットインして自らのマークを振り切ると裏に走ったマーチにラストパス。2人のWGの優れたオフザボールの動きからウィットワースが守るゴールマウスを破ることに成功する。
ビハインドで後半を迎えたパレスはドゥクレに代えてエゼを投入。負傷でないならばあまりにもヴィエラらしくない采配。だとすれば、キックオフ前の段階でこの試合の持つ意味は普段と違っていたということかもしれない。
アタッカーを増員することで逆にブライトンは落ち着いてボールを持てるようになった。攻略のメインとなっているのは左サイド。三笘、マック=アリスター、エストゥピニャンから奥をえぐり、折り返しながらチャンスメイクをする。
一方でブライトンもプレッシングの強度を落としていたため、パレスもアンカーに入ったロコンガからボールを持てるように。ただし、アタッカー陣同士の連携があまり効いておらず、増員した効果は限定的と言わざるを得ない。
前半と比べて攻守の局面が分断しやすくなった試合は終盤までブライトンペースで進む。試合の最後にはスティールのミスからパレスは決定機を迎えるが、同点のチャンスを決めきれず。M23ダービーはCL出場権を視野に入れるブライトンが制した。
ひとこと
両チームの勢いがきっちり出た試合。パレスはいつもと異なる強引なアプローチだったが、それが成果にはつながらず、代表ウィーク前にヴィエラは解任となった。
試合結果
2023.3.16
プレミアリーグ 第8節
ブライトン 1-0 クリスタル・パレス
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:15′ マーチ
主審:ピーター・バンクス
マンチェスター・ユナイテッド【3位】×リーズ【17位】
ラッシュフォードから逆算する再構築でリカバリーに成功
マンチェスター・ユナイテッドは過密日程の真っ最中。その中で毎節のように離脱者が発生している。前節の離脱者はカゼミーロ。一発退場でここからのリーグ戦は3試合の欠場だ。マクトミネイもいないため、割と問答無用でザビッツァーはスタメンデビューを飾ることとなる。なお、リーズはここからマンチェスター・ユナイテッドとは連戦。カゼミーロ不在の恩恵を180分間享受することができる。
いきなりの先制点を決めたのはリーズである。試合が落ち着く前に決定的な仕事をしたのはアダムスとニョント。右に流れたブルーノを捕まえたアダムスがポジトラの起点となると、ボールを受けたニョントがバンフォードとのワンツーで加速し、デ・ヘアをニアから撃ち抜く。カットインから決め切るというニョントの課題を見事この大舞台でクリアしてみせた。
マンチェスター・ユナイテッドにとってはどの部分の影響が大きい失点だろうか。広大なスペースをカバーできるカゼミーロの不在の影響はないとは言い切れないだろう。しかしながら、それだけ説明し切るにはロスト後の中央のスペースはあまりに広すぎるようにも思う。
この日のマンチェスター・ユナイテッドの前進のシステムをもう少し見てみると、中央から主に右サイドにサポート役を送ることでサイドからのキャリーを優位に進めようとしている節があった。後方から支援するヴァラン、フリーダムなフレッジ、そして降りてくるブルーノなどがラッシュフォードやダロトをヘルプする形である。
だが、マンチェスター・ユナイテッドには誤算があった。リーズはサイドに流れる選手に対して序盤は徹底的についていくスタンスを崩さなかったことである。ここでユナイテッドがボールをロストをしてしまうと、サイドに人が流れている分、中盤の中央にはかなり広大なスペースが広がることになる。中盤に残るのがカゼミーロならなんとかなるかもしれないが、ザビッツァーに丸投げするにはあまりにも重荷だろう。リサンドロ・マルティネスの迎撃性能を足しても、リーズの攻撃を余裕を持って受け切ることができるとは言い切れない状況が続くこととなる。
こうした事象を踏まえると、中央の空洞化はサイドでボールを預けて人を集めてもプレーができるアントニーの不在も無視できない。というよりも、むしろカゼミーロよりも影響が大きいと言ってもいいかもしれない。
結局はこのサイドの3人目をめぐる攻防が前半の流れを左右する大きなファクターになる。リーズに怪我人が続出したこともあるだろう。20分もすればリーズのプレスは弱まり、ユナイテッドはサイドに人を置くことのメリットを享受できるような場面が徐々に出てくるようになる。サイドからキャリーするラッシュフォード、ダロトによりユナイテッドはエリア内にチャンスがもたらされるようになる。
順足WGとして起用されていたラッシュフォードは前半はアシスト役に徹していた感がある。クロスが上手い分、アシスト役としても立ち回れるのが彼の長所でもある。その分、フィニッシャーを託されていたのは逆サイドのガルナチョだったが、シュートはリーズの守備陣のブロックに阻まれ続けることになる。特にウーバーとメリエの2人の奮闘は鬼気迫るものだった。
リーズのボール保持でも時間が作れるわけでもなく、もっぱらチャンスはトランジッション。35分以降に再びユナイテッド陣内に攻め込むことができるようになったのは中盤でのセカンドボールの奪取争いで優位に立つことができたからである。ユナイテッドはリサンドロ・マルティネスがかなりタフな対応を強いられ続けるなど、押し込まれると結構危うい形になっていたのが印象的だった。
後半、先に勢いを掴んだのはリーズ。大きく左右に展開を行いながら、押し込むと高いラインをとるトランジッションからカウンターを発動。コッホのボール奪取から大外を抉ったサマーフィルがヴァランのオウンゴールを誘発してリードを広げる。
ユナイテッド側にも変更はあった。左右のWGを入れ替えて、ラッシュフォードとガルナチョのタスクを組み替える。前半のガルナチョのパフォーマンスを見ると、ラッシュフォードをフィニッシャーにするところから逆算した方が早いとテン・ハーグは感じたのかもしれない。崩しの局面で活用されなかったベグホルストはエリア内のフィニッシャーとしてはパンチ力に欠けるし、ガルナチョは右サイドでは左ほどの打開力を見せられるかは未知数。交代で彼ら2人から手をつける采配は妥当である。
となると、次のポイントは右サイドに入ったペリストリがエリア内への供給役として働くことができるかどうかである。見事にペリストリは期待に応えたと言っていいだろう。右サイドでキープすると、ダロトのオーバーラップを促し、ラッシュフォードの追撃弾の引き金を引いてみせる。選手交代と配置変更でラッシュフォードをフィニッシャーにする再構築がようやくこれで安定した感がある。
交代選手が存在感を放たなくてはならないという意味ではこの試合のアーロンソンが背負うものも大きかったはず。W杯以降、序盤戦は嘘のようにパフォーマンスを落としているアーロンソンは投入直後にポストを直撃するシュートを放つなど、投入された意味を体現する掴みはできていたと言えるだろう。
だが、決定的な仕事をしたのはアーロンソンではなく、ユナイテッドのもう1人の交代選手だった。左サイドに入ったサンチョはアントニーとは違うタイプながら、二人称でもサイドの崩しを託せる選手である。復帰後のリーグ初戦となったサンチョはショウとの2人の関係性でエリアに侵入し同点ゴールをゲットする。見事な帰還の挨拶だった。
このゴールで勢いに乗るユナイテッドが以降は試合を支配。だが、リーズにも得点の目は残されていた感がある。早い試合展開と自由なフレッジの分のカバーをこなしていたザビッツァーは時間経過とともに中盤のスペースを埋めるのがしんどくなっていた。リンデロフの中盤起用という応急処置にテン・ハーグが動いたのも十分に理解ができる内容だ。
さらに、ユナイテッドにとって厄介だったのはメリエの存在。体を伸ばしてのファインセーブと安定したキャッチングの両面でリーズのフィールドプレイヤーに安心感をもたらす大きな働きを果たす。ユナイテッドにとっては勝利に向けての最後の壁を越える余力は残されていなかった。メリエのパフォーマンスに後押しされたリーズのフィールドは前向きの姿勢を見せてはいたが、強引で成功率が薄そうなスルーパスに終始していたあたり、彼らもまた余力はなかったのだろう。
結局試合は引き分けで終了。壮絶な展開は勝ち点1を分け合う形で一旦幕引き。週末にエランド・ロードに舞台を移し、リマッチが行われることとなる。
ひとこと
率直にいい試合だった。両チームの選手のパフォーマンスに賛辞を送りたい。監督が代わったリーズはやはり別チームのようなフレッシュさがあったので、マーシュが重石になっていた部分はあるのだろうなと思った。不在選手がいる中で仕組みの再構築に動いていたテン・ハーグの手打ちにも納得感があった。強いて言えば、ベグホルストへの長いボールを前半に使っていれば配置を変える前の段階でもラッシュフォードをフィニッシャーとして使うことはできたかもしれないなと思ったが。
試合結果
2023.2.8
プレミアリーグ 第8節
マンチェスター・ユナイテッド 2-2 リーズ
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:62′ ラッシュフォード, 70′ サンチョ
LEE:1′ ニョント, 48′ ヴァラン(OG)
主審:シモン・フーパー
チェルシー【11位】×リバプール【8位】
暫定監督率いるチェルシーが大幅TOのリバプールを追い込むが・・・
ついにポッターの解任に踏み切ったチェルシー。なんでこのタイミングなのかはわからないが、ひとまずこの試合ではブルーノ・サルトールが指揮をとり、リバプールを迎え撃つ。ランパードが就任するのはまだ先の話である。
ポゼッションを握るのはホームのチェルシーだった。3バックはボールを持ちながら、リバプールのプレスの様子を伺う。リバプールのプレッシングの肝はトップのプレスに中盤が連動するかである。大幅にメンバーをターンオーバーしたこの試合では中盤が間延びしてしまい、前線と中盤の距離が空いてしまう。
チェルシーはこのリバプールの前線と中盤の繋ぎ目をつくことで前進のきっかけを掴む。コバチッチは単独でボールを引き取れる場所を見つけてはボールを前に進めるアクションを繰り返すことでリバプールのプレッシングを無効化していた。
間延びしているスペースの中でチェルシーの中盤は比較的余裕を持って縦にボールをつけることができていた。エンソ、コバチッチなど縦にボールをさせる選手は十分に多い。
サイドから経由して中盤をフリーにする形もOK。3バックで外を回し、低い位置に降りてきたWBから中盤にボールを落として前進の道筋を敷くパターンもあった。
やや裏に前進の形が偏っていた部分もあったが、この日のリバプールはラインを上げているため、裏をきっちり取ることでシュートまで迎えていたので問題はなさそうだった。むしろ、問題はその先。ゴールにシュートを叩き込む決定力の方。この日のチェルシーはゴールを決めることができなかったり、あるいは決めても取り消されてしまったりなど1点が遠かった。
リバプールはボール保持に回ってもあまり手応えのある出来とは言えなかった。CBはややボールを持たされた感があったが、どこからボールをつければいいかがわかっていなかった感じ。特に前線にサラーがいない影響は大きく、幅をとるアクションがほぼなし。直線的に攻め切るための縦パスで押し切ろうとするが、前方向にめっぽう強いチェルシーの3バックに阻まれるシーンが目立つように。
よって、チャンスは偶発的なカウンター。つまり、直線的な動きが生きる状況がそこにある場合がなければリバプールの攻撃陣はあまり機能していなかった。
後半も展開は変わらずリバプールにとっては苦しい状況が続く。中央密集というとフィルミーノが効く展開のようにも思うのだが、縦に速い形が多いせいかあまり効果的なプレーが多くない。
チェルシーも裏パスを使いながらのチャンスメイクは継続。しかしながら、こちらの方が中盤でフリーマンをきっちり作るアクションを行なっていたので精度は高かった。ハフェルツのハンドのシーンなどはメカニズムはうまくいっている証拠だろう。
リズムが変わったのはサラーの登場。幅をとれるようになったことでリバプールはサイドを使った通常営業の攻撃を繰り出すようになる。押し返すことができるリバプールはプレスを再開するが、チェルシーは再びこのプレッシングを撃退。試合は再び敵陣に押し返したチェルシーのペースになる。
だが、最後までネットを揺らすことはできず。ターンオーバーしたリバプールを終始攻め立てるが勝ち点3獲得には至らなかった。
ひとこと
ターンオーバーの意図も効果も微妙だったリバプール。これでリーグ戦3試合未勝利。特にボーンマス戦とチェルシー戦での出来はやや問題がある。得意のホームでリカバリーできるか。
試合結果
2023.4.4
プレミアリーグ 第7節
チェルシー 0-0 リバプール
スタンフォード・ブリッジ
主審:アンソニー・テイラー