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「Catch up Premier League」~Match week 5~ 2022.8.30-9.1

目次

①クリスタル・パレス【12位】×ブレントフォード【10位】

■優位が勝ち点に結びつかないもどかしさ

 共に4-3-3を採用したロンドンダービーは非常に堅い展開となっていた。両チームとも高い位置からのプレッシングは行わず、CBにはボールを持たせながらある程度のポゼッションは許容する形に。

 堅い形でなかなか解決策を見出せなかったのはブレントフォード。IHが低い位置を取りながらまずはポゼッションの安定を図る。序盤はIHが動いた分、相手のIHが開けたスペースにパスを刺すトライをしていたブレントフォード。ここまでは悪くない。

 しかしながら、クリスタル・パレスのIHがプレスのタイミングを早めたことでブレントフォードは徐々に勝負のパスを刺すことができず、ボールはバックラインをU字形に旋回するように。これではなかなか前進できない。初先発となったルイス=ポッターがライン間のパスを引き出しながら前を向ける機会はあまり多くはなかった。トランジッションからロングボールでの前進の方が光があったと言えるだろう。

 一方のパレスは相対的には攻め筋が見えていたと言えるだろう。ブレントフォードのバックラインは重心を下げすぎて、アンカーのドゥクレが空くことがしばしば。独力で前を向くことができたドゥクレが両WGにボールを預けることでサイドに起点を作れていた。

 久々の先発起用となったオリーズはザハ以上に自由な動きでピッチを動き回る。少し自由すぎる節もあったが、まずは長い時間プレーできたことを評価すべきかもしれない。

 それでもパレスはなかなか決定的なチャンスを作ることができず。なぜならブレントフォードのインサイドが堅さを見せたから。マテタなどは完全に試合から締め出されており、両WGからの突っつき以外には得点のきっかけが掴めなかった。

 だが、その僅かなきっかけから得点ができるのがクリスタル・パレスの強みである。先制点を奪ったのはザハ。ブレントフォード新加入のヒッキーと正対しながらジリジリゴール方向に押し下げると、シュートの間合いを作ってGKごと出し抜くミドルで先手を取って見せた。

 先制点を奪ったパレスは4-4-2→5-4-1と時間の経過とともに徐々に後方の選手を増やしながら強固なブロックを敷いていく。逃げ切りを図るスタンスだ。

 アタッカーを増やすというシンプルな形で反撃にでたブレントフォードの成果が実るのは88分のこと。人数が増えた分、フリーになったウィサがジャネルトの早めのクロスにラインギリギリから抜け出しヘッドを叩き込んで見せた。

 対応が難しくなったのはわかるが、パレスらしくない軽い失点になってしまったのが悔やまれる。今季は良いパフォーマンスを勝ち点に繋げることがなかなかできないパレス。この試合でも勝ち点を失う形で終えることになってしまった。

試合結果
2022.8.30
プレミアリーグ 第5節
クリスタル・パレス 1-1 ブレントフォード
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:59’ ザハ
BRE:88′ ウィサ
主審:シモン・フーパー

②フラム【11位】×ブライトン【4位】

■前半は健闘、後半は抵抗で無敗のブライトンをストップ

 前節はアーセナルに敗れたものの、昇格組の中では最も健闘しているフラム。今節の相手は昨年よりもまた一段手ごわさを増した感のあるポッターのブライトンである。

 地力の差でいえばブライトン有利の一戦だが、序盤はその下馬評を覆す意外な展開に。高い位置からプレスにくるブライトンだが、これに対してはフラムは冷静に対処。正直、ハイプレスの耐性は怪しいチームという認識だったが中盤のパリ―ニャを中心にこのブライトンのハイプレスをかわして見せる。

 プレスをかいくぐった先はハイラインを壊すスピード勝負に打って出るフラム。このやり方でブライトンをだいぶ苦しめるというフラムペースの展開になった。

 ブライトンの保持でもフラムは非常に健闘。ハイプレスを仕掛けてきたがこれがなかなかにうまい。効いていたのは同サイドに追い込むような動きでブライトンの使えるスペースを抑制すること。中でもトップ下のペレイラの献身的な左右のスライドがこのハイプレスを下支えしていた。

 困ったブライトンは4バックへの変形を選択。これにより、だいぶズレを作ることが出来たブライトン。ようやく落ち着いたボール保持のタームに入っていく。大外からのオーバーラップで陣地回復を成功させる頻度は徐々に増えていくようになった。

 前半はスコアレスで折り返した両チーム。後半の立ちあがりもブライトンが同サイドからの前進のコツを掴み優位を取ったかに見えた。しかし、セットプレーの流れから試合が動かして先手を取ったのはフラム。エースのミトロビッチがネットを揺らして先行する。ケバノのワンタッチクロスが冴えわたった一撃だった。さらに数分後には同じくセットプレーからダンクのオウンゴールを誘発。一気に2点のリードを得る。

 これで戦いやすくなったかと思いきやヘマをするのがフラムである。ボビー・リードの軽率なPK献上でブライトンに自らチャンスを与えてしまう。

 PKを決めて1点差に詰め寄ったブライトンは勢いに乗るために3枚替えを敢行。左は三笘とマーチ、右はランプティで一気に攻勢に出る。さすがにこうなるとフラムは防戦一方。特にブライトンの左サイドのコンビにはだいぶ手を焼かされた。そんな躍動する三笘にサイドの守備でミトロビッチが襲い掛かるなど極めて珍しいシーンも。言い換えれば、それだけフラム側がブライトンのサイド攻撃を警戒しているということでもある。

 必死の抵抗が実ったフラムは何とか逃げ切りに成功し、今季2勝目をゲット。ブライトンに土を付ける大健闘で爪痕を残して見せた。

試合結果
2022.8.30
プレミアリーグ 第5節
フラム 2-1 ブライトン
クレイヴン・コテージ
【得点者】
FUL:48′ ミトロビッチ, 55′ ダンク(OG)
BRI:60′(PK) マック=アリスター
主審:トーマス・ブラモール

③サウサンプトン【13位】×チェルシー【6位】

■強引さはトランジッション強度の前で屈する

 立ち上がりから優位に試合を運んだのはチェルシー。4バック+2CHという今季ここまでのスタンダードな後方のユニットで前進を行う。

 サウサンプトンはこれに対して4-2-3-1で対抗。ただ、素直にかみ合わせると相手の2CHに対してトップ下が1枚で監視する形になってしまう。よってヘルプに出るのはSH。絞ることで中盤の枚数を噛み合わせようとするのがサウサンプトンのアプローチである。

 だが、この形を採用してしまうとサウサンプトンにはチェルシーのSBを監視する選手がいない。よってチェルシーはボールを簡単にサイドから運べるように。ククレジャから一気に敵陣に侵入し、対面のSBを引き出す。そうなると同サイドのCBであるベラ=コチャプがスライドしてくる。

 確かに今季のサウサンプトンはCBが横にスライドして守ることが多い設計である。そのうえ、ベラ=コチャプとサリスの両CBもかなりこのスライドを高い水準でこなしている。だが、やはりCBが持ち場を離れるというケースはあまり頻発させたくはない。

    高い位置から何かのチャレンジをした結果、しわ寄せがバックラインに来るというのならばわかる。だが、この試合のように、割とわかりやすい仕組みでサイドに引っ張り出されるケースがあまりにも多いと、メリットの少なさの割にデメリットが顕在化してしまっているように思う。

 この形を生かしてチェルシーは先制。サイドに引っ張り出されて手薄になったボックス内をスターリングが攻略する。

 これでリードを奪ったチェルシー。ここからペースを握っていきたいところ。だが、チェルシーはこのサウサンプトンのCBのスライドが間に合うか否かのチャレンジを繰り返すだけで、横に揺さぶるとか相手の狙いを外すようなアプローチは少なかった。CBのスライドのスピードという土俵の中で勝負をしてくれたというか、サウサンプトンとしてはリスクはあるものの真っ向から向かってきてくれた感じである。

 そういう意味ではサウサンプトンにも攻撃機会を渡したチェルシー。その機会をいかし、サウサンプトンはCKから同点弾を奪う。バイタルに流れたところをラビアにミドルで打ち抜く。これで落ちつきが完全になくなったチェルシー。強引な縦パスや猪突猛進のドリブルなど強引なプレーをしてはサウサンプトンの中盤の守備に引っかかる。

 サウサンプトンはここからリトリートを早めに組み込み守備の修正をする。中盤の後ろの意識を高めることで、序盤に見せたようなズレは見られないようになる。トランジッションの意識もチェルシーより高く、強度面でチェルシーを上回るように。チェルシーとしてはカウンターの餌食になる強引なプレー選択が元凶なのは間違いないが、そのバックラインの中でもアスピリクエタの対応の遅れは気になるところである。

 勢いに乗るサウサンプトンはHT前に勝ち越し点までゲット。右サイドから左サイドへの展開で見事にピッチを横断、深さを作ってバイタルにスペースを作り、シュートを打つ余裕を作り、アダム・アームストロングが仕留めた。チェルシーの守備側に気になったのはマイナスを切り切れなかったアスピリクエタと横断を許したロフタス=チーク。特に入れ替わられてしまったロフタス=チークは致命的。HTに負傷交代したことを踏まえるとこの時点ですでに負傷を抱えていた可能性もあるが。

 後半も基本的に流れは同じ。ボールを持っているチェルシーがいかにリトリートの意識を高めた上に強度を上げたサウサンプトンを崩すか?が争点である。チェルシーはハフェルツとスターリングがサイドの裏にきっちり流れるところから。CBを引き出すという観点では基本に立ち返った感がある。だが、チェルシーはボールを変なタイミングで失うことが多く失い方が悪く、なかなかいい流れを持ってこれない。

 対するサウサンプトンは60分にラビアに代わって登場したアリボが右サイドに流れながら存在感。強靭なフィジカルでチェルシーのDF陣をてこずらせる。

 チェルシーは終盤にフォーメーション変更し3バックにシフト。トゥヘルお馴染みの攻撃色の強い並びを見せることに。

   しかし、最後まで強度が落ちないサウサンプトンのDF陣を前に強引なドリブル頼みのチェルシーのアタッカーは解決策を見出すことができず。リーズ戦に続きチェルシーはアウェイゲームを連続で落とすこととなった。

試合結果
2022.8.30
プレミアリーグ 第5節
サウサンプトン 2-1 チェルシー
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:28′ ラビア, 45+1′ A.アームストロング
CHE:23′ スターリング
主審:マイケル・オリバー

④リーズ【5位】×エバートン【18位】

■仕留めきれなかったのはリーズの方か

 試合はリーズがボールを持つ時間が長い展開からスタート。エバートンは低い位置からブロックを組み、リーズにボールを持たれることを許容する。バックラインからボールを握ったリーズはショートパスからの組み立てを行う。

 目立っていたのはこの日初めての先発になった右サイドのシニステラ。少し絞り目の位置で配置されて、トップ下のアーロンソンとプレーエリアをシェアしながら攻勢に出ていく。イメージとしてはアーロンソンと同じくボールが入ったらスピードアップをまず意識するタイプという感じだろうか。やや強引だとしても狭いスペースにカットインしていく。

 一方、エバートンに対してはリーズは前線からのプレッシング。高い位置からボールを追いかけ回す。落ち着いて試合を進めたいエバートンとはリーズの方針は対照的なもの。エバートンはリーズのプレスに付き合わされるように高い位置にボールをつけることを強いられる。

 敵陣には進めるけど仕上げができないリーズとそもそも敵陣に進めないエバートン。攻撃の進捗としてはリーズの方がよりゴールに近いところまで行っているような感じを受けた。

 しかし、先制したのはエバートン。イウォビ、ゴードン、グレイの3人の関係性で完全に崩し切ってみせた。中でもイウォビのラストパスは非常に彼らしいプレー。テンポを外して、縦への推進を促しチームの攻撃を完結に導いた。

 リーズはこの失点を受けて苦戦。ロドリゴの負傷もあり流れが悪くなる。エバートンは攻守ともに前向きのプレーが増えて、徐々にリーズペースに水を差すことができるように。

 後半、リーズはサイドに人員を増加しながら崩しを強化。CHが積極的にサイドに流れるプレーを増やしながら厚みを出していく。オフザボールの動きも増加し、エバートンは自陣深い位置で攻撃を受ける時間帯が続いていく。

 こうなるとエバートンは自陣から脱出する手段がない。長いボールは簡単に跳ね返されて無効化。リーズは非保持でもペースを渡さない。60分過ぎのようにリーズに低い位置から引っ掛ける場面が出てくるような時間帯は問題なくカウンターを繰り出すことができるなど、チャンスがないわけではなかった。

 リーズは交代選手で前線をフレッシュに入れ替えることで圧力を増していく。遅刻と早退のコンボとなったゲルハルトと代わったバンフォードはおそらく15分というプレータイムが決まっていたのだろう。ボールを引き出す部分のスキルはさすがで、左右に引き出しながら深さを作っていく。

 一方のエバートンは交代選手を最後まで使わず。交代できないことは辛いが、特に前に入れ替えたいタイプがいるかと微妙なところなのでランパードの気持ちがわからないわけではない。

 リーズは最後までエバートンのブロックを殴り続けるが決勝点は生まれず。リーズとしては仕留めきれなかった印象の強い一戦となってしまった。

試合結果
2022.8.30
プレミアリーグ 第5節
リーズ 1-1 エバートン
エランド・ロード
【得点者】
LEE:55′ シニステラ
EVE:17′ ゴードン
主審:ダレン・イングランド

⑤ボーンマス【17位】×ウォルバーハンプトン【19位】

■スーパークリアに救われた暫定監督の初陣

 今季未勝利というリバプールの鬱憤をもろに受けてしまい、取られに取られたり9失点。気づけばパーカーがいなくなっており、今季の解任レースをトップで走り抜けたボーンマス。今節はアシスタントコーチのオニールが指揮を執り、こちらも無敗で苦しむウルブスとの対戦だ。

 立ち上がりにペースを握ったのはアウェイのウルブス。ボーンマスがCBにボールを持つことを許容したこともあり、安定したポゼッションを行う。攻撃の軸になるのは両WG。ネトとゲデスを外に張らせながらPA内に入り込むような戦い方を見せる。特に右サイドのネト基準でずらしていくやり方が割とハマっていた。3人でポジションを入れ替えながらサイドからクロスに持って行く。

 ボーンマスは迎撃してのカウンターがメイン。基本的にはトップに当てるやり方だが、この攻撃に2列目のクリスティやタヴァニアが絡めるとだいぶ有効打になる感じ。ターゲットマンになっているビリングはムーアに比べると中盤に競りかける傾向が強いため、クリティカルではないが勝率は十分。その分、SHにボール運びを頑張ってもらうといったところだろうか。

 ボールをつなぎながら長いボールを蹴るための準備をするところも健在。ショートパスからCHが降りて対面のIHを雨後しながら前進していくスタンスも時折試していた。こちらは安定はするけど前進の役に立っていたかといわれると微妙なところである。

 30分も経てばボーンマスは徐々に保持する時間を増やしていくように。ロングボールで2列目が運び、対角に展開して、そのサイドのオーバーラップが間に合うというところまで踏み込めればボーンマスの攻撃は厚みが出る。

 後半はボーンマスがプレスを解禁したことでよりオープンな展開に。ウルブスはネトとゲデスが自らのカットインのパターンを増やしながらエリアに切り込んでいく。ドリブルに合わせた動き出しがもう少し見れるとウルブスは良い感じなのだけども。

 ボーンマスを撤退させて後半のペースを握ったウルブス。専制防衛にあたるバックライン5枚の攻略に挑むことに。アクセントになったのは左サイドの大外に入ったアイト=ヌーリ。これで両サイドにようやく勝負できるポイントが揃った感じに。

 ここからはウルブスの総攻撃をボーンマスがはじき返しまくる展開に。特に素晴らしかったのはケリーのスーパークリア。今節のベストセーブといっていいギリギリのクリアでボーンマスを窮地から救い出す。一方のウルブスはヒメネスをはじめとした決定力不足が目につく展開になる。

 防戦しつつもカウンターから反撃するボーンマスだったが、こちらは得点に至るほど明確なチャンスをつくることに苦労した印象。内容的には粘り切っての勝ち点1は上出来だろう。一方のウルブスは後半のペースを握った時間帯を得点に変えることが出来ず悔しい1ポイントとなった。

試合結果
2022.8.31
プレミアリーグ 第5節
ボーンマス 0-0 ウォルバーハンプトン
ヴァイタリティ・スタジアム
主審:アンソニー・テイラー

⑥アーセナル【1位】×アストンビラ【15位】

■戸惑いをあっという間に上書きしたマルティネッリ

 レビューはこちら。

 負傷者を抱えながらもチームは連戦連勝。上昇気流に乗るアーセナルが今季初のミッドウィークにエミレーツに迎えるのはなかなか浮上のきっかけを掴めずに苦しんでいるアストンビラである。

 ボールを回すのは事前の予想通りアーセナル。アーセナルからすると今季初先発のアンカーのロコンガが気になるところではあるが、この試合では大きな問題にはならなかった。というのも彼をマークするビラの守備の基準が少し変わったものだったからである。

 彼をマークするのは左のシャドーに入っていたブエンディアだった。彼はボールが自分の方にある場合はSBであるホワイトを、逆サイドにボールがある場合は便宜上は右のCHのロコンガを消す仕組みになっていた。しかしながら、実質中央に陣取るロコンガとSBであるホワイトは距離が遠く、ブエンディア1人で彼ら2人をボールの移動に合わせて監視するのは不可能。その上、ワトキンスのフォローもないので、ロコンガはホワイトにボールが渡った時点でフリーになった。

 よって、アーセナルは右サイドにボールをつけた時点でホワイトとロコンガ2人とブエンディアの2対1が成立する格好。これを活かしたアーセナルは右サイドでフリーの選手を作り、左サイドに展開しつつ敵陣に迫るパターンを多用する。いつもよりもアタッキングサードからファイナルサードへの加速は重視しており、やり直しが少なめだったのはスカッドに合わせてのことだったのだろう。

 保持での変幻自在感が減っているアーセナルはその分ネガトラを強化することでチャンスの数を確保。アストンビラが中盤でまごつくたびにジェズスやウーデゴールが前線から飛んでくる形はアストンビラをかなり苦しめることに。

 中央でボールキープができず、サイドの押し上げが効かないアストンビラは前半はほとんどチャンスを作れない。ジェズスが31分に決めたゴール1つでは物足りないくらいのチャンスをアーセナルが作り、内容でもスコアでも上回った前半になった。

 後半も引き続きアーセナルがペースを握るが、ロングボールとカウンターを増やした分、試合の展開は前半よりは流動的なものになった。それでも追加点の雰囲気があったのはアーセナルの方。しかし、次に点を決めたのはアストンビラ。CKを直接ドウグラス・ルイスが決めてゴール。カマラに抑えられたラムズデールは対応することができず、ファウルをとってもらうこともなかった。

 判定に戸惑う間もなくアーセナルは勝ち越しゴールをゲット。ロングボールを収めたマルティネッリを起点として、逆サイドのサカまで展開。サカのクロスをファーに飛び込んだマルティネッリが決めて再びリードを得ることに。

 最後は前にエンケティア、後ろにホールディングという盤石なフォーメーションで逃げ切りに成功したアーセナル。04-05シーズン以来、18年ぶりの開幕5連勝で首位キープに成功した。

試合結果
2022.8.31
プレミアリーグ 第5節
アーセナル 2-1 アストンビラ
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:31′ ジェズス, 77′ マルティネッリ
AVL:74′ ルイス
主審:ロベルト・ジョーンズ

⑦マンチェスター・シティ【2位】×ノッティンガム・フォレスト【14位】

■悪くはない入りでも終わってみれば6失点

 シティは少々予想と違う並びだったと言えるだろう。アルバレスが右のワイドかと思いきやIH起用。右のワイドにはベルナルドが起用されることになった。

 もう1つこれまでのシティと違ったのはカンセロがワイドに開いたこと。これまでは1トップ相手のチームには初期配置をワイドに取ることが多かったが、この日のフォレストは2トップ。それでもカンセロは左大外成分が濃い形になっていた。

 その分、ギュンドアンがビルドアップのヘルプに降りてきたり、あるいは左からディアスが持ち上がる頻度を増やしたりという調整をかけるシティ。カンセロが中央に絞らなくても後方が成立するかをテストしているかのうように思えた。

 フォレストはプレッシングの色気は十分見せていた。最近のシティと対戦したチームの中ではCBにはプレッシャーをかけてきていたし、インサイドに刺すパスはうまく咎めることができていた。カウンターからWBの早い攻めがあるのも特徴。新加入のロディも攻め上がるタイミングはアクセントになっていた。

 悪くない入りをするフォレストだが、シティのセットプレーによって仕留められてしまう。CKからニアに待ち構えるフォーデンからのクロスをハーランドが押し込んで先制する。

 この日のシティはセットプレーをだいぶ工夫していたように思う。この場面のようにプレーブックに従ったようなショートコーナーもそうだし、29分のストーンズのゴールもかなりPA内側の動き方が仕込まれていたように思う。

 反撃に出たいフォレストだが、ヘンダーソンのフィードをベルナルドに咎められるとカウンターからハーランドはこの日2点目をゲット。あっという間に突き放される。前節で分かったように一度リズムに乗せると止められないのがハーランド。その後もセットプレーの流れから再びハーランドが押し込む。ハーランドのゴール、意外とこぼれ球を押し込む形が多いので、ゴール前のポジションセンスに結構長けているのかもしれないと思っている。驚異的なフィジカルが前にでがちだけど。

 後半、反撃にでたいフォレストはプレッシングを強化しながら反撃の準備。バックラインにもプレスを仕掛けていたし、ワイドを捕まえるタイミングを早くする。ビハインドを抱えたチームのチャレンジとしては全くもって正しいアプローチだとは思うけど、今のシティはチャレンジによってできた隙を見逃してくれないチームなのである。

 前節のリプレイかのようなベルナルドの右サイドのカットインから深さを取ると、逆サイドのカンセロがミドルを蹴り込み後半早々にフォレストの出鼻を挫く。ここから先はアルバレスの出番。前半は少々苦しんだ印象も否めなかったが、後半は積極的な動き出しから2得点を生み出して見せた。

 後半のシティは積極的な交代策と若手起用が目立った。パルマー、ルイスなどを若手としてのチャレンジ枠としてだけではなく、現実的な戦力として活用するための準備を進めているように思う。今年のシティが層に不安があるのは明白。そういう意味では安全圏までリードを奪った後のシティからも今季は目が離せないと言えるだろう。

試合結果
2022.8.31
プレミアリーグ 第5節
マンチェスター・シティ 6-0 ノッティンガム・フォレスト
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:12′ 23′ 38′ ハーランド, 50′ カンセロ, 65′ 87′ アルバレス
主審:ポール・ティアニー

⑧ウェストハム【16位】×トッテナム【3位】

■調子の上がらないソンとボーウェン

 前節ようやく今年初めての勝利を挙げることが出来たウェストハム。今節の相手は未だ負けなしのトッテナム。ここまでの戦績はやや対照的な両チームによるロンドンダービーである。

 ウェストハムのアプローチはCBにボールを持たせるという王道のトッテナム対策。ただし、ローブロックで組むのではなくミドルブロックで踏みとどまりラインはある程度高めに設定する。

 CBにボールを持たせることを許す分、CHにチェックは厳しくかけていくウェストハム。降りていくトッテナムのCHにライスがプレス隊を越えて最前線までプレスに行く姿もしばしばみられていた。

 トッテナムは中央から進めないため、外を迂回しながらのボール回し。左サイドのペリシッチを軸とした崩しから先制点を狙っていく。

   が、やはりこのチームの最大の脅威はカウンター。先制点は3トップのコンビネーションを生かした滑らかなカウンターが起点だった。カウンターに対して最後にOGという貧乏くじを引いたのはケーラー。PK献上といい、なかなか苦い加入序盤となっている。

 先制点を奪ったトッテナムはその勢いでウェストハムのゴールに迫る。だが、追加点を奪えない。ブレーキになっているのはソン。どうしても今季は決定力のところで波に乗ることが出来ずに苦しんでいる。

 対するウェストハムは左SHのフォルナルスのところからボールを引き取り一気に加速していくシーンが増えていく。アタッキングサードにおける攻略方法はミドルが主流。トッテナムのブロックに阻まれて仕上げの部分で苦戦する。

 ビハインドで迎えたウェストハムは大外からSBのオーバーラップを使いながら押し込みつつ攻撃を行う。トッテナムはそれに対して高速カウンターで対抗する。得意な形で早々と引き離したいのが彼らの目論見だろう。

 しかし、その目論見を打ち破って見せたウェストハム。アントニオのポストから抜け出したソーチェクが押し込んで同点に。スローインからのリスタートを有効に使ったウェストハムが追いついて見せる。

 ウェストハムはフォルナルスをWB気味に下げて5バックの迎撃に移行。トッテナムをローラインで迎え撃つように。トッテナムは右サイドの裏から放り込みを狙うがなかなかクリティカルなチャンスにはならず。今季好調なホイビュアからの縦パスが封じられているのが苦戦の一因だろう。

 カウンターに移行したウェストハムはなかなか厚みがある攻撃が出来ずに苦しむ。トッテナムはソンが不調だが、ウェストハムはボーウェンの調子が上がらない。フィニッシュの精度を欠き、今季はなかなか得点に絡めない。

 パケタをデビューさせたウェストハムはここからギアをあげて再び積極的なプレスに。保持に耐性のないトッテナムを苦しめながらゴールに迫る。両チームともゴールを打ち抜くチャンスがあった終盤戦。だが、いずれも得点に結びつくことはなく、試合はそのまま終了。ここまでの戦績でいえば対照的なのロンドンダービーは痛み分けに終わった。

試合結果
2022.8.31
プレミアリーグ 第5節
ウェストハム 1-1 トッテナム
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:55′ ソーチェク
TOT:34′ ケーラー(OG)
主審:ピーター・バンクス

⑨リバプール【9位】×ニューカッスル【7位】

■イサクのデビューを上塗りしたカルバーリョ

 前節、ボーンマス相手に大量9得点を挙げて得失点差のジャンプアップと引き換えにプレミア解任第一号を誘発したリバプール。一体何点差までならパーカーは助かったのかは永遠の謎である。

 ここまで無敗で来ているニューカッスルは無敗と堅調。サン=マクシマンがいないものの、イサクがこの試合ではデビュー戦を飾ることとなった。

 立ち上がりからボールを持ったのはリバプールの方だった。今季ここまでの流れでは攻撃の方向が右に大幅に偏っている感のあるリバプールだが、この試合では左サイドもバランスよく使っている感があった。アンカーに鎮座するファビーニョを起点に左右に振りながら勝負をかけていく。

    左サイドではディアスが存在感を見せる。カットインと追い越してくるロバートソンのコンボを積極的に活用しPAに迫っていく。ディアス絡みの話でいうと、フィルミーノとの連携がこの試合では増えた印象。レーンを入れ替えたり重なったりなどちょっぴりマネとジョッタのような関係性を見せることがあった。

 ニューカッスルはバックラインのプレスまでは追い立てずにボールをある程度もたせる格好。カウンターから手早く刺す方針を徹底する格好だ。新加入のイサクはこのスタンスに難なくフィットしたといえるだろう。スピードは十分だし、ボールを収めることが出来る。アンフィールドでこれだけできれば上々の内容である。

   だが、内容だけでなく結果が伴ったのがこの日のイサク。デビュー戦の評価を確固たるものにしたのは先制点を挙げたことである。右サイドに釣りだされたファン・ダイクの居ぬ間にスペースから抜け出して一気にゴールを陥れる。後半にもわずかにオフサイドとは言えネットを揺らすシーンを作り、この日不在のサン=マクシマンに代わってリバプールのファンを震え上がらせた。

 リバプールは失点を受けて即座に反撃。ハーフタイムを越えてもリバプールが徹底的に攻める形を作り続ける。アンカーのファビーニョだけでなく、深く構えるヘンダーソンから相手を背走させる方で左右にボールをちらしていく。

    アクセントになっていたのはエリオット。ライン間で受けてボールを運び敵陣に侵入する動きが非常にスムーズで攻撃の変化を付ける存在になっていた。野戦病院化が進むリバプールの中盤における希望の星といってよさそうな存在である。

 そのエリオットが絡む形でリバプールは同点ゴールをゲット。手早くカウンター気味になったボールをエリオットが受けて、サラーにパスを出すとこれをフィルミーノに。右サイドからの手早い攻撃で試合を振り出しに戻す。

 後半はほとんどニューカッスルが自陣から出てこれない状況が続く。特にロングカウンターの旗手であるイサクが下がってからはその傾向は顕著になることになった。ロングカウンターの起点を失ったニューカッスルはなかなかしんどいことに。カウンターを繰り出せる余力は限定的なもの。最終的にリバプールが得点を取り切れるかがポイントになりそうだった

 それでもニューカッスルはPA内での守備は譲らず。最後までリバプールの反撃をしのぎつつ、カウンターの機会をチャンスをひたすらに伺う。そんな試合の幕を下ろしたのはファビオ・カルバーリョ。CKからなんとか押し込みこの試合のヒーローになって見せた。

   ビハインドのニューカッスルファンは5分の後半追加タイムにもかかわらず、8分近くまでプレーを続けたことにフラストレーションを溜めたはず。何とか粘るニューカッスルファンを前にしたカルバーリョの一撃はこの日のニューカッスルの頑張りを台無しにするものだった。

試合結果
2022.8.31
プレミアリーグ 第5節
リバプール 2-1 ニューカッスル
アンフィールド
【得点者】
LIV:61′ フィルミーノ, 90+8′ カルバーリョ
NEW:38′ イサク
主審:アンドレ・マリナー

⑩レスター【20位】×マンチェスター・ユナイテッド【8位】

■覇気なしのレスターを下し、首位との一戦に弾みをつける

 4-3-3のレスターと4-2-3-1のユナイテッド。中盤の形もがっちり組み合っている両チームの構造は噛み合わせがバッチリ。つまり、保持側がどのようにズレを作るかという試合になった。

 ユナイテッドにはリバプール戦で見せたマンマークのハイプレスで潰すやり方もある。しかしながら、この試合はそのやり方は封印。中盤の噛み合わせのバランスを崩さないことと、ヴァーディに対して後方のマッチアップで同数で受けたくないという部分もあっただろう。

 それでも基調はマンマーク。中盤より後ろは人に守備の基準を合わせる形でレスターにズレを作ることを許さない。縦パスを入れて、ポストの落としを拾う形は大体ユナイテッドに見切られていた。中盤でフリーの選手を作ることができないレスターは前線に蹴り飛ばす形で対抗。しかし、ヴァーディへの長いボールはズレてしまったり、あるいは空中戦を求められるものだったりと彼の特徴とは少しズレたものが多く有効打にはならなかった。

 一方のユナイテッドはよりズレを作ることがうまくいっていた形。とりわけ少しずつレイヤーを変えながらポジションを動かしてフリーになっていたエリクセンが効果抜群。中盤でフリーになる状況を作ると、サイドに展開してWGとSBの2人でアタッキングサードに攻め込む形まで持っていく。レスターはエリクセンを捕まえることができない分、押し込まれる展開になっていく。ロングボールを織り交ぜながらユナイテッドはレスターのプレッシングを回避していく。

 苦戦が続くレスターは左サイドでのトーマスが積極的に高い位置を取りながら相手のマークから離れる試みを行う。だが、これが仇になったレスター。ロングボールを弾かれたレスターは一気に前線までボールを運ばれるとあっという間に3対2の状況が誕生。この数的優位をユナイテッドはきちんとゴール前まで運び、最後はサンチョが沈めて先制点を奪う。レスターファンにとっては最近よく見かける思わず脱力してしまうような情けない失点だった。

 後半はユナイテッドがプレスのラインを下げた状態を許容した分、レスターの敵陣でのプレー時間が増えるように。根性で頑張るデューズバリー=ホールがフリーランで自由を得る場面はあったものの、ジャスティンが台無しにしたり、バーンズが対面の1on1で優位を取れなかったりなど敵陣に押しこんでからの仕上げが物足りない。

 結局はアタッカーが背負って受けて強引に前に進む形がメインになったレスター。それでは多くのチャンスは望めない。前線にロナウドを置いたユナイテッドは終盤に長いボールを軸に反撃に打って出たこともあり、終盤までレスターは攻めることができなかった。

 レスターは終盤ボールを奪い返しても攻め上がる強引さはあまり見られず。イヘアナチョは中盤に降りてきている場合ではないのだが、こうしたあたりも流れが悪いチームならではという感じである。試合は最後までユナイテッドが順当にリードを守っての勝利。3連勝で次節は首位のアーセナルとの一戦となる。

試合結果
2022.9.1
プレミアリーグ 第5節
レスター 0-1 マンチェスター・ユナイテッド
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
Man Utd:23′ サンチョ
主審:クレイグ・ポーソン

今節のベストイレブン

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