チェルシー【15位】×ルートン・タウン【17位】
見えてきた新生チェルシーの枠組み
開幕2試合でここまで勝利がないチェルシー。3戦目はホームにルートンを迎えて、今節初勝利を狙っていく。
ルートンの5-3-2に対して、バックラインから繋ぎながらボールを持つチェルシー。ルートンはWBはCBと同じ高さをキープしつつ、IHが2トップのサポートに出ていく形。降りていく選手には厳しくついていくが、バックラインには多少余裕を持たせるスタートとなる。
チェルシーの攻め手となっていたのは右サイド。好調のスターリングが右に開く形からカットインで5バックに真っ向勝負を挑んでいく。インサイドに入っていくタイミングで大外からオーバーラップを被せてくるグストが浮くパターンもちらほら見受けられた。
もう一つの攻め筋はトップのジャクソンのサイドに流れる裏抜けとライン間での反転。これに合わせるように中央高い位置に入っていくエンソがバイタルからゴールを狙うという構図もチェルシーの狙いの一つだったと言えるだろう。2トップの片方と他の選手の組み合わせからチェルシーは攻撃を構築していく。終盤は息切れした前節と比べて2トップの馬力頼み感は減っており、持続可能な活かし方ができているように思える。
先制点を決めたのは外側から攻め込むスターリング。右の大外から1枚を剥がし、2枚を引き寄せつつ左足で狙ったシュートでルートンの守備を個人ベースで切り裂くことに成功する。
ルートンからするとアデバヨとモリスの2トップにロングボールが入らずに苦戦が続く。チェルシーのバックラインは強固。一度はモリスが抜け出しかけるが、これはコルウィルが外に追い出す形で見事に潰し切った。中盤ではタヒス・チョンがなんとかボールを持って押し上げにいくが、なかなかシュートまでつながらない。
2トップを軸に押し下げる形を持っているチェルシーは優勢とキープ。先制点を持っていることもあり、ビルドアップ隊は安定感を重視。ポゼッションから押し下げることを優先し、ルートンの反撃の芽を摘む。この辺りはカイセドがもたらす安心感が別格であった。
30分を過ぎると少しずつルートンがボールを持てるように。5-3-1+右の大外スターリングみたいなブロックを組むチェルシーに対して、やや手薄となるチェルシーの左サイド側からカボレを軸に前進を狙うルートン。だが、CKからニアを狙ったセットプレー以外はチャンスらしいチャンスはなし。チェルシーはリードをキープしてハーフタイムを迎える。
後半もチェルシーは落ち着いたポゼッション。流れに逆らわずに2トップを軸とした攻撃を前半に引き続き行なっていく。前半の終盤に攻め手になっていたルートンの右サイドのところをボールの刈りどころにしていたのも印象的。このサイドをひっくり返してチャンスに繋げていた。
ルートンは60分過ぎからオープンな展開に乗ってWBが攻撃に参加できるように。ジャイルズやカボレが高い位置に顔を出していく。
そうなると、今後はチェルシーの2トップがカウンターからスピードを生かした攻撃を行うように。オープンな土俵でもルートンに力の差を見せつけていく。
すると、右サイドの崩しからチェルシーは追加点。絞るスターリングが空けたスペースに顔を出したグストから折り返しを決めたのはスターリング。勝利を大幅に引き寄せる2点目を手にする。
3点目はスターリングが右を抜け出したところから。クロスをジャクソンに届けて2ゴール、1アシストの大暴れである。後半のゴールのように、チェルシーが前線で抜け出す動きを怠らないのはカイセドやエンソといった抜け出しを見逃さないパサーがいることも大きい。
充実の3ゴールでようやく初勝利を飾ったチェルシー。ポチェッティーノも安堵の笑顔で就任初勝利を祝った。
ひとこと
ポチェッティーノ・チェルシーの枠組みが見えてきた感がある。2トップに連携を紐づけた攻撃、中盤のタレントを軸とした安定したポゼッション、そして強力なストッパーを揃えた3バック。前節のように追いかける展開への適応力は怪しい部分はあるが、攻守両面で土台が手堅い感じがするので、大崩れはないかもしれない。
試合結果
2023.8.25
プレミアリーグ 第3節
チェルシー 3-0 ルートン・タウン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:17′ 68′ スターリング, 75′ ジャクソン
主審:ロベルト・ジョーンズ
ボーンマス【14位】×トッテナム【6位】
最初の方向性提示には成功した感のあるポステコグルー
ボーンマスからすれば立ち上がりのプレス攻勢は当然の帰結だろう。リバプールと同じく、トッテナムは今季は保持にこだわったチームづくりをしているし、なんならリバプール以上に前線の逃げ道がない。保持で解決策を見つけるしか逃げ道がないのであれば、とりあえずプレスにいくというのは妥当。ロズウェル、ビリングが列を上げながらプレスに出ていく。
立ち上がりの数分は戸惑っていた感があったトッテナムだが、ボーンマスの予想通りショートパスでの保持に徹しつつ10分経たずに解決策を発見。マディソンの降りる動きとポロの絞る動きをCHがサイドに流れる動きと合わせることで、中央から前進することができた。重心が下がり過ぎてしまうと、後方の選手が上がる時間が作れるかが問題だが、この辺りはソンとクルゼフスキという止まれるWGの存在が助けになったという感じだろう。
マディソンが優秀だったのはオフザボールだけではない。裏に抜ける動きでリシャルリソンの背後からDFラインを破ると、そのままゴール。出し手がサールというところも含めて、オンザボールのスキルとオフザボールの連携面で充実感があるゴールだった。
ボーンマスからするとソランケを使ったロングボールが思ったよりも収まらなかったのは誤算だろう。思ったよりも早く押し下げられることになった展開において一発で前進できる手段がないのは辛い。トッテナムのCB陣はこの部分はよく踏ん張ったと言えるだろう。
そんなボーンマスの生命線になっていたのはクライファート。ライン間でのボールを受けるアクションからピッチを横断することでSBのオーバーラップを促進する。トッテナムは非保持におけるライン間の管理がコンパクトではないので、クライファートはボールを受ければ簡単に反転ができる。彼を軸とした攻めからボーンマスは反撃に。トッテナムはセットプレーから多くの機会を得るが、試合全体の流れとしてはややボーンマスが引き戻した流れでハーフタイムを迎える。
後半、ペースを握ったのはボーンマス。CBの果敢なラインの押し上げからトッテナムの前進を阻害すると、保持でもトッテナムのハイプレスをいなしながら前進。ライン間で猛威をふるうクライファートの出来は相変わらずで、徐々にソランケ周りにもスペースができるようになり、ボーンマスは押し込むためのポイントとして彼を使うことができた。
流れを変えたのは60分の選手交代だろう。ペリシッチが投入されたことで左サイドが活性化。彼の降りる動きを利用したウドジェの攻撃参加とマディソンのど根性でのボールキープからなんとか押し返すと、左サイドをウドジェが切り崩して折り返しから追加点。ボーンマスのサイドの守備が完全に後手に回ったウドジェの見事な攻撃参加だった。
この2点目の後、豪雨が降り注いだこともあって試合はやや沈静化。ボーンマスは反撃に打って出れず、トッテナムは押し込みながら無理をせずという流れで、時計の針は進んでいく。
ムーアという最後の抵抗を投入したボーンマスだが、反撃の機運を高めることができず。トッテナムが逃げ切りに成功し、連勝を飾った。
ひとこと
問題解決にかかる時間の速さと2点目を手にする一手。展開を見て対応できる保持におけるプランの浸透度と柔軟性は間違いなく合格点と言えるポステコグルーのトッテナム。受けに回った時の脆さなど課題はなくはなさそうだが、少なくとも最初の道筋提示には成功した感がある。ボーンマスも食らいついていく姿勢自体は良かったが、結果がついてこなかった。
試合結果
2023.8.26
プレミアリーグ 第3節
ボーンマス 0-2 トッテナム
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
TOT:17′ マディソン, 63′ クルゼフスキ
主審:ティム・ロビンソン
ブレントフォード【4位】×クリスタル・パレス【11位】
雨とガス欠で終盤はグロッキーに
どうやら、ビッグマッチには5-3-2で同格の相手には4-3-3というブレントフォードのスタンスは今年も変わりはないようだ。フラムと対戦した前節に引き続き、クリスタル・パレス相手にもトーマス・フランクは4-3-3を選択した。
パレスは4-4-2ベースで2トップがCBに交互にプレッシャーをかけていく形。というわけでブレントフォードは空いているCBから持ち運び、パレスのSHを引き出しながらその裏のSBにボールを届けることを狙っていく。
しかしながら、シュラップとアイェウという守備に抜かりない百戦錬磨のSHにこういった揺さぶりは簡単には通用しない。SBをきっちり捕まえることでブレントフォードに楽に前進をさせない。もしかしたらラヤのようにGKから直接届けられれば外せたかもしれないけども。
ただし、パレスもパレスで攻撃に転じれば苦戦。ミドルゾーンでブレントフォードの攻撃を止めた後のカウンターがやや単騎気味。エドゥアールは根性で持ち運んでいたが、やはり独力で壊していくには限界があるタイプなのでザハとは勝手が違う。
そういう意味で違いを見せたのはブレントフォードのシャーデ。左サイドを独力で切り拓いてのゴールで先制点をもたらす。
失点後は少し強気のプレスに出てきたパレス。そうしたパレスのスタンスや、30分を境に振り出した豪雨により、試合は徐々に大味な展開に。足元になかなかボールが収まらない状況が続き、肉弾戦のような流れにシフトしていく。
後半もその流れは継続。その中でも徐々にパレスが押し返していく状況が出てくるように。ブレントフォードは徐々に自陣にくぎ付けになる。
ブレントフォードは実直なチームというのは変わらないのだが、やはりラヤからトニーへの一発のロングボールからの陣地回復という武器がないのは押し込まれたときに厳しい。さらには前線をリフレッシュする交代策もないので、流れを変える一手を打つこともできない。
押し込むパレスは意外な形で同点ゴールをゲット。右サイドから強引にエグる形で攻め上がり、角度のないところから根性でフレッケンの守るゴールを破る。ここまでいい守備が続いていただけにフレッケンとしては非常に悔やまれる失点となった。
一気に反撃に出ていきたいかと思われたパレスだが、実は前線の交代カードがないのはブレントフォードと同じ。マテタとアーマダは投入したが、活性化しきらずに試合は膠着していく。
両チームともアタッカーのガス欠具合が際立つ終盤戦。マークを外すフリーランが生まれないため、ひたすら肉弾戦が続く展開となった。
やや、グロッキーさが際立つ展開となったこの一戦は痛み分けで決着。両軍勝ち点1を分け合う形で幕を閉じた。
ひとこと
両チームとも前線は補強した方がいいと思う。特にブレントフォードは。
試合結果
2023.8.26
プレミアリーグ 第3節
ブレントフォード 1-1 クリスタル・パレス
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:18′ シャーデ
CRY:76′ アンデルセン
主審:ピーター・バンクス
アーセナル【3位】×フラム【13位】
ヴィエイラのブーストで逆転するも…
レビューはこちら。
3連勝を目指すアーセナルの出鼻を挫いたのはアンドレアス・ペレイラの先制ゴールである。誰もパスの先にいなかったサカのバックパスをラインを上げた動きの流れで広い、先制点をあっさりとゲット。アーセナルはこれで2023年3回目の1分での失点となった。
だが、ここからはボール保持で正しいアプローチはできていたように思う。4-4-2ベースで構えるフラムに対して、キヴィオルとホワイトがフリーになる形で起点を作る。
特に明確に狙っていたのはマルティネッリへの対角パスである。フラムがアーセナルへのスライドをきっちりやることを利用して、大きく左右に振ることでボールを受けたマルティネッリが正対で相手と向き合う間合いをあたえていた。
ただし、アーセナルのサイド攻撃に関しては少々誤算もあった。左サイドではそのマルティネッリがプレー精度の部分で決定打にならず。特にクロスの精度が甘く、カットインしてきた際のプレー選択にも疑問の余地が残る形に。
右のサカはロビンソンを剥がせるシーンこそあるが、ヘルプに来たパリーニャに潰されてしまう場面が目立つ。その分バイタルを使うなど臨機応変な対応もできず、アーセナルは両サイドアタッカーからPAにボールを届けることにやや不具合を抱えていた。フラムからすればカウンターを視野に入れつつ、リードを維持することができたおいしい展開だったといえるだろう。
後半、アーセナルは対角パスを減らして同サイドのサポートを増やしつつ、パスワークからの打開を図っていく。しかしながら、これが特に左サイドにおいて機能不全と見るや、すぐさまシフトチェンジ。ジンチェンコとヴィエイラを投入することで実質昨季の形に回帰する。
この変更に応えたのはヴィエイラ。大外でのマルティネッリのサポートとエリア内への侵入やラストパスという要求に満点回答。巧みなオフザボールの動きからエリア内に侵入してPKを得て同点のきっかけを作ると、左サイドからのクロスでエンケティアのゴールをアシスト。一気に逆転する起爆剤になった。
バッシーの退場で10人になり、ペレイラの交代でカウンターの出力も下がるというフラムにとっては逆転以外にも苦しい状況がある展開。しかし、フラムもジンチェンコのパスをカットしたところからトラオレが踏ん張りなんとかCKをゲット。これを合わせたパリーニャが決めて試合を振り出しに戻す。
最後まで攻め手を緩めなかったアーセナルだが、10人相手のフラムの高さを破ることはできず。開幕3連勝チャレンジは失敗に終わってしまった。
ひとこと
仕組み的なうまくいったこと、いかなかったことと終盤の逆転劇は割と別物。それだけにアーセナルは結果が欲しかった。
試合結果
2023.8.26
プレミアリーグ 第3節
アーセナル 2-2 フラム
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:70′(PK) サカ, 72′ エンケティア
FUL:1′ ペレイラ, 87′ パリーニャ
主審:ポール・ティアニー
マンチェスター・ユナイテッド【12位】×ノッティンガム・フォレスト【10位】
4分で見た夢見心地を90分で覆す
トッテナムに敗れ、反撃を期したいマンチェスター・ユナイテッド。オールド・トラフォードでの試合の立ち上がりは衝撃的と表現して差し支えないものだろう。セットプレーからのカウンターでアウォニィが先制点を決めたのは2分、そしてセットプレーでボリーが追加点を決めたのは4分。フォレストは5分も経たないうちにユナイテッドに2点のアドバンテージを奪う。
というわけでユナイテッドは2点を追いかけてフォレストの5-2-3ブロックを壊しに行かなければならない状態に。ひとまずはナローなフォレストの5-2-3ブロックの脇からキャリーをしていく。
外はわりかし自由に動かせそうな状況だが、今季ここまでのユナイテッドはWGの調子が悪く、なかなか外からラインを上げ下げするのが難しい状況。その分、この試合で頑張っていたのはカゼミーロとブルーノ・フェルナンデス。彼らが中央のブロックに出たり入ったりすることで、フォレストのライン間をコンパクトに保たせないように工夫をする。
特にブルーノの出来は素晴らしかった。ライン間でフリーになればすぐさまミドル。入らなくてもターナーがはじけば、そこでフォレストのラインは下がって乱れる。追撃弾はこの形から。ブルーノのミドルでラインを下げて、サイドをラッシュフォードで突っついて、最後はエリクセンが決める形。不調の分のWGのタスクを請け負ったブルーノの頼もしさが光るゴールだった。
さらにセットプレーからはカゼミーロに決定機。これは決まらないが、2点のリードを奪って以降、フォレストにほとんど攻めさせる機会を与えない。
20分になるとロングスローから空中戦を仕掛けたりする場面ができてきて、30分になるとさらに押し上げる時間が出てくるフォレスト。当然こうなればユナイテッドにはカウンターのチャンスが十分あることになるが、スペースをもらったアタッカー陣がどうも冴えない。シンプルに押し込むフォレストがサイドをえぐるジョンソンからギブス=ホワイトの決定機を作るなど手ごたえのある状況を作っていた。
後半は再びユナイテッドがボールを持ちながら崩しを狙う展開に。フォレストのシャドーはユナイテッドのSBに守備の基準点を定めたそうだったが、内外自由に動き回るユナイテッドのSBについていききれない場面が多く、守備の基準を失っているような場面があった。
すると、セットプレーからユナイテッドが追いつく。マイナスのFKからフォレストのラインをばたつかせると、そのまま自らラインブレイクを行い、裏へのパスを呼び込んだブルーノはまさしく1点ものの働き。カゼミーロへのゴールをおぜん立てして試合を振り出しに戻す。
ここからは試合はオープンな展開に。たたみかけるように追加点を狙うユナイテッドはアントニーが惜しいミドルを放つがこれはターナーにセーブ。時間の経過と共にこの右サイドは崩しに手ごたえが出てくる。
フォレストもサイドでファウルを稼いでFKの機会を得るように。ただ、試合の経過と共に全体がスピーディーでオープンな状況になる怖さはあった。そして案の定、速い展開についていけなかったボリーがDOGSOで退場してしまう。
これで押し込む機会を得たユナイテッドはあっさりとラッシュフォードがPKを獲得。このシーンもCKのリスタートがタイミングを外す感じになっており、ことごとくセットプレーがハマった試合だったといえるだろう。
4分で得たフォレストの夢心地を90分かけて鎮火したユナイテッド。苦しみながらも逆転勝利でホーム連勝を飾った。
ひとこと
フォレスト、オープンになるの我慢出来てたらなぁ。
試合結果
2023.8.26
プレミアリーグ 第3節
マンチェスター・ユナイテッド 3-2 ノッティンガム・フォレスト
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:17′ エリクセン, 52′ カゼミーロ, 76′(PK) ブルーノ・フェルナンデス
NFO:2′ アウォニイ, 4′ ボリー
主審:スチュアート・アットウェル
エバートン【20位】×ウォルバーハンプトン【19位】
復活のカライジッチと決定力に泣くエバートン
まだ第3節とはいえ、現段階で両チームは20位と19位。沼からいち早く抜け出すためにも勝利したい連敗対決である。
積極策に出たのは前からプレスに出ていくエバートン。3センターの機動力を生かし、ドゥクレが切り込み隊長としてウルブスのバックラインにプレスに出ていく。
結構この動きはウルブスには効いた様子。おそらくクーニャであれば収めることはできると思うのだが、そもそもクーニャにロングボールが届かないため起点を作ることができない。
プレスを撃退したとしても、敵陣深い位置でのブロック攻略に苦心するウルブス。エバートンは縦にコンパクト、横幅目いっぱいに間延びという極端な選択肢を取って守っていた。ウルブスは出し手と受け手のタイミングが合わず、裏抜けをうまく活用できなかった感があるので割とこれも効いていた。ただし、サイドを万が一抉られてしまったらエリア内はスカスカだったけども。
エバートンは攻撃に転じると裏に流れるように蹴るロングボールから一気に陣地回復に挑む。これにもウルブスはDFが対応に苦慮。なかなかスマートに跳ね返すことができず。それならば、ハイプレス!となるが、エバートンにひっくり返されて一転ピンチに陥る。
ほぼ完ぺきにプランがハマったエバートンだが、計算外だったのはまたしても決定力。ダンジュマはモペイの悪いところが乗り移ったかのようなチャンスの外しっぷりでジョゼ・サとの1on1を決め切ることができず。明らかに前半に決定機があったのはエバートンの方だが、機会を得点に結びつけることができないままハーフタイムを迎えてしまう。
後半は徐々にウルブスがボールを持つ時間が増えていくように。スピーディーなパス回しで相手を上回る場面も出てくるようになるが、なかなかチャンスを作り切れない。裏抜けの決定機からシルバが絶好のチャンスを迎える場面もあったが、ダンジュマ同様にこちらも決め切ることができず。
スコアレスのまま試合が推移したのはFWが情けないからだけでなく、両軍のGKが多くのセービングを行ったことも大きい。どちらもムラはあるが、当たりだすと止まらないタイプであり、まさしくこの日はどちらも明確に当たりの日だったといえるだろう。
70分過ぎからは両軍のGKがセーブ合戦を披露。ゴール前の試合が増えるオープンな展開において最後の砦として君臨する。
スコアレスのまま推移した試合の決着をつけたのは途中交代のアタッカーだった。右サイドからのなんの変哲もないクロスを押し込んだのはカライジッチ。長期離脱明けで復活を期すシーズンにおいて、欲しかったゴールは貴重な決勝点に。エバートンはターコウスキとパターソンの受け渡しがうまくいかずあっさりとフリーにしてしまった。
この日初めての枠内シュートをゴールに結びつけたウルブス。終盤に得た貴重な勝ち越しゴールで連敗ストップ。未勝利沼からの脱出に成功した。
ひとこと
エバートンはそんなめっちゃいいわけではないが、これで無得点は気の毒。いくらなんでもアタッカーがシュートを外しすぎである。
試合結果
2023.8.26
プレミアリーグ 第3節
エバートン 0-1 ウォルバーハンプトン
グディソン・パーク
【得点者】
WOL:87′ カライジッチ
主審:クレイグ・ポーソン
ブライトン【1位】×ウェストハム【7位】
今季暫定一位のゴール!連勝阻止のウェストハムが暫定首位に
現地15:00キックオフの試合でアーセナルが引き分けたため、ブライトンは勝てば3連勝一番乗りになる。ホームに迎えるのはライスとの別れから一回り分厚くなった感があるウェストハムである。
立ち上がりのチャンスメイクはどちらのチームもらしさが全開。三笘が相手を引きちぎってのファウル奪取を決めたブライトンに対して、ウェストハムはコーファルのロングスローやアントニオのロングカウンターからの爆走などからチャンスを作る形である。
試合は展開が落ち着くとブライトンの保持ベースに。2-3-5の人をローテさせながら勝負していくスタンスはいつも通り。ウェストハムの1トップの脇にCBが立つことができ、5トップ型で4バックのウェストハムに対峙するというのは理屈的には悪くないように思える。
しかしながら、ウェストハムは2列目が下がりながら守備をすることでレーンを埋めまくる。アンカーのアルバレスが下がることもあるし、SHがポケットを埋めることもしばしば。ブライトンが単に5つのレーンを使うだけでは穴が開くことはない。
ウェストハムの前線が低い位置まで下がっていいのは陣地回復の手段をきっちりと確保できているから。アントニオのロングカウンターやファウルでFKをもぎ取ることができるパケタの存在は下がりまくる2列目のアクションを正当化できている。
そして、先制点もアントニオから。バックラインのバタバタ感がついにブライトンの失点につながってしまう。パスミスとその後の対応の両面で軽さを見せたウェブスターにとっては大きな悔いの残る失点。冷静にウォード=プラウズが沈めてウェストハムが先制する。
ブライトンはかなりウェストハムの高さに手を焼いている。クロスを上げる前、もしくはクロスの弾道、あるいは三笘のドリブルなどでラインを下げる手段は最低限必要。ウェストハムのラインを押し下げるアクションと、下がった状況から仕留める武器を組み合わせないと難しい。ギルモアがミドルを打てたシーンなどはかなりゴールに迫った感があるが、なかなか枠をとらえることができない。
セットプレーも含め、単純な高さを問うようなクロスは全て完全に無効化。先制点を確保していることもウェストハムのプランを担保してる形になる。ブライトンにとってはかなりタフな前半となった。
後半、列上げサポートからワンタッチのサイドチェンジで三笘を解放するダンクからスタートしたブライトン。立ち上がりはワンランクギアを上げてブロックを壊しにいく。
ただし、ウェストハムも反撃を緩める気配はなし。アントニオが攻撃参加したダンクを咎めるように、わざわざこちらのサイドから裏を取っていたのはなんか新手の嫌がらせみたいで面白かった。
次にゴールを手にしたのはまたもウェストハム。カウンターから左の大外でボールを持ったベンラーマからクロスを引き取ったのはボーウェン。自陣深い位置からの猛ダッシュを行ったとは思えない氷のようなトラップからファーに置くようなシュートは芸術そのもの。本当に素晴らしいシュート。ここまでのシーズンでベストゴール。
勢いに乗るウェストハムは3点目もカウンターからゲット。目測を誤ったエストゥピニャンにより、晒されることとなったウェブスターがアントニオに屈して試合を決める3点目を手にする。
ウェストハムは5バックでトップを不在にしたことでやや相手を過剰に引き込んでしまった感があったが、イングスを投入しトップを置いて立て直し。守備ではそのイングスも含めてクロスに対してひたすら跳ね返すアクションを繰り返す。
右サイドの奥行きを享受したグロスが追撃弾を決めたが、反撃はここまで。ロングカウンター主体のウェストハムが攻めきれないブライトンの3連勝を阻止。この試合終了時点の暫定でウェストハムは首位に立った。
ひとこと
中盤の補強が順調なのも大きいが、基本的には個々のコンディションの良さはウェストハムにとっては大きい。充実した内容でポゼッション主体のチーム狩りを着々と行っている。
試合結果
2023.8.26
プレミアリーグ 第3節
ブライトン 1-3 ウェストハム
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:81′ グロス
WHU:19′ ウォード=プラウズ, 58’ ボーウェン, 63′ アントニオ
主審:アンソニー・テイラー
シェフィールド・ユナイテッド【16位】×マンチェスター・シティ【2位】
「クリアは確実に」という教訓
バスケW杯、日本初勝利おめでとうございます。そういうカードの裏として見るには実にちょうどいい起伏の少ないカードとなった。ブレイズの構えは5-3-2。シティはこれをオーソドックスな4-2-3-1に近い形で動かしにいく。SBの高さは少し違ったが、左右非対称性はこれまでのシティに比べれば低く、アカンジやルイスのようなインサイドに絞ってのタスクをグバルディオルに課すことはなかった。まぁ、どんなCBも簡単にできるものではないと言ったらその通りなのだろうけども。
3センターの脇に立つことでブレイズの中盤を横に引っ張りたいシティ。これに対して、ブレイズはサイドに圧縮しつつ、縦方向に陣形をコンパクトに保ち、中盤を経由したサイドチェンジを避けるように守る。
相手がある程度ボールを押し付けてきたのでシティはクロス攻勢に出る。しかしながら、ラインを動かすアプローチができておらず、ブレイズは無理なく跳ね返すことができる展開が続く。アクセントになっていたのはハーフスペースから裏に抜けるアルバレスくらいだろう。
前節で言えばライン間で受けるフォーデンのような相手を後ろ向きにする成分が足りなかった。もっともインサイドにハーランドがいれば、単にクロスを上げるだけでもいいのかもしれないが。そのハーランドもPKを決めることができず、シティとしてはなかなか焦ったい展開に。
ブレイズは攻撃の終着点が見つからずに苦戦。自陣から繋ぐ姿勢も、隙あれば敵陣からラインを上げてプレスにいくスタンスも悪くはなかったが、とにかく預けどころとなるFWがいない。それだけに、攻撃の機会は逆にシティがカウンターで間延びしたスペースを攻めることができるチャンスタイムになっていた感があった。
後半も構図は同じ。シティはジリジリとした展開から押し込み、ブレイズのブロックの攻略を狙っていく。左右のWG、特に左のグリーリッシュがかなり深いところまで切り込むなど着実にその時が近づいている感があるシティの攻撃。それが実ったのは63分。グリーリッシュのラインを縦に揺さぶるドリブルからファーに待ち構えていたハーランドがぶち込んで先制する。
これで試合は決まりかと思われたが、ロングスローやCKなどセットプレーから徐々にブレイズが反撃の機会を得る。懸念だった預けどころもマクバーニーの登場でなんとかなった感があった。
追いついたのは85分。左サイドでトラオレを抑えたかに思えたウォーカーが結果的にボールを置き去りにする形を作るミス。ややピンボール気味にボールを繋ぐブレイズだったが、打つしかないという状況をボーグルが決めてスコアを振り出しに戻す。
反省したウォーカーは3分後にスコアに貢献。敵陣でボール奪取を決めてロドリの決勝点の起点となる。ボールを奪われたラローチには明らかにクリアのチャンスがあっただけにこれは軽率なミス。直前にウォーカーが犯した「クリアは確実に」という教訓を活かすことができず、シティ相手に勝ち点を奪うことができなかった。
ひとこと
ウォーカーやエデルソンがチャラい一方でグリーリッシュとかディアスの真面目さが際立ちました。
試合結果
2023.8.27
プレミアリーグ 第3節
シェフィールド・ユナイテッド 1-2 マンチェスター・シティ
ブラモール・レーン
【得点者】
SHU:85′ ボーグル
Man City:63′ ハーランド, 88′ ロドリ
主審:ジャレット・ジレット
バーンリー【18位】×アストンビラ【9位】
のびのびとした疑似カウンターからビラが連勝
第2節は延期ということで約2週間試合の空いたチャンピオンシップ王者のバーンリー。昇格後、初勝利を目指して今節はアストンビラと対戦する。
アストンビラのフォーメーションは3-4-3と4-4-2の間という感じ。保持においてはマッギンとキャッシュのうち前者は絞り、後者は開くなど左右で異なる対応をしていたが、非保持においては4-4-2できっちりとフラットな立ち位置を取っていた。
バーンリーはSBのロバーツが絞ってベルゲを前に押し上げる。左サイドからはコレオジョ、右サイドからはベンソンがクロスを上げる形から勝負を仕掛けていきたいところだが、決め手となるほどの強度はない。
積極的に裏へのパスも狙っていくが、これも跳ね返されてしまうバーンリー。後方の3-2シフトでビラの4-4-2に対してはズレを作れるが、そのズレを前に送り切れてない感じもある。
というわけでハイプレスに意欲的なバーンリー。高い位置でひっかけて敵陣に入っていきたいところだが、前線の選手たちは揃いも揃ってボールホルダーに正面からアプローチするので、チームとしてどこに追い込んでいくかの意思が見えないプレスになっていた
パウ・トーレスからしたらこういうプレスは大好物だろう。キャリーで簡単に外しながら間延びしたライン間にガンガンボールを刺していく。
ポゼッションから疑似カウンターのような状態を生み出し続けてチャンスを作るアストンビラ。バーンリーの高いラインは裏抜けへの対応も不安定。マッギンからワトキンスへの裏へのパスの対応はアル=ダヒルとトラフォードの両者共に中途半端な対応になってしまう。ここから生んだチャンスをキャッシュが仕留め、先制点はアストンビラに入る。
さらに攻勢を続けるアストンビラ。ジエゴ・カルロスの縦パスからワトキンスのポストを経て、右サイドでキャッシュとディアビの連携から追加点。キャッシュはこの日2ゴールである。
2点のリードを得ると、ビラは5-4-1にシフト。後方にスペースを消す形で撤退守備を行い、さらにバーンリーは苦しくなる。
後半も押し込まれることを許容するアストンビラ。ポゼッションの機会を得たバーンリーは後半すぐさま反撃。交代で入ったグスムンドソンが競り合いを制して、フォスターの追撃弾をおぜん立てする。
このゴールで一気に攻勢に出たバーンリー。押し込む時間が続くが、なかなか同点ゴールを手にすることができない。すると、ロングカウンターからアストンビラがひっくり返して勝ち越し。前半の疑似カウンターのような加速からディアビが仕留めて3点目。
再び2点差となり、バーンリーは意気消沈が隠せず。攻めることはしてはいたが、ここからのチャンスのほとんどは3点目のようなアストンビラのカウンターからのもの。デビューしたザニオーロにはいきなり得点のチャンスがあったが、これを仕留めることはできず。
もっとも、ビラにケチがつくとしたらケーキにイチゴが乗らなかったことくらいだろう。開幕戦の大敗から連勝で巻き返しに成功。ここから上位をさらに狙っていく。
ひとこと
バーンリーは保持への意欲的な取り組み以上のものをそろそろ見せたいところ。
試合結果
2023.8.27
プレミアリーグ 第3節
バーンリー 1-3 アストンビラ
ターフ・ムーア
【得点者】
BUR:47‘ フォスター
AVL:8’ 20‘ キャッシュ, 61’ ディアビ
主審:マイケル・サリスベリー
ニューカッスル【8位】×リバプール【5位】
地獄の前半を塗り替えたヌニェス
第3節のトリを飾る日曜ナイターはニューカッスルとリバプールという好カード。前節シティ相手に完敗だったニューカッスルにとってはタフな相手が続く流れとなった。
立ち上がり、攻守の切り替えが早くプレミアらしいスリリングな展開に。そうした中でバタバタしていたのはアレクサンダー=アーノルド。スローインで不要な警告を受けると、ゴードンを倒してあわや2枚目というシーンに。おそらく早い時間だからということでお目溢しをもらったが、早々に実質リーチがかかる状況に。シェアが徹底的にフィードでゴードンにボールを預ける流れはいかにもな狙い撃ちだった。
個人として苦しいパフォーマンスになったアーノルドだが、早い展開の中でリバプールはチームとしても苦しい出来になる。疑問だったのがプレスの仕組み。4-3-3からIHのマック=アリスターがCBにプレスをかけることで4-4-2にスライドするのだが、他の選手が呼応しない。最前線のガクポは少なくとももう1人のCBにプレスをかけるのはマスト。
しかしながら、ガクポはその動きをしなかったため、ニューカッスルは簡単にボールを運ぶことができる。それどころか中盤はマック=アリスターが前に出て行っている分間延びしている。リバプールのDFラインも圧縮する動きがないため、ニューカッスルは自在にドリブルやパスでリバプールのスカスカな中盤を横断することができていた。
こうして早い展開の中で徐々に生まれる不均衡は目に見える形でリバプールを蝕む。サラーの雑なバックパスをアレクサンダー=アーノルドがトラップできずにスルーすると、これを抜け出したゴードンが沈めて先制。
そして直後には抜け出したイサクの足を狩る形でファン・ダイクが決定機阻止での一発退場。リバプールはビハインドと数的不利が一気に降りかかることになる。
11人の間は右サイドの抜け出しを軸に反撃ができていたリバプールだが、ニューカッスルの圧力をもろに受ける形でこれ以降は苦戦。それでもマック=アリスターとショボスライが根性でボールを運び、前半の終盤はなんとか試合としての体裁を整えた形でハーフタイムを迎える。
後半もペースは同じ。ニューカッスルが左サイドからの攻めを軸に完全にペースを握る。決定機を多く作るもシュートはうまくいかなかったりアリソンが防いだりなど。
前半以上に前に出ていけないリバプール。停滞した状況を動かせず。ワンチャンスを活かせる前線はいるもののなかなかそのワンチャンスが巡ってこない。
風向きが変わったのは選手交代だろうか。中盤より前を積極的に交代していくニューカッスル。豪華な名前と裏腹に、強度が上がらないのは違和感があった。リバプールのボール保持の側面にプレッシャーをかける後半の頭までの様子は消え去り、試合はまったりと両チームがボールを持つ時間が出てくるように。
すると、このチャンスを生かしたのはヌニェス。構造と無関係に裏に蹴ってくれれば決定機を作ることができるヌニェスはこの展開にはうってつけ。チャンスは作れるが、決定力が・・・という懸念もこの日は棚上げ。巡ってきた1つ目のチャンスをモノにして試合を振り出しに戻す。
ヌニェスの勢いは止まらない。負傷で退いたボットマンのところにスライドしたバーンは明らかにスピードで後手を踏む選手。サラーのスルーパスから再び抜け出すと、これを角度のないところから仕留めて試合をひっくり返す。
沈黙の後半を一気に塗り替えたヌニェス。前半に引き起こされた地獄の状況を完璧に一変させて、セント・ジェームズ・パークの観客を黙らせた。
ひとこと
ニューカッスルの出力ダウンは不可解なところ。1点差であればわからないなとは思ったが、リバプールは逆転まで行ったのは恐れ入った。10人になったことで中盤が無駄にプレスに出ていく機会が少なくなり、その結果ニューカッスルが無理に攻めなくなっていくという傾向で生まれた停滞をヌニェスがぐっと引き寄せた試合だった。
試合結果
2023.8.27
プレミアリーグ 第3節
ニューカッスル 1-2 リバプール
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:25′ ゴードン
LIV:81′ 90+3′ ヌニェス
主審:ジョン・ブルックス