Fixture
プレミアリーグ 第6節
2022.9.4
マンチェスター・ユナイテッド(5位/3勝0分2敗/勝ち点6/得点5 失点6)
×
アーセナル(1位/5勝0分0敗/勝ち点15/得点13 失点4)
@オールド・トラフォード
戦績
過去の対戦成績
過去10回の対戦でマンチェスター・ユナイテッドの3勝、アーセナルの4勝、引き分けが3つ。
オールド・トラフォードでの対戦成績
過去10回の対戦でマンチェスター・ユナイテッドの4勝、アーセナルの2勝、引き分けが4つ。
Head-to-head from BBC sport
スカッド情報
【Manchester United】
・アントニーにデビューの可能性。カゼミーロは初のホームゲーム。
・アンソニー・マルシャルはアキレス腱の負傷で欠場。
【Arsenal】
・ビラ戦で負傷したアーロン・ラムズデール、マルティン・ウーデゴールは経過観察中。
・2試合欠場中のオレクサンドル・ジンチェンコは膝の怪我で出場可否が不透明。
・トーマス・パーティ、モハメド・エルネニー、リース・ネルソンは引き続き欠場。
Match facts from BBC sport
【Manchester United】
【Arsenal】
予想スタメン
展望
■テン・ハーグのユナイテッドの現在地
2連敗からの3連勝。リバプール戦での勝利をきっかけとするマンチェスター・ユナイテッドのV字回復はまるで昨年のアーセナルを見ているかのようである。
とはいえ内容面で今のユナイテッドがブレイクスルーを迎えるのはまだ先の話と言えそうだ。デットラインデーに決まったアントニーなど多くの新戦力を迎えたスカッドでようやくこれから再構築が本格化していくといった流れになるだろう。
今のところ、ユナイテッドにおけるテン・ハーグ色の打ち出しは限定的と言えるだろう。アヤックス時代から攻撃においては少人数で後方の個人スキルを重視した形での解決をおこなってきた。少ない人数で相手のプレスを剥がしながら時間を前に送っていくようなテクニックで押し切るイメージである。おそらく、これが本来の理想系なのだろう。
しかし、同様のスタンスで臨んだブレントフォード戦では撃沈。実質アンカーに据えたエリクセンを潰されまくったことでひとまず方向転換をしたのだろう。この試合以降はマクトミネイをビルドアップで並べる2CB+2CHのボックスビルドアップで行う形でバランスを調整する。出しどころが少ないと困ってしまうデ・ヘアのプロテクトとしてもこの調整は重要だし、中盤としても振る舞えそうなマラシアの存在もこの後押しになったかもしれない。
いずれにしても今のユナイテッドは極端なボールを繋ぎへのこだわりは捨てているように思う。ハイプレスに来る相手だけでなく、前節のレスターのようにそこまで前からのプレッシングが積極的ではない相手に対しても、比較的簡単に蹴る選択肢をとっている。
とはいえ、ここまで前線を務めることが多いのはラッシュフォード。決してターゲットマンというタイプではなく、バックラインからのハイボールでの陣地回復を望むのは難しいだろう。
そこでポイントになるのは中盤でのポイント作り。ここですでに中心的な役割をこなしているのがエリクセンである。細かいポジション調整で相手のマークを外し細かいパス交換で前を向く。エリクセン、ブルーノを除けば中盤は基本的にはランナータイプが勢揃い。基準とする選手が動かしたスペースに入り込むのは向いている陣容である。チームの構築初期段階としては基準を設けてそれに合わせる形は悪くないように思う。
中盤でフリーの選手を作ることができたらサイドに展開。大外に位置取るサンチョにボールを預けて、少ない人数で崩してエリア内に迫っていく。おそらく、しばらくすれば逆サイドにはアントニーが君臨しているはず。強力な突破力を持つ両WGを基準としてチャンスを供給していく形がテン・ハーグが描く青写真だとすれば、エリア内での存在感では別格であるロナウドが今以上に輝く未来もあるだろう。
非保持においてはアヤックス時代の強烈なマーンマークはここまであまり見られていない。前から追い回すという観点ではリバプール戦ではそういう部分で主導権を握ろうとするトライが見られた。その試合においても後方に人は余らせていたのでがっちり同数で全部を噛み合わせていたアヤックス時代に比べればややマイルドと言えるだろう。
前線のプレスの開始位置は下げるとしても基本は人基準での受け渡しであるのは変わりはない。ポジションを入れ替えながらの相手に対しても担当者が潰し切ることが求められるのが主流である。
よって、前線からのプレスをどこまで深追いするかが強度の匙加減と言えるだろう。どこまで陣形の間延びを許容できるかと言い換えてもいい。現状で控えめなのは後方にリーグに順応中のマルティネスがいることも関係している可能性がある。中盤にカゼミーロがフィットすればこの辺りももう少しアグレッシブになるかもしれない。リバプールに真っ向から挑んだのは完成度に勝る相手に対して、強度でその差を有耶無耶にしようとする別の角度のアプローチと予想する。
■1年分の差を見せつけてOT制圧を狙う
まず、ユナイテッドがアーセナル相手にはどのように来るかを予想しなければならない。自分の予想では高い位置からのプレスと長いボールを主体とした手数の少ない保持の組み合わせで来ると思う。
おそらくユナイテッドはアーセナル相手に押し込まれる状況は何よりも避けたいはず。撤退を崩し切られる恐れもあるし、何よりボールを奪ったとしても今のアーセナルの即時奪回を回避できなければ陣地回復は難しい。ロングボール一本で前に進むタイプのチームではないことを踏まえれば、波状攻撃を喰らうリスクもある。そうなれば失点を避けられる可能性は低くなってしまう。そのリスクを負うならば、前から追うことでアグレッシブなアプローチを行うはずだ。プレス耐性に不安がある現状ではショートパスにも拘らないと見る。
アーセナルからするとトーマスとエルネニーは引き続き不在であり、ジンチェンコの出場も不透明。2列目で言えばウーデゴールの状態も気になるところ。そうした陣容でまずは序盤でビルドアップとユナイテッドのプレスとの力関係を見極めたいところである。
もしビルドアップが難しいと感じたらWGへの長いボールを織り交ぜながら前進していきたい。マルティネッリ、サカへの長いボールを使い1on1での勝負を挑んでいく。サラー相手に健闘したマラシアとサカのマッチアップは楽しみである。
非保持においては最終ラインが駆け引きに負けないこと。デビュー戦で花を持たせたラッシュフォードも嫌な存在だが、やはりボックス内で言えばロナウドのクオリティが怖い。サリバやガブリエウにとっては細かい駆け引きをガッツリしてくる相手はこれまでとは異なるタイプの試練である。
サイドの守備はSHがサボればあっさり後手に回るだろう。中盤でエリクセンを潰すのに注視しつつ、サイドでは上下動を上回り優位に立っている時間で得点を重ねる。狙うは前半で得点を重ねた開幕3戦の再現である。
苦しみながら勝ち点を積み重ねているユナイテッドの姿はちょうど1年前のアーセナルを見ているようだ。スタイルは違えど、自分達の前にいるのは再建がようやく始まった1年前の自分達のようなもの。時を重ねてアーセナルは1年前よりも確実に強くなった。再建が始まったばかりのユナイテッドに対して、我慢の時を経たアーセナルが「これだけ強くなった」と成熟度の差を見せてオールド・トラフォードを制圧する。その姿が見られればアーセナルファンが今のチームに抱く希望はまた一段とくっきりしたものになるだろう。