野澤の壁を打ち砕く渡辺の右足
やや、息切れ気味の上位勢の中で相対的に勢いが止まっていない横浜FM。秋にACLを控えていることを踏まえれば、夏場に少しでも貯金を作っておきたいというのは本音だろう。何かと因縁深いFC東京をホームに迎えて、勝ち点3を狙う。
序盤にボールを持ったのは横浜FM。CBが開き、GKを挟む形の典型的な保持型のチームの振る舞いでボールを前に進めていく。FC東京の守備の狙いは非常に明確だった。とにかく強烈だったのはFC東京の2列目のボールサイドへのスライド。ライン間を縦横両面で圧縮することで、横浜FMに対して中央にパスを刺すことを許さない。
大外を含めて、中央の外ではボールを持つことを許された横浜FM。宮市を軸にブロックの外側から叩いていくが、FC東京の守備はなかなか脆さを見せない。
横浜FMのやりたいことは明白。ボールサイドへのスライドがはっきりしているFC東京の2列目の逆を取るように攻めたいはずだ。わかっていても届けるのが大変なのだが、徐々に実装できるのが横浜FMの強いところである。８分のマテウスの横断などはFC東京からすれば絶対避けたい展開である。
サイドのフリーランでFC東京の守る向きをバラすのが横浜FMは非常に上手い。抜ける動きで矢印を後ろに向けること、抜けた選手はボールが出てこないと多角形の崩しに素早く復帰すること。守備側の守る向きをバラすことと、ライン間のスペースを生み出したら、インサイドへのポストに対して横方向のランでボールを引き取り逆サイドに展開する。
理にかなったオフザボールのランからFC東京の守備の狙いを裏返した横浜FM。永戸の先制点は右から左への展開に成功。裏を取られた白井からすると横浜FMの左サイドには1人後方に余っている選手がいたため、裏抜けに決め打ちすることは難しかったはず。その白井を出し抜き永戸が先制ゴールを奪う。
FC東京はポジトラから反撃を図る。積極的に崩しに関与する横浜FMのSBが留守にしていたところから、俵積田が抜け出すとインサイドで待ち構えていたオリベイラがゴール。早い時間に同点に追いつく。
横浜FMはそこまで積極的にプレスを仕掛けてこなかったため、FC東京は前半の中盤以降から保持の時間を作れるように。ブロック守備攻略でも中心になるのはオリベイラ。ポストからサイドへの展開で反撃を狙っていく。横浜FMペースで入った試合だが、展開もスコアもフラットになりハーフタイムを迎える。
後半頭はFC東京がボールを持ったが、すぐに横浜FMがポゼッションを奪回。前半のようにFC東京の撤退守備を攻略する展開になる。サイドの裏のケアをする長友の奮闘が目立つ後半の序盤だった。
畠中の負傷もあり思うように波に乗れない横浜FM。FC東京は単騎でロングカウンターが可能なアダイウトンから反撃を狙う。彼のヘッドと渡邊の左足から生み出されたシュートはともにバー。横浜FMファンは冷や汗をかいただろう。
80分になると再び横浜FMは攻勢に。しかし、立ちはだかったのはFC東京のGKである野澤。前半のゴールは自分が空っぽになったゴールマウスに決められたもの。後半のパフォーマンスはそんな悔いをぶつけるような素晴らしいシュートストップの連続。横浜FMは何本もシュートを防がれる。
そんな野澤の壁を打ち壊したのは渡辺皓太。低い弾道での突き刺さるミドルで後半追加タイムに決勝点をゲット。冷や汗をかき、壁に苦しむ横浜FMだったが、殊勲の渡辺の右足が勝ち点3をもたらした。
ひとこと
見応えたっぷりの90分。仕組みに対する素早い対応力が光った横浜FMと個の奮闘でそれに対抗したFC東京とそれぞれに持ち味を見せた一戦だった。
試合結果
2023.8.19
J1 第24節
横浜F・マリノス 2-1 FC東京
日産スタジアム
【得点者】
横浜FM:12’ 永戸勝也, 90+1‘ 渡辺皓太
FC東京:23‘ ディエゴ・オリベイラ
主審:飯田淳平
