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「Catch up Premier League」~Match week 6~ 2022.9.3-9.4

目次

①エバートン【17位】×リバプール【6位】

■両GKの活躍が互いのジャンプアップを阻む

 第6節のオープニングマッチを飾るのは青と赤が対峙するマージ―サイドダービー。近年は苦しむエバートンをリバプールが一蹴するという構図が目立つ一戦だが、ここまでのシーズンにおいては共に苦戦を強いられており、順調とは言い難いシーズンの滑り出しといっている。共にライバルを叩いての上位進出を目論んでいるはずだ。

 今季は5-4-1がメインのエバートンだったがこの試合では4バックを採用。戦術的な変更というよりも、ベンチを見るとCBがいないことからおそらく人員的な話が先にくる部分だろう。

    エバートンは4バックでも高い位置からボールを追いかけないスタンスはキープ。ハイプレスはそこまで行わないスタンスでプロテクトは中央を優先する。要するに、これまで5バックでやっていたことを4-5-1でやっているというイメージである。

 リバプールはこれに対いて右サイドを中心に攻撃を組み立てていく。前節活躍したエリオットがいるこちらのサイドにアンカーのファビーニョまで流れる形で人数をかけて崩していく。

 今季これまでのリバプールはヌニェスが起用されている時間帯ではアバウトでも裏に抜ける彼にボールを預けてしまうパターンが多かった。しかし、この日はそもそもエバートンのライン設定は低く、ヌニェスが流れたり抜け出したりするスペースはなかった。そういう意味では存在感がイマイチだった。

   右サイドからファーのヌニェスに向かうクロスがリバプールの王道パターン。だが、これはなかなか刺さりきらない。

 それ以上にリバプールがらしくなかったのはプレッシングである。エバートンのバックラインに対してほとんど追いかけて捕まえることができない。リバプールのハイプレスのスイッチを入れるのは割とヘンダーソンな気がするので、カルバーリョとエリオットにはそのあたりは少々荷が重かったかもしれない。

 プレスのスイッチがかからず、エバートンはバックラインから自由にフィードを飛ばすことが出来た。逆にエバートンは散発的にやるプレスをうまくハメることが出来ていた。リバプールのCBは慌ててしまい、ショートカウンターでゴードンに仕留められそうになったことも。

 劣勢に苦しむ後半、リバプールはフィルミーノを投入し4-2-3-1に移行。左右にバランスよく展開しながら味方を助ける動きが少しずつ出てくるようになっていく。

 前半から言えることだが、この試合はミドルゾーンにおける攻防が非常に少なく、どちらかのゴール前でプレーが進むことが多い。そういう意味では中盤がなくなったような試合といってもいいだろう。

 リバプールは外循環で攻めていく。左の大外をツィミカスで突っついたのはわかるけども、エリアの外からの武器という意味では同じく有効なアレクサンダー=アーノルドを早々とあきらめたのは少々意外だった。あまりパフォーマンスはよくはなかったけど、外から壊せる武器なので。

 一方のエバートンはロングカウンターが主体。この試合ではリバプールの即時奪回がそこまでだったため、敵陣で落ち着いてボールを持てる機会もしばしば。

 両チームともそれなりにゴール前での攻撃の機会があり、それなりに決定機もあった。だが、この試合の後半の主役は両GKである。アリソン、ピックフォードの2人はことごとく相手の決定機の前に立ちはだかり得点を許さない。

 特にピックフォードは止めれば止めるほど乗ってくるタイプのGK。クロップが試合後に「どうしようもない」とコメントした通り、リバプールをシャットアウトして見せた。

 GKの神がかり的な活躍もあり、マージ―サイドダービーはスコアレスドローで終了。ライバルを踏み台にしたジャンプアップには至らなかった。

試合結果
2022.9.3
プレミアリーグ 第6節
エバートン 0-0 リバプール
グディソン・パーク
主審:アンソニー・テイラー

②ブレントフォード【11位】×リーズ【7位】

■バックラインを破壊したブレントフォードが完勝

 より慎重にボールを回す立ち上がりに見えたのはホームのブレントフォード。バックラインで横幅を使いながらリーズの守備が手薄になっているところを探りながらショートパスでの前進を試みる。

 一方のリーズはよりダイレクトにボールを運んでいく形で反撃に。中心になったのはもちろんアーロンソン。縦パスを受けてからの素早い反転でドリブルをスタートし、一気に敵陣まで進撃していく。

 リーズとしては一度ある程度ボールを押し下げられればOK。ブレントフォードは撤退に追い込まれてしまうと、めちゃめちゃにラインを下げるのでとりあえず1トップの脇にロカとアダムスがボールを持てる形を作るのが理想である。

 ブレントフォードはルイス=ポッターとヘンリーのコンボから左サイドのチャンスを見出そうと反撃をする。けども、この日は序盤のように幅広くピッチを使うことができた時の方が良好。ブレントフォードは右のムベウモが突破した流れからPKをゲット。シニステラが突っ込んでいったプレーがPK判定をされてしまった。

 これを決めたトニーは更なる勢いに乗り、直後のFKも得点。セットプレーから2つのゴールを決めてリードを広げる。

 リーズは前半終了間際にPKを献上したシニステラが反撃。スローインからのドリブルから突破し、一気にゴールを陥れる。

 得点の取り合いは後半も継続。少しアプローチが変わったのはブレントフォードの方。本来の持ち味に近いロングボールを使ったシンプルな形を増やし、少ない手数でゴールに近づく。

 このやり方がリーズの守備陣をあっという間に崩壊に追い込む。トニー、ムベウモといった長いボールのターゲットに対して全く歯が立たないリーズのバックライン。裏を狙った長いボールをメリエがクリアに出てくるが、蹴ったボールを相手に拾われてしまい無人のゴールに押し込まれる。トニーはこれでハットトリック達成。一風変わった3ゴールでリードを広げる。

 リーズは後半頭に入ったバンフォードが右に流れる形からチャンスメイクを行う。ここからアタッカー陣がドリブルでエリア内に侵入することができるので、形としては悪くなかったと言えるだろう。実際に79分にロカが追撃弾を奪い、リーズファンは希望を持つことができた。

 だが、その希望は直後のロングボールで消されてしまう。コッホの処理ミスを見逃さなかったムベウモが即座に2点差に戻す。

 さらにハイプレスからブレントフォードはウィサが5点目で仕上げ。リーズのバックラインはロングボール対応もプレスへの耐性も散々でどうしようもない日。マーシュの退場もイレブンに火をつけることができず、ブレントフォードの大量得点の餌食となり大敗を喫してしまった。

試合結果
2022.9.3
プレミアリーグ 第6節
ブレントフォード 5-2 リーズ
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:30′(PK) 43′ 58′ トニー, 80′ ムベウモ, 90+1′ ウィサ
LEE:45+1′ シニステラ, 79′ ロカ
主審:ロベルト・ジョーンズ

③チェルシー【10位】×ウェストハム【14位】

■奥行きを作り出したチルウェルと灰色のジャッジが明暗を分ける

 なかなかブレイクスルーが掴めないチェルシー。この試合ではマウントとハフェルツを外すという荒療治と2トップ型の5-3-2のような布陣でウェストハムを迎え撃つ。3センターの関係性は左のIHに立つコバチッチは低い位置をとり、右のIHのギャラガーは比較的高い位置をとる左右非対称の形となっていた。

 ウェストハムのバックラインに対して、チェルシーは早い位置から捕まえに行きたい姿勢を見せる。だが、ややマーカーが定まっていない感じがあり、ボールホルダーに対して距離が遠くなってしまう状況が続いており、なかなか前から捕まえきれない。かといってウェストハムもそれを有効利用できているわけではないのだけども。

 ウェストハムは2トップで前から守備に行くよりも、中盤を噛み合わせる状況を優先。新加入のパケタはロフタス=チークをマークするタスクを命じられた。

 この中盤のマンマークに対して、チェルシーはスターリングなど前線の選手を中盤に落とすことでアウトナンバーを作りながら対応する。ライン間にボールを預けることができたチェルシー。だが、そこからサイドにボールを逃すとその先が詰まる。サイドのフォローが少し足りない分、いつもより攻め方が淡白な感じを受ける。

 ウェストハムも攻め手が見出せずに苦戦。序盤は左サイドに流れるアントニオのロングボールを軸に攻めて行ったが、だんだんと跳ね返されるように。パケタがもう少しカウンターのスイッチになれれば面白いのだが、そこはまた今後という感じだろう。

 前進が難しくなったなら、ハイプレスでなんとかしたい!というところ。だが、前から行けば行くほどチェルシーにあっさりボールを運ばれてしまうというジレンマにハマってしまっているように見えた。

 膠着している試合を動かすのは大きなミス、セットプレー、もしくはスーパーゴールのどれかであることが多い。この試合ではセットプレー。CKからのすったもんだからアントニオがこじ開けてウェストハムが先制する。

 リードを得たウェストハムはフォルナルスを最終ラインに下げる5バックで守る機会を増やす。つまり、ここからはチェルシーのブロック破壊チャレンジとなる。

 攻略のキーになったのはチルウェルだ。手前で引き取る動きが多いククレジャに比べて、奥行きを取る動きが多いチルウェルはこの試合にあっていたかもしれない。裏を取る動きから華麗な身のこなしを見せて同点弾を生み出す。

 逆転ゴールの立役者もチルウェル。追い越す動きを繰り返して局面を動かすとラストパスでインサイドにグラウンダーのパス。マウントがニアで潰れた先にいたハフェルツが決勝ゴールを決める。

 だが、直後にコルネが反撃ゴールを挙げてウェストハムが同点に追いついた。かと思いきや、これはメンディへのファウルでまさかの取り消し。個人的には今季ここまでのプレミアの中のナンバーワンでアレなジャッジである。同点ゴールを取り上げられたウェストハムは非常に大人な対応だったのが不思議なくらいだ。

 何はともあれ逃げ切ったチェルシー。まぁ、これがトゥヘルのプレミアラストゲームになるとは誰も思わなかったわけだけど。

試合結果
2022.9.4
プレミアリーグ 第6節
チェルシー 2-1 ウェストハム
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:76′ チルウェル, 88′ ハフェルツ
WHU:62′ アントニオ
主審:アンディ・マドレー

④ニューカッスル【12位】×クリスタル・パレス【13位】

■「悪くないけど」の沼からは抜け出せない

 サッカーっていうのは時に不条理なもので、内容としては悪くないにもかかわらず、なかなか結果が出ないということがある。プレミアの中で内容が悪くないにもかかわらず結果が出ないチームを2つ挙げろと言われたら、自分はニューカッスルとクリスタル・パレスを挙げるだろう。内容は悪くないにせよなかなか勝ち星を積めていない。

 そんな両チームの一戦はボールを持つチームは展開によってコロコロ変わる試合となった。序盤に優位を見出したのはニューカッスルの方。イサクが左に流れることが多いため、左サイドからチャンスを作る機会が多かった。

 しかしながら、細かいミスが多くチャンスをフイにする機会も多い。コントロールミスとか、あるいはあっさりオフサイドにかかってしまったりなど。仕上げの部分に難があるのがこの日のニューカッスルだった。

 クリスタル・パレスは縦パスを入れる場所を探りながらのボール回し。エゼ、もしくはマテタに縦パスが入るとそこから一気にスイッチを入れてゴール前まで運んでいく。しかし、縦パスを入れるスペースというのはそう簡単に見つかるものではない。むしろ縦パスをニューカッスルに捕まえられてしまい、カウンターに移行されてしまう場面もしばしばであった。

 ニューカッスルは右サイドのアルミロンがカウンターからチームを牽引。それでもミスの多さは相変わらずで仕上げが物足りない。しかし、セットプレーからの波状攻撃は迫力が抜群で、パレスを自陣から出させないように閉じ込めていく。

 なんとか凌いだパレスは後半頭にハイプレスで押し込むトライを行う。60分付近に行った3枚交代も前線の選手を中心にリフレッシュさせることである程度の効果があったと言っていいだろう。

 しかし、後半もペースを握ったのはどちらかといえばニューカッスル。ゴールに向かう頻度はパレスよりもニューカッスルの方が全体的には多かった。セットプレーからゴールを揺らすシーンもあったが、これはOFRでファウルの裁定となりゴールは認められなかった。

 この場面以降、攻め込む機会を得たニューカッスルはひたすらゴールに迫っていく。ロングカウンターから反撃するパレスを凌ぐチャンスを作りながらも、この日はとにかくフィニッシュが決まらない。後半に特に多くのチャンスを得たのはウィロックだが、肝心なところでシュートが枠に飛ばない。

 試合は結局そのまま終了。決め手に欠いたニューカッスルにとってはより悔しい引き分けになったはずだ。

試合結果
2022.9.3
プレミアリーグ 第6節
ニューカッスル 0-0 クリスタル・パレス
セント・ジェームズ・パーク
主審:マイケル・サリスバリー

⑤ノッティンガム・フォレスト【15位】×ボーンマス【16位】

■後半で取り返した2点のビハインド

 昇格組同士の対戦となったカード。既に監督交代を行っており暫定監督のオニールが指揮をとっているボーンマスとやや負けが混み始めて順位が下がり始めているフォレストの一戦となった。

 立ち上がりから落ち着かない試合が行われたこの試合。積極的なプレスに対して保持側がつなぎたい意志を見せながらの展開となっていく。

 前からのプレッシングがよりハマっていたのがノッティンガム・フォレストの方だ。ボーンマスのバックラインに圧力をかけながら時間を奪っていく。つなぎたいボーンマス相手にリズムを作らせない。困ったボーンマスは早めにロングボールを蹴るが、ことごとく跳ね返される。ビリングが競り合いで起点になれず、ボーンマスは前進することができない。

 ボーンマスのプレッシングはフォレストに比べると人数をかける思い切りが足りなかったように見えた。よって、フォレストはショートパスからの前進でこのプレスを交わしていく。だが、普通にフォレストはプレスに引っ掛からなくてもショートパスを数本繋いでいるうちに勝手にミスが出てしまう。

 ともにペースをつかめない中、チャンスを活かしたのはフォレスト。CKからのヘディングを決めたのはクヤテ。ゴールから逆側に体を流しながら、あれだけ強いヘディングを叩き込めるのはなかなかのものである。

 ゴールを奪ったフォレストは以降もペースを握っていく。起点になっていたのは右サイドのジョンソン。縦にボールを引き出しながら深さを作り、ボーンマスを敵陣側に押し込んでいく。押し込んだ甲斐があったフォレストはウィリアムスのシュートがハンドとなりPKをゲット。前半のうちに点差を広げる。

 後半はビハインドになったボーンマスが反撃。落ち着かない展開からビリングがミドルで1点を取り返す。さらに10分後にはセットプレーからソランケがゲット。20分も経たないうちに試合を振り出しに戻す。

 フォレストは前半と異なりプレスをかけられた状態で簡単に蹴り出されてしまう傾向があった。それにより、前半のボーンマスのように前線に起点が作れない状態に。交代がやや遅いうえに交代で入った選手たちが流れを作れず、ボーンマスに奪われたペースを取り戻すことができない。

 すると試合が決まったのは終盤。87分に試合を決めたのはボーンマス。マッケンナのコントロールミスを掻っ攫ってラストパスを受けてゴールを決めたのはアントニー。大きなプレーで遂に逆転する。

 2点のビハインドを45分で完全にひっくり返したボーンマス。大きな逆転勝利で開幕戦以来の3ポイントを手にすることに成功した。

試合結果
2022.9.3
プレミアリーグ 第6節
ノッティンガム・フォレスト 2-3 ボーンマス
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:33′ クヤテ, 45+2′(PK) ジョンソン
BOU:51′ ビリング, 63′ ソランケ, 87′ アンソニー
主審:マイケル・オリバー

⑥トッテナム【3位】×フラム【8位】

■あまりにも早い最後の切り札

 共に白を基調とする2チームによるロンドンダービー。好調な上位対決だったが、序盤から怪しい雰囲気だったのはフラムだ。

 彼らが今季ここまで食らいついてきた大きな原動力はミドルゾーンでのプレッシングである。この試合ではこれがほとんど機能しなかった。3バック相手の相性などもあるのかもしれないが、それ以前に全く動けていなかったように見える。前線の動きが重く、このあたりは今季初めてミッドウィークにリーグ戦があった影響もあるのかもしれない。

 開始早々にローラインに押し込まれることが増えたフラムは早々に5-4-1に切り替え。基本はミドルブロックで粘って、最後にローブロックで体を投げ出しまくる!が彼らの形なので、トッテナムが撤退守備攻略を得意としていないことを差し引いてもこのシフトは早すぎるといっていいだろう。最後の切り札を前半に使ってしまっている感。案の定、あと一歩でゴールのシーンをレノが救う場面が目立つようになる。

 さらに状況を悪くしたのがロビンソンの負傷交代。代わりに入ったムバブはアーセナル戦と同じく全く試合に入れず。彼が起点のロストからトッテナムはホイビュアの先制ゴールを産みだすことに成功する。

 攻めに出たいフラムはおなじみのパリーニャをアンカーにする形から敵陣に攻め込むが、割り切った5-4-1ブロックを敷くトッテナムに対してなかなか攻め手が見つからない。

    むしろ、ボールをひっかけてしまい、トッテナムの得意なパターンのカウンターを誘発してしまうことも。ソンが不調でなければトッテナムは前半のうちにさらにリードを広げていてもおかしくはなかった。

 追い込まれたフラムは後半に腹をくくったハイプレスを敢行。これで何とか自分たちもチャンスを作れるようにはなった。

 しかし、試合のテンポを上げるということはトッテナムにその数倍のチャンスを作る機会を与えるということでもある。ロングカウンターから得点に飢えているリシャルリソンを中心にフラムゴールに襲い掛かる。

 すると追加点はあっけなく。フラムのエリア内の攻撃でハンドっぽいプレーが発生。「あれ?ハンド?」っていう感じでフラムの選手がボールウォッチャーになる中、ケインが追加点をかっさらっていく。なんだそれ。

 フラムはミトロビッチのスーパーゴールで追撃するが、これ以上はなかなか反撃のきっかけをつかめず。終盤の主役は試合を決める追加点を決めたと思いシャツを脱いだリシャルリソン。オフサイドでゴールを取り消され、警告だけをしっかり受けた。

 ロンドンダービーはトッテナムの完勝。状態が悪かったフラムはミッドウィークのある週の戦い方に課題を残す格好となった。

試合結果
2022.9.3
プレミアリーグ 第6節
トッテナム 2-1 フラム
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:40′ ホイビュア, 75′ ケイン
FUL:83′ ミトロビッチ
主審:スチュアート・アットウェル

⑦ウォルバーハンプトン【18位】×サウサンプトン【9位】

■似たもの同士の一戦はウルブスが初勝利を掴む

 ここまで未勝利で苦戦を強いられているウルブス。今節は新戦力の目立ったフィットが多く、非常に目立っているサウサンプトンとの試合となった。

 両チームのアプローチは比較的似ていると言えるだろう。まずは様子見で左に流れるCF(アダムスとカライジッチ)に蹴るというのも似た形だったし、CBにはろくにプレッシャーをかけないでボールをある程度持たせるのも許容していた。

 サイドを崩しにかかるという仕上げの部分も似通っているが、ウルブスの方が積極的にサイドチェンジを活用し、サウサンプトンの方が人数をかけて一気にサイドを崩す形を多く使っていたのは両チームのやや異なる部分と言えるだろう。

 ウルブスはサイドを変えながら勝負できるWGに1on1を託すようなケースが多い。左のポデンスは左足からアウトサイドでクロスを上げていたし、右サイドのネトはドリブルからの突破を狙っていく。

 サウサンプトンの方は連携が磨かれているからコンビネーション重視。特に右サイドのウォーカー=ピータースとエルユヌシを軸とした3人での崩しでアイト=ヌーリの背後を狙う動きを見せるようになった。

 定点攻撃で言えばサウサンプトンの方が効いていたように見えたが、ウルブスにはカウンターの鋭さがある。何回か得点機会を迎えていたカウンターから先手を奪う。決めたのはポデンス。チャンスメーカーとして目立っていたポデンスがフィニッシャーとして活躍し、前半追加タイムにリードを奪う。

 ハーフタイムには前半負傷したカライジッチが交代。その後もプレーしていたからあまり大したことがないのかな?と思いきや、ACLという大怪我をしていたことが後から発覚。デビュー戦で飛んだ災難である。

 ウルブスは前がかりになるサウサンプトン相手に追加点を狙うのだが、抜け出したヌネスやゲデス、サイドで1on1を行うネトの調子があまり芳しくない。ミドルサードでのスピードアップまでは順調なのに、最後のところでノッキングしてしまいチャンスが台無しになるケースが多かった。

 サウサンプトンはウォード=プラウズがサイドに流れてのクロスからファーのアダムスを狙う形でチャンスを窺っていく。途中交代で布陣は4-3-3の逆三角形に変更。サイドでのトライアングルをより使いやすい形にする。

 布陣変更によりサウサンプトンのチャンスは増えるが、この日はアダムズが決めきれず。ネットを揺らしたかと思えばハンドで取り消されるなどついていない日だったと言えるだろう。

 最終的にはマーラを入れて2トップ気味に移行するサウサンプトンだが、ウルブスのPA内での守備に屈して無得点。6節にしてようやくウルブスが初勝利を得ることとなった。

試合結果
2022.9.3
プレミアリーグ 第6節
ウォルバーハンプトン 1-0 サウサンプトン
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:45+1′ ポデンス
主審:ジョン・ブルックス

⑧アストンビラ【19位】×マンチェスター・シティ【2位】

■MF総動員作戦でファンの溜飲を下げることに成功

 前節、アーセナルに敗れて4連敗。ジェラードに対する風当たりは日を追うにつれて厳しくなってくる。そんな最中に戦う羽目になるのはよりによって王者のマンチェスター・シティ。巡り合わせとは残酷なものである。

 アストンビラがこの日用意してきたプランはなかなか面白かった。並びとしてはレギュラークラスとして目処が立っているCHを総動員するというもの。彼らはとにかくバイタルを空けないことを目指している。

 それでもシティ相手に守ろうとすると中盤はどうしても動かされてしまうもの。なのでビラとしては動かされることは仕方ないとする。その代わり他の選手がカバーに入る。シティとしてはMFを釣り出してもその先にMFがいる状態。とにかく、バイタルだけは譲らない。序盤にバイタルを空けた一瞬をチャンスにされたことが逆説的に彼らのプランの正しさを証明している。後ろから追い越してくるウォーカーもアクセントになっていた。

 立ち上がりのシティはロドリの周辺にSBを置くいつものやり方を棚上げ。SBは外に開く機会が多かった。ビラは外に追いやるような守り方をしているので、ブロックの外で持たれるのは許容。ただし、シティのWGが降りていく動きに対してはビラのSBがついていく。カバーに入るのはもちろんMF。この日のビラは動ける総量が多い。

 ビラがそういうアプローチで来るならばブロックの外からの砲撃で解決できるのがシティの強み。しかしながら、外担当のデ・ブライネとカンセロがこの日は不発。なかなか大外からのピンポイントクロスを送ることができない。

 プレスもビラのビルドアップに対して刺さっていないわけではないけども、高い位置から奪い切ってショートカウンターに移行する形はあまり見られず。そういう意味ではこの日のシティはゴールに迫る迫力がやや欠けていたと言えるかもしれない。

 解決策を見出したのは後半のこと。やはり大外のデ・ブライネからピンポイントのクロスをハーランドの動き出しに合わせてこじ開けて見せた。

 シティはビラの攻撃を単発的な抜け出しから限られた回数に抑えられていたし、このまま問題なくゲームは閉じられるかと思われた。だが、シティが2点目を取るのに手間取っていると、ビラが少ないチャンスを活かす。競り合いになったルイスからラムジーに展開すると、折り返しをダイレクトでベイリーが押し込んで同点にする。

 追い込まれたシティはここから畳み掛けて攻撃に移行するが、シュートはことごとく枠外に。いつもに比べればシティの精度は割引だったと言わざるを得ない。

 MF総動員作戦が今後どこまで有用かと言われると微妙なところだが、ひとまず首の皮を繋いだジェラード。シティ相手に勝ち点を奪い、ファンの溜飲を下げることに成功した。

試合結果
2022.9.3
プレミアリーグ 第6節
アストンビラ 1-1 マンチェスター・シティ
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:74′ ベイリー
Man City:50’ ハーランド
主審:シモン・フーパー

⑨ブライトン【4位】×レスター【20位】

■忘れ物もきっちり拾い、完璧なゴールショーに

 前節のフラム戦ではウェルベックを外し、前線の流動性をさらにアップ。ブライトンにおいてはフォーメーションを細かく追う意味ってないんじゃない?っていう思いを個人的に強くした一戦だった。

 今節のメンバーはウェルベックがいる分、前節よりは基準点がはっきりしていた。しかし、ムウェプとグロスの前後関係を入れ替えるなど、またしても一工夫を施すポッター。

 そうしたことを確認し終わる前に先制点を奪ったのはレスター。左サイドから抜け出すダカが最後にイヘアナチョに合わせて先制ゴールをゲットする。

 いきなり追いかける展開になったレスター。いつもより中盤色が濃いところに置かれたグロスを絡めたポジションチェンジから反撃の狼煙を上げる。右の大外に入り込んだグロスとポジションを入れ替えたマーチがエリア内に侵入。オウンゴールを誘発し、あっさりと同点に。試合を振り出しに戻す。

 追いつかれてしまい再び得点が必要になったレスター。この日のレスターのボール保持はやや変則的なもの。右のWGがスタートポジションのマディソンが中盤の低い位置まで流れてきており、右の大外は高い位置を取るジャスティンと2トップの一角であるイヘアナチョ。

 右に流れるイヘアナチョはトロサールの後方を突くという意味でも悪い選択肢ではなかった。だが、誤算だったのは中央に降りてくるマディソン。ホルダーに近寄ってのパスワークからミスを連発し、ブライトンのカウンターの温床になってしまう。

これによりチャンスを得たブライトン。容赦のないパスカットからカイセドが鋭いゴールを決めて勝ち越す。

 苦しい状況になるレスター。それでも少ないチャンスをゴールに結びつけることが出来ていた。DFラインの中央を割るように一発で抜け出したダカがゴールを奪い再び試合は同点に。ブライトンはボールの失い方が悪く、中央がやや開いた陣形でカウンターを受けてしまったのが痛かった。

 後半、ブライトンは確固たる攻略パターンを見つけてレスターを攻め立てる。速攻気味の状況から、右サイド起点のカットインでピッチの中央を横切りながら左に流れる形と、左サイドの大外からPA内にダイレクトに切り込んでいく形。このパターンでレスターを追い詰めていくブライトン。

 前半は大外→大外のクロスに対応しきれなかったこともあり5バックに変更したレスター。しかしながら、バックラインが脆いという状況は枚数を増やしても改善せず。ブライトンの左サイドからの突破を再三許し、勝ち越しゴールとPK献上であっという間にリードを広げられてしまう。

 ゴールショーとなった最後を締めくくったのはマック・アリスター。48分に取り消しになったスーパーミドルの鬱憤を晴らすのかように、こちらもスーパーなFKで5点目をゲット。取り損ねた忘れ物をが取り返すことに成功し、ブライトンとしては一点の曇りもない大勝となった。

試合結果
2022.9.4
プレミアリーグ 第6節
ブライトン 5-2 レスター
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:10′ トーマス(OG), 15′ カイセド, 64′ トロサール, 71′(PK) 90+7′ マック・アリスター
LEI:1′ イヘアナチョ, 33′ ダカ
主審:トニー・ハリントン

⑩マンチェスター・ユナイテッド【5位】×アーセナル【1位】

■首位ストップで上位争いに本格参戦

 レビューはこちら。

 5位と1位。連敗スタートから連勝に転じて上昇気流に乗るユナイテッドとここまで唯一の全勝で首位を走るアーセナルの一戦。注目度が高いオールド・トラフォードでのゲームが6節のトリを飾る。

 まず立ち上がりに見せたのはユナイテッド。両サイドからWGを軸としてコンビネーションでアーセナルを押し込んで苦しめる。特に存在感を見せたのは右WGのアントニー。2人を引き付けつつ、球離れを悪くしすぎないという絶妙なバランスでアーセナルの左サイドを基準に起点を作っていく。

 押し込まれながらもなんとかユナイテッドの攻撃を跳ね返したアーセナルは保持から反撃。絞るジンチェンコ、もしくはラムズデール→ホワイトへのロブパスでユナイテッドのプレスを無効化する。

 その中で違いを見せたのはジェズス。マルティネスとヴァランを背負いながら長いボールを前線で収めながらPAまでボールを強引に押し上げていく。

    ジェズスだけでなく、アーセナルの前線はこの日とても調子がよさそうだった。右のサカはマラシアを手玉に取りながら右の大外からカットインすることが出来ていたし、マルティネッリも体を張りながら前線の起点になる。抜け出しからのカウンターがゴールとして認められなかったことには、胸をなでおろしたユナイテッドファンも多いはずだ。

 ジェズスらが躍動できたのはユナイテッドのプレスにおいてDF-MF間が空きやすく、全体の陣形をコンパクトに保てなかった影響が多い。ただし、この課題にはアーセナルも同じ形でぶつかることになる。

    アーセナルは立ち上がりこそ、エリクセンをウーデゴールが見る形でのミドルプレスを行っていたが、途中からウーデゴールは2枚のCBにプレスに行くようになった。マルティネスにボールをにぎらせてはいけない!という判断に至ったのかもしれない。

 だが、これによりアーセナルの中盤は縦に間延び。エリクセンを捕まえるための受け渡しのタイミングが合わず、アーセナルは後方のブルーノも含めて中央にスペースを与える形になってしまった。

 ユナイテッドの先制点はまさにこの中盤のスペースから。エリクセン→ブルーノへのホットラインが空いてしまったことできれいにアントニーまでつながってしまった。アーセナルも同じように先制してもおかしくないほどのチャンスを作っていたが、ブルーノとエリクセンを空けるという相手の守備の弱みにつけこむのに成功したのはユナイテッドの方。ゴールを決めたアントニーは嬉しいデビュー戦ゴールである。

 後半、ビハインドのアーセナルはボールを保持で幅をとりつつ、即時奪回を含めてユナイテッドを自陣に釘付けにするハーフコートゲームに。この勢いのまま何とか追いつくことが出来たアーセナル。サカのゴールで試合を振り出しに戻す。

 押し込まれてしまうし、押し込み返すのは無理と悟ったテン・ハーグはラッシュフォードとサンチョへの裏狙いに切り替え。さらにはブルーノとエリクセンのポジション自由度を高めながらホルダーをフリーにする方策に出る。

 後半の2得点はこの賭けがあたった格好だろう。ロングボールを収めるのは無理でも、かけっこでは十分やれるラッシュフォードとフリーになればピッチのどこにいてもパスを出せるブルーノの組み合わせでアーセナルのハイラインを破壊する。

 アーセナルは前線のガス欠によりトーンダウン。ファビオ・ヴィエイラの投入や試合に入れなかったマグワイアのせいでややユナイテッドが危ない場面もあったが、落ち着いて2点差のリードを守り切る。

 オールド・トラフォードで首位撃破に成功したユナイテッド。連勝を伸ばしていよいよ上位争いに本格参戦だ。

試合結果
2022.9.4
プレミアリーグ 第6節
マンチェスター・ユナイテッド 3-1 アーセナル
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:35′ アントニー, 66′ 75′ ラッシュフォード
ARS:60′ サカ
主審:ポール・ティアニー

今節のベストイレブン

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