■競り合いが増えてくると苦戦も逃げ切りに成功
立ち上がりはひとまず組み合う両チーム。高い位置から奪回にくるチューリッヒに対して、アーセナルはボールを動かしながらこれを回避する構図で試合は始まった。
起用可能なシニアメンバーは全員動員する形でターンオーバーを見せたアーセナル。メンバーは入れ替わっても今季のトレードマークである左サイドの旋回は健在。特に積極的に前線に顔を出すティアニーの存在感が際立っていた。
チューリッヒは即時奪回が難しいと判断した場合は潔く撤退を優先。4-4-2ブロックを組みながらアーセナルを迎え撃つ。ただ、中央で自由に動き回るアーセナルに対して、どこまで追いかけていくのか?という部分に迷いがあり、4-4-2の陣形を維持しながら守るのに苦心。その分、アーセナルはギャップにボールを入れながらの前進が目立つようになる。
中央のスペースの出し入れで輝いていたのは加入後初先発となったファビオ・ヴィエイラ。狭いスペースを苦にすることなく前進に寄与する。この部分はややチューリッヒの選手たちがマーカーとの距離感が全体的に遠かった部分もあるだろう。10分もすればアーセナルは落ち着いてボールが持てるようになる。
ただし、チューリッヒも全くダメだったわけではない。即時奪回→撤退の判断は比較的適切で前がかりになり過ぎたところをアーセナルに裏返され敵陣が間に合わなかったシーンが少なかったし、押し込んだ時は右のハーフスペースの裏抜けからチャンスメイクをすることができていた。特にサイドを変えて右まで大きな展開ができた時は、アーセナルのスライドが間に合っていない場面も。あとは通す技術次第といったシーンは作ることができた。
先制点を奪ったのは攻勢を強めていたアーセナル。セットプレーからのカウンターを発動させたヴィエイラとサイドから走り抜けたエンケティアで一気に敵陣まで押し込むと、ファーサイドに詰めたマルキーニョスが嬉しい初ゴールをゲット。アーセナルが先行する。
このゴールを皮切りにアーセナルは冨安やロコンガが相手の裏をかくパスからチャンスメイクを行う。しかし、アーセナルはここから決定機を決め切るところまでに至らない。
ビルドアップ時に引っかかるケースが増えたのとアーセナルの中盤はフィフティーなボールに競り負けることが多いことから、チューリッヒには攻め込むチャンスがあった。そしてセットプレー絡みから同点に。やや変な回転になったクロスがファーに流れると対応したエンケティアがPKを献上。アーセナルにはファーまでクロスを流してしまったこととエンケティアの対応が後手に回ってしまったことの2つの問題があったように見えた。
後半は追いつかれたアーセナルがハイプレスからボールを奪い取りつつ攻め込み続ける展開に。チューリッヒはミドルゾーンの競り合いでは相変わらず有利だったが、ロコンガがジェマイリを潰すことに成功した53分のシーンのように中盤が前を向かせる前に対応できれば、アーセナルがペースを握り続けることができる。
左右に選択肢を用意しながら攻撃のルートを準備できていることや、チューリッヒ側のプレスの甘さも相まってアーセナルのチャンスの時間帯は続く。しかしながらフィニッシュが慌てがちでなかなかゴールにはつながらない。ようやく得点を決めたのは後半の15分を過ぎてからのこと。PKを献上したエンケティアがマルキーニョスのクロスに合わせて勝ち越しゴールを決めた。
このゴール以降はアーセナルが落ち着いて試合を握ることを意識するように。主力を徐々に投入しつつ、瞬間的にプレスのスイッチを入れたり、縦パスで隙をついたりなど緩急ある攻め込み方ができるように。守備面で際立っていたのは冨安で高い位置に出て行っての潰しや、正対した選手たちとの1対1、クロスに対しての絞っての対応など要所で輝きを見せる。アーセナルは伝統的にテンポを落としての試合のコントロールはあまり得意ではないのだが、この試合で安定した時間を作れたのは冨安によるところが大きいだろう。
終盤、CFに競り合いに強いサンティニを入れたチューリッヒは放り込みにプランを切り替える。アーセナルの中盤は受けに回る頻度が増えるとロコンガを中心に寄せとポジショニングの甘さが出てしまっており、ピンチを迎えることに。
やや冷や汗をかくこともあったアーセナルだがなんとか逃げ切りに成功。アウェイでのEL開幕戦を勝利で飾ることに成功した。
試合結果
2022.9.8
UEFAヨーロッパリーグ グループA
グループステージ 第1節
チューリッヒ 1-2 アーセナル
アレナ・ザンクト・ガレン
【得点者】
ZUR:44′(PK) クリエジウ
ARS:16′ マルキーニョス, 62′ エンケティア
主審:モハメド・アル=ハキム