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「はじめちょろちょろ、中ぱっぱ」〜2019.2.16 ゼロックススーパーカップ 浦和レッズ×川崎フロンターレ レビュー

目次

まえがき

 オフシーズンに積極的な補強を繰り広げた両チームの対戦になったゼロックススーパーカップ。みんなゼロックスって呼ぶからスポンサーの冠の宣伝効果ばっちりですね!っていつも思ってる。ルヴァンカップもみんなルヴァンって呼んでるし、冠がコロコロ変わらないことのメリットなのかなとか。

浦和は代表クラスである杉本、山中、鈴木に加えて、山形から汰木とブラジルからエヴェルトンのレンタルなどかなりアグレッシブなオフを過ごした。ユースや大学などの若手の引き上げにも積極的で、スカッドを拡大しようという意識が見て取れる。オリベイラはこの試合までに実戦はほぼ行わず、フィジカルトレーニングメインで仕上げてきたとのこと。まずは試金石になりそうなシーズン初戦だ。

川崎の大型補強で目を引くのは量よりも質。ダミアンや山村など既存のタイプの選手とは異なる補強を敢行。従来のクラブカラーとは少し毛色が違う補強に動いた。悲願なのはACLだろう。グループステージで散った昨年の雪辱を晴らすべく、まずは近年いいイメージがない埼スタで2019年の幕開けを飾りたいところだ。

試合雑感

 スタメンの図を用意するのを完全に忘れたので、ほかの人のレビューを読むなり、試合結果から調べるなりしてほしい。すみません。

監督がオリベイラになって以降、浦和は川崎に2連勝中。いずれも浦和の3-1-4-2のプレスに川崎が苦しんだという展開だった。少なくとも等々力ではそうだった。埼スタでもそんな感じだったんじゃないかなたぶん。覚えていないけど。というわけでこの試合も並びは3-1-4-2。とはいえ、この浦和を3-1-4-2と評する人は少ないと思う。5-3-2のような形の5バックと見るのが妥当だろう。浦和の2トップは川崎のバックラインへのプレスはかけず、ボランチ手前の位置で並ぶことが多かった。

川崎は並びの上では4-2-3-1なんだけど、いつものことながらこれはあまり忠実には守られない。具体的にはボール保持時は小林が内側に絞って、サイドを空けて2トップのようになる。右のレーンはマギーニョのもの。中村と家長はフリーマンとして最終ラインからボールを引き出す役割も担当した。中村がトップ下起用の際に低い位置でボールを持つのは珍しいことではないけど、家長が低い位置でボールを持つ回数は昨季よりも多かった気がする。チームとして意識的にやっているのか今後注視したい。2人も不規則な動きをする人間がいたら割と無茶苦茶になりそうなもんだけど、川崎はバランスを崩さなかった。不規則なのではなく、そういう規則なのかもしれないけども。

浦和が苦労していたのは中村と家長に加えて、守田や大島が積極的に低い位置でボールを持つ動きへの対応。浦和のMFラインが川崎のMF陣が下りていく動きについていくので、DF-MF間のギャップが生じる。イメージとしては5バックに張り付く浦和の中盤の選手をはがしていくと言ったらわかりやすいだろうか。浦和の守備は川崎のボールホルダーを捕まえられてはいなかったので、空いたギャップには縦パスが通る。そこにいるのがレアンドロ・ダミアンというのが今年の川崎の一味違うところである。というわけで前進はできる川崎。小林が内に絞ってマギーニョが広大なスペースをカバーする右サイドは狙い目になりそうだけど、低い位置ではボールを失わなかったし、高い位置でのロストは即時プレスで浦和にボールをいったん下げさせることを強要することで、4-4-2ブロックのポジションに戻る時間を得ていた。

浦和のフォーメーションはCBとMFのスクエアで進むことが多い川崎のビルドアップにばっちりプレスをかけられる配置なんだけど、この試合では見られなかった。単純に新戦力がいる分、そこまで仕上がらなかったぜ!なのか、ダミアンと小林相手には数的優位確保しときたいよね!なのかはわかりません。

浦和の攻撃で面白いと思ったのは自陣に押し込まれてからのロングカウンター。川崎のプレスも効果的だったが、最終ラインごと常にきっちり押し上げられていたわけではないので、DFとMFの間にはスペースがあることもあった。ただし、浦和の最終ラインの面々にはプレスがかかっていることが多く、なかなかフィードは飛ばせない。しかし、浦和がほかのチームと違うのは、GKの足元の質が天下一品なところだ。12分の場面ではリスタートから西川周作のフィードが川崎のDF-MF間にいる味方に素早くつながった。前線の連係がイマイチだったため、ちょっとまごついてしまいチャンスにならなかったが、西川が最終ラインに構える浦和にとって、このカウンターは大きな武器だろう。低い速いフィードが蹴れる西川を起点にインサイドハーフとFWで運んで、遅れて入ってきたWBが仕上げる!みたいな。キャノン装備の山中とか、大外で高さを作れる橋岡とかは前に顔を出せれば面白いのかなと。

みんなよかったけど、中でも川崎で秀逸な出来だったのはボランチコンビ。「はじめちょろちょろ、中ぱっぱ」というのはおいしいご飯の炊き方の話だけど、サッカーでも重要だと思ってて、ビルドアップで時間をかけて相手を自陣から引き出しながら、縦パスから一気に加速というのは理想的な流れだし、近年の欧州でのポゼッション重視型もこのパターンからのチャンスクリエイトは多いと思う。川崎の攻撃の加速に一役買っていたのは紛れもなくボランチコンビ。特に守田は昨季よりさらにうまくなった。ボールの受け方から、相手を外すことを意識することが多くなった。川崎サポ的にはアレなんだけど、早く海外で見たいぜ。西川がいれば浦和もハイプレス相手に「中ぱっぱ」はできそうだけど 、まだ前線のコンビネーションは完成してない。この試合のチャンスの量の差はスペースをつける後方からのパスの回数の差と、スペースで受けた時の前線のコンビネーションの差を反映しているように見えた。

スコアの流れをビタイチ説明しないレビューになったが、試合はダミアンのボレーで川崎が1-0で勝利した。

あとがき

本気じゃなかった!というつもりはないが、調整方法を考えれば半分プレシーズンマッチという位置づけであっただろう浦和。この形で行くのか、それともこれはブラフなのかはふたを開けてみないとわからない。後ろが3枚か4枚かという配置の部分も気になるのだけど、もっと気になるのは中盤の選手のキャラクター。配置が流動的な前線とは違って、恐らくここは後ろが3枚でも4枚でも逆三角形だろう。インサイドハーフの選手のキャラクターがかなり千差万別。ACLもあるとはいえ、選手の序列はつくはずなので、ここの競争に打ち勝つ選手が誰かでチームの色がだいぶ変わるのかなという印象を受けた。長澤みたいなトランジッション重視なのか、マルティノスに中央裏抜けをやらせるのか。途中出場した柴戸だけでなく負傷した武藤もインサイドハーフでの起用もあり得る。柏木を使う場合はより幅を使った攻撃が期待できそうなので、柏木起用時はWBをからめやすい3バックの方が攻撃面ではいい影響が出るかもしれない。
この試合ではいいところはあまり多くはなかったものの、あくまで今はシーズンをにらんだ仮の姿と考えるのが妥当。選手の層を考えれば、優勝候補の一角なのは間違いない。

1試合のファイナルとはいえ、苦手なカップ戦でタイトルを取ったフロンターレ。「決勝、埼スタ、杉本健勇、うっ・・・頭が・・・」というサポーターもいたかもしれないが、今回は無事勝利を収めることができた。コンディションは上々で、ACLのGS突破に備えて、シーズン序盤からある程度調子を上げていくやり方なのかもしれない。

 この日の浦和はミドルプレスのチームだったが、気になるのはよりプレスが強いチームやブロックを敷く意識が強いチームとの対戦。要するに前者はビルドアップで剥がせるか、後者はブロックを崩せるかという話なんだけど、レアンドロ・ダミアンという飛び道具がいるのは例年と違うところ。もちろん、長いボールやハイクロスはオプションとなりうるが困った時に依存症のような状態になれば、本来の精度の高いショートパスをつなぐスタイルは失われることになる。「困った時のダミアン!」の、「困った時」ってどんなもん?っていうところはとても気になる。ダミアンに川崎が飲まれるのでなく、川崎にダミアンを組み込めるチームを作れるかがシーズン前半戦のカギだ。

** 試合結果**

浦和レッズ 0-1 川崎フロンターレ
【得点者】
52’ ダミアン
埼玉スタジアム2002
主審:家本政明

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